時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

環境問題

原発ホワイトアウト 現役霞が関官僚が鳴らす原発再稼働への警鐘

原発ホワイトアウト
若杉 冽
講談社
2013-09-12


東大法学部卒の現役霞が関官僚の若杉冽(れつ)さんが書いたという原発再稼働への警鐘を鳴らす小説。

小説のあらすじは、いつも通り詳しくは紹介しない。

原発再稼働を推し進める経済界、経済産業省と政治家四世の総理(名前は出てこない)をトップとする「保守党」政権のトライアングル。その背景には、電力をめぐる巨大な政治資金の流れがある。

経済産業省(資源エネルギー庁)から分離・独立はしたが、依然として経産省シンパの原子力規制庁と原子力規制委員会。

原子力規制庁の幹部職員は、原子力推進官庁には戻らないというノーリターン・ルールがある。しかし、経産省出身の幹部は依然として経産省ファミリー意識でいる。

直接の電話では「オレ」、「オマエ」の仲の資源エネルギー庁高官と原子力規制庁高官。

地元の知事や市町村長の同意がないと原発の稼働はできないというルールは、法律上の根拠がない。しかし、法律上の根拠がなくても今や地元自治体の首長のOKがなければ、事実上、原発再稼働はできなくなっている。

そのルールに基づいて、「関東電力」の新崎原発の地元の新崎県の伊豆田知事(新潟県の泉田知事を連想させる)が原発再稼働の安全性について正論をぶつ。

しかし、原発再稼働トライアングルは、電力業界にたてつくものはたとえ知事であろうとも、国家権力を使って国策捜査で追い落とす。伊豆田知事は親類の政治資金問題で逮捕されてしまう。

そこで、経産省から原子力規制庁に出向している原子力反対派の課長補佐が、経産省と原子力規制庁幹部の癒着をマスコミにリーク。しかし、漏えい元をつき止められて、ねんごろになったフリーランスの女性記者と一緒に国家公務員法違反で逮捕される。

やがて、原子力規制庁の承認を得て、鉄のトライアングルが推進する15基の原発が再稼働する。

その冬は異常気象で超大型低気圧が発生していた。

大雪をもたらす超大型低気圧。

新崎原発への道路アクセスは遮断され、ホワイトアウト状態に。

5メートル先も見えないホワイトアウトのなかで、暗視ゴーグルをつけ、ある場所をめざして在日の同行者と一緒に雪をかきのけて進む元関東電力社員。

そして二人は雪の中で……というようなストーリー展開だ。

「関東電力」は、地域対策関係者として地元のマスコミ、県市町村議会議員、農協、ゼネコン、商工会、県庁幹部、市役所幹部、教職員組合幹部、はては在日朝鮮人や地元の暴力団関係者までリストアップしていると。

「関東電力」はフリージャーナリストも年収1千万円を超える丸抱えのAランクジャーナリストを十数名、それ以外にも多くのジャーナリストを抱えて、電力会社を擁護する記事を様々な場所で書かせていたという。

どちらも、いかにもありそうな話だ。

匿名の著者は東大法学部卒だそうだが、面白いことを登場人物の資源エネルギー庁の高官に言わせている。

「最高学府とは東京大学のことをいうのではない。東京大学法学部のことをいうのだ。経済学部出身の小島(日本電力連盟常務理事、元関東電力総務部長)が検察に働きかけたからといって何ができるというのだ。」

「東大法学部と経済学部の偏差値の差も、経産省のキャリア官僚と電力会社社員との社会的立場の差も…。」

その資源エネルギー庁の高官は「家柄こそ平凡なサラリーマンの子息ではあるが、四谷大塚(小学生の中学受験指導塾)で総合順位一桁、筑駒出身…」だという。

「四谷大塚」なんて、ひょっとして著者自身のことかと思わせる。

ともあれ、原子力発電についてかなりの知識がある原発反対派の人が書いた本であることに間違いはない。

世論に一石を投ずるということなのだろう。

一部には、日本の重電メーカーは欧米並みのコアキャッチャー(メルトダウン防止のために底を極端に厚くした格納容器)がつくれないとか、疑問を感じる部分もある。

筆者が駐在していたピッツバーグに本社のあった世界三大原発メーカーの一つのウェスティングハウスは東芝に買収された。日本の重電メーカーがつくれないはずがないと思うが。

小説の結末としては、「想定内」ではあるが、起こりうる事態かもしれない。

堺屋太一さんが通産省の現役官僚の時に、匿名で出版した「油断!」の衝撃には到底及ばないが、面白くて一気に読める。

油断! (日経ビジネス人文庫)
堺屋 太一
日本経済新聞社
2005-12


原発推進派の人も、原発反対派の人も、それなりに得るところのある本だと思う。


参考になれば次クリックお願いします。


原子炉時限爆弾 反原発論者 広瀬隆さんの福島問題が起こる前の予言書

原子炉時限爆弾原子炉時限爆弾
著者:広瀬 隆
ダイヤモンド社(2010-08-27)
販売元:Amazon.co.jp
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別ブログで紹介した反原子力発電論者・広瀬隆さんが2010年8月に出した原発事故「予言書」。

東電の福島第1原発事故が起こって、アマゾンでも売り切れが続いていた。そのものズバリのタイトルから、現在でもよく売れているようだ。

広瀬さんは福島原発の事故が起こってから、一躍有名になった。大手マスコミにはほとんど登場しないものの、朝日ニューススターなどのCSには出演しており、最近では原発反対を訴える社民党の福島瑞穂党首との対談がYouTubeにアップされている。



300ページ余りの本だが、論点は極めてシンプルだ。

広瀬さんの主張は、日本に原発が建設されだした当時は、大陸移動説(プレートテクトニクス理論)が定説として確立していなかった。だから現在の大半の原発の立地は大陸移動説を考慮しないで建設が決まった。

断片的な地質調査だけで、1968年に確立したプレートテクトニクス理論を考慮しないで「安全」という結論を出し、地球科学について集団的無知のまま全く進歩していないという。

日本列島は4方向から北米プレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピンプレートのぶつかる構造にあり、日本全国どこでも地震が起こる可能性がある。

特に最も危険なのは、3プレートが重なり合う静岡県だ。東海大地震が予想されている静岡県御前崎にある浜岡原発で大事故が起こる可能性はほぼ100%である。

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出典:本書31ページ

原子力発電所は、原子炉建屋とタービン建屋から成っており、温水・冷却水を循環させるパイプは全長何十キロメートルにもなる。この配管のどこか一部でも地盤隆起で断裂すると、原子炉の冷却は不能となる。

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沸騰水型原子炉(出典:Wikipedia)

PressurizedWaterReactor




加圧水型原子炉(出典:Wikipedia)

さらに今回福島原発で起こったようなステーション・ブラックアウト(原発内完全停電)でも冷却は不能となる。

実は2010年6月17日に地震が起こり、福島第一原発2号機で電源喪失事故が起こってあわやメルトダウンという事態となっていた。しかしちょうどサッカーのワールドカップの最中だったので、メディアはほとんど報道しなかったのだ。

津波が起これば、原子炉建屋の物理的なダメージの他に、引き波で原子炉の冷却用海水が失われる。また取水口からの水路もダメージを受けて冷却水が取り入れられないことが予想され、これでも原子炉の冷却は不可能になる。

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出典:本書91ページ

さらに原子炉はコンピューターで制御されているので、大地震でコンピューター自体がダメージを受けることもありうる。そうなると原子炉を緊急停止させる制御棒がコンピューター故障で、挿入できないおそれもある。

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出典:本書71ページ

広瀬さんは、日本で原発事故が起こると日本の国全体がほとんど再起不能なダメージを受けることを、すでに1960年4月から国はわかっていたと指摘する。

科学技術庁の依頼を受けて日本原子力産業会議が、1960年に「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」というレポートで予測していたのだ。

実はこの、「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」というレポートは既にネットで公開されている

この本では、レポートの被害予想図が紹介されている。

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出典:本書16ページ

このレポートの結論は、農業制限区域は日本全土、被害額は1兆円以上となっている。しかしこの1兆円は被災者保障が死亡85万円、立ち退き農家35万円という当時の金額をベースとしているので、今では100兆円を上回ることは間違いない。

しかもこのレポートは1966年に日本初の商業用原子炉として稼働し1998年に廃炉された小型(16.6MW)の東海村の1号機を対象にしており、いまや日本には54基のもっと大型の原発があるので、被害予想は数百兆円になるだろうと広瀬さんは予測する。

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日本の原発所在地(出典:本書152−153ページ)

他にも次のような危険性を指摘している。

★「高レベル放射能廃棄物は100万年監視しなければならない」

NUMO(原子力発電環境整備機構)の地層処分は子供だましの宣伝だ。

★青森県六ヶ所村再処理工場では日本全体を汚染する能力がある高レベル放射能廃液が貯まっている。

★六ヶ所村には大断層が走っている。

★”もんじゅ”の失敗は100%保証済み。

★プルサーマルが加速する原子炉の危険性
 ウラン燃料と比較したMOX燃料の放出放射能は非常に大きい。(対数目盛であり、1目盛りが一桁)

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出典:本書257ページ

★行き場を失った高レベル放射性廃棄物

さらに広瀬さんは、「あえて本書ではひと言も述べないが」と前置きして、「再処理・増殖炉・プルサーマルと、これほどまでにプルトニウムに固執する残る別の政治的な理由があるとすれば、読者ご賢察の通り、日本の核武装計画である。憲法を改正して日本が先制攻撃できるようにし、原爆を持ちたがる政治家が、国会に山のようにいることを忘れてはならない」と語る。

最後に広瀬さんは、次のように締めくくっている。

「天災は忘れた頃にやってくる」(寺田寅彦)

「日本人は、なぜ死に急ぐのか?」

「為せば成る 為さねばならぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」(上杉鷹山)

「救うのはあなただ!」


まさに「予言書」の感がある。広瀬さんは、ガチガチの反原発論者だと今まで思っていたが、理由のあるガチガチ論者である。

広瀬さんの議論は結局NIMBY(Not in my back yard)に過ぎないと思うが、広瀬さんの議論に論理的に反駁することは難しいと思う。

これに対抗するには、原子力は危険もあるが、原子力の平和利用こそ20世紀から持ち込まれた人類の課題であり、日本でも立地と最善の安全対策で原子力発電に取り組むことは可能だとというしかないと思う。

考えさせられる本であった。


参考になれば次クリック願う。





隠される原子力 核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ

隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ
著者:小出 裕章
創史社(2011-01)
販売元:Amazon.co.jp
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原子力畑一筋で東北大学工学部卒業後、京都大学の原子炉実験所で放射能測定を専門として研究を続ける一方、原発反対運動を支援する小出助教(「助手」が現在は「助教」という呼称に変わった)の本。

創史社・八月書館というマイナーな出版社から発刊されているが、折からの原発事故の関係で、アマゾンでは「在庫なし、入荷未定」の状態が続いていた。現在はアマゾンの売り上げで118位とよく売れているようだ。

原発事故後に書かれた「原発のウソ」はアマゾン売り上げ第7位、「放射能汚染の現実を超えて」は売り上げ194位と、いずれもベストセラーとなり、小出さんは一躍時の人になった。

原発のウソ (扶桑社新書)原発のウソ (扶桑社新書)
著者:小出 裕章
扶桑社(2011-06-01)
販売元:Amazon.co.jp
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放射能汚染の現実を超えて放射能汚染の現実を超えて
著者:小出 裕章
河出書房新社(2011-05-19)
販売元:Amazon.co.jp
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筆者が学生の時に自主講座「公害原論」を開催していた故・宇井純さんを思い出す。宇井さんも東大のポジションは助手どまりだった。

新装版 合本 公害原論新装版 合本 公害原論
著者:宇井 純
亜紀書房(2006-12-01)
販売元:Amazon.co.jp
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この本のサブタイトルにあるように、小出さんは原発の専門家でありながら原発に反対している。この本は1999年から2010年の小出さんの各地での講演内容を取りまとめたものだ。

原子力に関する基礎的な知識が得られて大変参考になった。ピックアップして紹介しておく。


放射線の恐ろしさ

生命体を構成しているDNAなどの分子結合エネルギーはせいぜい数電子ボルトだが、放射線のエネルギーは数百万から数千万電子ボルトに達する。放射線が身体に飛び込んでくれば、DNAはじめ身体の分子構造が切断されてしまうのだ。

被曝量が多くて、細胞が死ぬと、やけど、嘔吐、脱毛、最悪の場合には死を迎える。

一般的にはある線量、たとえば50ミリ・シーベルト以下は被曝の影響がない「しきい値」があるように言われるが、それは妄言だと小出さんは語る。

事実、2005年6月30日に長年放射線問題を研究してきた米国科学アカデミーの委員会は、放射線被曝にはしきい値はないと調査レポートを発表している。放射線の影響はリニア(直線的)に増えるという。


マンハッタン計画

ウランの核分裂現象が発見されたのは、1938年末のナチスドイツの時代だった。そのためアインシュタインはルーズベルト大統領に原爆開発を勧める手紙を送った。

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出典:Wikipedia

これが総額20億ドル(当時の日本の年間GDP)がつぎ込まれ、5万人とも10万人ともいわる科学者・技術者・労働者が動員されたマンハッタン計画が生まれた原因だ。

この辺の話は、別ブログの「日本は原子爆弾をつくれるのか」のあらすじを参照して欲しい。

日本は原子爆弾をつくれるのか (PHP新書)日本は原子爆弾をつくれるのか (PHP新書)
著者:山田 克哉
PHP研究所(2009-01-16)
販売元:Amazon.co.jp
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マンハッタン計画の2つの道がこの本で図解されている。

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出典:本書26ページ

上記の図で、ウランルートでできたのが広島原爆で、プルトニウムルートでできたのが長崎原爆だ。


劣化ウラン弾

核分裂性ウランの含有量が減ったものは「劣化ウラン」や「減損ウラン」と呼ばれ放射能のゴミとなる。このゴミは長年蓄積していくので、次の表のように各国は大量の劣化ウランを保有している。

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出典:本書28ページ

その核のゴミをコストゼロの原料として「有効利用」しているのが、劣化ウラン弾だ。

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出典:Wikipedia

次が最近の戦争で使われた劣化ウラン弾の量である。

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出典:本書29ページ

筆者は「劣化ウラン」という名前から放射性物質は含まないと誤解していたが、実は天然ウランに比較すると線量は半分程度ではあるが、依然として危険なものに変わりはない。

一般公衆の劣化ウラン吸入年間摂取量限度は11.4ミリグラムで、たとえ少量でも規制されている。

ちなみに劣化ウラン弾は、鉄の倍以上重く(比重18.9、鉄は7.9)、貫通力があり、空気中では発火するので、敵戦車の装甲を貫通して車内で燃え、放射能汚染も引き起こすという恐ろしい兵器だ。


ウラン資源は化石燃料資源の代替にはならない

次はこの本に載っている図だ。四角の大きさが究極埋蔵量、黒い四角が確認埋蔵を示している。石炭の資源は大きく、1,000年以上は枯渇しないと見られている。ウラン資源の枯渇の方が早く起こる。

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出典:本書37ページ

これ以外にも海底のメタンハイドレートや、シェールガスなど、まだ利用されていない化石燃料資源がある。


日本の核燃料サイクル

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本書:41ページ


高速増殖炉で改質したプルトニウムは原爆原料

ウラン資源の99.3%は、核分裂性のないウラン238だ。これをプルトニウムに変えて利用するのが高速増殖炉を使った核燃料サイクルだ。

日本の高速増殖原型炉もんじゅは1994年に動かしはじめ、1995年に40%の出力まで上げたところでナトリウム噴出事故が起こり、2010年まで休止していた。2010年5月に再稼働したが、燃料交換中継器を炉内に落下させる事故が起こり、2012年に予定した40%出力試験の実施は不可能となった。

普通の原発で生み出されるのは核分裂性のプルトニウムが70%程度で、これでは核兵器は作れない。しかし高速増殖炉でつくるプルトニウムは核分裂性が98%となり、優秀な核兵器の製造が可能となる。

日本はプルトニウムをせっせと溜め込んで、今や長崎原爆4,000個がつくれるだけのプルトニウムを国内外で保有している。

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出典:本書46ページ

大前研一さんは、近著の「日本復興計画」の中で、日本は90日で原爆を作る能力がある「ニュークリア・レディ」国だという。

日本復興計画 Japan;The Road to Recovery日本復興計画 Japan;The Road to Recovery
著者:大前 研一
文藝春秋(2011-04-28)
販売元:Amazon.co.jp
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しかし原爆を作るわけにはいかないので、それでウランとまぜて原子炉の燃料(MOX燃料)としているのが「プルサーマル」型原発だ。


原発は非効率な湯沸かし装置

100万KWの原発を一年間運転するのに必要な作業は次の通りだ。

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出典:本書71ページ

原子力は発電時にはCO2は排出しないが、その前のウラン鉱山、精錬、濃縮、それから再処理と莫大なエネルギーを消費し、やっかいな廃棄物をもたらす。

冷却用に使う温排水は日本にある原子炉54基すべてが稼働すると、年間1、000億トンと、日本の河川全部の流量4,000億トンの1/4という流量となる。平均7度上がった温排水が海に流れ込むので、大幅な近海海水温度上昇を巻き起こす可能性がある。

原子力発電所の熱効率は33%で、最新の火力発電所の50%超、温排水を地域暖房に使うコジェネの80%に比べて低い。また都会立地ができないために、排水の有効利用もできないという問題がある。


原子力から撤退する核先進国

フランスでさえ新たな原発計画はなく、ヨーロッパ全体でフィンランドに1基建設計画があるだけだ。アメリカもスリーマイル島の原発事故以来一基も原発は建設していない。オバマのグリーンニューディールでは原発建設が含まれていたが、これも先行きは不明になってきている。

小出さんは原発をやめても、火力発電所があるので全く困らないという。


小出さん自身は夏でも家でも職場でもクーラーは使わないという。東大名誉教授で経済学者の宇沢弘文さんは車は一切使わないという。どちらも徹底していて立派ではあるが、文明生活を拒否するアメリカ当部のアミッシュのように意固地な変人といえなくもない。

日本はエネルギー浪費型社会を改める作業に一刻も早く取りかからなければならないと小出さんは最後に説いている。


参考になれば次クリック願う。






原発事故に関する本 作家広瀬隆さんの原発廃止論

昨日菅首相が静岡県御前崎の浜岡原発全炉の停止を要請した。ノンフィクション作家の広瀬隆さんが、さんざん危険性を訴えていた浜岡原発がついに停止されることになった。

元々立地に問題があったといわざるを得ないが、原発を受け入れてくれる地方公共団体は少なく、やむなく御前崎に立地したのかもしれない。

大手マスコミには一切登場しないが、広瀬隆さんはいくつも原発反対の本を書き、CSなどには登場しているので、以下で紹介する。

原子炉時限爆弾原子炉時限爆弾
著者:広瀬 隆
ダイヤモンド社(2010-08-27)
販売元:Amazon.co.jp
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「原子炉時限爆弾」というぶっそうな本が昨年出版されている。原発の危険性を訴えた作家・広瀬隆さんの本だ。まだ安全な状態に戻っていない福島第1原発の事故の関係で、アマゾンでは一時売り切れ・在庫なし・入荷未定となっていた。

広瀬さんが高く評価している京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんも同様の警告本を出しており、これらは依然として売り切れ・在庫なし・入荷未定だ。ちなみに小出さんのグループは「原子力安全研究グループ」というサイトで放射線測定値を公開している。

隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ
著者:小出 裕章
創史社(2011-01)
販売元:Amazon.co.jp
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日本を滅ぼす原発大災害―完全シミュレーション日本を滅ぼす原発大災害―完全シミュレーション
著者:坂 昇二
風媒社(2007-09)
販売元:Amazon.co.jp
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図書館でも貸し出し中で、数ヶ月は待つようだ。仕方がないので、広瀬さんが以前書いた本を読んでみた。

一つは「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」という本。

ジョン・ウェインはなぜ死んだか (文春文庫)
著者:広瀬 隆
文藝春秋(1986-06)
販売元:Amazon.co.jp
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ジョン・ウェイン、ハンフリー・ボガード、ス−ザン・ヘイワード他、何十人ものハリウッドスターや映画監督、原作者などガンで亡くなった人を列挙して、それぞれの映画作品と死亡原因をリストにしている。まるでツタンカーメンの呪いで、関係者が続々変死した「王家の谷」のようだと。

彼らがガンで死んだのは、1950年代に核実験が行われていた米国ネバダ州の隣のユタ州で西部劇などの映画撮影を頻繁に行っていたからだという。

その証拠に彼らがロケしていたモニュメント・バレーに近いセント・ジョージというユタ州の町では、全米平均に比べて大幅に高いガン死亡率を示しているという。

このブログで紹介した「ヒトはどうして死ぬのか」でガンになるメカニズムが説明されている。日本では3人に2人はガンに罹り、がん患者のうち3人に一人は亡くなっている。

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)
著者:田沼 靖一
幻冬舎(2010-07)
販売元:Amazon.co.jp
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たしかに放射線被曝はガンになる恐れがあるが、これだけガンで死亡したハリウッド・スターを並べても、ロケ地のユタでの被爆が原因とは断言できないと思う。

ガンになる最大の要因は生活習慣と喫煙だ。昔のハリウッドスターは役柄上の必要もあり、大半が喫煙者だと思う。喫煙でガンになった確率の方が、ロケで時々ユタに行ってガンになるよりはるかに高いと思う。

次が厚生労働省が発表している平成17年度の簡易生命表にある日本人男性の死因グラフだ。

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出典:厚生労働省ホームページ

これだけ原発・原子力の脅威を力説していて、広瀬さん自身はスモーカー!?という「オチ」はないとは思うが、広瀬さんの講演を聞く機会がある人は、広瀬さんに確認して欲しいものだ。

さらに疑問なのが、1957年に旧ソ連のチェリャビンスクで起こった核燃料再処理工場の事故により飛散した放射能による被曝事故の原因だ。

ウラルの核惨事 (1982年)
著者:ジョレス・A.メドベージェフ
技術と人間(1982-07)
販売元:Amazon.co.jp
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広瀬さん自身も荒唐無稽と言ってはいるものの、地中にしみ出したプルトニウムが、地中で集積し一つの固まりとなり4キロを超えて核爆発を起こしたのだと。あまりに荒唐無稽なので、その部分を紹介する。

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出典:「ジョン・ウェインはなぜ死んだか」本文

あり得ないことだ。こんな荒唐無稽なコメントがあると、広瀬さんの著書の信憑性を著しく落とす。

広瀬さんは放射線計を持ってチェルノブイリには行ったことがあるそうだが、こんな荒唐無稽なことを本に書くならチェリャビンスクも現地調査すべきだろう。

筆者は1990年代前半にチェリャビンスクを訪問したことがある。製鉄所も戦車工場もある重工業都市で、町も暗くて犯罪率も高く、外を出歩くこともできなかった。

このときに放射能汚染の話を現地で聞かされた。旧ソ連では、住民にすら全く知らされなかったという。

ちなみにチェリャビンスクは治安が悪く、朝一の飛行機でモスクワに帰る時に空港まで送ってくれたドライバーは防犯用のピストルを持っていた。

そんな都市だから広瀬さんも現地確認せず、ソ連の作家の本に書いてある仮説をそのまま情報を載せているのだろう。Wikipediaでは放射性廃棄物を貯蔵していたタンクが爆発したと原因を説明している。

広瀬さんは読者を必要以上に怖がらせようとしているとしか思えない。

広瀬さんのもう一つの本「危険な話ーチェルノブイリと日本の運命」も読んでみた。

危険な話
著者:広瀬 隆
八月書館(2010-07)
販売元:Amazon.co.jp
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こちらの本は、チェルノブイリの原発の炉心溶融事故は、規則違反で実験をしていて起こったとか、黒鉛型なので格納容器がなくて危険な設計だったなどという報道は嘘っぱちで、マスコミは正確な情報は流さないと語る。

そして日本の原発はすべてすぐに止めるべきだと自説を展開している。

実は日本は原発なしでも十分電力は余っている。日本の電力業界はマスコミをコントロールしており、原発をつくると設備製造メーカーのみならず、建築や地元対策費で巨額の金が落ちるので、産業界が原発建設を推し進め、都合の悪い情報は絶対にマスコミに載らない。

だから御用学者やNHKはじめ御用マスコミが、原発の危険性を全く報道しないのだと。

広瀬さんは普通のマスコミには登場しないが、朝日ニュースターというCSの番組に出演したときの映像がYouTubeに掲載されている。筆者の先輩からビデオを送ってもらったので、筆者もこの番組は見た。



40分もつきあえないという人には、4分弱のバージョンもある。



時間がある人は、次の1時間50分の広瀬さんの講演も見てみると良い。様々な角度から原発の危険性を指摘している。



放射能汚染が起こると、一番ダメージを受けるのはこれから長く生きなければいけない子どもだ。だから広瀬さん(68歳)は孫娘を関西に行かせたという。

広瀬さんの話っぷりがいかにも説得力があるので、広瀬さんの言っていることの真偽のほど、原発廃止論が根拠がある話なのかどうか、何が本当なのか混乱してしまう。

しかし冷静に考えると広瀬さんの本にもテレビの談話にもほとんど根拠が示されていないことに気づく。「危険な話」には、多くの新聞記事コピーがそのまま掲載されているが、新聞記事が正しいとは限らない。

特にYouTubeに収録されている講演の最初に、今回の地震の規模は実は8.3−8.4だったが、国の援助を引き出すために過去最大のマグニチュード9.0に引き上げたのだという話がある。

何の根拠で専門家でもないノンフィクション作家がこんなことを言えるのか?

少なくともこの二冊を読んだ限りは、今回の原発事故を奇貨として、今までほとんど注目されていなかった持論の原発廃止のために、あることないこと言って、世間を怖がらせているような印象だ。

まさにテレビCMで言っている「デマにまどわされないようにしよう」という「デマ」なのかも知れないし、実は正義・正論を主張している人なのかもしれない。

YouTubeの映像を見ればわかるが、広瀬さんの話には説得力があり、正しい指摘もある。

たとえばマスコミは、検出された放射線量の××マイクロシーベルト/時と、人体に影響のある基準の××マイクロシーベルト/年をわざと混同するように仕向けているが、マイクロシーベルト/年は、マイクロシーベルト/時を365X24=8,760倍、つまり約1万倍して比較する必要があり、だまされてはいけないと語る。

NHKで登場するすべての大学教授、解説委員、科学文化部記者は「大丈夫」と根拠のない話ばかりして許せないと具体名を挙げて非難している。

日本人の半分弱はガンになる。そしてそれが放射能被曝なのか、あるいは自然なのか、原因はわからない。

筆者の率直な印象は、「話にはいかにも説得力あるが、根拠は示されていない。デマゴーグというのは、こういう人なんだな」というものだ。しかし広瀬さんの意見は時流を得て、遂に浜岡原発は菅首相が全炉停止を要請した。

YouTubeの映像のどれかは見ておく価値はあると思う。上記のように信憑性に疑問が残ることも念頭にいれて、付和雷同せず、それぞれが冷静に判断して欲しい。


参考になれば次クリック願う。



低炭素社会 小宮山前東大総長のCO2削減の処方箋

低炭素社会 (幻冬舎新書)低炭素社会 (幻冬舎新書)
著者:小宮山 宏
幻冬舎(2010-05)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

2009年4月に東大を退官して現在は三菱総研理事長を勤める小宮山前東大総長のCO2削減の現実的提案。

この本を読んで筆者もガス給湯器をエコキュートに変えるべく見積もりを取っているところだ。

小宮山さんの話は、ブログで紹介した東大の入学式の時に一度聞く機会があった。会社でも先日小宮山さんの講演を聞く機会があった。東大のアメフット出身で非常にエネルギッシュな人だ。

この本はたまたま知り合った幻冬舎の見城社長に「良い本なのに売れない」と相談したら、「それじゃあ売って見せましょうか」と応じられたのが出版のきっかけという見城さんはこのブログでも紹介したとおり、カリスマ・モーレツ編集者だ。

以下にあらすじを紹介する通り、大変参考になる本だが、アマゾンでは現在54,800位で、あまり売れていないようだ。見城さんとは売れなかったら「残念会」ということになっているという。


懇切丁寧な目次

この本はアマゾンのなか見、検索!に対応していないので、目次を簡単に紹介しておく。

第3章がメインの部分で、第3章の第1節から第9節まで、ほぼ4ページおきにサブタイトルがついているので、主要なサブタイトルも紹介しておく。大体の感じがわかる懇切丁寧な目次である。

第1章  「温室効果ガス25%削減」で新しい日本へ

第2章  そもそもエネルギーって何だろう

第3章  エネルギー消費量の正しい減らし方

 第1節 どこでどのくらい減らしていくか

  ・  エネルギー変換、ものづくり、日々のくらし(エネルギーの使い道)
  ・  もはや乾いたぞうきんを絞るようなもの?
  ・  「日々のくらし」のエネルギーは8割減らせる
  ・  年間30万円の光熱費が5万円に減った私の家
  ・  住宅環境改善だけで目標の約半分は達成可能

 第2節 高断熱住宅はいいことずくめ

  ・  日常生活で一番エネルギーを消費するのは暖房
  ・  諸外国に遅れをとっている日本の住宅の断熱性
  ・  防音効果が高く健康にもよい二重ガラス
  ・  住宅内の温度差解消で医療費・介護費も減る

 第3節 お湯づくりの常識が変わった
  
  ・  現在の30分の1のエネルギーでお湯が沸く
  ・  エアコンの性能は4倍になる
  ・  日本が拓く、給湯器の新市場
  ・  太陽電池は日本に最適のエネルギー

 第4節 自動車の常識も変わる
  
  ・  10年後、自動車の燃費は10分の1にできる
  ・  通勤・買い物には一人乗りの電気自動車
  ・  長距離物流をトラックから鉄道へ

 第5節 こんな考え方は古い

  ・  節約するよりエコ家電を買おう
  ・  安全・ハイリターンな「エコ投資」
  ・  もったいないのはモノよりエネルギー

 第6節 新エネルギーはどこまで有望か
  
  ・  原発は稼働率アップが第一
  ・  風力発電の適地はまだある
  ・  トウモロコシをエネルギーにしてはいけない
  ・  バイオマスエネルギーの有望株はクロレラ類
  ・  太陽電池の併用で電力の夜昼問題を解消

 第7節 損するリサイクル、得するリサイクル
 
  ・  金属のリサイクルは圧倒的に安くつく
  ・  新たに鉱山を掘る必要はなくなる
  ・  リサイクルが高くつく場合もあるプラスチック
  ・  プラスチックは燃やしてもよい
  ・  紙も最後には燃やすのが正しい

 第8節 総力戦で取り組む
  
  ・  森林資源を増やしてCO2を吸収する
  ・  排出権取引を有効に機能させるルール作りを

 第9節 ポジティブに取り組む
  ・  日本より劣るアメリカのエネルギー効率
  ・  2050年、世界のエネルギー効率を3倍に
  ・  エネルギー、鉱物、食料 ー どこまで自給できるか

第4章  町づくりで低炭素社会を実現

第5章  人類の知を構造化する


日本の先進国宣言

2009年7月に首相に就任した鳩山氏が、ニューヨークの国連気候変動サミットで、「2020年までに1990年比で25%の温室効果ガスを削減する」と宣言した。

小宮山さんはこの発言は日本の「先進国宣言」だと受け止めたという。日本が「課題先進国」として率先して世界の温室効果ガス削減のために動きだすという宣言である。


地球の平均気温15度というのは生物には理想的

大気がないと平均気温はマイナス18度になってしまうが、主に水蒸気とCO2の温室効果のために33度くらいプラス効果があるので、地球の平均気温は生物が暮らしやすい15度となっている。

地球の外側にあって薄い大気しかない火星はマイナス45度、水は氷でしか存在できない。探査機「あかつき」が周回軌道に乗れなかった金星は、地球より太陽に近いので90気圧というCO2主体の大気を持ち、平均気温は430度という高温である。

地球は大気があるので、水が液体として存在でき、それが水蒸気となって気温を保っているのだ。

ここ100年でCO2濃度は290PMMから380PPMに上昇した。これからもCO2濃度は上昇が見込まれ、温暖化の様々な影響が異常気象や海面上昇という形で現れてくる。


地球温暖化懐疑論批判

小宮山さんが初代代表を務めていたサステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)では「地球温暖化懐疑論批判」という小冊子をインターネットで公開している。

水素エネルギーは無尽蔵というのは、水から水素を取り出すときに莫大なエネルギーが必要だという認識が欠落している。


CO2削減の処方箋

小宮山さんは学者らしく、CO2削減の処方箋を導くのに、まず「エネルギー保存の法則」の説明から入る。

「エネルギーは最後は熱となる。エネルギーの出入りがない領域全体ではエネルギーの総量は常に一定で変わりない」

だからできるだけ熱になるのを遅らせ、何回でも利用することがエネルギーの効率的な利用法だ。

小宮山さんが出題した東大教養学部の物理の試験問題を例としてあげている。

「同じ大きさの部屋が2つある。1キロワットの電気ヒーターを入れた部屋と、テレビ、冷蔵庫、掃除機を入れた消費電力量合計1キロワットの部屋で、同じ時間同じ電力をかけると、どちらの温度が高くなるか?理由とともに答えよ」

答は「同じ」である。東大の学生の正解率は50人中2人だったという。しろうと感覚では、ヒーターの部屋の方が暖かそうだが、理論は同じである。


用途別日本のエネルギー消費

小宮山さんはまず日本のエネルギー消費を用途別に分類している。それが次のグラフだ。
日本のエネルギー消費1







出典:本書53ページ

これをものづくり、輸送、オフィス、家庭でくくり直すと、次のグラフになる。

日本のエネルギー消費2








出典:本書55ページ

日本のエネルギー消費に占めるものづくり=産業用の比率は既に5割を切っている。

いままで日本の産業界は鉄にしろ、セメントにしろ世界でナンバーワンの省エネルギー生産を達成してきた。たとえばセメント1トン当たりの消費エネルギーは日本を1とすると、中国は1.6だ。産業界の「乾いた雑巾」を絞るようで、もはや大きな削減の余地はないというコメントは正しいのだ。

しかし日本のエネルギー消費の半分以上を占める、輸送、オフィス、家庭の分野はまだまだエネルギー消費削減の余地がある。いわば「濡れ雑巾」状態なのだ。

この本ではこれらの輸送、オフィス、家庭の分野に重点を置いた「チーム小宮山」のCO2削減策を紹介している。


チーム小宮山のCO2削減策

日本のCO2削減策







出典: 本書67ページ

上記目次のように、様々なエネルギー消費削減策をこの本で提案しているので、特に印象に残ったポイントを紹介しておく。

小宮山ハウスは、光熱費年間30万円が5万円になり、さらに太陽光発電の買電単価が倍になるので、光熱費ゼロになる日も近いという。

★高断熱住居にするため、窓ガラスを二重化する。講演で環境省は二重窓にしたので、冬に暖房を入れるのは月曜日だけだという話を紹介していた。熱が逃げないので、余熱で1週間暖かいのだと(ただし一部の職員は”ヤッケ”を着ているという話もある)。

★オフィスではグローランプ式蛍光灯をインバーター式蛍光灯に換えると、エネルギー消費が半減する。東大では34,000基の蛍光灯を入札でメーカーを決めて、すべて入れ替えたという。

★ガス湯沸かし器をエコキュート(ヒートポンプ)に換えるとエネルギー消費が大幅に減る。ヒートポンプなら理論値ではガス湯沸かし器の30分の1にまで下げられるという。既に200万台普及しており、価格も100~150万円だったのが、60万円程度にまで下がっている。

★エネファームは燃料電池給湯設備だ。燃料電池を給湯に使っているのは日本だけだ。価格は300万円くらいするが、国や地方公共団体が補助金をつけているので、大量生産できれば、エコキュートと同程度の価格まで下げることが可能かもしれない。

★自動車の世界最高燃費記録はガソリン1リッターで、なんと5,385キロである。電気自動車の導入などで、まだまだエネルギー消費削減の余地はある。小宮山さんはマークIIをプリウスに換えて、燃費が1/3になったという。

ちなみに筆者の車はブログで紹介しているとおりハリアーハイブリッドだ。燃費は旧型ハリアーに比べて2/3といったところで、プリウスの1/3までは行かないが、優遇措置や補助金があったのでガソリン車との値差は十分回収できた。

★輸送も鉄道を多用して、鉄道駅から目的地までをトラック輸送として棲み分けする。

★もったいないと古い家電を使い続けるより、最新型の省エネ家電に換えることにより、消費エネルギーが大幅に減って、数年でもとが取れる「エコ投資」となる。

★三菱総研は社内エコポイント制度を導入して、省エネ家電や自宅の省エネ改造には社内補助金を出すと講演で小宮山さんは言われていた。

たとえば製鉄会社など、これ以上の省エネが難しい会社は、社員の自宅でのCO2排出量削減を促進することで、企業としてアピールできる。その意味で、今後他の企業も社内エコポイント的な制度を導入するところが増えてくると思う。

★産業界では原発は稼働率アップが第一。日本は規制が厳しすぎて原発の稼働率は平均60%台だが、韓国は90%で、諸外国でも80%程度だという、

日本は年に1ヶ月の点検が義務づけられているが、諸外国は2年に一回だという。稼働率を80%に上げるだけで、原子力発電の発電シェアが3%上がり、CO2排出量をその分削減できる。

★小宮山さんの将来の日本の発電比率は、水力8%、太陽電池15%、バイオマスや風力発電が7%、原子力40%で非化石燃料で70%を占める。残り30%をガスや石油を使ったコージェネレーションでまかなうというものだ。

★金属のリサイクルが進めば、先進国では新たに鉱山を掘る必要はなくなる。

鉄鋼原料出身の筆者には、ありがたいような、困るような話で、いわゆるミックスドフィ-リングだ。

★プラスティックはリサイクルが高くつく場合もある。たとえばポリエチレンは、分子構造が石油と似ていて石油からつくってもリサイクル原料からつくっても、エネルギーコストはあまり変わらない。

ポリエチレンは生ゴミなどを燃やす良い燃料となるので、「サーマルリサイクル」=熱源として再利用するのも活用法だ。

それに対しPETボトルなどのポリエステルは何度も化学反応を経て作るので、PETは回収した方が良い。

★もし日本の省エネ技術や「もったいない」意識をそのままアメリカに持って行けば、CO2排出量はすぐに半分くらいに落とせるだろうと小宮山さんは語る。

筆者も米国に合計9年間駐在した経験がある。アメリカのセントラルエアコンは夏も冬も快適だが、誰もいなくてもすべての部屋を暖房するので、エネルギー消費が日本とは比べものにならない。

大体どの家でもボイラー室に、巨大なボイラーと温水タンクがある。筆者の友人は誰も使わない部屋はエアコンの吹き出し口を紙などで塞いで、省エネしている人もいた。

少なくとも部屋別暖房に換えるとかで、半分までは行かなくともかなりの省エネ効果が見込めると思う。

★日本の食糧自給率を上げるために、多収量米を遊休耕地でつくり、普段は家畜のえさ、緊急時には食料として活用することを薦めている。

★日本は活気ある高齢化社会をつくるべき。80歳以上の高齢者の8割は健常者だから、この8割の高齢者の社会参加が重要だ。

福井市では介護のデータとレセプト、健康診断のデータベースを統合しようという検討を三菱総研と始めているという。健康情報の一元管理だ。

★小宮山さんの提唱する「プラチナ構想」とは、高齢者が参加できるエコ、低炭素化社会だという。全国で地方自治体のプラチナ構想ネットワークができつつあるという。


すぐに実行可能で、具体的なCO2削減提案で、大変参考になった。

筆者の家は建て売り住宅で、断熱にはほぼ満足しているが、サッシの二重化やエアコンの交換、エコキュート導入を具体的に検討してみる。

数年で投資額が数年で回収できるのであれば、築18年の家で設備も古くなってきているので、やらない手はない。

上記の目次を参考にして、書店で手にとってパラパラと読み、自分でもやれそうなCO2削減策を考えて欲しい。

そしてみんなに言おう「地球に良いこと何かやってる?」


参考になれば次クリック願う。


課題先進国日本 前東大総長 小宮山さんの提言

会社で小宮山さんの講演を聞いたので、2007年に書いた「課題先進国日本」のあらすじを紹介する。(以下あらすじの肩書きは2007年当時)

講演は「課題先進国日本」という題で、以下に紹介する本の内容をさらに実際的にしたもので大変面白かった。

具体的には21世紀には必ず世界は高齢化するので、その先端に立って、「先進国モデル」としてエコロジカルで、高齢者が参加し、人が成長し続け、雇用がある「プラチナ社会」をつくろうというものだ。

日本のCO2排出量も、ものづくりで発生するCO2は45%以下で、家庭、オフィス、輸送でのCO2発生が5割以上だ。

政府が発表した2025年で1990年比CO2 25%削減というのは産業界から反対にあっている。産業界はたしかに「乾いた雑巾」といわれるように、CO2削減の減りしろは少ない。しかし家庭、オフィス、輸送は水がしたたり落ちている雑巾であると。

家庭では、省エネ型エアコンへの切り替えや、断熱でのエネルギー効率改善、ヒートポンプ型給湯(エネルギー80%削減)、燃料電池(エネファーム)を導入。

オフィスでは省エネ冷暖房と、蛍光灯をグローランプ型からインバーター型に切り替え(東大は35,000基の蛍光灯を入れ替えた)。

輸送はハイブリッド車ということで転換していけば、25%減は十分達成でき、しかもくらしが豊かになる。

小宮山さんは「ビジョン2050」ということで、1.エネルギー効率3倍、2.再生可能エネルギー2倍、3.物質循環(リサイクル)システムの構築の3つを20年前に提言したという。

今も「ビジョン2050」がそのままあてはまり、新しい構想名は「プラチナ構想」だ。

すでに80の全国の市町村が参加し、大学と企業も参加して、プラチナ構想ネットワークがスタートして、全国各地で「オンデマンドバス」や「企業エコポイント」(省エネ改築をした社員にポイントをあげる制度)などが動き出している。

今回の講演で得た新しい情報は、

1.電気自動車はアメリカや中国では現状のままではソリューションにならない。

アメリカや中国では石炭火力発電所に脱硫設備を付けていないので、電気自動車にすると、発電でCO2排出量が増え、大気汚染が悪化するからだ。電気自動車がソリューションになるのは、日本のように脱硫設備が完備した環境対策先進国に限られる。

発電量当たりのSOX発生量は、日本は2002年に0.2g/KWhで、これに対してアメリカは3.7、ドイツ0.7、フランス2.0とダントツの低さだ。中国の数字は示されていなかったが、脱硫設備が普及していないので、たぶん大変なSOX発生量になると思う。


2.リサイクルが進めばいずれは鉄鉱石などのヴァージン原料の需要が減ってくる。

当面は世界の需要が増えているので、高炉がいらないということにはならないが、いずれは高炉が減って電気炉が増えてくるのだろう。


3.家電やエコキュートなどの省エネは5−10年で目覚ましく進歩している

古いエアコン、冷蔵庫を買い替えると、5年前後で元が取れる。またヒートポンプ給湯(エコキュート)に変え、内窓を取り付けたりして窓を二重にすると、住宅のエネルギー消費は格段に下がる。

環境省は今年は月曜日にしか暖房を入れていないが、オフィスの断熱を強化したので、一週間暖房をつけなくても(厚着している人もいるという話もあるが)、いけるのだと。

また小宮山ハウスでは太陽光発電も入れたため改装したリターンは12年だが、電力会社の買電価格が上がったので、さらにリターンは短縮するという。


冷暖房の理論エネルギーはゼロだと小宮山さんは語る。筆者も内窓や、省エネ家電への切り替えなど、実際に検討してみようと思う。

たしか小宮山さんはアメフット部のOBだったと思うが、いわゆる「東大総長」、「象牙の塔」という感じでは全然ない。やはりアメフット出身だけに、チームプレーで仕事をこなすという発想が、唯我独尊タイプが多い他の学者と違うところだろう。

エネルギッシュで、実務的であり、大変参考になる講演だった。


「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ
著者:小宮山 宏
中央公論新社(2007-09)
販売元:Amazon.co.jp
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東大総長小宮山宏教授の日本改革の提言。

小宮山教授の専門は化学工学で、小宮山教授自身がCVD(Chemical Vapor Deposition)という半導体の薄膜製法を手がけ、CVD反応工学という新しい学問を生み出したという功績がある

小宮山教授は2003年に技術を生活に生かす「動け!日本」というプロジェクトを主宰しており、2006年、2007年と連続してダボス会議にも出席している。

東大総長がダボス会議に出席していたとは初耳だが、象牙の塔にこもらない行動派の総長という印象だ。


出羽の守

明治以来の学問は「出羽の守(かみ)」だったと。つまり米国「では」、イギリス「では」と外国の例を紹介するだけの論文を書いた人々だった。

今もこういう人は多い。ちょうど10月1日に郵政民営化が実現したが、マスコミに登場する評論家の多くは依然としてイギリス「では」、ドイツ「では」、スゥエーデン「では」と言っている「出羽の守」ばかりだ。

これからは、自分でゼロからモデルを創造しなければならないと小宮山教授は主張する。


東大総長としての訓辞

東大総長に就任して、小宮山教授は学生生活で獲得すべき目標として次を訓辞したという。

1.本質を捉える知
2.他者を感じる力
3.先頭に立つ勇気

筆者もかすかに記憶があるが、歴代の総長の訓辞はだいたい1が多い。有名な大河内一男総長の「ふとった豚よりやせたソクラテスになれ」というのも、1の路線だ。

つまり大学というアカデミズムのトップの自覚を持って、リーダーとして社会のために勉学に励めというものだ。

そんななかで、実社会で成功する上で不可欠なコミュニケーション能力や、リーダーとなる勇気を説いているのも、行動派総長小宮山教授の特徴と思える。


日本は課題先進国

小宮山教授は日本は課題先進国だという。

まだどの国も解決したことのない問題が山積だ。エネルギーや資源の欠乏、環境汚染、ヒートアイランド現象、廃棄物処理、高齢化と少子化、都市の過密と地方の過疎、教育問題、公財政問題、農業問題など。

これらは遠からず世界共通の問題となってくる。

日本のGDPは世界第2位で世界の11.2%を占めるが、二酸化炭素排出量では世界4位、4.7%にとどまる。日本には公害対策や、省エネ、太陽電池利用、ハイブリッド車開発という輝かしい歴史がある。

日本が課題解決先進国として世界をリードするのだ。

GDP規模ではいずれ人口が10倍の中国、インドに追い抜かれようが、エネルギーの効率的利用や公害問題で示したように、持続可能な世界をつくる課題先進国、21世紀のフロントランナーとして世界の範となるのだ。


サステイナブル・ソサエティ

小宮山教授は1999年に「地球持続の技術」という本で、「ビジョン2050」という環境と資源に関するトータルビジョンを提案した。

地球持続の技術 (岩波新書)
地球持続の技術 (岩波新書)


2030年には中国・インドが先進国の仲間入りをすると予想され、2050年には今の途上国を含め、世界中のすべての国が先進国並の生活水準となる。そのとき人口は90億人となり、それ以降は漸減する。エネルギーの消費は3倍まで増える可能性がある。

2050年を目標として、持続可能な(サステイナブル)社会をつくるためには、次の3つが必要となる。

1.徹底したリサイクルによる物質循環システムの構築
2.エネルギー効率を現在の3倍に引き上げる
3.自然エネルギーの利用を現在の2倍に引き上げる

ハイブリッド車から深夜電力が利用できるプラグインハイブリッド車、さらに電気自動車に向かうことによって自動車用のガソリン消費は2050年までにはゼロとすることができるという。

小宮山教授は廃材、モミガラ、麦わらなどを利用したバイオマスも提唱する。

バイオマス・ニッポン―日本再生に向けて (B&Tブックス)
バイオマス・ニッポン―日本再生に向けて (B&Tブックス)


小宮山教授は、自宅でも太陽光発電、アイシネンという断熱材、二重ガラス、エコキュートというヒートポンプ型冷暖房を導入して、自分でも実践している。


教育に関する提言

教師育成にも問題があると小宮山教授は主張する。

筆者も知らなかったのだが、以前は9割の高校生が物理を学んだが、今の高校ではわずか2割しか受講していない。

また以前は大学3年生からでも単位をよけいに取ることで、教員免許が取れたが、今は小学校の先生になるためには、事実上文系の教員養成コースに行かないと難しい。

物理も勉強したことがなく、文系で先生となるので、理科の嫌いな小学校の先生がどんどん増えていると。

小宮山さんは教員免許取得機会の多様化を主張しており、さらに教育院を設立して、多くの大学と教育委員会が共同して、新しい教師育成と現場の教師の研修にあたるべきだと主張する。


高等教育投資の財源

日本と米国の高等教育投資の差は大きいと小宮山教授は指摘する。

日本は2兆円だが、米国は15兆円で日本の7.5倍もある。これに加えてエンダウメントと呼ばれる寄付を基にした基金を高利で運用し、巨額の運営資金としているのだ。

たとえばハーバード大学の基金は3兆円弱、これを平均運用利回り15%で回して、2006年の利益は4,000億円にも上る。イェール大学は2兆円、平均運用利回りは20%に達するという。

日本では慶應大学のエンダウメントの規模が300億円で、全く勝負にならない。東大の年間予算が2,000億円なので、米国の一流大学は基金の運用益だけで東大の年間予算の倍の資金を得ているのだ。

米国の大学が豊富な資金によって、学費免除と奨学金を与えて、世界中から優秀な学生をリクルートしているのは知る人ぞ知る事実だという。

教育の質は予算規模だけでは決まらないが、理系などの実験装置・設備が必要な分野では、予算の差が高度な研究が可能かどうかを決めるファクターともなる。

小宮山教授は日本の大学への財政投資を今の倍の5兆円に増やすべきだと主張する。

財政事情が許さないのであれば、米国の様に個人の寄付を活用するために、税額控除を認めるべきだと主張する。

現在の日本の税制では、寄付は基本的に所得控除で税額控除ではない。

東大では2名の副理事に加え、10名以上をフルタイムで雇用して寄付集めに専念させているが、現状では限界があると。

発泡酒の例を見るまでもなく、税制は社会を動かす力がある。その意味で寄付を税額控除として、日本国民の1,500兆円の個人資産を教育に振り向けようという小宮山教授の主張は合理的だと思う。


東大の公開講座Podcasting

東大の知に関する公開講座がPodcastingで提供されている。iTunesで無料でダウンロードできる。

ノーベル賞受賞者の小柴昌俊教授が第1回に宇宙はどうやってできたかを講義している。

筆者もダウンロードして現在聞いているが、わかりやすく面白い。

便利になったものだ。


日本人への応援歌

日本は江戸時代に教育普及率が70〜85%に達し、当時の世界で圧倒的にトップだった。高い教育水準と識字率が文明の基盤でもあった。

明治になって、欧米に工業化の面で追いつくべく富国強兵を実現した。敗戦でほとんどすべての産業基盤、社会基盤を失ったが、再び欧米モデルを追いかけ、終戦から23年後の1968年に世界第2位のGDPを達成した。明治維新から100年後のことだった。

狭い国土で乏しい資源でありながら高い成長を達成し、なおかつ公害問題もエネルギー問題も解決した日本。

その国民性を持ってすれば、「課題先進国」として世界に先駆けて課題を解決することもできるはずだと小宮山教授は日本国民に対してエールを送る。

「課題解決先進国になれ、日本はそれができるのだ、日本はきわめて良い位置にあるのだ」と。

行動派総長の日本への応援歌。あらためて発見することも多い。是非一読をおすすめする。


参考になれば次クリック願う。





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