時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

林文子

もう一言の極意 林文子さんのコミュニケーションの極意

不思議なほど仕事がうまくいく「もう一言」の極意


前回「失礼ながら、その売り方ではモノは売れません」で紹介した横浜市長選挙に立候補している元ダイエー会長で、東京日産販売社長の林文子さんのコミュニケーションの極意。

このブログでは、林さんの「一生懸命って素敵なこと」も紹介している。

林さんは昨年NHKドラマの「トップ・セールス」のモデルになった人だ。

今年7月に講演をお聞きする機会があったが、一見すると普通のおばさんだが、毎日100件訪問をノルマにして、体をこわしたこともあるという下積み時代からの苦労と、トップセールスとしてお客を大事にする姿勢が身に付いていて、全く肩に力が入ったところがないのは風格を感じる。

林さんがこれまでやってこれたのは、「出会った方一人ひとりとのあいだを、できるだけいい関係に育てようとしてきたことに尽きる」と語っている。

林さんは「コミュニケーションの天才ですね」と言われることがあるそうだが、自分なりに努力してきたと語っており、この本でその苦労の一端を明かしている。

まわりを見回すと連絡はメールが主になり、上手に人とつきあえないで悩んでいる人も多いので、林さんの日頃心がけていること、経験を役立てたいとして書いたのがこの本だという。


目次で本の良さがわかる

この本の目次は次のようになっている。

第1章 「もう一言」の話しかけで人間関係は変わる(仕事の9割は、人間関係が決める)
第2章 人脈を広げる、ちょっとした習慣(「話しコミ」の積み重ねで毎日が変わる)
第3章 「ほめぐせ」「感謝ぐせ」をつける(「ほめ言葉」と「ありがとう」が人を動かす)
第4章 言いづらいことほど本気で伝える(感謝される「断る・叱る・詫びる」の伝え方)
第5章 口下手な人も、こうすればうまく話せる(じっくり聞く、ひたすら相手を受け入れる)
第6章 逃げずに真剣に相手と向き合う(深い人間関係を育てると、人生が豊かになる)

筆者は本の目次を見ると大体著者のレベルがわかると思っている。

良くできた目次は著者の頭の中が整理されており、目次に本の内容がサマライズされていて、それこそ頭にスッと入る。

反対にやっつけ仕事で書いたような本は、目次が練れておらず、トピックを並べただけ、自分の言いたいことを書いただけで、読者のことを全く考えていない。このような目次の本は読んでも失望したり、疲れることが多い。

この本の目次には、それぞれ5から13くらいのサブタイトルも紹介されており、目次だけでもこの本の内容が大体わかる非常に優れた目次である。

まずは本を読む前に、アマゾンのなか見検索で目次を是非見て頂きたいが、一例として次のような目次となっている。自分の持っているノウハウを惜しげもなく披露していることがわかると思う。

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自分の経験からのアドバイスなので、それぞれ重みがあるが、単なる経験だけでなく、ちゃんと裏付けがある。

たとえば「とにかく一言、話しかける 次の一言は「共通項」を話題にする」では、まずは共通の友人とか、なんらかの共通項を探すことをすすめている。この共通項は心理学では、フランス語で「ラポール」("rapport")というのだと。

どんな人間関係もラポールが形成されると、あとはうまくいくものだ。ちなみに、この"rapport"は英語でも時々出てくるので、筆者は実は「ラポート」だと思っていた。勉強になりました。

参考になった点をいくつか紹介する。


「声かけ」がさかんな店はよく売れる

スーパーの店頭でも、お客さまが商品を手に取ると、「ありがとうございます。こちらもおすすめですよ」と一言、言えるか言えないかが結果を大きく変えるという。

そういえば筆者の知人が、学生時代にデパートの食品売り場の老舗のお菓子屋でアルバイトしていた時に、他の店としめし合わせて、それぞれの店で買ったお客に「あの店の○○もおいしいですよ」と一言すすめたら、両方の店の売り上げが上がったという話をしていたことを思い出した。


「口下手」は関係ない。慣れと経験がすべて

セールス業界に飛び込んだ林さんは営業の本に、「まず、一日、百軒回りなさい」と書いてあったのを素直に受け止め、本当に一日百軒、訪問セールスをしていた。

それで誰か出てきたら、すぐに相手の心を開かせるような一言を言うクセがついた。

「お花がきれいですね。毎日、お手入れされているのでしょう?」とか、「素敵なお住まいですね。新築されたばかりですか?」とかだ。

「私は口下手で」とか言っている人は、まだまだ苦労が足りないと。積極的に自分から話しかける経験を積んでいかなくては、話しかけひとつだって身に付かないという。

拒絶されても、めげずに話しかける。それを繰り返していくうちに、相手のストライクゾーンを突く話しかけができるのだと。


ネガティブなことはけっして言わない。どんなことにもプラス面を見つける

「どんなに親しい間柄でも、ネガティブなことはけっして口にしないと決めて下さい。」と林さんは語る。

意識して言い方を変えて、常にポジティブな言い方をするのだ。


三分間スピーチ

林さんが支店長をつとめていたBMWでは、スタッフ全員に毎週一回三分間スピーチをしていたという。仕事の話だけしているようでは、信頼関係は生まれないので、スタッフ同士が趣味や気づいたことを言い合った、

それで、うち解けて話をするようになり、チームの結束力が高まった。

それと林さんが心がけたことは、「話コミ」だという。「話とコミュニケーション」をつなげた言葉だが、ともかく機会を見つけて社員の話を聞いていたという。

組織内のコミュニケーションをよくする責任は、上司にあると考えていると。「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」は上司がする。これが林さんの持論だ。

上司の方から、「あの件どうなっている?」とか、「あの件の社内承認は、現在こういう段階にあるから」とか説明するのだ。


勇気を持って、相手の懐に飛び込む これだけで、人間関係の悩みの90%はなくなる

林さんは、可能な限り従業員食堂で食事をする。それも、どこでも空いている席に気軽に座って、「ここ、いいですか?」と言って話しかける。またいわゆる取り巻きをつくる様な、特定の人と食事には行くようにはしない。特に人の上に立ったら、組織内の人間関係を特別な形にしないように配慮することが絶対必要だと林さんは語る。

以前NHKのテレビのサラリーマンNEOでのキャノンの社員食堂の紹介で、会長の御手洗さんが空いている席に座って、社員と談笑していたので、あれはやらせだと思っていたが、案外そうでないのかもしれない。

できたトップの人もいるものだ。


「ランチタイム症候群」

職場の女性たちの間で、ある人は誘わないようにすると、その人は誰からも誘って貰えず、一人でランチを食べなければならない不安から、出社拒否につながってしまう場合もあるという。これが「ランチタイム症候群」だ。

なぜ自分から一歩、踏み出さないのだろう。

自分からあっさり、「私も一緒にいってもいいですか」と一言言えば、たいていの場合問題解決となる。


「商品説明」でモノは売れない お客様目線で「感動」を伝える

林さんは車のセールスをする場合でも、「これこれで、性能は抜群」といった説明はしたことはないと。そんなものはカタログに書いてある。

「私も試乗してみましたが、加速がなめらかで力強くて、とっても気分がいいんです」という様に、あくまで自分が使ってみてどう感じたか、使用感を話すことを心がけたという。

その方がお客の共感を得られやすいのだ。

また結局他社製品を買った客もほめるという。お客の心を次回につなぐのだ。


基本ができていると思う。


細やかな心遣いを感じるのは次のような場合だ。


ただ「頑張って!」では、むしろやる気は落ちる 「期待している」「信頼している」と伝える

よく、うつ状態の人に「頑張って!」と声を掛けてはいけないというが、それと同じことである。

たいていの場合、誰だってまじめに頑張っているが、結果が出ないので悩んでいるのに、「頑張れ」と言われると途方にくれてしまう。

だから林さんは、そんな当たり前のことは言わない。

「あなたには本当に期待しているんですよ」とか、「あなたのことは全然心配していません。必ず力を発揮できる人だから」という言葉の方が、相手の沈んだ心に火をつけて、やる気を燃え立たせるのだと。

「頑張る」という言葉は、自分に対して使うのだ。「私も頑張りますから、一緒にやりましょうね」とか、「私もさらに頑張りますから、あなたもお願いね」とかいった使い方だ。

コミュニケーションの基本は、感謝と共感であると。


カーネギー流のじっくり聞くという姿勢も、第5章で次のようなサブタイトルで説明している。


とにかく、相手の話をよく聞く 自分の話を聞いてくれる人を嫌いになる人はいない

自分20%、相手が80% これが、感じのよい会話のバランス

相手が言いたいことは先取りしない 言いにくいことはこちらから切り出す

言葉の最後まではっきり発音する 録音して聞き直すと、欠点がよくわかる


人間関係はごまかしがきかない

長くビジネスの世界で多くの人に接していると、人間関係ほどごまかしのきかないものはないと痛感させられるという。

どんなに言葉を飾っても、どんなにマナーに気を配っても、それらを超えて、あるいはそうしたもののさらに奥から、その人の人間性が隠しようもなく、伝わってくるのだと。

たとえば先日来社した人から、林さんの部屋に置いてある観葉植物を見て、「お手入れが行き届いていて、幸せなパキラですね」と言われたことがあるという。

その一言で、この人はなんといい方なのだろうと、挨拶を交わす前から好きになってしまったという。「幸せなパキラ」という言い方にその人のやさしさ、思いやりの深さを感じたという。

普段感性豊かな日々を送っていなければ、こんな言葉がとっさに出てこないからだ。


体をこわし、入院したこともある

林さんは、ホンダに10年余り在籍し、女性ではあまり例のない自動車セールス、それも入社の翌月には営業所トップの成績を挙げて、それ以降退社するまでトップの座を譲らなかった…。

この話を繰り返すのは、決して自慢したいからではないと。

実はがむしゃらに働きすぎた結果、体をこわし、入院し、つらい時期を体験しているのだ。しかし病気をした後は、それまで以上に人のことを思いやれるようになったという。

コミュニケーション上手と言われる林さんだが、正直に言えば、つらい思いもいままでかみしめてきた。しかしそれはいままで口に出さずにやってきた。

「辛さをじっと抱きしめる」それが「辛抱」なのだと気づいたからだ。

さすがだと思う。


林さんのおすすめ

林さんは落語の大ファンで、特に好きなのが円生志ん朝談志だという。落語の中に生き続ける人情の機微を大事にしたいのだと。

毎日出かける前に、一席談志のCDを聞くのが朝の楽しみだと。

林さんのトレードマークの、ともかくほめることをテーマにした落語なら、「子ほめ」だという。



林さんのお父さんが青果市場の仲買人で、小学校にあがるまえから歌舞伎や演芸に連れて行ってもらったので、芝居や落語が大好きだという。芸人の「間」は、なんともいえず巧みであると。

林さんは文学少女だったが、なかでも大正・昭和時代の小説が好きで、永井荷風の「墨東綺譚」が特に好きだと。

〓東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)〓東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)
著者:永井 荷風
販売元:岩波書店
発売日:1991-07
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


「墨東綺譚」は全部読んだことがなかったが、林さんの本を読んでから読んでみた。ついでに同じ永井荷風の「断腸亭日乗」も読んでみた。

東京下町の日常生活がわかるという意味では、どちらも面白く、「断腸亭日乗」は、戦前・戦中の生活がわかって興味深い。

摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)
著者:永井 荷風
販売元:岩波書店
発売日:1987-07
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


本を読まなくなったことと、人付き合いが苦手な人が増えていることは、根っこでつながっているように思えてならないと林さんは語る。


目指すのは3K

3Kといっても、林さんの3Kは、「感謝・感動・感激」だ。


「人が好き。花が好き。仕事が好き。」

最後に林さんの好きな言葉が紹介されている。

「人が好き。花が好き。仕事が好き。」

これが色紙などによく書く言葉だという。

花は繊細で弱い生物。でも強靱さも秘めていて、少しぐらいの風ではびくともしないで、美しい花を咲かせている。

人間も同じで、ときには傷ついても、憎しみに出会っても、それらを乗り越えて笑顔でいる。そんな人に会うと自分もそうありたいと思うと。

そうした人になるには、仕事をすることが一番だと思っている。仕事を通して人は磨かれ、しだいに強く美しく、おだやかに、あたたかくなっていくのだ。

このブログで紹介した伊藤忠の丹羽さんの「人は仕事で磨かれる」も良い本だが、それと同じだ。


「人生とは何か?」そう聞かれたら、林さんは「人がすべて」と答えると。

すべての人に学び、育てられ、磨かれていく、それが人生、生きる喜びである。

「いまの私があるのは、これまでの人生で出会った、すべての人のおかげです。」

さすが林さんだ。

読んでみて感動を与える本である。林さんのファンになってしまう。

もっと林さんの本を読みたいと思わせる良い本である。


参考になれば次クリックお願いします。


失礼ながら、その売り方ではモノは売れません 林文子さんのセールス教本 

前ダイエー会長、東京日産販売の社長で、今回の横浜市長選挙に民主党の支援を受けて立候補した林文子さんの自伝的セールスノウハウ論。

林さんは2008年5月放映のNHKの土曜ドラマ「トップセールス」のモデルとなった。

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このブログでは「一生懸命って素敵なこと」を前回紹介した。


失礼ながら、その売り方ではモノは売れません

タイトルが挑戦的なので、本を手に取るのにも反感を覚える人もいるかもしれないが、普通の女性の目線で書かれた好著である。

(ところでこのタイトルは林さんが自分でつけたタイトルとは思えない。出版社の売らんかなというタイトルなのでは?)

一般的には知られていなかった人がダイエーのトップになったので、筆者をはじめとして不思議に思った人も多いと思うが、この本を読めば林さんがただ者でないことがよくわかる。

30年間車を売った経験しかない訳だが、人にモノを売り、かつそれを他人にわかりやすく説明するという点に関してはずば抜けた才能があることがよくわかる。

セールスノウハウ本は著名コンサルタントなどの本もでているが、この本は自分の体験をもとにした印象に残る具体例が多く、誰でも取り入れられるストーリーだからこそ説得力がある。

生活者の視点で書かれており、頭にスッと入る。

林さんは高卒後東レに就職、事務職として働き結婚。たまたまホンダのシビックを購入した時のセールスマンがあまり気の利かない人でありながらトップセールスマンであることを知り、自分でもやれるのではと31歳でセールスの世界に飛び込んだ。

女性のセールスは初めてだったので、研修も手探りで、ともかく外回りということになり、トヨタのトップセールスマンの書いたノウハウ本を読んで、1日100軒訪問すべしと飛び込み営業を始めた。

外回りでご用聞きに徹し、いきなり入社1ヶ月で支店でトップセールスになり、外回りからショールームでの接客に昇格。

他のセールスマンが客を見定めて、ひやかし客を見切るのに対し、わざわざ足を運んでくださるだけでもありがたいという気持ちから、もてなしに十分気を使い、お客はすべて大切に扱ったので、さらに実績を伸ばし、その後もトップセールスを10年間維持する。

たしかに『奥様、とてもすてきなブラウスですね』とか『ご夫婦仲がよろしくて結構ですね』とか言って近づいてきたら、客の警戒感も解け親しみを感じるだろう。

決して自社製品をほめないとか、客の性格を読む、相手のスタイルに自分を合わせるとか、きっちりとカーネギー等の人を動かす基本も押さえている一方、その日のうちに答礼訪問とか『できるセールスマン』の積極さも兼ね備えている。

「林さんは説明が熱心だったから、きっと後で家にくるよ、と話をしていたんだ。あれならアフターケアも大丈夫だと女房も言っていてね。」

ホンダで10年努めて販売課長になって、BMWに転職する。最初はノーだったので、履歴書にレポートを添えて、「これから田園都市エリアは重要になる。田園都市を熟知している私が10年つちかったノウハウをつき込むので、是非採用してくれ」と言ったら、即採用。

入社2年目で98台を売り、その後5年間はトップ。業績の悪い新宿支店長に抜擢される。社員のいいところをほめ、やる気をださせるやり方で業績トップ支店とする。

ショールームでのコンサートを始め、『BMW新宿桜能』という催し物も開催。次の新川では『新川能』を開催。能とBMW、なぜかフィットする。すごい発想である。

新川支店でも業績が上がってきたところで、フォルクスワーゲンから直営ディーラーのファーレン東京社長として誘いがくる。

迷っていたがフオルクスワーゲングループジャパンの外人社長から
1.社員を幸せにしてくれませんか?
2.女性として機会をつかまえ、成功に導くことは日本の働く女性にとっても励みになるのではないでしょうか? 
3.そのためのサポートなら私はあなたのためになんでもします。
という殺し文句に感動し、転職する。

ファーレン東京は当時長期赤字を続けていたが、自分の生活も楽しめない人が、高級車を売れるとは思えないとして、9時閉店を7時閉店に繰り上げ営業時間を短縮。

この改革が社員の気持ちに火をつけて、密度の濃い仕事をするという意識に変わり、2年で黒字転換、その後も売上を伸ばした。

経営者となって自分の裁量で決まる範囲が格段に広くなることを実感し、社長業のおもしろさがわかってきたと。

いくつか参考になる章のタイトルだけ紹介すると。
*営業に奇策なし
*マーケティングでモノは売れない
*われわれ営業は『個売業
*こどもに高級車を売る(小さい兄弟の相手をしてあげたら、数ヶ月後両親が来社し1千万円の車を買ってくれたことがある)
*営業ツールはこれだけ(自分の声・顔=電話、面談)
*買い物はエンタメである(Shopping is entertainmentの楽天も同じだ)
*ホウレンソウするのは上司のほう
*CSよりES、そしてFSへ(CS=Customer Satisfaction, ES=Employee Satisfaction, FS=Family Satisfaction)
*女性へのちょっとしたアドバイス


『売れる人の共通点』という章は面白い。

駅頭でティッシュとチラシを配っている男女がいたが、ティッシュの女性は人のじゃまをしているようなポジショニングで全然ダメ。チラシの青年は人の流れが湾曲したポジションをねらって手際がよい。林さんが話を聞いてみると:

「誰でも面と向かって待っていられると、ちょっと欲しいなと思っても自分の思いを見透かされている様な気がして、あえて貰わないですね。僕はやや顔を下向きにして、人の足先が視線に入るのを見ているようにしているのです。」

「圏内に入ったなと思ったら、すっと相手の手元にチラシを、触るか触らないかといった感触で近づけるのです。この手元にスッとというのが大事な呼吸なんです。」

「相手が反射的にチラシを握ってしまう、そのタイミングが手元にスッなんです。だからチラシも尻のあたりに隠すように持っているほうが、より効果的です。」

なるほど頭にスッとではなく、手元にスッともあるんだ。

できる営業の3要素は次であると:
1.人が好きなこと
2.勇気を持つこと
3.積極性
あくまで普通の人の目線である。

社長のワンポイントアドバイスではこう言うと:

「みなさん、初めてのお客様が見えたら一番初めに何を感じ、どう考えるでしょうか?」「まずお客様個人に関心を持ってください。どこからお越しになったのか?どんなお仕事か…。人が好きでなければ人への関心も持てないでしょう。」

筆者がガツーンとやられたのは、『年齢で売り方が違う』という章。若い頃はひたすらエネルギーで押し通したような売り方。どの家はどの車を持っているかすべて知っていて、他社の新車に変わっていると地団駄踏んでくやしがった。

やがて経験を積むと、強引なやりかたは反作用も強いということがわかり、他社に決めても「それはよかったですね」と客の気持ちをサポートする様な営業にかわる。人脈もできて、新規、既納客、紹介が1/3づつとなってくるのが30代、40代の売り方。

50代になると電話一本で話が決まるようでないといけません。」たしかにそうだ。20代、30代と同じ事をやっていては価値がないよね。

別ブログでも紹介したソフトブレーンの宋さんの「日本の営業は非効率的なことをやっている」との指摘に対しては、自分はアナログ型で、デジタル型だけで営業ができるとはどうしても思えないと。

最後にこうくくっている。

ではあなたの使命は?」「お客様に尽くすこと。」

なるほど。だから主婦の店(中内さんの創業店の看板)ダイエー再建や横浜市長選挙をひきうけたんだな。

がんばれ林さん!



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一生懸命って素敵なこと 林文子さんの自伝的ビジネス論

前ダイエー会長、東京日産販売の社長で、今回の横浜市長選挙に民主党の支援を受けて立候補した林文子さんの自伝的ビジネス論。

先日林さんの講演を聞く機会があったが、筆者もいい年して、感動で涙がこみ上げてきた。人に感動を与えるカリスマ性はさすがだ。

一生懸命って素敵なこと



林さんの三部作

このブログでも林さんの2005年7月発刊の「失礼ながら、その売り方ではモノは売れません」と2007年10月の「もう一言の極意」の二冊のあらすじを紹介している。

実は「林文子」でグーグル検索すると別ブログが4位くらいに表示されるので、先週から別ブログも訪問者が増えている。

この本は2006年1月発刊で、ちょうど前述の二冊の本の間に書かれている。最初の「失礼ながら…」がダイエー会長CEO就任直後、この「一生懸命…」がダイエー会長CEO在任時、最後の「もう一言…」がCEOを退任し、ダイエー退社直前という三部作だ。

この本では他の本では詳しく述べられていない いわば水鳥の水の中のみずかきの部分の話が林さんの生き方、仕事術として明かされている。

林さんみずからは次のように書いている。

「働く女性たち、とくに若い女性たちに心からのエールを送りたい。私のこれまで歩んできた道のりが、少しでも働く女性たちの励み、ヒントになればと願っている」


この本の構成

この本の目次は次の通りだ。アマゾンのなか見検索で「一生懸命って素敵なこと」の目次がすべて見られるので、是非参照して欲しい。

第一章 私がダイエーでやっていること
第二章 幼い頃から人が好き
第三章 トップセールスマンへの道
第四章 経営の要点は「人」である
第五章 女性の力が企業を活性化する

林さんがダイエー再生に乗り出して、最初に行ったことは従業員用トイレの改修である。CS(Customer Satisfaction)の前にES(Employee Satisfaction)というのが経営者として林さんが言ってきたことだという。


林さんの経歴

林さんが最初にアルバイトをしたのは小学校五年の夏休みにお茶くみをしたことだった。それ以来夏休みになったらアルバイトをして、1965年に高校を卒業して東洋レーヨンのOLとなるが、結婚前の腰掛け的な仕事に飽きたらず、22歳で松下電器の部長秘書として転職する。

しかし、すぐに社内結婚したので居づらくなって半年で退社し、オムロンに転職する。その後31歳でホンダのセールスウーマンになるまで七つの職場を転々としたという。

林さんはOLと書いているが、昔はBG(ビジネスガール)と呼んでいたと思う。BGと言っていた時代の女性社員の仕事は、林さんが書いている通り、お茶くみ他のアシスタント業務で、女性の能力を全く生かせていなかった時代だ。


セールスパーソンに転身

林さん夫妻は二代目の車としてホンダのシビックを買ったが、その時のセールスマンがうだつの上がらない人ながら成績優秀だと聞き、自らホンダのセールスに飛び込んだ。これがセールスパーソンになったきっかけだ。

当時ホンダの集合研修には女性は参加できなかったので、営業所の社長が事務処理や最後に心のこもった洗車まで、3日間自ら林さんに教えて、外回りの営業を始める。

セールスの本を読んで一日百軒を目標にして、自分の顧客リスト・メモをつくった。林さんは「ご用聞き営業」に徹していたという。

林さんを訪ねて多くのお客が来訪するようになったので、それに応対するために営業所の内勤になった。他のセールスマンは客を品定めしてから応対するのに、林さんのやり方はまずお客をお迎えして、客の話を聞き、おもてなししてから車の話をする。

相手が子どもでも、ラフな格好の短パンサンダル履きの若者でも、若い女性でも心のこもった対応は変わらない。

お客にはこんな感じで声を掛ける。「奥様、お若いですし、良いお声ですね。」到底男のセールスマンには真似できないだろう。

そして必ずその日のうちに自宅を答礼訪問する。そのやり方ですぐに営業所のトップになった。

普通のセールスマンは年間40台くらいだが、ホンダに入った最初の年は80台、最高は140台で、毎日15−16時間働いていたという。


BMWに転職

40歳で営業所長になったが、半年で過労で倒れてしまった。医者からは「このままいったら、50代まで生きられないよ」と言われたという。

そこで転職を決意して、BMWの世田谷の営業所に直接電話を掛けたが、女性セールスは採用していないと、その場で断られたので、今度は自分を売り込む七ページのレターを送って面接の約束を取り付けた。

林さんを採用するといかにメリットがあるかという内容のレターである。まさにカーネギーの「人を動かす」で出てくるニューヨークからアリゾナに転居した女性銀行支店長の話そのままだ。

BMWに入ったら41歳の営業所長経験者の自分はヒラ、そして林さんの推薦で採用された男性セールスマンは最初から主任と差別を感じた。それに発憤し、BMWのトップセールスの人から名刺をもらい、来年は必ずその人を抜くとその人の名刺を見つめて誓った。

BMWでも「おもてなし」を大切にしたことから、翌年は林さんが九月まではトップになった。通年ではその人が102台でトップ、林さんが98台で二位だったが、その後は林さんがトップを五年続けた。

このBMW時代の話は、セールスの心得本としても役立つことが多いので、サブタイトルを紹介しておく

・最高の商談を演出すること
・お客を好きになるのも才能の一つ
・先入観でお客を選ばない
・クレーム処理は大事な仕事
・長くおつきあいするともっと素晴らしいことが
・説明でなく”感動”を伝えること

その後BMW初の女性所長として新宿支店を任せられ、業績を急回復させ、新川支店に移ってまた業績を向上させる。

林さんは「ほめ殺しの林」と言われていたという。ともかくセールスマンをほめまくる。人を育てることは本当の喜びであると。


再度転職

53歳の時にフォルクスワーゲングループジャパンの英国人社長から電話が掛かってきて、「社員を幸せにして欲しい」とファーレン東京の社長としてスカウトされる。

ファーレンではまず営業時間を短縮した。社員に生活のゆとりを与え、年功序列も廃止した。ほめ殺しでやる気にさせた結果、四年間で売り上げは倍増した。

そうすると今度はBMWからBMW東京の社長に呼び戻された。

「心を大切にする、人を大切にする、CSの前にESありきということを、是非BMWに戻ってきて実現して欲しい」と頼まれたのだという。

以前からやっていたBMWショールームでの能やコンサートなどのイベントも、お客の風間杜夫さんに頼んで、ショールームで「カラオケマン」という一人芝居をやってもらい、お客を招いて風間杜夫さんとの交流パーティを開いたという。

おもてなしもさらに充実させ、ショールームにはコンシェルジュを置き、ホテル並みのホスピタリティを提供した。さすがBMWだ。


トップセールス、そして女性へのエール

トップセールスには次のような性格の人が向いているという。

1.人にも物事にも好奇心がある
2.目標数字をプレッシャーと感じず、自分をレベルアップさせて達成感を得ることを喜びと感じられること。チャレンジ精神があること
3.明るくポジティブな性格であること

林さんは、イー・ウーマン代表の佐々木かをりさんが開いている国際女性ビジネス会議に毎年参加し、女性の社会進出を応援している。会議で講演したら、参加者一人一人と名刺を交換して話を聞くので、パーティでも全く食事できないという。

女性はオープンで、ビジネスに向いているというのが林さんの意見だ。女性こそ日本の企業を活性化できるのだと。

女性はあきらめてはいけない。いまこそチャンスだと林さんは呼びかけている。たとえばゴールドマン・サックス証券日本法人の社員の40%は女性だという。

女性に対する力強いエールだ。今の林さんがあるのも、これまでの努力の賜物であることがわかって参考になる本である。


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