時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

自衛隊・安全保障

靖国神社 集団的自衛権行使容認が靖国問題を解決する?

靖国神社 (幻冬舎新書)
島田 裕巳
幻冬舎
2014-07-30


「葬式は、要らない」など、ヒット作を出している宗教学者の島田裕巳(ひろみ)さんの本。

今まで小林よしのりの「靖国論」などを読んで、靖国神社のことを理解した様に思っていたが、全然基本的なことを理解していなかったことがよくわかった。



ちなみに小林よしのりは「保守も知らない靖国神社」という新書を出しているので、次に読んでみる。

保守も知らない靖国神社 (ベスト新書)
小林 よしのり
ベストセラーズ
2014-07-09


靖国神社は日本の内戦の官軍側の死者を弔うために建立され、賊軍は一切祀られていない。もともと賊軍を差別するために建立された神社だった。

その後、尊王攘夷で明治になる前に死亡した坂本竜馬など維新殉難者たちも靖国神社に合祀されたが、たとえば西郷隆盛などの反明治政府勢力は、合祀されていない。

一般的に合祀とは、すでに神社で祀られている祭神を別の神社でも祀ることをいうが、靖国神社の場合には、靖国神社のみで祭神となる場合でも合祀と呼ぶ。

靖国神社は東京招魂社として設立され、別格官幣社として神社の社格を整えたが、もともとは神官がいなかった。その後、陸軍省と海軍省の管理となって、神官を置くようになった。

明治時代のなかばまでは官軍の戦死者を祀る神社だったが、日清戦争、日露戦争を経て、対外戦争で亡くなった戦死者と戦病死者、亡くなった軍属を祀るようになって、ご祭神の数は一挙に増えた。

戊辰戦争以来の合祀者は1万5千人ほどだたが、日清戦争の戦死者・戦病死者だけで1万3千人にも上った。

日清戦争以前は、戦病死者は合祀されていなかったが、日清戦争の死者の86%は戦病死者だったので、合祀基準も改められ、戦死者と戦病死者ということになった。

日露戦争でも8万8千人が合祀され、全部で10万人を超える戦没者が靖国神社に合祀された。

現在では太平洋戦争の戦死者・戦没者を含めて全部で246万人以上が合祀されている。

陸軍と海軍の管理下にあった靖国神社は、戦後すぐに最大の存続の危機を迎えた。

しかし、昭和20年11月にGHQ支配下で開かれた臨時大招魂祭にGHQの民間情報局のダイク准将他が参観に訪れ、神社神道は欧米の宗教とは異なり、煽動的なものではないことがわかったため、国家管理から民間の一宗教法人になったものの、神社として存続できた。

GHQ支配下では合祀は一時期禁止されていたが、昭和24年から合祀が許され、独立回復後の大量合祀を含めて、靖国神社には満州事変の戦没者1万7千名、日中戦争の戦没者19万1千人、太平洋戦争の戦没者213万4千人が合祀されている。

靖国神社の戦後の合祀は実質的に国が主導したもので、実務を担当したのは厚生省引揚援護局の職員となった元軍人たちだった。遺族年金がもらえるかどうかも、合祀されるかどうかで決まった。

太平洋戦争では民間人も多数死亡した。民間人は原則として合祀されないが、沖縄県の民間人戦没者、阿波丸沈没の遭難者、対馬丸沈没の遭難者などは合祀されている。

戦犯の合祀は靖国神社の総代会でも議論が続けられ、昭和34年春の例大祭にBC級戦犯353名が、ひっそりと合祀された。

戦犯の合祀は関係者のみで進めたので、問題化していなかった。そこで厚生省の援護局(引揚援護局が昭和36年に改組)は昭和41年にA級戦犯7名の刑死者と5名の獄死者を祭神名簿を靖国神社に送っている。

靖国神社では総代会にかけて討議し、昭和44年の総代会でいったん合祀決定されたが、その後昭和45年に保留とされた。当時の宮司(ぐうじ)の元皇族の筑波藤麿が合祀を保留にしていたのだ。

筑波宮司が昭和53年に死亡し、代わって宮司になったのが第6代宮司松平永芳(ながよし)宮司だ。

松平は元海軍少佐で、戦後は陸上自衛隊に入り、一等陸佐で退官した。松平は東京裁判を否定しなければ、日本精神の復興はできないと考え、推薦者の元最高裁長官石田和外(かずと)にもそう語っていたという。

松平宮司は就任した昭和53年7月に就任すると、さっそく10月にA級戦犯14名の合祀を決め、御所に形の上での上奏を行った。

A級戦犯14名は次の通りだ。

絞首刑7名
1.東條英機
2.広田弘毅
3.土肥原賢二
4.板垣征四郎
5.木村兵太郎
6.松井石根
7.武藤章

判決前または刑期中に病死7名
1.平沼騏一郎
2.小磯国昭
3.松岡洋右
4.東郷茂徳
5.永野修身
6.梅津美治郎
7.白鳥敏夫

当時の侍従長の徳川義寛は、「そんなことをしたら陛下は行かれなくなる」と伝えたという。松平宮司は確信犯だったのだ。

平成18年に日経新聞がスクープした元宮内庁長官の「富田メモ」の昭和63年4月28日の記述でも、昭和天皇がA級戦犯合祀に不快感を持っていたことが知られている。

富田メモはその信憑性をめぐる議論がだされたが、その後平成19年に、卜部亮吾・元侍従の日記の昭和63年4月28日にも同旨の昭和天皇発言が記録されていることがわかり、徳川義寛侍従長も同様のことを語っているので、信憑性は高い。

冨田メモ
















出典:いわゆる冨田メモ疑惑サイト

靖国神社の存在は憲法の政教分離に反するという意見が以前からあり、これに対して政府は「靖国神社法案
」を昭和44年以来、何度も国会に提出したが、そのたびに廃案となった。そこで昭和53年に政府は「内閣総理大臣等の靖国神社参拝についての政府統一見解」を発表した。

これは私人としての参拝は問題にはならないというものだ。

この辺の政府答弁の推移は、官邸の「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」の第2回議事録の資料としてまとめられている。

中曽根元首相は、昭和60年8月9日に「閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会」の有識者による報告書が出ているので、報告書が出た直後の8月15日に靖国神社を公式参拝し、前日に藤波官房長官が翌日総理が靖国神社を参拝することを発表している。

この時に中国から「東條英機ら戦犯が合祀されている靖国神社への首相の公式参拝は、中日両国人民を含むアジア人民の感情を傷つけよう」という非難が初めて出された。

中国のほかにも、韓国、香港、シンガポール、ベトナム、ソ連から批難が出され、そのこともあって、中曽根元首相は正式な参拝の礼儀をしなかった。中曽根元首相は、その後は首相在任中に靖国神社を参拝することはなかった。

次に首相の立場にある者が靖国神社に参拝するのは、11年後の平成8年の橋本龍太郎となった。

昭和天皇陛下も昭和50年に天皇親拝の後、亡くなるまで靖国神社に親拝することはなかった。

この本で初めて存在を知ったのが靖国神社の中にある鎮霊社だ。島田さんは、この本の最初と最後にこの鎮霊社参拝を紹介している。

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出典:ぞえぞえねっと

安倍首相は平成25年の靖国参拝時にあわせて参拝し、「また、戦争で亡くなられ、靖国神社に合祀されていない国内、及び諸外国の人々を慰霊する鎮霊社にも、参拝いたしました。」と語っている。平成26年4月のオバマ大統領来日の際にも共同記者会見で言及している。

鎮霊社は筑波藤麿宮司の時代に筑波宮司の強い意向で建てられたものだ。

筑波宮司は「核兵器禁止宗教者平和使節団」の一員として昭和38年に欧米諸外国を訪問し、ローマ法王、ロシア正教大主教、カンタベリー大主教や国連のウ・タント事務総長らと面会した。この体験から日本の英霊を祀るだけでなく、世界の英霊を祀らなければ世界平和は実現しないと考えるようになったという。

安倍首相としては、「靖国問題」に解決の糸口を見つけようとして、鎮霊社参拝を思いついたのだろうが、マスコミも国民全体もさしたる関心を示さず、空振りに終わった。

この本の「おわりに」で、島田さんは「集団的自衛権行使容認の閣議決定が行われた日(平成26年7月1日)に」、として集団的自衛権の行使により死亡した自衛官が靖国神社に祀られるかどうかで、「靖国問題」の性格が根本から変わっていくことを示唆している。

日本が外国での戦闘に参加すること自体が、近隣諸国からは軍国主義の復活と受け取られる事態であり、もはや「靖国」は問題にされないのではないかと。

「『靖国問題』が騒がれていた時の方が、私たちははるかに平和で安全な社会に生きていると言えるのかもしれないのである。」と結んでいる。

欲を言えば、歴代首相経験者で首相在任中の靖国参拝歴に加えて、首相になる前と首相を退任してから後も靖国神社に参拝しているのか調べて欲しかったが、これについては、また他の本を探すことにする。

読みやすく、大変よくまとまった「靖国問題」の本である。


参考になれば次クリックお願いします。


重火器の科学 仮想敵国の嫌がる武器が最大の抑止力



自衛隊の武器補給処技術課研究班に勤務し、2004年に定年退官した かのよしのりさんの本。

図書館の新刊書コーナーに置いてあったので読んでみた。

大砲やロケット弾、地雷、手りゅう弾などの基礎が学べる。

かのさんは他にも「自衛隊VS中国軍」や「銃の科学」といった著書を書いているので、今度読んでみる。

自衛隊vs中国軍 (宝島社新書)
かの よしのり
宝島社
2013-03-09




最も参考になったことは、簡単で安上がりな兵器が最も防衛に適しており、周辺国はすべて普通に装備しているのに、日本はそれらを人道的見地から放棄したということだ。

たとえばクラスター弾だ。日本は2008年クラスター爆弾禁止条約に調印した。そして国土防衛用に配備していた多連装ロケット発射器から打ち出すクラスターロケット弾も廃棄した。

自衛隊は敵が上陸してきた場合、海岸に密集しているタイミングでクラスター弾で打撃を加える戦略だったが、みずからその有効な手段を放棄した。

一方、米国はじめ中国、ロシア、韓国、北朝鮮、台湾のいずれもクラスター爆弾禁止条約には参加していない。

日本は自ら安価で有効な国土防衛の武器を放棄したのだ。

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出典:本書90〜91ページ

そして対人地雷禁止条約にも調印しているので、地雷も廃棄した。こちらも米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮、台湾はいずれも調印していない。

人道的な見地から、これらの残虐な兵器を禁止するという趣旨は理解できるが、全世界の国、特に仮想敵国となりうる国がすべて参加しない限り、相手が嫌がる武器を自ら放棄して、防衛力を弱めるだけになるだろう。

日本には恐るべき地雷があった。

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出典:本書150〜151ページ

ショックを与えると本体が1メートル程度ジャンプして、空中で爆発し、250個の鉄球をばらまいて殺傷するという恐ろしい兵器だ。敵の兵士に与える恐怖感は絶大だろう。

中国の人民解放軍の兵士が持っている手りゅう弾は、直径3ミリの鉄球1,600個を飛散させる。

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出典:本書184〜185ページ

最近では小銃で実弾を使って、手榴弾や擲弾を発射できる。

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出典:本書188〜189ページ

もし中国軍が日本に侵攻してきたら、まずはクラスターロケット弾で自衛隊の陣地にクラスター弾を雨あられと降らせて打撃を与え、近接戦では小銃擲弾と手榴弾を使って日本の兵士を攻撃するだろう。

日本も反撃するだろうが、クラスター弾でダメージを受けた部隊は、はたして立て直すことができるのか?

ヒューマニズムの精神にはもちろん賛成だが、日本の仮想敵国である周辺国すべてがダーティな武器を持ち続ける以上、日本だけが放棄しては抑止力の低下はまぬがれない。

相手の嫌がる武器を持つことが、安価で有効な抑止力ではないのか。そんなことを考えさせられる本である。


参考になれば次クリックお願いします。


零の遺伝子 国産戦闘機「心神」 vs F22の攻防 次期FXはまだ終わっていない

零の遺伝子: 21世紀の「日の丸戦闘機」と日本の国防 (新潮文庫)零の遺伝子: 21世紀の「日の丸戦闘機」と日本の国防 (新潮文庫)
著者:春原 剛
新潮社(2012-07-28)
販売元:Amazon.co.jp

日経新聞編集委員の春原 剛(すのはら つよし)さんの本。春原さんは先日の日経・CSISシンポジウムでアーミテージ・ナイ鼎談の進行役を務めていた。

1990年代の次期支援戦闘機FSX商戦では、自主開発を求める自衛隊の制服組や三菱重工業などの産業界を、米国との外交関係を重視した日本政府が押し切り、F16をベースとした共同開発に決着した経緯がある。

たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)
著者:手嶋 龍一
新潮社(2006-06)
販売元:Amazon.co.jp




これにより、日本の開発したアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー技術と炭素複合材を使った軽量主要成型技術が米国に召し上げられ、生産分担分も米国に持って行かれるという結果となり、日本の航空エンジニアは2重の屈辱を味わった。

FSXをトラウマとして抱える防衛省・自衛隊の関係者は、いつしか日本の独自開発で戦闘機を作る夢を持ち続けた。それが現在も開発が進められている先進技術実証機ATD−X、コードネーム「心神(しんしん)」と呼ばれる国産ステルス戦闘機で、これを支援したのが「防衛庁の天皇」と呼ばれ、事務次官を異例の4年も続けた守屋事務次官だった。


守屋次官の政治力

山田洋行の過剰接待を受けた収賄罪で起訴され、現在は懲役刑で服役している「防衛庁の天皇」と言われた守屋武昌次官は、かつて「日米キャデラック・カローラ論」を掲げていたという。第5世代戦闘機としてはF22がキャデラックであり、カローラに相当するのが、日本の「心神」である。

実際、F22が推力15トンのF119エンジン2基を搭載するのに対して、推力5トンのIHI製のXF5エンジンを2基使った「心神」はたしかにカローラのようなコンパクト機となる。日本にも推力10トン以上の自主開発エンジンの計画があるが、費用は1兆円を超えるので、なかなか踏み切れないのだ。

セロ戦もライバルF6Fヘルキャットのエンジンが2,000馬力超に対し、当初の栄エンジンは1,000馬力以下だった。非力なエンジンを使ったので、軽量で敏捷な戦闘機ができたことから、この本ではセロ戦と「心神」の類似性をタイトルに使っている。

ちなみに、このブログで守屋さんの「普天間交渉秘録」のあらすじを紹介しているので、興味ある方は参照してほしい。淡々と事実を説明しており、わかりやすい本だった。

守屋次官は、小泉純一郎首相に気に入られていたので、米軍再編問題で外務省が打ち出していた「スモール・パッケージ」(横田基地の米軍司令部のグアム移転だけ受け入れて、米陸軍第1軍司令部の座間移転は拒否する)に対抗して、米軍のグローバル再編に協力する「トータル・パッケージ」として小泉首相に説明し、「トータル・パッケージはおもしろいじゃないか」という言葉を引き出すことに成功する。

「トータル・パッケージ」とは、1.米海軍厚木基地の艦載機部隊を海兵隊岩国基地へ移転、2.普天間飛行場の移転、3.相模補給廠や牧港補給地区など使用頻度の低い遊休施設の返還などを含んだ防衛省の独自プランだ。

2004年9月の小泉・ブッシュ会談のために、小泉首相は守屋次官に発言要旨メモをまとめるよう指示し、ここで日米交渉の主導権は外務省から防衛省に移った。


「機体はつくるな」という指令

防衛庁幹部には、米国の印象を悪くするような「新・国産戦闘機プロジェクト」を声高に進めるのは賢明でないという考えがあったので、「心神」開発は「高運動飛行制御システム」という名目で始められた。2004年前後に130億円の予算を確保したが、「機体はつくるな」とクギを刺されていたという。

そこで防衛省の技術開発本部は「心神」の実物大のモックアップ模型をつくって、フランスの仏国防整備庁の設備でステルス性能を試した。このことはYouTubeの次の映像で報じられている。




もともとF22が欲しかった防衛庁

防衛庁は国産開発の「心神」をもとから欲しかったわけではない。第5世代戦闘機のトップに位置する米軍のF22が導入希望のトップだった。F22のステルス性能は、自動車ぐらいの大きさのものが、レーダーではゴルフボールくらいにしか映らないという驚異的なものだ。

フランスでの「心神」のステルス性能テスト結果は、上記のビデオでは「中型の鳥よりは小さいが、虫よりは大きい」と防衛庁幹部が語っている。「せいぜいサッカーボールぐらい」だったという。



現代の戦闘機は戦闘機だけで行動するわけではない。強力なレーダーを持つ早期警戒機や地上・海上のレーダーと一体化した高速データリンクの中で、敵を攻撃する役割が与えられている。だから敵の「脳」ともいえる早期警戒機を撃墜できる能力があり、また「敵地深くに入り込み、爆撃する能力」を持つステルス戦闘爆撃機は、「核にも匹敵する戦略兵器」と言われるのだ。

F22は燃料を大量に消費するアフターバーナーを使わず超音速飛行ができるので航続距離も長く、グアム島から北朝鮮に侵入して、電撃爆撃し、北朝鮮軍機とドッグファイトをしてグアム島に帰還することが可能という。航空自衛隊のF15だと、日本から北朝鮮の往復飛行がやっとで、ドッグファイトすると「片道切符」になるという。

F15があれば、F22は要らない」と言っていた航空自衛隊は、2007年に沖縄で行われた航空自衛隊のF15対米軍F22の共同訓練で、双方が早期警戒機を導入していたにもかかわらず、完全に「お手上げ」の状態だったことから、F22導入希望に変わったという。

これに先立ち2004年に行われたインドと米軍の合同軍事演習で、F15がSU30に惨敗したという情報を自衛隊は得ていた。この時は、早期警戒機なしのデータリンク抜き、自動追尾ミサイルなしのドッグファイトだった。

次のビデオを見れば、SU30の驚異的な運動性能がわかると思う。まるで風に舞う木の葉のようだ。



2009年5月に自民党の新・国防族を代表する浜田靖一防衛大臣は、ワシントンを訪問して当時のゲーツ国防長官と面談した時に、次期主力戦闘機にF22を有力候補として位置付けていることを強調した。しかし、ゲーツ長官はF35を「良い戦闘機」だと勧める発言をした。



F22は打ち切り、F35は大増産

F22は1983年にコンセプトをつくり、2005年に実戦配備が始まった。ところがあまりにカネがかかり、しかも飛ぶごとに毎回お化粧直しが必要ということもあり、メインテナンスもバカにならない。

このため米国では183機で生産中止が決まっている。米国議会の輸出禁止決議もあり、日本がF22を購入することは不可能となった。

一方F35は、同じ生産ラインから空軍仕様、海軍仕様、海兵隊のSTOVL仕様が一括生産でき、米空軍1,800機、米海軍400機、米海兵隊600機、英国空軍150機に加え、NATO諸国、イスラエルも導入し、日本も2011年末にF35を導入決定した戦闘機のベストセラーだ。

F22,F35と並ぶ第5世代戦闘機としては、ロシアのPAK FAと呼ばれるSU50や中国の殲20がある。






第6世代戦闘機

米軍の中では、第6世代戦闘機は、いよいよ無人機になると言われている。映画「ステルス」もAIを搭載した無人機が、隊長を自らの意思で救出するというストーリーだ。同じようなことが次世代の戦闘機では起こる可能性があるという。



次世代戦闘機の特性は"morphing”(変形)というコンセプトだという。なにやら映画「ターミネーター2」のT−1000のような印象があるが、「しなり」に近いものを機体に持たせるものとみられているという。



ちなみに航空自衛隊は、早くから無人飛行機の研究を続けており、F104の無人機を10機以上生産した。

パイロット訓練用の逃げ回るターゲットとして考えられていたが、運輸省との論争で航路が限定されたため、すぐに撃ち落とされるようになり、結局岐阜県の航空自衛隊第2補給処に死蔵されているという。


F35は空軍、海軍、海兵隊が同じ戦闘機を使う初めてのケースで、その意味ではいままで米軍戦闘機が抱えていたインターオペラビリティの問題を抜本的に解決した戦闘機である。(いままでの米軍の戦闘機はF15、F−16は空軍だけ、F14、F−18は海軍だけ、ハリヤーは主に海兵隊が使っており、ミサイル、弾薬、燃料、潤滑油、レーダー、タイヤに至るまで装備品の仕様が異なっていた)。

平和の配当で、どの国も防衛予算を削減している流れのなかで、F35は世界各国が参加した文字通りの"Joint Strike Force"といえる共同開発機種である。

日本もライセンス生産という形で、その開発に加わることになるので、いまさら日本独自で「心神」戦闘機を開発するということになるとは考えにくい。それゆえ「心神」はせいぜい試作機にとどまるのではないかと思うが、今後の動きに注目したい。

問題点がよく整理された本である。もともと2009年に単行本として出版され、2012年に文庫化された。春原さんの本をいろいろ読んでみて、この本が一番よくまとまっていると思う。


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レアメタルの太平洋戦争 これが日米開戦のミッシング・ピースだ



ジャーナリストの藤井 非三四(ひさし)さんが書いた太平洋戦争を金属資源の観点から分析しなおした本。

筆者が読んでから買った数少ない本の一つだ。

よく知られているように、米国に1941年8月1日の対日石油輸出禁止を決断させた直接の原因は、1941年7月の日本軍の南部仏印進駐だ。この辺の事情をまとめた「戦争と石油」という記事がJOGMECの情報誌に載っているので紹介しておく。

この予想もしていなかった米国の強硬な態度に、日本政府関係者はみんな驚いた。当時の陸軍の軍務課長だった佐藤賢了は、「私達はこんな形で経済封鎖を受けることは予想していなかった。私は南部仏印に進駐しても日米戦争にはならないと判断しておった」と語る。

「日本軍部隊はすでに北部仏印に進駐しており、それがヴィシー政府との協定に基づいて、南部仏印に転出するだけで、戦争でもなければ侵略でもない。そこは米国の領土でも植民地でもない。日本はフィリピンの安全は保障する。南部仏印進駐によって、米国が対日戦争をしかける理由はない。」というのが当時の陸軍の一般的な考え方だったという。

「南進」が米国の虎の尾を踏んだのだ。日本で「南進」を警戒していたのは、皮肉なことに松岡洋右だけだったという。

いままで、米国の対日禁輸を招いた南部仏印進駐は、一般に言われているように「米国が南部仏印進駐をドミノ理論的にとらえ、東南アジア全域を支配するための第一歩と受け止めた」と考えていたが、この本を読んで、なぜ南部仏印進駐が、米国の過剰反応を引き起こしたのかわかった。

それは、南部仏印に進駐することで、米国のマレーシア、フィリピン、インドネシアなどから輸入しているレアメタル資源や天然ゴムの供給を脅かすからなのだ。

ミッシング・ピースが見つかった思いだ。

アメリカには石油、石炭に加え、鉄、銅、アルミなど戦争に必要な金属資源は豊富にある。裾野の広い自動車産業が発達していたこともあり、19世紀後半から金属の生産量は世界最大をずっと保っていた。

そのアメリカにないものが、ニッケル、クロム、錫だ。ニッケルは隣のカナダで大量に生産するので、大きな問題はないが、クロムはフィリピン、そして錫はマレーシアやインドネシアのバンカ島、ビリトン島に頼っていた。

錫はあらゆる電気製品に使われるハンダ原料で、自動車、船舶、飛行機すべてに使われている重要部品の軸受を作るのに必要なバビットメタルなどに不可欠の金属だった。またクロムも兵器生産に不可欠の金属だ。マレーシアの天然ゴムも戦略物資だ。

日本に東南アジアを抑えられてしまえば、天然ゴムに加え、クロムと錫が止まる。米国は、ひそかにボリビアで錫の鉱山、キューバでクロムの鉱山を開発していたが、それでもクロムと錫の主要な供給源を日本に抑えられることは、大きな痛手となる。だから南部仏印進駐に対して石油禁輸で厳しく対抗したのだ。

一般に太平洋戦争の直接の動機は、米国の対日石油禁輸だといわれている。米国の石油禁輸により、このままでは石油の備蓄を食いつぶしてジリ貧となると考え、それまで対米戦に反対していた海軍が対米戦容認に動いたからだ。

たしかに石油は重要だ。石油がなくては近代の軍艦は動かないし、飛行機も飛ばない。戦車もトラックも汽車も動かせない。しかし戦争するには、石油だけでは戦争できない。火薬を作るためには、硫安や硝石などの化学物資が必要だ。

ドイツが空気から人造硝石をつくって火薬原料とし、石炭から人造石油をつくって戦車や飛行機の燃料にしていたから、ヒトラーが戦争に踏み切れたことは、「大気を変える錬金術」のあらすじで紹介した通りだ。



しかし、石油や火薬だけでは戦争はできない。どんな武器を作るにもレアメタルが絶対必要だ。


銃弾に使われているレアメタル

たとえば次がこの本に載っている日本軍の38式歩兵銃の銃弾の構造だ。

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出典:本書19ページ

38年式実包と呼ばれ、口径6.5ミリ、全長76ミリ、重量21.2グラムで、一発が4銭7厘から7銭5厘、大体タバコひと箱の値段と同じだったという。弾丸は硬鉛と呼ばれる鉛とアンチモニーの合金、弾丸を包む金属ジャケットは銅:ニッケルが8:2の白銅だった。

「フル・メタルジャケット」という映画があったが、鉛主体の弾頭を金属で覆ったものがフル・メタルジャケットだ。



薬きょうは銅合金で、回収して再利用していた。同じく銅不足に悩むドイツ軍に学んで、昭和16年に鋼製薬きょうを導入したが機関銃の撃ち殻が薬室から抜けなくなる事故が続出した。これは致命的な欠陥である。

ガス化しやすい薬剤を薬きょうに塗って、抜けやすくするように工夫したが、それでも虎の子の機関銃で薬きょうが詰まる事故が続出し、こんなところでも資源小国の悲哀を味わうことになった。


砲弾に使われているレアメタル

次は砲弾だ。日本陸軍が多用していた75ミリ野砲の通常榴弾は次のような構造だ。

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出典:本書27ページ

全部の重量は10キロほどで、弾体は合金鋼、薬きょうだけで6キロほどの黄銅が使われている。日本は銅不足のために、薬きょうはリサイクルしていた。

鋼でつくった薬きょうを砲弾用に実用化していたが、黄銅なら3回の搾伸で済むところを、8回も搾伸して、そのたびごとに焼きなまし、洗浄、銅めっきを繰り返す必要があり、生産性は黄銅に比べて1/3近くに落ちた。

銅と亜鉛が豊富に供給される米国や英国は、薬きょうの鋼化には無関心で、ひたすら銃弾や砲弾の生産性を重視していたという。

そのほか小銃の砲身や発射機構は合金製だし、鉄兜もクロム・モリブデン鋼を使用している。戦車や軍艦の防弾板も大量の合金鋼でできている。このように見ていくと、戦争には大量の金属が必要なことがわかってくる。


飛行機生産に不可欠なアルミ

飛行機の兵器としての重要性は、第2次世界大戦で明らかとなった。飛行機はアルミ合金でできている。次がこの本で紹介されている大戦期間中の主要国のアルミニウム生産量だ。

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出典:本書123ページ

隣国のカナダを合わせると、米国は大戦中にドイツの3倍以上、日本の12倍のアルミを生産していた。これが米国30万機、ドイツ11万機、日本6万5千機という差になってくる。米国はソ連にアルミを大量に供給し、ソ連はそれを使って大戦後半に12万機もの飛行機を生産して、独ソ戦に投入している。

しかも米国はエンジン4発のB17やB29といった大型重爆撃機を3万3千機以上も生産している。この間に日本が実用化した4発の航空機は2式大艇のみで、その数167機だった。

ドイツがジェット戦闘機をまっさきに実用化しても、多勢に無勢、戦局を変える効果はなかったのだ。


日本の兵器戦略の致命的問題

資源面から日本と米国は圧倒的な差がある。主要兵器にも大きな差があるが、それ以上に日本の兵士を苦しめたのは、行き当たりばったりの兵器開発によって生じたインターオペラビリティ(共用性)の欠如だ。

その良い例が、銃弾だ。

戦争を熟知している国は、基本となる小火器弾薬は信頼できる実包(実弾)を大量生産して使い続けると藤井さんは語る。小銃、機関銃を実包にあわせて設計するのだ。

たとえば英国は1889年に採用された303ブリティッシュ実包を、1957年にNATO共通弾に切り替えるまで使っていた。ブリティッシュ実包は口径7.7ミリ、薬きょう長57ミリ、起縁(リムド)型の古めかしいものだが、小銃からヴィッカース機関銃までこれを使っていた。

米国は1903年制定の30.06スプリングフィールド実包だ。口径7.62ミリ(0.3インチ)、薬きょう長63ミリ、無起縁(リムレス)型で、M1903スプリングフィールド銃M1ガーランド銃BARブローニング自動銃重軽機関銃をすべてこの実包で統一して第2次世界大戦、朝鮮戦争を戦い抜いた。

ソ連も同様で、1891ねんからリムド型の7.62X54mmR弾を現在まで使っている。

次がこの本で紹介されている日本の小火器で使用される銃弾の一覧表だ。

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出典:本書203ページ

この表を理解するためには、この本で紹介されている薬きょうの形も知っておく必要がある。。

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出典:本書201ページ

主力小銃で、38式歩兵銃と新型の99式歩兵銃では口径が6.5ミリと7.7ミリと異なるので、同じ銃弾は使えない。

これは日中戦争で、6.5ミリ弾は対人では威力を発揮したものの、ちょっと厚い鉄板は打ち抜けないなどの問題が指摘され、日本陸軍全体が7.7ミリに切り替えようとしていたもので、やむないところかもしれない。

しかし、戦っている最中の軍隊で主力小銃の銃弾に兌換性がないというのは致命的だ。

ところで、38式歩兵銃は設計者の有坂成章中将の名前をとって、アリサカライフルと呼ばれ、今でも米国などのガンマニアには評判のライフルだ。反動がすくなく、命中精度が高いという。



日本軍の主力重機関銃だった92式重機関銃は99式歩兵銃と同じ口径7.7ミリだが、薬きょうの形がセミリムドと、リムレスと異なる。



無理に使えないことはないが、機関銃として致命的な装弾不良を覚悟しなければならない。

一方92式重機関銃の実包は、リムがあるので、99式小銃の薬室には収まらない。

92式重機関銃は55キロと重いので、後継の1式重機関銃は32キロにまで軽量化した。これに使用するのは99式小銃と同じ99式実包だった。これで主力重機関銃の間のインターオペラビリティは失われた。

銃弾がこれだけ種類があっては、ある種類の弾が残っているのに、自分の銃器では使えないという絶望的な事態を招いたことも戦場ではあったのではないかと思う。


あらすじが長くなりすぎるので、この辺にしておくが、大変参考になる本だった。冒頭に記したように、ミッシングピースを見つけた思いだ。

筆者が読んでから買った数少ない本の一つだ。

2013年7月に出たばかりの本なので、一度本屋で手に取ってみることをお勧めする。


参考になれば次クリック願う。

モサド・ファイル イスラエル最強スパイとその敵列伝

モサド・ファイルモサド・ファイル
著者:マイケル バー=ゾウハー
早川書房(2013-01-09)
販売元:Amazon.co.jp

世界最強と言われるイスラエルの情報機関モサドのスパイや、モサドと敵対したテロ集団のリーダーなど21人の列伝。

イスラエルの元国会議員で、「エニグマ奇襲指令」や「ミュンヘン」などのスパイ小説を多く書いているマイケル・バー=ゾウハーとジャーナリストのニシム・ミシャルの作品。

ミュンヘン―オリンピック・テロ事件の黒幕を追え (ハヤカワ文庫NF)ミュンヘン―オリンピック・テロ事件の黒幕を追え (ハヤカワ文庫NF)
著者:マイケル,バー ゾウハー
早川書房(2006-01)
販売元:Amazon.co.jp

HONZに紹介されていたので読んでみた。HONZは書く人のノルマが決まっているためだと思うが、たいして面白くない本まで紹介しているので玉石混交だが、中には面白い本もある。

周囲をアラブ諸国に囲まれ、自前の核兵器は持っているものの、イラン、イラク、シリアなどで続けられる核開発の阻止のために、暗殺や空爆などあらゆる手段を使って自国を守っているモサドの活動を描いていて大変面白い。

この本で取り上げられている21の物語は、大別すると次の4パターンとなる。それぞれの代表的な章のあらすじを紹介しておく。


パターン1.モサドの主要人物の紹介

第1章 闇世界の帝王
YouTubeにもインタビューが掲載されているメイル・ダガン前モサド長官の話だ。


第1章では、ダガン長官のイスラエル国防軍時代のPFLPパレスチナ解放戦線のテロリストキャンプ奇襲など数々の功績が紹介されている。

ダガンの祖父はチェコでナチスに殺害された。この本では、撃たれる直前にナチスの前で法衣を着て抗議する祖父の写真を紹介している。ダガン長官はこの写真をデスクに飾っていたという。

ダガンは国防軍から引退していたが、アリエル・シャロン首相の選挙を手伝ったことから、2002年にシャロン首相からモサドのトップに任命された。

シャロン首相の口説き文句は、「口の中に短剣を隠し持つ男をモサド長官に据える必要がある」だったという。

ダガンは2011年までの9年間モサドのトップを務め、シリアの原子炉を破壊し、イランの核兵器製造計画をつぶし(第2章参照)、ヒズボラなどのテロリスト幹部を暗殺した。

第5章 「ああ、それ? フルシチョフの演説よ…」
KGBのスパイとなったモサドスパイのヴィクトル・グラエフスキの二重スパイとしての活動が紹介されている。

ヴィクトルはモサドのスパイになる前に、ポーランドの党書記長秘書からスターリン批判をしたフルシチョフの演説を数時間借りて、イスラエル大使館に持ち込んでコピーさせた。

フルシチョフは1956年に、スターリンは数百万人のロシア人と外国人を殺害した大量殺人犯であることを暴露していたが、西側はその情報をつかんでいなかった。

これが西側がスターリン批判を知る初めてのきっかけで、モサドはCIAに情報を提供して感謝された。ヴィクトルがモサドのスパイとなった後、KGBからスパイとしてリクルートされ、二重スパイとなった。

ヴィクトルは、長年モサドが都合よく編集したイスラエル情報をKGBに流して、KGBから勲章をもらった。その後モサドからも表彰され、ダブルで勲章を受けた初めての二重スパイとなったという。

第9章 ダマスカスの男
シリアで政権党のバース党に近づき、政財界の大物や夫人に多額の贈り物をして、最高権力を持つ実力者グループの一員となったエリ・コーヘンの物語。

シリア政府はヨルダン川の流れを変えて、イスラエルを水不足にしようという計画を進めていた。

エリ・コーヘンは、計画立案と工事を請け負ったサウジアラビア人実業家のビン・ラディン(オサマ・ビン・ラディンの父親)と親しくなって情報を入手し、イスラエルに無線で送信した。

イスラエルは情報に基づく正確な空爆で工事を中止に追い込んだ。シリア政府は毎晩送信される通信の出所を突き止め、エリ・コーヘンを逮捕する。

エリは公開処刑されたが、イスラエルの国民的英雄となった。


パターン2.イランを中心にアラブ世界でも核開発を推進しようとする動きを、何としても阻止しようとするイスラエルの動き

第2章 テヘランの葬儀
イランはシャー時代はイスラエルと同盟国で、イスラエルはイランの原子力発電所建設を警戒していなかった。しかし、イスラム革命が起こり、イラン・イラク戦争が勃発すると事態は一変した。

イランは核兵器開発を決断し、パキスタンからウラン濃縮技術を買い取って自前の核兵器生産計画に着手した。当初の敵はイラクだったが、その後はイスラエルが仮想敵国となった。

イランにウラン濃縮技術や設計図を売り渡したのは、パキスタンの死神博士と呼ばれるアブドゥル・カディール・カーン博士だ。

この本では多くの飛行機墜落事故や原因不明の爆発、ミサイル攻撃、自動車爆弾など、あらゆる手を使って、専門家を殺し、施設を破壊して、イランの核開発を遅らせたモサドの工作が暴かれている。

ダガン前モサド長官は、2011年に退任するときに、「イランの核計画の完成は少なくとも2015年まで延びた」と語ったという。

第8章 モサドに尽くすナチスの英雄
第2次世界大戦中、1943年9月にムッソリーニが反体制派のクーデターでアペニン山脈に幽閉されていた時に、ナチス空挺師団が救い出した。その一員のスコルツェニーは戦後スペインに移住して会社を経営していた。

1963年にモサドはスコルツェニーを訪問して、協力を要請した。当時エジプトがドイツ人のロケット科学者を多数リクルートして、ミサイル開発をしていたからだ。

当時のイスラエルのベングリオン首相は、西ドイツのアデナウアー首相と個人的な信頼関係を築いており西ドイツから砂漠の開発費用として多額の借款を受けたり、数億ドルの戦車、大砲、ヘリコプター、飛行機をユダヤ人虐殺の償いとして無償で提供を受けていた。

エジプトのミサイル開発に圧力をかけてもらうようにアデナウアーに要求して、西ドイツとの良好な関係を壊したくなかったイスラエル政府は、独自の解決方法を選ぶことにした。

スコルツェニーは、モサドが彼の命を狙わないことを条件に協力を約束し、エジプト国内で働くドイツ人科学者のリストなどの情報をモサドに提供した。

モサドはエジプトに協力しているドイツ人科学者のオフィスなどに手紙爆弾を送り付けたり暗殺を試みたりして妨害し、とうとうエジプトにミサイル開発を断念させた。

後日談として著者がV2ロケット開発者で、NASAの宇宙開発計画の責任者・ヴェルナー・フォン・ブラウン博士に米国のアラバマ州ハンツヴィルで会った時に、この時のドイツ人科学者リストを見せたら、「こうした二流科学者たちに、実戦配備可能なミサイルを製造できた可能性はごくわずかだろう」と語っていたという。

第15章 アトム・スパイの甘い罠(ハニー・トラップ)
イスラエルの原爆製造工場に勤務していたオペレーターのモルデカイ・ヴァヌヌが、カメラを持ち込んで原爆製造工場内のあちこちを撮影し、後に写真と詳細な図面などを英国の新聞の「サンデー・タイムズ」に売った1986年の事件。

イスラエルの原爆製造工場のディモナ研究センターの極秘の第2研究所は表向きは2階建ての建物だが、地下6階まである。

レイアウトは次のようなものだ。

2階    事務室とカフェテリア
1階    事務室と組み立て部屋
地下1階 パイプ配管とバルブ
地下2階 中央制御室と「ゴルダのバルコニー」と呼ばれる地下工場が一望できるテラス
地下3階 燃料棒の作業場
地下4階 (3階分の高さがある)燃料棒からプルトニウムを抽出する工場と分離施設
地下5階 冶金部門と爆弾の部品を製作する研究室
地下6階 廃棄物貯蔵所

このうち地下4階と地下5階が原子爆弾製造工場だ。

ヴァヌヌは、1986年にディモナ研究センターをクビになったあと、海外を旅行し、持ち出した写真とレイアウトなどを英国の「サンデー・タイムズ」に売った。

「サンデー・タイムズ」が出してきた購入条件は、即金で10万ドル、原稿の著作料の40%、出版した場合の著作権の25%、さらに映画化もありうるというものだった。

モサドは独身で世界をうろついているヴァヌヌに、ブロンドの「ファラ・フォーセットに似た美人」エージェントのシンディをアプローチさせ、英国政府の監視の目が厳しい英国から、ある意味どうにでもなるイタリアにヴァヌヌを連れ出し、イタリアで捕えてイスラエルに連行した。ハニー・トラップの典型である。

「サンデー・タイムズ」はヴァヌヌの情報に基づいて特集シリーズの連載を始め、イスラエルの原爆保有が10〜20基どころではなく、150〜200基の核爆弾を保有し、水素爆弾と中性子爆弾の製造能力を持っていることを暴露した。

第16章 サダムのスーパーガン
まさにフォーサイスの「神の拳」で出てきたサダム・フセインの巨大大砲建設計画だ。

神の拳〈上〉 (角川文庫)神の拳〈上〉 (角川文庫)
著者:フレデリック フォーサイス
角川書店(1996-11)
販売元:Amazon.co.jp


カナダの科学者ジェラルド・ブル博士は、スーパーガンに取りつかれ、サダム・フセインから注文を受けて、射程1、000キロ近く砲弾を撃ち込める「バビロン計画」を推進しようとした。

本物は長さ150メートル、重さ2,100トン、口径1メートルだが、その前に「ベビー・バビロン」と呼ばれる長さ45メートルの試作砲をつくることになった。

「パイプラインの部品」として欧州4カ国にオーダーされた部品は、着々とイラクに到着した時、ブルは何者かに拳銃で射殺された。1990年のことだ。

第18章 北朝鮮より愛をこめて
北朝鮮の協力により完成間近だったシリアの原子炉はイスラエル空軍の爆撃とミサイル攻撃で破壊された。

イスラエルのオルメルト首相は、トルコのエルドアン首相に連絡を取り、シリアのアサド大統領あての伝言を託したという。

「イスラエルはシリアと戦争する気はないが、隣国のシリアが核兵器を保有することは容認できない」という内容だった。

イスラエルの爆撃にもかかわらず、再度核施設を建設しようとしたスレイマン大統領補佐官はイスラエルの特殊機関の狙撃手に殺害された。


パターン3.元ナチスの戦争犯罪人や反イスラエルのテロリストを逮捕・暗殺しようとする動き

第6章 「アイヒマンを連れてこい! 生死は問わない」
ナチスでユダヤ人抹殺計画を立てたアドルフ・アイヒマンは、終戦直後の混乱に紛れ、南米に逃れ、妻子とアルゼンチンで偽名を名乗って暮らしていた。

アイヒマンはブエノスアイレス郊外の、Chacabuco 4261, Olivos, Buenos Airesという住所に住んでいて、同じく郊外のアベジェネーダに引っ越したところで、モサドに捕まって、秘密裏にイスラエルに移送された。1960年のことだ。

筆者は1978年から80年までの2年間、ブエノスアイレスの中心部に住んでいたが、アイヒマンがブエノスアイレスに住んでいたことは知らなかった。

Olivos(オリーボス)というのは、ブエノスアイレスの郊外で、どちらかというと高級住宅地なのだが、この本では貧しい地区と言っている。貧しい地区というのは、捕まったアベジャネーダの方だと思う。

アイヒマンは、「体調不良で引き返す乗務員」に仕立て上げられ、ずっと睡眠薬で眠らされ、医師同行のもとでイスラエルの国有航空会社エル・アルの飛行機のファーストクラスに乗せられ、イスラエルまで移送された。

この本では、まさに「スパイ大作戦」ばりの捕り物劇、囚人移送劇が展開されている。

アイヒマンは、1961年にイスラエルで裁判にかけられて死刑となり、1962年5月に絞首刑が執行された。アイヒマンの最後の言葉は、「また会おう…私は、神を信じて生きてきた…戦争法に従い、旗に忠誠を尽くした…」だったという。

アイヒマンの遺体は焼却炉で焼かれ、地中海に散骨された。

「死の天使」ことユダヤ人を生きたまま人体実験に使ったヨーゼフ・メンゲレもブエノスアイレスに本名を明かして住んでいた。アイヒマン逮捕が世界中で報道されたので、身の危険を感じて、ひそかにパラグアイに移住した。メンゲレは1979年2月に心臓発作で死亡するまで姿を隠したままだった。

第12章 赤い王子をさがす旅
1972年のミュンヘンオリンピックで、「黒い9月」と名乗るテロリストがイスラエルの選手村に潜入し、コーチと選手1人ずつを殺し、9人を人質に取った。西ドイツによる人質救出作戦は失敗し、人質全員が死亡した。

この事件はスピルバーグが映画にしている。



「黒い9月」はヨルダンのフセイン国王による自国内のテロリスト攻撃に反発したアラファトPLO議長がひそかにつくったテロリスト集団で、ミュンヘンテロ事件を計画したアリ・ハサン・サラメは、血塗られた「赤い王子」と呼ばれた。

「ミュンヘンの夜」事件は、ゴルダ・メイア首相を打ちのめし、モサドはテロリストに対する復讐・「神の怒り」作戦を開始した。赤い王子はベイルートで、自動車爆弾で殺害された。

第20章 カメラはまわっていた
テレビのバラエティ番組でも報道されたモサドの暗殺チームが、ハマスの指導者のアルマブフーフをドバイのホテルで殺害した事件。

YouTubeにもテレビ番組が掲載されている。



パターン4.第4次まで繰り返された中東戦争など、イスラエルとアラブの武力抗争にからむ動き

第10章 「ミグ21が欲しい!」
1966年にモサドはイラク人パイロットをそそのかして、当時の東側の最新鋭ジェット戦闘機のミグ21ごとイスラエルに亡命させた。

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出典:Wikipedia

イスラエルは米国と一緒にミグ21を徹底的に調べて弱点を研究した。その研究成果が実り、1967年に起こった第3次中東戦争では、イスラエル空軍は数時間でエジプト空軍を壊滅させた

亡命したイラク人パイロットは、イスラエル空軍のテストパイロットがミグ21をいとも簡単に操縦するのに驚き、「きみのようなパイロットが相手では、アラブ人は決して勝てないだろう」と語ったという。


世界最強のスパイ組織のモサドの暗殺や破壊活動を詳細に描いている。さすがイスラエルの国会議員までやった作家だけに、相当な情報をつかんでいる。

テロリストを国歌を挙げて抹殺しようとするモサドの姿勢は、国として生きていくために必要な暗殺なり爆破工作なのかもしれないが、今から4,000年も前のハンムラビ法典の「目には目を、歯に歯を」と同じ世界が、いまだに中東の現実であることに驚く。

きれいごとでは済まされない、血で血を洗う世界がまだそこにある。

イスラエルを取り巻く中東で何が起こったか、何が起こっているのかを知るために大変役立つ本である。


参考になれば次クリック願う。

中国大分裂 長谷川慶太郎さんの中国分裂予測

中国大分裂 改革開放路線の終焉と反動中国大分裂 改革開放路線の終焉と反動
著者:長谷川 慶太郎
実業之日本社(2012-07-12)
販売元:Amazon.co.jp

85歳になった今でも、「大局を読む」シリーズなど、するどい状況分析に基づく政治・経済予測を毎年出している長谷川慶太郎さんの近著。

先日決行された北朝鮮の3回目の核実験をはっきり予想している。長谷川さんの見方が正しかったことが証明された結果となった。

その他の論点についても論理の筋道が立っており参考になる。

この本と同じ路線の「2014年、中国は崩壊する」も読んでみた。

こちらは元マイカル法務部でマイカル大連などの出店経験があるという現国会新聞社編集次長の宇田川 敬介さんが書いたものだ。

北京駅の荷物検査場には手りゅう弾を爆発されるための円筒形のコンクリートの箱があったとか、一人っ子政策に反して生まれた戸籍のない人=黒子が車に轢かれても、警官は死体を崖下に投げ落とすのを見た。さらに黒子の遺族は、車の運転手に器物損壊で訴えられたというような話が宇田川さんの本では載っている。

中国人にとってメンツがいかに重要かという宇田川さんの議論はよくわかったが、上記のような話は、いくらなんでもあり得ないのではないかと思う。

2014年、中国は崩壊する (扶桑社新書)2014年、中国は崩壊する (扶桑社新書)
著者:宇田川 敬介
扶桑社(2012-06-01)
販売元:Amazon.co.jp


この本で長谷川さんが予想しているシナリオは次の通りだ。

1.中国ではいままで毛沢東の系譜を継ぐ文革路線の人民解放軍と、胡錦濤・温家宝らが推進する改革開放路線の中国共産党の対立があった。人民解放軍は毛沢東思想を信奉し革命を推し進めるという立場だが、中国共産党は革命を放棄している。

2.人民解放軍の7つある軍区のうち最大の勢力は瀋陽軍区だ。瀋陽軍区には核兵器はないが、ロシアと国境を接しているので5つの機械化軍団のうち4軍団を傘下におき、最強の軍事力を誇っている。

中国の軍区は次の図の通りだ。

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出典:本書4−5ページ

3.2012年に毛沢東派の薄煕来・重慶市共産党書記・党中央政治局員が、収賄と妻の英人ビジネスマン殺人容疑により失脚し、中国共産党トップの9人の政治局常務委員には人民解放軍の代表はいなくなった。薄煕来は、重慶市に行く前は遼寧省省長や大連市長を歴任した瀋陽軍区の出世頭だった。

4.北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)は瀋陽軍区の傀儡で、先日のミサイル発射もすべて瀋陽軍区の命令を受けて金正恩が実施している。北朝鮮の軍事パレードには瀋陽軍区が貸し出した武器が使われている。

5.北朝鮮は3度目の核実験を近いうちに必ず実施する。瀋陽軍区は核兵器を持っていないため、北朝鮮に核兵器を開発させ、それを瀋陽軍区の切り札として北京政府を恫喝したいからだ。

6.北朝鮮が3度目の核実験を行うと、国連はいままでの経済制裁では効果がないとして、武力制裁を決議する可能性が高い。そうすると常任理事国の中国は、武力制裁に同意せざるをえない。

そうなると北朝鮮の実質支配者である瀋陽軍区が北京政府に叛旗を翻し、中国は分裂状態になる。最終的には中国は、7つの軍区に分かれた連邦制になると長谷川さんは予想している。

7.こういった情勢をわかっていないのは日本だけで、米国は中国が分裂状態になることを予想している。その際に北京政府が米国に助けを求めてくる可能性もあるとみて、2011年に第7艦隊の空母を2隻に増やした。それがトモダチ作戦で活躍した空母ロナルド・リーガンだ。



沖縄にオスプレイを配備して海兵隊の機動性を増したのもその戦略の一環である。



昨年の反日デモでは、暴徒が毛沢東の肖像画を掲げているのが目についた。



毛沢東の主導した文化大革命がいかに悲惨なものだったかは、このブログで紹介した「私の紅衛兵時代」で紹介した通りだ。

長谷川さんの見立てが正しいかどうかわからないが、中国が混乱に陥る可能性はあるのではないかと思う。

そのほか参考になった点をいくつか紹介しておく。

★パナソニックは主力のマレーシアのコンプレッサー工場が、中国のメーカーとの競争に負けて閉鎖に追い込まれた。パナソニックの中国のテレビなどの工場も赤字で閉鎖したいが、中国政府が閉鎖を認めないので、操業中止状態にある。

★中国では輸出不調と不動産価格下落のため失業者は1億人いる。銀行が不動産融資を絞ったため、不動産価格は暴落している。不動産価格は2011年末時点で前年比半額以下になったという。

★中国には預金保険制度がないので、銀行はみんな粉飾決算をしている。中国政府は必死に銀行をテコ入れしている。

★高速鉄道網建設は、総延長8万キロの予定が実績は2万キロしか建設できていない。2011年1年間では300キロしか建設できていない。建設資金が滞ったことと、乗客が少ないためだ。2011年7月の浙江省温洲の高速鉄道事故では、あれだけの大事故なのに死者は40名だけだった。乗客が少なかったからだ。

★中国の富裕層の海外移住で一番人気はカナダだ。固定資産と流動資産160万カナダドルを持ち込むと国籍が買える。カナダのマンションを、香港の財界人の李嘉誠は多く開発し、中国人の富裕層に売っているという。

★上海のブランドショップは店員が偽物をつかませるという噂がある。だから中国人は東京に来てブランド物を買うのだ。

★中国の不穏な動きに敏感に反応したミャンマーは中国離れをして、中国のプロジェクトの多くは中止となった。しかし西側の経済進出で活気を呈している。

★韓国の朴正煕大統領は一切蓄財をしない立派な大統領だったという。娘の朴さんが今回大統領になったが、2DKのマンションに住んで質素な生活をしているという。

★米国の陸・海・空軍は米国議会の上院下院の本会議で戦争決議が成立しないと軍事行動をとれないが、海兵隊は例外で大統領の命令で戦闘行動がとれる。

だから朝鮮半島になにか事が起これば、沖縄の海兵隊がオスプレイで飛ぶのだ。沖縄の海兵隊がいなければ、韓国の国防は成立しない。

★尖閣列島は、人民解放軍の南海艦隊が勝手に動いていて、北京政府は後追いで追認している。先軍政治色が強くなっている。

★中国では電圧もコンセントの形状も地域によってバラバラだ。北京と天津を結ぶ高圧電線もない。

★中国の原子炉はいろいろな国の技術のつぎはぎで、安全性には大きな疑問がある。しかし、すでに15基の原子炉が稼働している。

★日本のメタンハイドレードの開発技術はカナダから導入している。カナダのハドソン湾にもメタンハイドレードが大量に埋蔵されており、その開発技術を使っている。

★アメリカ経済の立役者となるシェールガス革命によりロシアの相対的発言力は低下している。プーチンは日本に天然ガスを買ってもらいたいと思っている。

カナダもインドネシアも天然ガスを売りたいので、日本は有利に交渉を進めることができる。

上記のように様々な情報をポンポン紹介している。しかし、真偽のほどは筆者はまだ確かめていない。まずは未確認情報としておいていただきたい。


参考になれば次クリック願う。



零の遺伝子 国産戦闘機「心神」 vs F22の攻防 次期FXはまだ終わっていない

零の遺伝子: 21世紀の「日の丸戦闘機」と日本の国防 (新潮文庫)零の遺伝子: 21世紀の「日の丸戦闘機」と日本の国防 (新潮文庫)
著者:春原 剛
新潮社(2012-07-28)
販売元:Amazon.co.jp

日経新聞編集委員の春原 剛(すのはら つよし)さんの本。春原さんは先日の日経・CSISシンポジウムでアーミテージ・ナイ鼎談の進行役を務めていた。

1990年代の次期支援戦闘機FSX商戦では、自主開発を求める自衛隊の制服組や三菱重工業などの産業界を、米国との外交関係を重視した日本政府が押し切り、F16をベースとした共同開発に決着した経緯がある。

たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)
著者:手嶋 龍一
新潮社(2006-06)
販売元:Amazon.co.jp




これにより、日本の開発したアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー技術と炭素複合材を使った軽量主要成型技術が米国に召し上げられ、生産分担分も米国に持って行かれるという結果となり、日本の航空エンジニアは2重の屈辱を味わった。

FSXをトラウマとして抱える防衛省・自衛隊の関係者は、いつしか日本の独自開発で戦闘機を作る夢を持ち続けた。それが現在も開発が進められている先進技術実証機ATD−X、コードネーム「心神(しんしん)」と呼ばれる国産ステルス戦闘機で、これを支援したのが「防衛庁の天皇」と呼ばれ、事務次官を異例の4年も続けた守屋事務次官だった。


守屋次官の政治力

山田洋行の過剰接待を受けた収賄罪で起訴され、現在は懲役刑で服役している「防衛庁の天皇」と言われた守屋武昌次官は、かつて「日米キャデラック・カローラ論」を掲げていたという。第5世代戦闘機としてはF22がキャデラックであり、カローラに相当するのが、日本の「心神」である。

実際、F22が推力15トンのF119エンジン2基を搭載するのに対して、推力5トンのIHI製のXF5エンジンを2基使った「心神」はたしかにカローラのようなコンパクト機となる。日本にも推力10トン以上の自主開発エンジンの計画があるが、費用は1兆円を超えるので、なかなか踏み切れないのだ。

セロ戦もライバルF6Fヘルキャットのエンジンが2,000馬力超に対し、当初の栄エンジンは1,000馬力以下だった。非力なエンジンを使ったので、軽量で敏捷な戦闘機ができたことから、この本ではセロ戦と「心神」の類似性をタイトルに使っている。

ちなみに、このブログで守屋さんの「普天間交渉秘録」のあらすじを紹介しているので、興味ある方は参照してほしい。淡々と事実を説明しており、わかりやすい本だった。

守屋次官は、小泉純一郎首相に気に入られていたので、米軍再編問題で外務省が打ち出していた「スモール・パッケージ」(横田基地の米軍司令部のグアム移転だけ受け入れて、米陸軍第1軍司令部の座間移転は拒否する)に対抗して、米軍のグローバル再編に協力する「トータル・パッケージ」として小泉首相に説明し、「トータル・パッケージはおもしろいじゃないか」という言葉を引き出すことに成功する。

「トータル・パッケージ」とは、1.米海軍厚木基地の艦載機部隊を海兵隊岩国基地へ移転、2.普天間飛行場の移転、3.相模補給廠や牧港補給地区など使用頻度の低い遊休施設の返還などを含んだ防衛省の独自プランだ。

2004年9月の小泉・ブッシュ会談のために、小泉首相は守屋次官に発言要旨メモをまとめるよう指示し、ここで日米交渉の主導権は外務省から防衛省に移った。


「機体はつくるな」という指令

防衛庁幹部には、米国の印象を悪くするような「新・国産戦闘機プロジェクト」を声高に進めるのは賢明でないという考えがあったので、「心神」開発は「高運動飛行制御システム」という名目で始められた。2004年前後に130億円の予算を確保したが、「機体はつくるな」とクギを刺されていたという。

そこで防衛省の技術開発本部は「心神」の実物大のモックアップ模型をつくって、フランスの仏国防整備庁の設備でステルス性能を試した。このことはYouTubeの次の映像で報じられている。




もともとF22が欲しかった防衛庁

防衛庁は国産開発の「心神」をもとから欲しかったわけではない。第5世代戦闘機のトップに位置する米軍のF22が導入希望のトップだった。F22のステルス性能は、自動車ぐらいの大きさのものが、レーダーではゴルフボールくらいにしか映らないという驚異的なものだ。

フランスでの「心神」のステルス性能テスト結果は、上記のビデオでは「中型の鳥よりは小さいが、虫よりは大きい」と防衛庁幹部が語っている。「せいぜいサッカーボールぐらい」だったという。



現代の戦闘機は戦闘機だけで行動するわけではない。強力なレーダーを持つ早期警戒機や地上・海上のレーダーと一体化した高速データリンクの中で、敵を攻撃する役割が与えられている。だから敵の「脳」ともいえる早期警戒機を撃墜できる能力があり、また「敵地深くに入り込み、爆撃する能力」を持つステルス戦闘爆撃機は、「核にも匹敵する戦略兵器」と言われるのだ。

F22は燃料を大量に消費するアフターバーナーを使わず超音速飛行ができるので航続距離も長く、グアム島から北朝鮮に侵入して、電撃爆撃し、北朝鮮軍機とドッグファイトをしてグアム島に帰還することが可能という。航空自衛隊のF15だと、日本から北朝鮮の往復飛行がやっとで、ドッグファイトすると「片道切符」になるという。

F15があれば、F22は要らない」と言っていた航空自衛隊は、2007年に沖縄で行われた航空自衛隊のF15対米軍F22の共同訓練で、双方が早期警戒機を導入していたにもかかわらず、完全に「お手上げ」の状態だったことから、F22導入希望に変わったという。

これに先立ち2004年に行われたインドと米軍の合同軍事演習で、F15がSU30に惨敗したという情報を自衛隊は得ていた。この時は、早期警戒機なしのデータリンク抜き、自動追尾ミサイルなしのドッグファイトだった。

次のビデオを見れば、SU30の驚異的な運動性能がわかると思う。まるで風に舞う木の葉のようだ。



2009年5月に自民党の新・国防族を代表する浜田靖一防衛大臣は、ワシントンを訪問して当時のゲーツ国防長官と面談した時に、次期主力戦闘機にF22を有力候補として位置付けていることを強調した。しかし、ゲーツ長官はF35を「良い戦闘機」だと勧める発言をした。




F22は打ち切り、F35は大増産

F22は1983年にコンセプトをつくり、2005年に実戦配備が始まった。ところがあまりにカネがかかり、しかも飛ぶごとに毎回お化粧直しが必要ということもあり、メインテナンスもバカにならない。

このため米国では183機で生産中止が決まっている。米国議会の輸出禁止決議もあり、日本がF22を購入することは不可能となった。

一方F35は、同じ生産ラインから空軍仕様、海軍仕様、海兵隊のSTOVL仕様が一括生産でき、米空軍1,800機、米海軍400機、米海兵隊600機、英国空軍150機に加え、NATO諸国、イスラエルも導入し、日本も2011年末にF35を導入決定した戦闘機のベストセラーだ。

F22,F35と並ぶ第5世代戦闘機としては、ロシアのPAK FAと呼ばれるSU50や中国の殲20がある。






第6世代戦闘機

米軍の中では、第6世代戦闘機は、いよいよ無人機になると言われている。映画「ステルス」もAIを搭載した無人機が、隊長を自らの意思で救出するというストーリーだ。同じようなことが次世代の戦闘機では起こる可能性があるという。



次世代戦闘機の特性は"morphing”(変形)というコンセプトだという。なにやら映画「ターミネーター2」のT−1000のような印象があるが、「しなり」に近いものを機体に持たせるものとみられているという。



ちなみに航空自衛隊は、早くから無人飛行機の研究を続けており、F104の無人機を10機以上生産した。

パイロット訓練用の逃げ回るターゲットとして考えられていたが、運輸省との論争で航路が限定されたため、すぐに撃ち落とされるようになり、結局岐阜県の航空自衛隊第2補給処に死蔵されているという。


F35は空軍、海軍、海兵隊が同じ戦闘機を使う初めてのケースで、その意味ではいままで米軍戦闘機が抱えていたインターオペラビリティの問題を抜本的に解決した戦闘機である。(いままでの米軍の戦闘機はF15、F−16は空軍だけ、F14、F−18は海軍だけ、ハリヤーは主に海兵隊が使っており、ミサイル、弾薬、燃料、潤滑油、レーダー、タイヤに至るまで装備品の仕様が異なっていた)。

平和の配当で、どの国も防衛予算を削減している流れのなかで、F35は世界各国が参加した文字通りの"Joint Strike Force"といえる共同開発機種である。

日本もライセンス生産という形で、その開発に加わることになるので、いまさら日本独自で「心神」戦闘機を開発するということになるとは考えにくい。それゆえ「心神」はせいぜい試作機にとどまるのではないかと思うが、今後の動きに注目したい。

問題点がよく整理された本である。もともと2009年に単行本として出版され、2012年に文庫化された。春原さんの本をいろいろ読んでみて、この本が一番よくまとまっていると思う。


参考になれば次クリック願う。



「普天間」交渉秘録 元防衛事務次官 守屋武昌さんの交渉録

+++今回のあらすじは長いです+++

「普天間」交渉秘録「普天間」交渉秘録
著者:守屋 武昌
新潮社(2010-07-09)
販売元:Amazon.co.jp
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2003年から4年の長きにわたり防衛事務次官を務めた守屋武昌さんの普天間問題交渉録。守屋さんは山田洋行から度重なる夫婦ゴルフ接待など便宜を受けたとして収賄罪で起訴され、現在最高裁で係争中だ。

「普天間」問題が「V」字滑走路で決着したと報道されている。はたまた米国上院で普天間の海兵隊ヘリコプター部隊を嘉手納に統合する案が出されたりしている。

この本ではその「普天間」の解決案がどのように変わってきたのか、そしてその背景は何なのかを、防衛省でずっと交渉を担当してきた守屋さんが、過去の詳細な日記を元に明らかにしている。

守屋さんは1審で有罪となり、懲役2年6ヶ月、追徴金1,250万円という判決を受け、それが2審でも支持された。上告中なので、裁判は未決ではあるが、すでに退職金も全額自主返納したという。

しかし、山田洋行をめぐる疑惑については、便宜を図ったことは誓ってないが、多大な迷惑をかけたことをお詫びしたいと、この本では一切釈明していない。

在日米軍基地再編問題と防衛省昇格についてだけ書いている。その意味では立派だと思う。

普天間問題については、鳩山前首相を初めとする民主党が、何も知らずに県外移設とかコミットしてしまい、ファンブルしたという印象を筆者は持っている。

今年の初め、沖縄総領事だったケビン・メア米国国務省日本部長が、「沖縄はゆすりの名人」という、学生の前でポロッとしゃべったオフレコ発言が問題にされて辞任している。

「日本の文化は合意に基づく和の文化だ。合意形成は日本文化において重要だ。しかし、彼らは合意と言うが、ここで言う合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。

合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。」


この本では「在日米軍の基地の74%が沖縄に集中している」と主張をする沖縄が、既に合意している米軍基地施設返還に協力しなかったり、普天間移設についても、できるだけ埋め立て工事などの公共事業が生まれるように動いている現実があることが明らかにされている。

メア氏は日本語も流ちょうと聞くが、問題発言は英語だと思う。どういう言葉を使ったのか興味があるところだ。「ゆすり」という言葉で、日本政府と合意しても沖縄県の反対で、いっこうに実行されない普天間移設案に対するメア氏のいらだちが、非公式の場でポロリと出たのだと思う。


守屋さんの経歴

守屋さんは、1944年宮城県塩竃市の出身。1971年に防衛庁に入庁し、防衛庁内の数々のポジションを歴任したほか、内閣審議官として官邸に出向していた経歴を持ち、小泉首相はじめ多くの政治家と太いパイプを持つ防衛省きっての実力者だった。だから防衛次官として異例の4年間という任期をつとめ、小池百合子防衛大臣と衝突して退任し、山田洋行がらみの収賄罪で有罪判決を受けた。

この本でも小泉首相から直接了解を得て、外務省をすっ飛ばして米国側と交渉していた守屋さんの実力のほどが伺える。首相に直接話し、首相からお墨付きを貰うなど、普通の官僚ではなかなかできないことだ。


9.11以降の米軍の世界戦略に基づく米軍再編

次が守屋さんが小泉首相に2004年9月に説明した米軍再編問題だ。

2001年9月11日以降、米国は2002年に国土安全保障省(FEMA: Federal Emergency Management Agency)を新設し、日本でいえば税関、入国管理局、警察庁、消防庁、国土交通省の防災局、海上保安庁を一緒にした。同時に米軍の配置見直し(GPR: Global Posture Review)を行い、ヨーロッパ諸国、韓国と在留米軍の見直しについて合意し、最後に残ったのが日本との米軍再編問題だった。

米国が日本に提示したのは次の2点で、これはトータル・パッケージと呼ばれている。米軍は冷戦終了とともに世界戦略の中心をヨーロッパからアジアに移してきている。いまや在日米軍のトップ経験者が次の米軍のトップになるようになったのだ。

1.米陸軍第一軍司令部(ワシントン州フォート・ルイス)をキャンプ座間に移す。
2.横田基地にある第5空軍司令部をグアムに移転する。

外務省はこのうち2.だけを認めるスモール・パッケージの考えだが、これではアメリカと合意することは難しい。むしろこの機会に米軍問題を解決して、「日本の戦後」を終わらせるために次の3点も提案すべきだと守屋さんは小泉首相に説明した。

1.厚木基地の空母艦載機部隊を岩国の海兵隊基地へ移す。
2.相模原補給廠省や牧港補給廠(沖縄)の返還。
3.普天間飛行場移設合意の見直し。

この案は守屋さんが、旧知の米国のカート・キャンベル現国防次官補とすりあわせた案だという。小泉首相は、「本当に日本の戦後を終わらせることが出来るんだな?」と聞いたという。

実は現在でも東京の港区、渋谷区、新宿区、西部地域の上空7千メートルまでは米軍の空域となっている。羽田に向かう旅客機が銚子から回り込むように着陸しているのは、この空域を避けて飛ばなければならないからだ。このルートはハワイ、グアムから最短距離で朝鮮に行く航空路だ。だから守屋さんが「戦後を終わらせる」と言っているものだ。


普天間返還問題

この本の大半が普天間問題の経緯についてだ。普天間飛行場は1945年に建設された海兵隊のヘリコプター飛行場で、建設された当時は普天間町は1万5千人ほどの人口だったのが、9万人を超え、市街地の中の飛行場になっている。

まず日米間で1996年に名護市沖の海上浮体方式とする移転案が合意された。

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出典:本書26ページ

ところが、当時の大田知事が単純返還を主張、その後の稲嶺知事は軍民共用飛行場を辺野古沖(キャンプ・シュワブ)に埋め立てで建設する案を出したが、結局なにもせず環境アセスメントが遅れる。

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出典:本書27ページ

2004年に米軍ヘリの墜落事件が起こり、普天間移設は政治問題化する。辺野古沖軍民共用空港案は巨額の建設費用がかかる上に、アセスメントが進まないことで事実上凍結となる。

代わりに出てきたのが、今回も出てきている嘉手納統合案だ。しかし低速のヘリコプターと高速の戦闘機の航空管制は異なる。発着回数の激増が飛行場運用を難しくし、なおかつ地元住民の負担が増すという問題がある。

一方守屋さんはキャンプ・シュワブ陸上案を推し進める。

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出典:本書47ページ

ところがアメリカから提案された案は、名護ライト案という名護市の土建業の有力者が推す案だった。その有力者はワシントンまで出向いてペンタゴン担当者にこの案を説明し、これなら沖縄住民は賛成すると吹き込んでいたという。

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出典:本書55ページ

ところがこの名護ライト案では珊瑚礁のきれいな海を埋め立てるという問題がある。ジュゴンの生態にも影響を与え、国民の支持を失う恐れがあったので、守屋さんはキャンプ・シュワブ宿営地案L字型案を出す。

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出典:本書61ページ

これならサンゴの少ない海を埋め立てることになり、埋め立て面積も大きいので地元(土建業者)も納得するはずという考えだった。当初米国は難色を示したが、なんとか乗り切り米国もL字案で合意した。

合意の直後、守屋さんは夫妻で園遊会に呼ばれて天皇陛下にお会いしたという。各省の事務次官は2年に一度園遊会に呼ばれるのだという。守屋さんは防衛次官としては20年ぶりに今上天皇陛下にご進講したことがあったので、天皇陛下から「この間はありがとう」と声を掛けられたという。

2006年になると1月5日に鈴木宗男議員から「検察が防衛庁をねらっているから気を付けろ」という不可解な電話が入る。防衛施設庁の空調工事汚職でOBと現役役人が逮捕された。

聞いて驚く話だが、2.26事件以来警察と防衛庁は仲が悪い。2.26事件で軍の前に警察は無力だったからその怨念があるという。

一旦日米で合意したL字案は、その後住宅地の上をヘリが通る等の理由で、名護市から300メートル海上にずらせというX字案が出てくる。これで建設費は500億円増える。土木工事利権のからんだ非常に政治的な動きだ。

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出典:本書125ページ

さらに飛行ルートの安全性も考慮して最終的に名護市と合意したのがV字案だった。

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出典:本書139ページ

ところが合意の会見場で、稲嶺知事は合意していないと言い張る。その後沖縄を訪問した小泉首相には「防衛は国の専権事項で地方がどうこう言える問題ではない。しかし県内的には基地は容認できないという立場をとらないと私は生きていけない。どうぞ総理、理解してください」と言っていたという。

こういう話は他でも出てくる。稲嶺知事は合意書の形式を拒否したという。「合意書の形をとることは、私がいかにも国に歩み寄った格好になり、県民の反発を呼ぶことになるから

その後も稲嶺知事の後を継いだ元通産省技官の仲井真知事や、名護市島袋市長などの沖縄側から、山崎拓副総裁などを経由して、さらに沖合に550メートル出せと圧力がある。

沖合に出す距離を50メートルから数百メートルの間で、まさに手を変え品を変えて沖縄側は交渉してきた経緯がこの本には実名で詳しく書いてある。

「V字案を受け入れる条件として、1.那覇空港の滑走路の新設、2.モノレールの北部地域までの延伸、3.高規格道路、4.カジノ」という話が仲井真知事の使者と名乗る人物(本には実名が書いてある)から寄せられたという。


「アメとムチ」の沖縄対策費

沖縄に支給されている基地対策予算は巨額だ。2006年度の北部振興事業費は総額115億円。このうち国が98億円負担している。

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出典:本書162−163ページ

沖縄県には北部振興策を含め、約3,000億円の「沖縄振興開発事業費」が支払われている。これは1972年の沖縄復帰の際に制定された「沖縄振興開発特別措置法」で決められている。振興事業にかかわる経費の95%は国が負担するという特別措置だ(他の都道府県では3分の1以下)。

普天間移転は8年経っても進まないのに、北部振興策には毎年予算がついていた。

守屋さんは太平洋セメントの諸井虔(もろい・けん)相談役から「政府は沖縄に悪い癖をつけてしまったね。何も進まなくてもカネはやるという、悪い癖をつけてしまったんだよ」と言われたという。

逆に、沖縄側から振興策は「アメとムチで沖縄県民の心を引き裂くものではないか」と言われ、当時の橋本首相は「そういう言い方をされるのは悲しい」と語った。しかし、それが現実で、沖縄の政治のFAW(Forces at work=動かす力)となっていることを示している。

もっとも、筆者はこのことで沖縄を非難するつもりはない。これは沖縄だけの話ではないからだ。誰もNIMBY(Not In My Back Yard=自分の地域では困る)と思うから、原発立地や基地立地の自治体には手厚い支援があるのは当然だ。

定年延長して防衛次官を務めていた守屋さんを退任させたのが小池百合子大臣だ。この本では小池百合子防衛大臣の就任の時に、小泉首相から守屋さんに直接電話があったことや、防衛省をバカにした小池大臣の発言が引用されている。

「防衛省には英語ができる人、いないんでしょ。私は外国からのお客さんと直接やるから、英語がわかる秘書官でないと困るわ。それから私が環境大臣だったときに作らせたエコカーね、あれを持ってきて私の公用車にしてほしい」

現在は防衛省は民間の語学学校で6ヶ月の語学研修を受けさせ、さらに米英の大学への留学、在外公館への勤務などで人材の育成に努めているという。


防衛事務次官人事で小池大臣と衝突

各省の事務次官、各局長などの人事は次の手順で決められると守屋さんは書いている。

1.各省庁の事務方が大臣の了解した人事案をつくり、官邸に提出する。
2.官邸では内閣官房長官と三人の内閣官房副長官から成る「人事検討会議」に諮られ検討される。
3.人事検討会議の審査が終わってから、直近の閣議に諮られ了解される。

この不文律は政治と行政の間で国家公務員の身分保障を確保する「最後の砦」として存在していた。小池大臣が守屋次官の退任と後任人事を新聞にリークしたのは、これらのルールを無視したものなので、守屋もファイトバックした。

小池大臣に協力した西川官房長(後任次官として新聞で発表されていた)を「役人として恥を知れ」と怒鳴りつけ、「閣議了解の前に公にされた場合は、その人事は差し替えられる」という4番目の不文律に従って官房長官に新たな人事案を提出し、西川次官という新聞辞令は葬られた。守屋さんの後任は増田人事教育局長となった。


日本の地政学的重要性

日本の国土は世界で61番目で、イギリス、イタリアより大きく、ドイツとほぼ同じ面積だ。先進国としては遜色のない面積を持っている。さらに200海里の排他的経済水域を入れると日本は世界で6番目となる。

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出典:本書331ページ

日本本土の在日米軍基地

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出典:本書10ページ

沖縄県内の在日米軍基地

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出典:本書11ページ

実名で書いてあるので、暴露本という面もある。内容も守屋さんの立場を正当化しているので、実名で書かれた人には異論があるだろうし、当事者の一方的な理解を伝えているにすぎない。

その分は差し引いて読む必要があるが、いまだにくすぶり続けている普天間移設問題と沖縄の基地問題の経緯と力学がわかって大変参考になる本だった。


参考になれば次クリック願う。




その時自衛隊は戦えるか 自衛隊の実力を知ろう!

北朝鮮によるミョンビョン島砲撃で、あらためて朝鮮戦争は休戦状態であり、終戦ではないことがリマインドされ、朝鮮半島情勢は緊張が高まっている。



現在の情勢に関連し、テレビなどによく登場する軍事ジャーナリスト井上和彦さんの自衛隊の戦力についての本を紹介する。

そのとき自衛隊は戦えるかそのとき自衛隊は戦えるか
著者:井上 和彦
扶桑社(2004-03-30)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

自衛隊につき数々の記事を書いている井上和彦さんの自衛隊の分析。

2004年の本なので、内容は一部古くなっている部分があるかもしれないが、大筋は変わらない。

ゴーマニズムの小林よしのり氏の推薦文が帯に載っているが、「自衛隊が生まれて50年、わしらはもっと真実を知らなきゃいかん」と。

この本はあたらしい歴史教科書で独自路線を歩む扶桑社が出版しており、著者の井上さんは小学館のSAPIOや産経新聞社の『正論』などで記事を書いている。

右寄りの本ではあるが、逆に自衛隊の真実の姿を広く知らしめる動きが、扶桑社、SAPIO、正論、産経新聞などに限られてしまうのは、問題だと思う。

たしかに日本国民は自衛隊をもっと知るべきだと思う。そんなことを考えさせられる本である。


北朝鮮こそ自衛隊生みの親

実は北朝鮮こそ自衛隊の生みの親だ。1950年朝鮮戦争が始まり、北朝鮮が韓国に向けて侵攻を開始したときに、日本政府に対してGHQはいわゆるマッカーサー書簡を送り、警察予備隊の創設を指令した。

海上自衛隊は旧海軍の伝統を継承している。ラッパも海上自衛隊は海軍と同じだ。

これに対し陸上自衛隊は当初旧軍の伝統を排したので、ラッパも陸軍のものを踏襲してない。

空軍はもともと存在していなかったことから、旧陸軍と旧海軍の名パイロット達が集結したのだ。


自衛隊の戦力

自衛隊の国防費は世界第3位で、アメリカ、ロシアに次ぐ規模。第4位は中国だ。但しGNP比では主要国が2−3%であるのに対し、日本の自衛隊は1.0%だ。

防衛白書の内容がウェブで公開されているので、興味のある方は見て頂きたい。

ちなみに次が「防衛白書」に載っている朝鮮半島の軍事力の比較表だ。

防衛白書朝鮮半島





出典:防衛白書

総兵員数は24万人で、中国の10分の1、世界第22位だが、装備は最新鋭のものばかりだ。

戦車は最新式の90式戦車を中心に、1,020両。AH1S攻撃ヘリは89機。輸送・偵察ヘリは422機。


特筆されるべき対潜水艦戦闘能力

海上自衛隊は護衛艦54隻、潜水艦は16隻。掃海艇31隻、高速ミサイル艇7隻。

対潜戦闘能力は突出としており、有効射程100キロを超えるハープーン空対艦ミサイルを4発、対潜魚雷8発を搭載できるP3Cオライオン哨戒機を99機、SH60J哨戒ヘリを97機も保有している。

これらの哨戒部隊はソナー等の4種類の各種探知機を完備しており、ロシアや中国の潜水艦のスクリュー音をすべて記録している。

中国の潜水艦は浅い大陸棚で活動せざるをえないが、すぐに自衛隊の哨戒機に探知されてしまうだろう。

米軍でもP3C保有機数は全世界で200機ということなので、いかに自衛隊の対潜水艦戦闘能力が突出しているかよくわかる。


航空自衛隊は戦闘機361機だが、世界最強のF15や日米合作のF2、F4J改などで構成されている。輸送機59機、迎撃ミサイルは6個高射群ある。

これら日本の軍用機の写真を集めたKenny's Mechanical Birdsというサイトがあるので、ご興味があれば見ていただきたい。


自衛隊には7つの世界一があると。それらは次の通りだ:

1.実戦経験が育てた掃海技術

2.海上自衛隊のお家芸対潜作戦

3,原子力潜水艦に劣らない通常型潜水艦戦力

4.先端技術の結晶F2戦闘機(炭素繊維の一体成形とアクティブ・フューズド・アレイレーダーなど)

5.米軍を驚愕させた100発100中のハイテク・ミサイル(SSMー1地対艦ミサイルなど)

国産ミサイルをまとめているMISSILEの解説というサイトがあるので、ご興味あればご覧頂きたい。

6.F15戦闘機を世界最強たらしめる一流パイロットと整備員

7.自衛隊員こそ真の世界一(全将兵が高校以上の教育を受けている志願制の自衛隊は世界でも珍しい。しかも入隊競争率は3倍、幹部候補生学校の競争率は43倍)

対潜戦闘能力に優れた自衛隊と空母をはじめ空軍力を中心とした米軍のコンビネーションは補完関係にあり、極東アジア地域の安全保障の要となっているのだ。


これからの自衛隊

これからの自衛隊では2007年度から導入される予定のイージス艦、情報収集衛星、パトリオットミサイルを使ったBMD(弾道ミサイル防衛)が今後の目玉だ。


北朝鮮の工作船対策

新型ミサイル艇はやぶさ級は76mm砲一門と、射程距離100キロ以上の対艦ミサイル4発、12.7mm機銃2丁の装備を持ち、スクリューでなくウォータージェットで最高時速44ノットを出すことができる。


自衛隊もし戦わば

仮想敵国として次が想定され、それぞれのシナリオが紹介されている:


1.中国人民解放軍 

空の戦いで日米連合軍は圧勝、海でも自衛隊の対潜水艦作戦で封じ込め。空と海で圧倒され、中国陸軍は手も足も出ず。

中国は莫大な国防費を注ぎ込んで兵器の近代化に努めているのに、そんな中国にODAを継続する必要があるのかと議論している。

しかし侮れないのは中国の宣伝力であると。中国の対日外交カードが靖国問題であることはたしかだ。


安全保障装置としての靖国神社?

平成14年の産経新聞で評論家の櫻田淳氏が「靖国神社は兵士の志気を支える仕組みの中核に位置づけられるべき装置である」と語っている。

この本には紹介されていないが、櫻田発言には神道の國民新聞から次のように批判を浴びている:

「靖国神社の本質は、国事に殉じた畏き英霊に対しての祭祀を行ふことであり、これが『安全保障政策を最も根本のところで支える『装置』』 と看做されるのは、あくまでも結果論としてにしかすぎず、本末転倒の観点と云ふ他はない。」

この論争はともかく、靖国問題を中国が執拗に取り上げるのは当然のことながら、深い戦略があるわけであり、善し悪しはともかく、中国に宣伝機会を常に与えることが適当なのか、次の首相は考え直す必要があるだろう。


2.北朝鮮 

ほとんどが旧式兵器の北朝鮮だが、唯一脅威なのは超旧式のAN2型アントノフ布貼り複葉プロペラ機を多数保有していることだ。

これは12名の人員を空輸することができ、300メートルという短距離で離着陸できる。超低空を飛行するためレーダーに捕捉されにくく、陸続きの国には大変な脅威であるが、日本海を隔ていれば日本にとっては脅威ではない。

村上龍の「半島を出よ」にもこのアントノフが北朝鮮軍来襲手段として描かれているが、実際にはなんの遮蔽物もない海上ならレーダーに捕捉されてしまい、小説のようなことにはならないのだ。

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)
著者:村上 龍
幻冬舎(2007-08)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


この本のタイトルは『そのとき自衛隊は戦えるか』だが、これを読むと自衛隊は極東地域の安全を保障する有効な戦力になっていることがよくわかる。

日本は武器を輸出することができないので、全世界に輸出して生産コストを下げることができる米国の兵器に比べ国産兵器は数倍コストがかかるといわれている。

だからといって本当に3倍が妥当かという点は防衛施設庁の官製談合の件もあり、今後厳しく追及される必要があるだろう。

国産兵器はコストが高いので、配備数は少ないが、このように米軍との補完を考え、メリハリのきいた最重要戦略に従った配備をしていれば、非常に有効な戦力となることがよくわかる。

いままであまり自衛隊のことを研究したことがなかったが、簡単に読めて自衛隊の実力がわかる良い本であった。


参考になれば次クリック願う。



資源世界大戦が始まった 元NHK米総局長日高義樹さんの国際情勢分析

尖閣列島問題が中国のナショナリストのデモなどに繋がっている。歴史的に日本の領土ということが明らかな尖閣列島の領有権を中国が主張するのは、その付近の海底の天然ガス資源が関係してくるからだ。

「資源世界大戦」という言葉を使った元NHKアメリカ総局長で、在米30年あまり、現在はハーバード大学タウブマンセンター諮問委員、ハドソン研主任研究員を務める日高義樹さんの本を紹介する。「ウルトラダラー」など、作家として活躍する元NHKアメリカ総局長手嶋龍一さんの先輩だ。

2009年の政権交代前の本なので、自民党や民主党に関するの記述は、やや古いものもあるが、日高さんの言っていることが当たっている点も多いので、2007年12月の本とはいえ、参考になると思う。

資源世界大戦が始まった―2015年日本の国家戦略資源世界大戦が始まった―2015年日本の国家戦略
著者:日高 義樹
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-12-14
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


今はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、是非見て欲しいが、目次を見ると感じがわかると思う。

序章   21世紀の新しい世界戦争が始まった

第1章  世界は変わる
 第1部 温暖化で北極圏の石油争奪戦が始まった
 第2部 核兵器のない新しい抑制戦略が出現した
 第3部 30億人の一大経済圏が世界を変えた
 第4部 アメリカでは十年後に新聞がなくなる
 第5部 アメリカと北朝鮮が国交を樹立する

第2章  日本は「世界の大国」になる
 第1部 日本は世界の一流国になった
 第2部 ロボットが日本経済をさらに強くする
 第3部 日本の軍事力は世界一流になった
 第4部 大国日本には影の部分がある
 第5部 日本の指導者が中国を恐れている

第3章  米中の兵器なき戦いが始まった
 第1部 アメリカは中国を抱き込む
 第2部 中国とは軍事衝突したくない
 第3部 中国の分裂を恐れている
 第4部 中国にアジアを独占させない
 第5部 いつまでだまし合いがつづくか

第4章  ロシアの石油戦略が日本を襲う
 第1部 プーチンは石油を政治的に使う
 第2部 プーチンはアメリカを憎んでいる
 第3部 プーチン大統領とは何者なのか
 第4部 プーチンのロシアは混乱する
 第5部 日本とロシアは対立する

第5章  石油高がドル体制を終焉させる
 第1部 石油の高値がドルを直撃する
 第2部 サウジアラビアがドル本位制をやめる
 第3部 ドル体制は追いつめられている
 第4部 アメリカはなぜ嫌われるのか
 第5部 ブッシュのあとドルはどうなる

第6章  「永田町」の時代は終わる
 第1部 日米軍事同盟は幻想だった
 第2部 日米関係はなぜ疎遠になったのか
 第3部 自民党は3つの党に分裂している
 第4部 民主党はなぜだめなのか
 第5部 永田町の時代は終わった

最終章  日本には三つの選択がある

タイトルだけ見ると長谷川慶太郎さんの本かと思う。結構過激な内容だということが推測できると思う。


日高さんはハドソン研の主任研究員

日高さんはハドソン研の主任研究員だ。ハドソン研といえば、ハーマン・カーン氏を思い出す。PHPの江口克彦さんの「成功の法則」という本に、松下幸之助から「「ハーマン・カーンて人知っているか?」と3回質問されたという話が載っていた。

成功の法則―松下幸之助はなぜ成功したのか (PHP文庫)成功の法則―松下幸之助はなぜ成功したのか (PHP文庫)
著者:江口 克彦
販売元:PHP研究所
発売日:2000-12
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


毎月1回「日高義樹のワシントン・リポート」というテレビ東京の番組でアメリカの要人と対談しているので、相当な情報ソースがあるのだろうが、2007年12月の本ながら、アメリカの大統領候補はヒラリー・クリントンとジュリアーニと予想していたりして、予想がはずれて興ざめな部分もある。

もっとも当時は大半がそう予想していたので、日高さんの予想が外れても責められないが、本に書いてあると証拠が残るのでダメージが大きいと思う。

日高さんはキッシンジャーと親しい様だ。日高義樹のワシントン・リポートの正月特集は常にキッシンジャー氏との対談だそうである。

キッシンジャー博士がいつも言うことがある。「日本には世界に友人がいない。アメリカがたった一人の友人だ。」だと。

日高さんは正確には日本にはもう一人の友人がいると。それは台湾だと。


日本ではあまり報道されない世界の動き

ワシントン在住だけに、日本ではあまり報道されない世界の動きがわかって面白い。

たとえば北極海では地下資源の存在が噂されていることもあり、デンマークとカナダの間で紛争が起こっているとか、アラスカの地下資源は1兆ドルを超す資産価値があり、石油資源だけで6千億ドルを超えるとか、北極の氷が溶けて、海上輸送が可能となると東京から欧州への海上運賃は1/3になるとかだ。

日本人の核アレルギーを不必要に刺激するのではないかと思うが、トマホークの様な正確な通常兵器で核施設を攻撃すれば、核兵器で敵を攻撃するのと同じことになるので、核装備をするべきかどうかという議論は古くなりつつあるという。

だから日本にとって必要なことは正確な攻撃のできる通常ミサイルを持つことだという。

北極圏やアフリカなど資源を求めての競争が激しくなってきている。スーダンのダルフールが有名になったのは、独裁者が石油資源を抑えているからで、反対する部族を虐殺している。アメリカは独裁者の非人道的な政治に介入を続けているが、中国は独裁者を支援している。

これがウォレン・バフェットがペトロチャイナ株を持っていた時に非難されていた理由だ。

世界の石油生産量は1日8千万から9千万バレル。今後10年間で世界の石油需要は20%増えると見込まれているが、増産できるのは一部のOPEC諸国に限られる。

インドネシアは石油の輸入国となり、今年12月にOPECから脱退する。OPECは現在13ヶ国だが、新規加入候補はノルウェー、メキシコ、スーダン、ボリビア、シリアなどである。産油国も新顔が増えたものだ。


キャノン機関

日高さんはマッカーサーがつくった秘密組織のキャノン機関のヘッドだったキャノン中佐にインタビューしたことがあるという。

キャノン機関は新しくできたCIAとの抗争の末、権限を取り上げられ解散させられたが、全盛時は本郷の岩崎邸にオフィスを構え、占領時の様々な工作を担当していた。

そのキャノン中佐からアルバムを見せられ、「これは白洲次郎だ、われわれの活動にとって重要な人物だった。」と説明されたのだという。

白洲次郎 占領を背負った男白洲次郎 占領を背負った男
著者:北 康利
販売元:講談社
発売日:2005-07-22
おすすめ度:4.5
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「いろんな政治家がやってきた。吉田茂も来ていた。彼は他の政治家や役人のように砂糖やバターが欲しいなどとは言わなかったがね」とキャノン氏は語っていたという。

キャノン機関と白洲次郎、日本の政治家がちがどう関わっていたのか資料があるわけではないが、写真を見る限り白洲次郎はキャノン機関の一員といってもおかしくない雰囲気であると。

日高さんはキャノン中佐が自殺した後、夫人からキャノン中佐のアルバムを貰ったという。戦争に敗れた日本がいかにみじめな存在であったか、日米友好の始まりがどういうものであったかを、日高さんはこのアルバムの中に見るという。

日高さんは当時(1981年頃)は白洲次郎を知らなかった由だが、思わぬ処から白洲次郎が出てきたものだ。


中国の指導者を支えるアメリカ政府

2007年にハドソン研究所で中国に関するセミナーが開かれたが、テーマは「中国には強い指導者が必要である」というものだったという。

2007年始め中国軍部は衛星攻撃ミサイルの実験を成功させて世界を驚かせたが、胡錦涛主席が全く知らされていなかったのは明らかであると。

アメリカ政府は胡錦涛主席の知らないところで、中国軍がアメリカに対立的な姿勢を強めているのではないかと疑っているという。

世界の景気が悪くなると中国はこれから失業者が増え続ける。

急激な経済拡大のひずみがひどくなると混乱が起き、中国に内乱でも起こると、混乱がロシアや朝鮮半島に波及し、アジア全体が収拾のつかない状態になることをアメリカは懸念しているという。

中国社会は依然として共産党と軍が動かしているが、経済発展で優秀な若者はビジネス分野に行き、人材が不足してきている。官僚と軍人の質が低下すると優秀な指導者は出てこなくなる。中国の指導者の力が弱くなっているのは、共産党や軍の衰退が原因だとアメリカの中国専門家は見ているという。

世界経済、米国経済の好況は中国経済の成長なくしては考えられないので、アメリカはなんとしても中国の崩壊を防がなければならない。アメリカ政府が中国との間に多くの問題を抱えていても、中国政府を非難せず中国の指導者を助けようとしているのは、ひとえに中国を混乱させたくないためだと日高さんは語る。

こうした状況は第二次世界大戦前のドイツの状況と似ていると日高さんは語る。当時のドイツは第一次世界大戦の敗戦後、経済が不振で失業者が増え、共産党が強くなりつつあった。

ヨーロッパの中心であるドイツが共産化すれば、ヨーロッパ全体が共産化してしまうと考えたアメリカの指導者は、共産党に対抗して登場したヒットラーを支援した。

歴史に明らかなようにヒットラーを強く支持したのは、ヘンリー・フォードやジョン・ロックフェラーであると。彼らはシーメンスやクルップなどの大企業と協力してヒットラーの台頭を助けたと日高さんは語る。

アメリカがヒットラーと戦いを始めたのは、日本がバールハーバーを攻撃したことがきっかけで、日独伊三国同盟に基づきドイツがアメリカに宣戦布告したからだ。

筆者は寡聞にして、フォードやロックフェラーがナチスを助けたとは知らなかったが、共産党の台頭を考えると当然の動きといえるかもしれない。ちなみにロックフェラー家はドイツ出身だ。

アメリカ経済は世界経済を拡大させることによって、自己増殖を続け、繁栄をつづけてきたという。だから中国の経済拡大を続けさせ、中国とうまくやっていくことが米国政府の基本政策なのだと。

アメリカの指導者は基本的には中国は本当の意味での脅威とは捉えていないという。

「われわれはあの強大なソビエトを軍事的に追いつめ屈服させた。中国のことなど心配していない」とアメリカ国防総省の幹部はよく言うという。

日高さんはこのアメリカ人の考え方と中国に対する評価が間違っていないことを望むと書いているが、筆者も日高さんに同感だ。このままでは行かないと思う。先週の「神舟7号」の宇宙遊泳の成功など、中国は米ソに対抗し着実に技術力を付けてきている。


ロシアのプーチン大統領はこき下ろし

プーチン大統領のロシアを日高さんはこき下ろしている。

暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤは「ロシアン・ダイアリー」に、プーチンが大統領に就任した直後に母親、父親、メンターが相次いで死亡したのは、「プーチンが自分の過去を消し去ろうとしたからだ」と書いているという。

ロシアン・ダイアリー―暗殺された女性記者の取材手帳ロシアン・ダイアリー―暗殺された女性記者の取材手帳
著者:アンナ・ポリトコフスカヤ
販売元:日本放送出版協会
発売日:2007-06
おすすめ度:5.0
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別ブログに「ロシアン・ダイアリー」のあらすじを紹介しているので、参照して欲しい。

KGB出身のプーチン大統領自身の経歴は不明だが、プーチンが大統領就任後KGBは復活している。プーチンは、核大国としてロシアをよみがえらせ、石油マネーを使って軍事力を強化している。

プーチンは資源が豊富な極東を手放さないし、北方領土も手放さない。北極海の氷が溶け、本格的に航行可能になったら、ロシアは自国の権益を守るために日本をはじめ他の国と対決するに違いないと日高さんは予想している。ヒットラーと同じだと。


石油高がドル体制を終焉させる

アメリカ社会は安い石油を湯水のように使うことになれており、国民は貯金をすることが嫌いで、借金を重ねながら生活している。

今までは石油が安かったので、借金をしながらでも経済を拡大してきたから、世界の人もアメリカ経済の拡大を信じてアメリカに投資してきた。

ところが石油の高値によってインフレが起き、ドルが弱くなっては、アメリカ経済への信頼がゆらぎ、ドルへ体制を維持することができなくなってくる。

現在ではサウジアラビア、中国がドルペッグ制をとっており、日本もドルを支えているが、2007年9月のサウジアラビアの新聞にサウジアラビアはドル本位制から脱退するのではないかとの観測記事が出た。

ドルがユーロに対してあまりにも下落したことが原因である。

ブッシュ大統領の考えは極めて単純だという。

「ドルが強ければ世界中の人がアメリカに投資し、アメリカの株や土地が高くなる。土地や株が高くなればアメリカ人の資産が増える」

アメリカの民主党はドルを安くして輸出を増やしたいと考えている。アメリカの労働者の職を確保することを最も大事だと思っているからだと日高さんは語る。

このブログで紹介したルービン回顧録などにも書かれている通り、筆者は誰が大統領になろうとも、ドル体制の維持はアメリカの利益の源泉だと考えている。

今やドル紙幣10枚のうち7枚は海外で流通していると言われており、紙幣を印刷するだけで富がつくれる既得権をアメリカが逃すはずがないと思う。

そのためにスタンスとしてドル高維持は変わらないと見ているので、必ずしも日高さんの意見には同意しないが、誰が大統領になるのかの影響はあるだろう。


日米軍事同盟は幻想だった

日高さんはニクソン大統領からはじまる歴代の大統領、政府高官にインタビューしたが、彼らの答えは常に同じで、次の言葉を繰り返すのみだったという。

「日本はアメリカの重要な同盟国だ。日米安保条約はアメリカにとってかけがえのないものだ」

日米安全保障条約は片務条約で、アメリカの本音は「日本に勝った。アメリカは占領が終わっても基地を使い続けるぞ」というものであると。

日本も同様で、基地は提供しているが、アメリカを軍事的同盟国とは思っていない。アメリカ側も台湾問題でアメリカが中国と戦争を始めても、日本が参戦するとは思っていない。

日高さんは日米関係が疎遠になってきていると指摘するが、その最大の理由は日米安保条約なのだと。

安倍元首相や当時の麻生外務大臣が言い出した「戦後レジームの解体」という言葉に、アメリカは国家主義の台頭を感じ、敏感に反応しているのだという。

アメリカの指導者は中国についてしきりに言う言葉は、「中国は世界のステークホルダーである。中国と関わっていくのがアメリカの政策である」ということだ。

朝鮮半島や台湾で戦争でも起こらない限り、アメリカは中国と対決するつもりはなく、日本と共同で中国の脅威に対抗する気はないと日高さんは語る。

つまり日米とも本音は基地提供条約なのに、安保条約というから建前と本音の差が生じ、これが日米関係が疎遠になっている理由なのだと。

アメリカは中国がアジアの覇権を握るのには強い警戒心を持っているが、だからといって積極的に阻止するつもりはない。中国と友好関係を持つことが重要となっているのは間違いない。

長年の同盟国であるアメリカが、日本とともに中国の脅威に立ち向かってくれるというのは、幻想にすぎないと日高さんは語る。日米安保条約は崩壊寸前なのだと。


自民党と民主党

日高さんは自民党と民主党につき面白い見方している。自民党は小泉アメリカ党、安倍保守独立党、福田中国党の3つから成っている、アメリカのある学者の見方であると。

そうなると麻生新首相は安倍保守独立党の一員ということになると思う。

民主党がだめな理由は次の3つであると。

1,安易な移民政策 

移民を入れての治安悪化、社会不安、不法移民問題など、アメリカ、そして特にヨーロッパで起こっている問題を考えていない

2.老後資金を税金によってまかなうという考えから脱却できていない

そもそも年金をすべて税金でまかなうのであれば、北欧並の高税率が必要だし、国民の納得が必要だ。

アメリカではソーシャルセキュリティを払うが、払った額に応じた年金を受け取るシステムである。老後資金をすべて年金でまかなうという考えではないのだ。

3.国家は自らの力で自らを守るべきだという原則を全く理解していない

国連は紛争後の平和維持までが限界で、局地的紛争ならともかく、大きな紛争を武力をもって解決する力はない。何でもかんでも国連至上主義は誤りであると。


日本の3つの選択肢

最後に日本の3つの選択肢として次を挙げている。

1.憲法を変え、核兵器を持ち、経済力にみあう軍事力を保有して独立独歩で行く

軍事力によってアジアと世界情勢の方向を決める国際的な指導力を持つ。アジアを自らのやり方で動かし、世界に於ける日本の利益を確保する。

2.アメリカと対等の協力関係をつくりあげる 

上下関係のある安保体制をやめ、大国日本にふさわしい軍事力を持ち、国際社会における自己責任を全うする一方、民主主義と人道主義を広めるために、アメリカと協力体制をとり続ける

3.おんぶにだっこのアメリカがいなくなったら中国に頼るという、これまでと同じ外交姿勢をとり続ける

日高さんの意見は2.だ。

安保条約については、元外交官でノンフィクション作家の関榮次さんも「日英同盟」の中で、「日本国民が必ずしも納得しない米国の世界戦略に奉仕することを求められることもある現在の安保条約を、国民的論議も十分に尽くさないまま惰性的に継続することは、日米の真の友好を増進し、世界の平和と繁栄に資する道ではない」と語っている。

日高さんも同様の提言をしているが、これからの日本を考え、中国とアメリカの動きを見ていると、たしかに日米安保条約の継続について真剣に議論すべきだろうと筆者も考える。

日高さんはロシアはこき下ろしているが、筆者はプーチンロシアやEUの台頭は打ち手として使えるのではないかと思っている。

余談になるがF−22の輸入につき防衛庁の制服組が熱心なようだが、F−22でもF−35でも、もはや人が乗って敵戦闘機に対決して防衛する時代でもないのではないか?

潜水艦、無人機とミサイル防衛網で国を防衛すべきではないか?飛行機がいるにしても、せいぜい陸上支援用の軽装備のもので十分ではないか?

アメリカのオハイオ級最新鋭原子力潜水艦ミシガンは154発のトマホークミサイルを搭載しているという。

もし飛行機やミサイルで攻撃を受けた場合、人が戦闘機に乗って数分掛けて急上昇し、敵を見つけて迎撃したりするよりも、潜水艦や艦船からミサイルで迎撃するか、あるいは敵飛行機が飛び立った基地を、トマホークでボコボコにして無事に着地できなくして二度と飛び立てないようにしてしまう方が、よほど確実で効率的なのではないかと思う。

F-22は一機155億円もするという。トマホークミサイルは1発7千万円と言われている。どちらも国産したらもっと高いのだろうが、F-22一機でトマホークが200発買えるのだ。

ハリネズミのようになった国に戦争を仕掛けようと言う国もないはずだ。


在米30年以上ということで、日本人の感覚と違う点が目に付くが、拝聴すべき意見だと思う。

必ずしも日高さんの意見には賛成できない部分もあるが、日本の国家戦略についての議論は盛り上げていくべきであると思う。

国家戦略についての議論がないのが、今の政治に対する筆者の最大の不満である。民主党政権になっても結局変わらないが、それで良いのだろうか?

そんなことを考えさせられる参考になる本だった。


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中国は日本を併合する センセーショナルなタイトルだが内容は真剣だ

尖閣列島問題、そして中国の人権活動家へのノーベル平和賞授与で、中国の脅威が次第に増している。センセーショナルなタイトルではあるが、中国の戦略を考えるために紹介する。

中国は日本を併合する中国は日本を併合する
著者:平松 茂雄
販売元:講談社インターナショナル
発売日:2006-02-01
おすすめ度:4.5
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平松さんは昨年、この本の続編とも言える「日本は中国の属国となる」という本も出している。

日本は中国の属国になる日本は中国の属国になる
著者:平松 茂雄
販売元:海竜社
発売日:2009-12
おすすめ度:4.0
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扇情的なタイトルが目を引く。防衛庁防衛研究所に20年間勤務し、その後杏林大学教授を勤めた平松茂雄氏が著者だ。

正直言って本のタイトルがけしからんので、頭に来て読んだというのがホンネだが、本の内容は真剣だ。

『併合』という言葉を使うと、領土として組み入れられるという印象があるが、中国が世界、少なくともアジアの中心となり、日本は手も足もでない状態に追い込まれつつあると平松さんは指摘する。

本の帯に「櫻井よしこ氏推薦」、「数十年にわたって中国情報を収集、分析した本書は私たちに衝撃の事実を突きつける。中華大帝国の再現と日本併合を最終目的とする中国の企みの実態、全国民必読の書である」とある。

たしかにこの本を読んで、中国の最近の一連の動きを全体として見ると、中国は戦わずして、日本を政治・経済圏に取り込むべく着々と準備をしていると考えるのが適当かもしれない。

一連の行動とは;
東シナ海での海上ガス・石油田開発
海洋調査船の日本近辺調査
中国原子力潜水艦の日本領海侵犯
南シナ海でのミスチーフ環礁の領土化
台湾との関係
宇宙開発を通してのロケット制御技術=核ミサイル技術向上
等である。


『長征精神』遠大な中国の核戦略

平松さんは中国の戦略は、すべて遠大なビジョンをベースとする『長征精神』に基づいてのものであると指摘する。

『国家意思』のあり過ぎる中国、なさ過ぎる日本なのだと。

長征とは国民党の蒋介石から圧迫されて、中国共産党軍が1934年から1年掛けて本拠を陜西省の延安に移すまで移動した大移動だが、中国では新しい困難な課題に取り組むときは必ず、この『長征精神』が強調される。

中国は長期的な国家戦略を元に動いており、1958年の台湾との金門島砲撃事件のあと、1959年にソ連が中国に対する核技術供与をやめたときに、毛沢東は「1万年掛かっても原爆をつくる」と語ったほどだ。

フルシチョフは毛沢東の「原爆で中国の半分の3億人が死んでも、残り3億人が生き残り、何年か経てば6億人となり、もっと多くなる」という発言に驚き、非人間的な野獣の考えであると激しく非難したと言われる。

毛沢東は1950年に朝鮮戦争に参戦し300万人の軍隊を送ったほか、1958年に金門島を砲撃する等、多くの犠牲者を出す熱い戦争をしており、毛沢東の中国が原爆を持ったら、世界大戦がはじまっていたかもしれない。

毛沢東は「他人の侮り(あなどり)を受けない」ことをモットーにソ連の核の傘の下に入ることを拒否した。

結局中国は核兵器を自力で開発し、1980年代までに大陸間弾道ミサイル、複数弾頭ミサイル、潜水艦からの弾道ミサイル水中発射、静止衛星打ち上げのすべてに成功した。

その間に米ロの核兵器は小型・移動式、命中精度向上、多弾頭化など、中国の核兵器よりさらに進歩したが、1990年代以降はむしろ核兵器廃棄に進んでおり、今や中国は米ロの2大大国と張り合える核戦力を保有すると言える。


中国の東シナ海資源戦略

日本と中国の間の国境・経済問題は尖閣列島の領有権と東シナ海のガス田開発の二つだ。

1968年に国連アジア極東経済委員会が実施した東シナ海の海底調査で、東シナ海付近には中東に匹敵する豊富な石油資源の可能性があると発表されている。

日本政府はその後30年以上、日本の石油企業からの日本側大陸棚での鉱区を設定しての資源調査を許可しなかったのに、中国側の海洋調査、次いでガス油井設置は黙認したのだ。

中国の東シナ海でのガス、石油開発は春暁、天外天、断橋、残雪の4箇所の海上採掘施設を建設し、処理設備と中国大陸へのガスパイプラインも建設中で、2008年の北京オリンピックまでには完成すると見られている。

これらのガス田は日中中間線の中国側に位置しているが、日本政府は今頃になって中国側から日本側の資源をストローで吸い取ろうとしているとか騒いで、やっと日本企業の資源開発を認めた。

日本と中国に圧倒的な経済格差があった30年間に日本側の開発を認めなかったのは、日本政府の怠慢と言われても仕方がないだろう。

中国は東シナ海だけでなく、南シナ海では南沙諸島(スプラトリー諸島)やミスチーフ環礁に恒久施設を建設し、ベトナム、フィリピンなどの反対を無視して自国の領土化している。

いずれも石油やガス資源があると見られている地域であり、地下資源の開発が目的の行動だ。

尖閣列島は日本の固有の領土にもかかわらず、中国が領有権を主張し、中国民衆が時々騒いでいる。


台湾の軍事統一が中国の究極の目的

台湾は中国にとって地政学的に非常に重要である。もし台湾を中心として大規模な戦略的封鎖が実施されると、中国の海軍と海運は封じ込められてしまう。

逆に中国が台湾を統一できれば、台湾海峡バシー海峡という日本のシーレーンを抑え、日本の資源輸送ルートを抑えることができるのだ。

中国の戦略は台湾を軍事統一することを狙っており、有事には米国の空母機動艦隊の台湾近海への進展を阻むために、中国の潜水艦を使って機雷を設置することを画策している。

中国の海洋調査はそのための海底地形図つくりをしているのだ。

日本の対潜水艦戦闘能力が傑出していることは、『その時自衛隊は戦えるか』で紹介したが、
中国に対抗するために、台湾と連携して対潜水艦対策を進める必要があるのだと平松さんは語っている。

平松さんは、台湾問題は日本にとって他人事と済ませられる問題ではないと語る。

中国は台湾は中国の内政問題であるとして、世界や日本の世論にゆさぶりをかけ、もし台湾を中国が軍事統一するようなことがあると、もはや日本の将来は決まったようなものだ。

その中国に対して、日本は1979年から2004年までに3兆3千億円、民間援助もあわせると6兆円の援助を供与してきた。

日本はODAによって中国の経済成長をささえ、実質世界一の外貨準備高を保有するまで支援し、軍事国家として成長する中国の国家戦略を支援してきたのである。

その間、日本から平均2,000億円の援助を受けながら、中国は毎年600億円の援助をベトナム、カンボジア、パキスタン、アフガニスタンなどに与え、さらにアフリカ諸国などにも積極的に経済援助をしている。

日本政府は国家安全保障の脅威をもたらしている国に対して、友好や人道の名の下に莫大な援助を続け、中国の軍事力の強化を助け、自国の安全を危険にさらすという愚行を犯してきたと平松さんは断じる。

中国はドイツの国連常任理事国入りには賛成するが、日本の常任理事国入りには反対している。対中ODAは政治的にも意義がなかった。


台湾独立と国連加盟

台湾は未だに中華民国と名乗り、中国の正統政府が台湾に逃れただけという立場なので、国連でも北京政府が台湾政府を追い出し、その後がまに座っている。

台湾は独立国ではないから、たとえ中国が台湾に侵攻してきても、国連はなにも手出しできない。

だから台湾が独立国になって国連に加盟することは、東アジア地域の安全保障の上で重要な意味がある。そのため中国は強硬に反対し、またアメリカも中国を刺激しないために、台湾の独立には反対している、

台湾は国民投票を2008年に実施すると見られるが、台湾独立を宣言して、それを日米が軍事力も含めて支援する形となれば、それによって中国とのパワーバランスが保たれるだろうと平松さんは語る。

最後に、もし中国が台湾を軍事的に統一したら、次は朝鮮半島、日本と飲み込んでいくだろう。その時日本はどうするのかと平松さんは警告する。

けしからんタイトルだが、『併合』を『手も足も出なくなる』と読み替えれば、納得できる本だった。


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日本の戦争力 軍事評論家小川和久氏の事実に基づいた現状分析

終戦記念日前後の戦争・自衛隊特集の最後は、今も活躍する軍事評論家小川和久さんの本だ。元々は2005年に出た本だが、昨年文庫化された。

日本の戦争力 (新潮文庫)日本の戦争力 (新潮文庫)
著者:小川 和久
販売元:新潮社
発売日:2009-03-28
おすすめ度:4.5
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小川さんは、「はじめに」で政治家に提言する。「日本はどうして、国家の総力を挙げて世界の平和と日本の安全を実現しようとしないのか」と。

日本は十分な「戦争力」が備わっている。この本は『孫子』のいう「百戦百勝は、善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり」という兵法の「戦わずして勝つ」ための極意について考えようという試みであると。

たしかにこの本を読むと、日本の「戦争力」を持ってすれば北朝鮮に「戦わずして勝つ」こともできると思えてくる。


自衛隊の「戦争力」

1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争については『戦略の本質』の中で紹介したが、自衛隊は朝鮮戦争勃発直後の7月8日に『警察予備隊』として誕生し、1954年7月に正式に防衛庁が設置され、陸・海・空自衛隊が発足した。

自衛隊の戦力については『その時自衛隊は戦えるか』で詳しく紹介した。

この本で小川さんは、よくいわれる「自衛隊の実力は世界第何位」という質問は意味がないと断じる。

軍事費比較では、GDPが世界2位で、人件費が高く、コストが何倍掛かっても国産兵器にこだわる自衛隊は必ずトップクラスになるのだと。実際、防衛費のうち、給料と食費が44%を占めている。

自衛隊は対潜水艦戦闘能力、掃海能力では世界トップクラスだが、他は大したことがない。水泳だけ得意なトライアスロン選手の様なものなので、諸外国軍隊とは比較にならないと語る。

ちなみにドイツは国防軍を持っているが、タイガー戦車以来の伝統で、世界最高のレオパルトII戦車を多数配備し、陸軍中心の構成で、旧共産圏からの侵略に対抗する防波堤となっている。

しかし戦時中のU-ボートの悪夢を断つということで、ドイツの潜水艦は500トン以下に制限されているので、ドイツ海軍はほとんど骨抜きのアンバランスな戦力となっている。

自衛隊は専守防衛なので、決定的に欠けているのはパワープロジェクション能力である。これは核兵器なら敵国を壊滅させることができる能力、通常兵器であれば数十万の軍隊を上陸させ敵国を占領できる能力であり、核攻撃あるいは侵略能力である。

小川さんは、日本は自衛隊にはパワープロジェクション能力がないと世界にアピールし、諸外国からの軍国主義の復活とかの批判にちゃんと反論すべきだと語る。


日米安保条約の片務性

日米安保条約では日本に対する武力攻撃への米軍の来援は明記されているが、アメリカに対する攻撃に対しては規定されていない。憲法9条の規定もあり、日本はアメリカを武力支援できない。

このことから、「片務的な日米安保は正常な同盟関係ではない。日本は成熟した同盟国としてちゃんと防衛分担を果たせ」という議論がでている。

しかし小川さんは日米安保条約があるから、アメリカは世界最大の補給基地を安心して置けており、日本抜きではアメリカの世界戦略は成り立たないのだと語る。

筆者はこれを読んで、以前、中曽根首相が、当時のレーガン大統領に言ったという「日本は浮沈空母(unsinkable aircraft carrier)だ」という言葉が、実は非常に当を得ていることを思い出した。さすが元軍人の中曽根首相だけのことはある。

まずは燃料備蓄だ。日本はペンタゴン最大の燃料備蓄ターミナルで、鶴見と佐世保の備蓄でアメリカ第7艦隊は半年戦闘行動ができる量である。

アメリカが引き揚げたフィリピンのスービックベイの備蓄能力は佐世保の半分以下だった。

次に武器弾薬だが、アメリカは広島に3箇所、佐世保、沖縄嘉手納に弾薬庫を持ち、広島県内の弾薬庫だけで、日本の自衛隊が持っている弾薬量を上回る。佐世保には第7艦隊用の弾薬庫。嘉手納にはこれらを上回る米軍最大の弾薬庫がある。

さらに通信傍受設備も世界最大級だ。『象のオリ』と呼ばれる電波傍受用アンテナは三沢にあるものは直径440メートル、高さ36メートル。周辺にも14基のアンテナ群がある。沖縄には直径200メートル、高さ30メートル。東京ドームと同じ大きさだ。

三沢にある世界最大級の設備は、英語圏5カ国以外には秘密とされているエシュロン活動の一端を担っているともいわれている。

アメリカ本土の延長のように、虎の子の燃料と弾薬を備蓄し、世界最大の第7艦隊の母港を置き、いざとなったら高度の補修ができ、最高機密の通信傍受設備も安心して置けるという国はアメリカにとって日本だけと言っても良い。

だからアメリカ政府の高官は「日本はアメリカの最も重要な同盟国である」としばしば発言するのだと。

前述の様に日本自体はパワープロジェクション能力はないが、日本が米軍のアジアにおけるパワープロジェクションプラットフォームになっているのだ。

日本で米軍が事件や事故をおこすと、アメリカはただちに最高の顔ぶれで謝罪する。他の同盟国ではありえないことだと。アメリカの側から見た日米同盟の重要性を象徴していると小川さんは語っている。

以前関榮次さんの『日英同盟』を紹介し、関さんが最も伝えたかったのは日米安保条約の再考ではないかと紹介した。

小川さんも「日米安保が片務だから、多くの日本人が錯覚から生まれた劣等感を抱いているが、日本列島に展開する米軍とは?その基地を置くアメリカの世界戦略は?と検証していけば、それが錯覚に過ぎないことが明らかになる」と説いている。

全世界でアメリカと対等な安保条約を結ぶ同盟国は存在しないのだ。

日本は毎年思いやり予算の2,000億円だけでなく、基地の賃借料、周辺対策費等各種費用もふくめて年間6,000億円を負担しているのだと小川さんは指摘する。

先日沖縄の海兵隊基地をグアムに移転する費用を6,000億円負担する政府間合意がなされたが、これは上記の年間6,000億円に加えての話であり、日米安保条約では日本が米軍基地移転費用を負担しなければならない義務はないという事実を知っておく必要がある。

日米はお互い不可欠のパートナーでもあり、日米安保体制を現在の世界情勢をふまえて、見直す必要があると筆者も考える。


北朝鮮の「戦争力」

小川さんは北朝鮮脅威論は木を見て森を見ない議論であると切り捨てる。

日本には日米安保条約という日本の安全保障を守るシステムがある。くわえて韓国には今も国連軍(400名ほどだが)が駐在しており、北朝鮮が先制攻撃を仕掛けてきたときには、1953年以来続いている休戦協定違反ということで国連軍が反撃できるのだ。

北朝鮮は国連軍からは先制攻撃はできないとタカをくくっていたが、イラク戦争以降、ブッシュ大統領がテロ支援国家には米軍は先制攻撃も辞さないと発言したことで、恐怖にかられ、それが2002年9月の小泉訪朝、日朝平壌宣言が実現する要因となった。

北朝鮮は核兵器を数個持っているにしても、ミサイルに搭載可能なほど小型化はできていないと見られる。今の北朝鮮のミサイルは通常弾頭だけだろうと小川さんは説く。

もし北朝鮮が日本にミサイルを撃ってきたら、米軍がそれの何十倍もの正確無比のトマホークミサイルを北朝鮮にぶち込むので、ミサイルを撃つ=国家の消滅となる。

そもそも燃料がなく、戦車も航空機も四世代前のものしかない北朝鮮は、兵器の数だけ揃えても、米軍の最新兵器には歯が立たない。

ミサイルを一発でも撃てば北朝鮮は一巻の終わりなので、ビビって虚勢だけなのだから、そのことをわかって、アメとムチの外交を進めるべきであることを小川さんは説く。

大前研一も『私はこうして発想する』のケーススタディで挙げていたが、金正日には選択肢はないのだということが、小川さんの議論からもよくわかる。

この本の帯に「目からウロコ!これが日本の実力だ!!」というキャッチがあるが、むしろ在日米軍、北朝鮮軍の実力がわかりやすく解説してあり、結果として日本の「戦争力」がわかるという構成だ。

さすがに売れっ子の軍事評論家だけのことはある。一読に値する防衛論だ。


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日本の防衛戦略 昨年亡くなった軍事評論家江畑謙介氏による防衛力分析

日本の防衛戦略日本の防衛戦略
著者:江畑 謙介
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-07-27
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昨年亡くなった軍事評論家の江畑謙介氏による日本の防衛力の分析。豊富な資料・写真が載っていて、わかりやすい。

前回紹介した「その時自衛隊は戦えるか」はどちらかというと自衛隊の戦力を肯定的に書いているが、江畑さんの本ではむしろ弱点の指摘が多いので、両方比べて読むと自衛隊の実力の実態がわかると思う。


自衛隊の装備に対する考え方

自衛隊は導入の時には世界最高のモデルを求めるが、一度導入されると改良努力がほとんどなく、時代の変化にあわせて戦闘能力を強化し、抑止力を高めようという努力がほとんどなされていない。

一例として戦車が取り上げられている。

戦後初の国産戦車61式戦車は1961年(昭和36年)の配備後、アクティブ赤外線投影装置が一部戦車に追加された他は30年間ほとんどなにも改良がなされなかった。

ちなみにアクティブ赤外線投影装置は、今では自分の居場所を敵にあかすこととなるので、ほとんど自殺行為だ。

61式戦車は設計からして朝鮮戦争時代の90ミリ砲を搭載した車高の高い設計で、構想当時からソ連の中心戦車T−55の車高の低さと100ミリ砲に劣っていた。

さらに実戦配備直後にソ連は貫通力の高い115ミリ滑腔砲(かっこうほう)を搭載したT−62戦車を導入し、61式戦車はアウトレンジされることになった。途中で105ミリ砲に換装することも検討されたが、実施されなかった。

結局2世代あとの90式戦車で、120ミリ滑腔砲を導入してロシアの主力戦車と同等の装備となった。

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写真出典:Wikipedia

さらに問題は射撃制御装置で、61式戦車はステレオ式光学式(要は幅1メートルの双眼望遠鏡?)のままで、その後中国軍も装備したレーザー測遠機すら装備せず、命中精度の改善はなされなかった。


RPG(携帯式ロケット砲)対策も不在

大砲の大きさも、射撃制御装置も湾岸戦争やイラク戦争の様な対戦車戦以外では致命的な差は出ないかもしれないが、近年では北朝鮮などのテロ勢力が日本に侵入し、戦車がそれを制圧するという局面は予想される。

このブログでも紹介した村上龍の「半島を出よ」が、まさにこのストーリーだ。

北朝鮮の不審船の乗組員が携帯式ロケット砲を、自衛隊の船に向けてぶっぱなした(命中はしなかったが)光景は、テレビで繰り返し報道されたので、記憶されている人も多いと思う。

ゲリラなども必ずといっていいほど携帯式ロケット砲を持っている。

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写真出典:Wikipedia

そんなときには戦車の相手はRPGと呼ばれる携帯式対戦車ロケット砲となり、これに対する備えは装甲の強化が重要だ。

しかし自衛隊の戦車は61式戦車も、その次の74式戦車も他国のように装甲を増着して対RPG防御力を向上させる改良をしていない。

この手の装甲では、イスラエルなどの実戦経験豊富な軍隊の戦車に取り入れられているERAと呼ばれる爆発反応装甲や90式戦車に取り入れられた最新式のセラミックを取り入れた複合装甲などがある。

ロシア、イスラエルや米国の戦車の写真を見ると、やたらと箱が車体に貼り付けてあるが、これが増着装甲だ。不格好だが、重量をあまりふやさずに防御力の強化ができる点で実戦的だ。

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写真出典:Wikipedia


日本の武器の欠点

この本では江畑さんの武器に関する深い造詣に基づき、興味深い事例がいくつも指摘されている。

・航空自衛隊の輸送機には、ミサイル誘導妨害装置がなかったので、イラク派遣が決まったときに急遽購入して付けた。スティンガーなどの携帯式対空ミサイルが普及しているので、誘導妨害装置は必須だ。

・北朝鮮の不審船対策で導入した はやぶさ型ミサイル艇や、水中翼ミサイル艇は、停船勧告に有効な遠隔操作の中口径機関砲がない。20MMバルカン砲は強力すぎ、76mm砲も船を沈めてしまう。

 12.7MM重機関銃は装備できるが、威力不足で、しかもマニュアル操作なので、敵の反撃に遭うと射手が危険にさらされる。

・水中翼艇は、荒れた海では停船ができない。つまり海が荒れると海上臨検とかはできない。

・日本では人的ロスを減らせる無人攻撃機や無人偵察機の導入は遅れている。米軍やイスラエル軍で重用されているプレデター等の無人偵察・攻撃機の導入はやっと2007年度からはじまる予定だ。


次期主力戦闘機F−X

日本の次期主力戦闘機F−Xについてもわかりやすく解説している。

米国議会の反対で購入できないでいるF−22はステルス性にすぐれ、技術的には最も優れているが、コストは一機450億円とも予想され、しかも日本でのライセンス生産はできずに全機輸入となる可能性が高い。

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写真出典:Wikipedia

従いこんな巨額の費用を出すよりは、ステルス性等では劣るが、F−15の改良型で、F−22と同等の電子機器を搭載したF−15EXを、すでに日本にあるF−15生産ラインで生産する方が最も安い選択肢となると江畑さんは語っている。

NATOで採用されているユーロファイターは、コストも安く、NATO採用なので、米軍とのインターオペラビリティもすぐれている。

日本との共同開発にも乗り気といわれているので、F−Xの本命F−22が米国議会の反対で導入できなれければ候補として浮上してくる可能性もある。

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写真出典:Wikipedia

ミサイル防衛戦略(BMD)

2006年10月の北朝鮮による核実験は初期爆発だけで核分裂の連鎖反応は起こらず、失敗だった可能性が強いが、それでも北朝鮮が核開発能力を持ったことは周辺国には脅威となる。

北朝鮮が核爆弾を持ったら、問題は運搬手段である。

北朝鮮はテポドンはじめミサイル発射実験を繰り返している。

北朝鮮が中国経由ウクライナ製の巡航ミサイルを購入した疑惑については、ジャーナリストの手嶋龍一さんの小説「ウルトラ・ダラー」にも描かれている。

江畑さんは、北朝鮮には巡航ミサイルを積む大型爆撃機がないし、たとえあっても大型機は日本のレーダーにも容易に捕捉されるので、やはり弾道ミサイルが最も可能性の高い運搬手段となるだろうと見ている。

弾道ミサイル防衛(BMD)の方法も興味深い。

旧ソ連の1960年代の初期のBMDは、落下してくる核弾頭を核爆発で誘発させるという方法で、実施されるとモスクワ市民の15%が死ぬという恐ろしいものだった。

これでは何のための防衛かわからないので、核弾頭を用いないで迎撃するシステムが湾岸戦争でも使われたパトリオットミサイルPAC−2だ。

しかしミサイルを打ち落としても、弾頭が落下して爆発すると被害が出るので、弾頭を無力化するために弾頭に命中させるパトリオットミサイルPACー3が開発され、日本でも米軍が沖縄にまず配備し、自衛隊は首都圏から配備している。

またイージス艦には、スタンダードミサイルSMー3という日米共同開発のミサイルが配備されており、これは北朝鮮のミサイルが発射されるのを感知して、すぐに迎撃する。

従い日本のBMDは、SM−3とPAC−3の2段階となっている。


この本は400ページの大作なので、詳しく紹介しているときりがないが、最後に最新の武器技術を紹介しておく。

兵器の進歩という意味で最も驚かされたのが、AGS=Advanced Gun Systemと呼ばれる米軍が開発中の軍艦の艦砲システムだ。

軍艦はもう旧時代の遺物だと思っていたが、AGSが配備されれば一挙にコストの安い最新鋭精密攻撃手段としてよみがえる。

YouTubeにもシミュレーション映像が載せられているが、従来15−30KM程度だった艦砲の射程を、GPS誘導やレーザー誘導装置を持つ精密誘導弾を発射するシステムに変えることによって70−180KMにまで拡大している。



精密誘導155ミリ砲弾で、移動中の車両一台一台でも砲撃できるという、恐るべく効率の良いシステムだ。

100キロ前後離れたところから発射された砲弾が、移動中の自動車まで正確に砲撃できるというまさに「天網恢々(てんもうかいかい)」の、天から降ってくる砲弾だ。

海上自衛隊でも島嶼(とうしょ)防衛用に艦載砲を積極活用する方法を研究、実用化すべきだろうと江畑さんは語っている。


豊富な軍事知識を元に、自衛隊と世界最新の軍備についてわかりやすく説明しており、参考になる。是非一読をおすすめする。


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その時自衛隊は戦えるか 自衛隊の実力がわかる

終戦記念日特集の最後のパートは自衛隊の研究だ。いくつか自衛隊の実力についての本を紹介する。

そのとき自衛隊は戦えるかそのとき自衛隊は戦えるか
著者:井上 和彦
販売元:扶桑社
発売日:2004-03-30
おすすめ度:4.0
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自衛隊につき数々の記事を書いている井上和彦さんの自衛隊の分析。

ゴーマニズムの小林よしのり氏の推薦文が帯に載っているが、「自衛隊が生まれて50年、わしらはもっと真実を知らなきゃいかん」と。

この本はあたらしい歴史教科書で独自路線を歩む扶桑社が出版しており、著者の井上さんは小学館のSAPIOや産経新聞社の『正論』などで記事を書いている。

右寄りの本ではあるが、逆に自衛隊の真実の姿を広く知らしめる動きが、扶桑社、SAPIO、正論、産経新聞などに限られているのは逆に問題だと思う。

たしかに日本国民は自衛隊をもっと知るべきだと思う。そんなことを考えさせられる本である。


北朝鮮こそ自衛隊生みの親

実は北朝鮮こそ自衛隊の生みの親だ。1950年朝鮮戦争が始まり、北朝鮮が韓国に向けて侵攻を開始したときに、日本政府に対してGHQはいわゆるマッカーサー書簡を送り、警察予備隊の創設を指令した。

海上自衛隊は旧海軍の伝統を継承している。ラッパも海上自衛隊は海軍と同じだ。

これに対し陸上自衛隊は当初旧軍の伝統を排したので、ラッパも陸軍のものを踏襲してない。

空軍はもともと存在していなかったことから、旧陸軍と旧海軍の名パイロット達が集結したのだ。


自衛隊の戦力

自衛隊の国防費は世界第3位で、アメリカ、ロシアに次ぐ規模。第4位は中国だ。但しGNP比では主要国が2−3%であるのに対し、日本の自衛隊は1.0%だ。

防衛白書の内容がウェブで公開されているので、ご興味のある方は見て頂きたい。

総兵員数は24万人で、中国の10分の1、世界第22位だが、装備は最新鋭のものばかりだ。

戦車は最新式の90式戦車を中心に、1,020両。AH1S攻撃ヘリは89機。輸送・偵察ヘリは422機。

90式戦車

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出典:以下特注ない限りWikipedia

AH1S(コブラ)攻撃ヘリ

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特筆されるべき対潜水艦戦闘能力

海上自衛隊は護衛艦54隻、潜水艦は16隻。掃海艇31隻、高速ミサイル艇7隻。

対潜戦闘能力は突出としており、有効射程100キロを超えるハプーン空対艦ミサイルを4発、対潜魚雷8発を搭載できるP3Cオライオン哨戒機を99機、SH60J哨戒ヘリを97機も保有している。

P3オライオン

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SH10哨戒ヘリ

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出典:中央日報

これらの哨戒部隊はソナー等の4種類の各種探知機を完備しており、ロシアや中国の潜水艦のスクリュー音をすべて記録している。

中国の潜水艦は浅い大陸棚で活動せざるをえないが、すぐに自衛隊の哨戒機に探知されてしまうだろう。

米軍でもP3C保有機数は全世界で200機ということなので、いかに自衛隊の対潜水艦戦闘能力が突出しているかよくわかる。


航空自衛隊は戦闘機361機だが、世界最強のF15や日米合作のF2、F4J改などで構成されている。輸送機59機、迎撃ミサイルは6個高射群ある。

これら日本の軍用機の写真を集めたKenny's Mechanical Birdsというサイトがあるので、ご興味があれば見ていただきたい。


自衛隊には7つの世界一があると。それらは次の通りだ:

1.実戦経験が育てた掃海技術

2.海上自衛隊のお家芸対潜作戦

3,原子力潜水艦に劣らない通常型潜水艦戦力

4.先端技術の結晶F2戦闘機(炭素繊維の一体成形とアクティブ・フューズド・アレイレーダーなど)

5.米軍を驚愕させた100発100中のハイテク・ミサイル(SSMー1地対艦ミサイルなど)

国産ミサイルをまとめているMISSILEの解説というサイトがあるので、ご興味あればご覧頂きたい。

6.F15戦闘機を世界最強たらしめる一流パイロットと整備員

7.自衛隊員こそ真の世界一(全将兵が高校以上の教育を受けている志願制の自衛隊は世界でも珍しい。しかも入隊競争率は3倍、幹部候補生学校の競争率は43倍)

対潜戦闘能力に優れた自衛隊と空母をはじめ空軍力を中心とした米軍のコンビネーションは補完関係にあり、極東アジア地域の安全保障の要となっているのだ。


これからの自衛隊

これからの自衛隊では2007年度から導入される予定のイージス艦、情報収集衛星、パトリオットミサイルを使ったBMD(弾道ミサイル防衛)が今後の目玉だ。


北朝鮮の工作船対策

新型ミサイル艇はやぶさ級は76mm砲一門と、射程距離100キロ以上の対艦ミサイル4発、12.7mm機銃2丁の装備を持ち、スクリューでなくウォータージェットで最高時速44ノットを出すことができる。

ミサイル艇はやぶさ

はやぶさ





自衛隊もし戦わば

仮想敵国として次が想定され、それぞれのシナリオが紹介されている:


1.中国人民解放軍 

空の戦いで日米連合軍は圧勝、海でも自衛隊の対潜水艦作戦で封じ込め。空と海で圧倒され、中国陸軍は手も足も出ず。

中国は莫大な国防費を注ぎ込んで兵器の近代化に努めているのに、そんな中国にODAを継続する必要があるのかと議論している。

しかし侮れないのは中国の宣伝力であると。中国の対日外交カードが靖国問題であることはたしかだ。


安全保障装置としての靖国神社?

平成14年の産経新聞で評論家の櫻田淳氏が「靖国神社は兵士の志気を支える仕組みの中核に位置づけられるべき装置である」と語っている。

この本には紹介されていないが、櫻田発言には神道の國民新聞から次のように批判を浴びている

「靖国神社の本質は、国事に殉じた畏き英霊に対しての祭祀を行ふことであり、これが『安全保障政策を最も根本のところで支える『装置』』 と看做されるのは、あくまでも結果論としてにしかすぎず、本末転倒の観点と云ふ他はない。」

この論争はともかく、靖国問題を中国が執拗に取り上げるのは当然のことながら、深い戦略があるわけであり、善し悪しはともかく、中国に宣伝機会を常に与えることが適当なのか、次の首相は考え直す必要があるだろう。


2.北朝鮮 

ほとんどが旧式兵器の北朝鮮だが、唯一脅威なのは超旧式のAN2型アントノフ布貼り複葉プロペラ機を多数保有していることだ。

これは12名の人員を空輸することができ、300メートルという短距離で離着陸できる。超低空を飛行するためレーダーに捕捉されにくく、陸続きの国には大変な脅威であるが、日本海を隔ていれば日本にとっては脅威ではない。

村上龍の「半島へ」にもこのアントノフが北朝鮮軍来襲手段として描かれているが、実際にはなんの遮蔽物もない海上ならレーダーに捕捉されてしまい、小説のようなことにはならないのだ。


この本のタイトルは『そのとき自衛隊は戦えるか』だが、これを読むと自衛隊は極東地域の安全を保障する有効な戦力になっていることがよくわかる。

日本は武器を輸出することができないので、全世界に輸出して生産コストを下げることができる米国の兵器に比べ国産兵器は数倍コストがかかるといわれている。

だからといって本当に3倍とかが妥当かという点は防衛施設庁の官製談合の件もあり、今後厳しく追及される必要があるだろう。

国産兵器はコストが高いので、配備数は少ないが、このように米軍との補完を考え、メリハリのきいた最重要戦略に従った配備をしていれば、非常に有効な戦力となることがよくわかる。

いままであまり自衛隊のことを研究したことがなかったが、簡単に読めて自衛隊の実力がわかる良い本であった。

次は別の角度からの戦力分析を紹介する。


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日本海軍の戦略発想 ”マベリック”海軍参謀の敗戦分析と反省記

+++今回のあらすじは長いです+++


今回は元海軍参謀の敗戦分析を紹介する。日本海軍の敗因はいくつもあると思うが、この本は系統立てて説明していて、大変参考になる。

日本海軍の戦略発想日本海軍の戦略発想
著者:千早 正隆
販売元:プレジデント社
発売日:2008-12
おすすめ度:5.0
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最後の海軍大学卒業生で、終戦の時に連合艦隊砲術参謀中佐だった千早正隆さんが昭和22年に書いた日本海軍の反省記の改訂版。プレジデント社で1982年に発売され、1995年に文庫本になっている。

読んだのは中公文庫版だが、2008年12月に、プレジデント社から再発売されている。たぶん日本海軍の戦略の失敗の現代的意味を問い直そうということだろう。

千早さんは戦後GHQの戦史室調査員となり、このブログでも紹介した「ミッドウェーの奇跡」などを書いたGHQ戦史室長ゴードン・プランゲ博士の調査に協力した。

この本は英訳されて、多くの英語の戦史研究に引用されている。


千早さんはいわば”マベリック”

映画トップガンを見た人は覚えているだろうか?トム・クルーズが演じる主人公のコードネームが”マベリック”だ。マベリックとは、異端者、へそまがりという意味で、千早さん自身も自らの性格をそう評している。



たとえば千早さんはアメリカ人の戦争観を知るためにシンガポールで押収した「風とともに去りぬ」を見たいと、海軍大学時代に言いだしたが、さすがにこれは認められなかったという。

次にクレマンソーを研究したいと言い出して、クレマンソー研究家の酒井陸軍中将を招いて講演をしてもらったら、酒井中将は大東亜戦争出直し論を2時間論じたという。

クレマンソーといえば、「皇族たちの真実」で終戦直後の総理大臣に就任した東久邇宮稔彦王が、フランス留学時代に親交のあった元首相のクレマンソーに警告されたという話を思い出す。

「アメリカが太平洋へ発展するためには、日本はじゃまなんだ。(中略)アメリカはまず外交で、日本を苦しめてゆくだろう。日本は外交がへただから、アメリカにギュウギュウいわされるのにちがいない。その上、日本人は短気だから、きっとけんかを買うだろう。

つまり、日本の方から戦争をしかけるように外交を持ってゆく。そこで日本が短気を起こして戦争に訴えたら、日本は必ず負ける。アメリカの兵隊は強い。軍需品の生産は日本と比較にならないほど大きいのだから、戦争をしたら日本が負けるのは当たり前だ。それだからどんなことがあっても、日本はがまんをして戦争してはならない」

まさにクレマンソーの警告した通りの展開になったわけだ。


海軍大学卒業に際して放校になりかける

海軍大学卒業に際して、教授連に対して、ほとんど造反ともいえるマベリックぶりを見せた。

千早さんたち学生に意見を求められたので、千早さんは海軍大学の教育方針を独善的で各科バラバラであると評した。

科学的に戦争そのものを分析して、日米戦の対策はどうあるべきかという大命題の下に、あらゆる科目を統合して研究すべきで、艦隊の運動の研究などはその一部にすぎないと書いた。

「現在の戦況の苦境もつまるところ、研究に不真面目であったためである。深く戒む(いましむ)るところがなければならない」と要約したら、翌日学生全員が集められ、主任教官より名前を挙げて譴責されたという。

処分の話も出たが、同期生全員がかばってくれたのと、校長が代わったので処分なしで終わったという。


参謀としてもマベリック

参謀としても並み居る海軍大学出身参謀たちと対立して、ビアク島防衛の重要性を強調し、「ビアク気違い」と呼ばれたりしたという。

ちなみにビアク島には1万人の兵力が駐留し、米軍の攻撃までに十分陣地を構築する時間がなかったにもかかわらず、善戦して米軍を手こずらせたのでマッカーサーは激怒し、指揮官を子分のバターンボーイズの一人のアイケルバーガー中将に代えている。

マッカーサーが厚木飛行場に乗り込んできた時に、ぴったり寄り添っているのがアイケルバーガー中将だ。

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出典:以下特記ないかぎりWikipedia


千早さんの経歴

千早さんは昭和2年の海兵第58期生。昭和5年に海兵を卒業後、すぐに艦隊勤務となり、駆逐艦、巡洋艦などの現場を経験し、砲術学校での学習を経て巡洋艦・戦艦の対空砲の分隊長となった。

千早さんの書いた艦隊防空のレポートは、海軍省の昭和16年の最優秀作品に選ばれたという。

千早さんは戦艦大和の艤装作業に立ち会い、大和は1トン爆弾の直撃にも堪えるように全体を装甲200ミリの鉄板で覆っているのに、巡洋艦から転用した副砲塔の装甲は30ミリしかないことを指摘したという。

戦争が始まると戦艦比叡に乗艦し、昭和17年11月の第3次ソロモン海戦で比叡が夜間探照灯砲撃で集中攻撃を受けた際に千早さんも両手の親指を負傷するが、奇跡的に指はつながり、内地で病院生活を送った。

比叡は切手にもなったので、筆者も亡くなった叔父に貰って、この満州国建国記念の切手を今でも持っている。

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昭和18年7月から海軍大学校に学び翌19年3月に普通2年のところを8ヶ月で繰り上げ卒業し、艦隊参謀、連合艦隊作戦参謀として勤務し終戦を迎える。


千早さんがこの本を書いた理由

千早さんがこの本を書いた理由は、戦後多くの日本人、アメリカ人に次のような質問をされ続け、千早さん自身もその理由を解き明かしたかったからだと。

1.日本で米国のことを一番知っていたのは、日本海軍ではなかったか、その海軍がなぜ米国と戦争することになったのか。

2.アメリカンフットボールで同じ手を使って連敗するのは下の下といわれるが、日本海軍はなぜ同じ手を繰り返してその都度叩きのめされたのか。


米軍の攻撃で最も驚いた点

千早さんが連合艦隊参謀として勤務していて、米軍の攻撃で最も驚いたのは次の点であると。

1.B29による本土爆撃。超航空を飛ぶB29には対空砲も届かず、迎撃戦闘機も有効でなかった。

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2.B29による瀬戸内海への機雷敷設。これは「飢餓作戦」と呼ばれたものだ。使用された機雷は日本海軍が見たこともなかった磁気式、水圧式に度数式を組み合わせた新型のもので、特に低周波音響機雷には有効な掃海手段はなかったので、瀬戸内海はほとんど通行不可能となった。

まさに日本の首を真綿で絞めたのと同じ結果となった。

3.原子爆弾。連合艦隊作戦参謀だった千早さんでも原子爆弾の概念すら持っていなかった。慚愧(ざんき)に堪えないという。


この本の目次

目次を読めば大体この本の内容がわかると思うので、紹介しておく。

第1部 日本海軍の対米戦争に関する判断

 1. 日本海軍の仮想的は米国海軍

 2. 日米戦争に関する研究

 3. 戦術面のみに目が奪われた

 4. 不備だらけの日本海軍の戦務(戦務とは旧海軍用語で、索敵、偵察、海上輸送護衛、補給などの戦争するための諸準備のこと)

 5. 大局を忘れた日本海軍の戦備

 6. 陸海軍協同の不完全

 7. 戦争についての各種判断の誤り

第2部 戦争はかく実証した

 1. ハワイ海戦の戦訓

 2. 日本海軍の小手先芸

 3. 小手先芸の限界

 4. あと1ヶ月あったなら(ガダルカナルも敵に簡単に奪われることもなかったろう)

 5. 馬鹿の一つ覚え

 6. 偵察、索敵の軽視

 7. 追撃戦の宿命
    追撃戦で最後まで徹底的にやった戦例が乏しいのは、徹底性を欠く国民性にあると千早さんはいう。

 8. 慢心と増長の悲劇
    ミッドウェー海戦が典型例である。作戦の根本思想、敵空母出現の可能性の未検討、索敵の不備など、暗号が解読されている以外にも慢心と増長は多い。

 9. 美辞麗句が多くなった作戦命令

10. 用法を誤った潜水艦戦と時代遅れの対潜作戦
    日本の船腹量は約1千万トンだったが、戦争で喪失した船腹量は800万トン、このうち潜水艦の攻撃によるものが全体の57%、航空機が31%、触雷が7%、敵の砲撃はわずか2万トンにすぎない。

    B29と潜水艦の前に日本の戦力は崩壊したといえる。

11. 補給戦に敗れた
    ニューギニア戦線では14万人が補給もなく投入され、実に13万人が死亡したが、戦死はわずか3%で、残りは餓死、戦病死だった。

12. 誤った作戦で犠牲になった設営隊
    昭和19年、暗号が解読されていると千早さんは疑い、わざわざ「長官の名前の画数を足した日」というような指令をだしたが、島の防衛隊からの返信に「では○○日のことか?」と打ち返してきて頭を抱えてしまったという。結局敵に待ち伏せされたという。

13. 軽視した情報、防諜のとがめ

14. 甘かった人事管理

第3部 総まとめ

 1. 後手、後手となった作戦計画

 2. 完敗に終わった「あ」号作戦「捷」号作戦
 3. 水上部隊の悲惨な最期 戦艦大和が片道の燃料で向かったという話は実は誤りで、実際には簿外の在庫を呉の機関参謀がかきあつめ、往復に必要な燃料を積んで死出のはなむけとしたのだと。これでほとんどの艦船を沈められて、燃料もなく日本海軍は静かに死を待った。

 4. マクロ的な考え方と総合性の欠如

 5. 物量の差だけではなかった

 6. 教育に根本の問題があった

いくつか参考になった点を紹介しておく。


日本海軍の仮想的は明治以来米国海軍

明治40年、日露戦争の2年後に決定された「帝国国防方針」では日本の仮想敵は陸軍はソ連、海軍は米国とされた。

米国は日本海軍が兵力を増強するための目標敵であったが、実際に昭和12年南京攻略時に日本の爆撃機が間違って米国の砲艦バネー号を撃沈した時には、米国に陳謝するとともに多額の賠償金を支払った。あくまで仮想敵であって、本当に米国と戦線を開くことなど考えてもいなかったのだ。

ところが三国同盟に猛反対していた米内海軍大臣が昭和15年に及川海軍大臣に交代すると、海軍は簡単に三国同盟に賛同し、一挙に対米戦が現実味を帯びてくる。

昭和14年9月の第2次世界大戦勃発以降、対米関係は悪化の一途をたどった。ナチスの傀儡のヴィシー政権の承認を強引に得た昭和16年7月の南仏印進駐が引き金となって、米国が在米資産凍結、石油全面禁輸を発表し、海軍は対米戦の準備を開始した。

いわゆる月月火水木金金の猛訓練だが、この時も大口径砲の戦艦で敵を迎え撃つ艦隊決戦が戦略の中心で、潜水艦の船団攻撃や船団の対潜護衛の演習は皆無だったという。


太平洋戦争開戦時の連合艦隊の戦力

太平洋戦争が始まった時の連合艦隊の戦力は次の通りだ。これは戦艦と潜水艦こそ米国の6割を切っていたが、航空母艦と重巡洋艦では米国と肩を並べる兵力で、これにくわえて大和、武蔵の巨大戦艦2隻が加わった。

戦艦   10隻
航空母艦  9隻
重巡洋艦 18隻
軽巡洋艦 18隻
駆逐艦  90隻
潜水艦  55隻
潜水母艦  3隻
水上機母艦 2隻
合計   133万トン(基準排水量)

対米戦のために長年兵力を整備した結果だった。日本海軍は米軍に比肩しうる戦力を持っていたことがわかる。

ちなみに今度あらすじを紹介する佐藤晃さんの「太平洋に消えた勝機」という非常に面白い本の巻末に、「日米主要艦の戦力推移」という表が載っているので、紹介しておく。

太平洋に消えた勝機 (光文社ペーパーバックス)太平洋に消えた勝機 (光文社ペーパーバックス)
著者:佐藤 晃
販売元:光文社
発売日:2003-01
おすすめ度:4.5
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日米主要艦推移







出典:本書230ページ

この表を見ると、日本は戦争の後半でほとんどの艦船が撃沈されているのに対して、アメリカは真珠湾で戦艦2隻、1942年に空母が4隻沈没した他は、1942年以降戦艦の喪失ゼロ、1943年以降は主要艦船の喪失ゼロという状態が続いていたことがわかる。

日本側の一方的敗北だったことがよくわかる表である。昭和19年のマリアナ沖海戦は「マリアナの七面鳥撃ち」を言われ、日本艦船を米軍が面白いように葬ったが、かくも一方的な敗北だと本当に「バカの一つ覚え」と言わざるを得ない。

実はこの表は正規空母までで、米国が圧倒的な産業力を注力して大量に製造した1万トン級のリバティー船と8,000トン級の護衛空母や軽空母が含まれていない。

リバティ船は戦後構造的欠陥が判明したが、溶接を使わず、鉄板をリベット接合して、わずか42日で完成し、戦時中実に531隻が建造された。

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護衛空母100隻以上が建造され、ドイツ潜水艦の脅威を封じ込めるのに成果を上げた。

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日露戦争以来の大鑑巨砲主義の旧弊が支配した海軍

日本の大鑑巨砲主義という伝統は崩せず、開戦時の10名の艦隊長官のうち、4名が鉄砲屋(砲術出身)、4名が水雷屋、1名が航海屋、1名が航空屋だった。

唯一井上成実(しげよし)第4艦隊長官が昭和16年1月に「航空兵力の充実、海上護衛兵力の大増強、南方島嶼(とうしょ)の守備の強化」という正鵠を得た「新軍備計画論」を訴えたが、大鑑巨砲主義の主流派から無視される結果となった。


馬鹿の一つ覚えの艦隊決戦でのアウトレンジ戦法

日本の戦法は敵の射程距離外から砲撃して敵を撃滅するというアウトレンジ戦法で、これがため世界最大の46センチ主砲を持つ大和・武蔵を建造したものだ。

この巨大戦艦はパナマ運河を通行できないため、アメリカのように大西洋と太平洋両方に面している国は機動力が生かせないので、アメリカは同じサイズの戦艦をつくれないと見られていた。

そうすると大和・武蔵の46センチ砲はアメリカ戦艦の40センチ砲よりも射程距離が長く、それがためアウトレンジ戦法で勝利できるというシナリオだった。

しかしアウトレンジ戦法が度が過ぎて、射程距離を縮めて命中確率を上げようという積極性に欠け、レーダー測敵機もないので、遠距離から射撃しても非常に悪い命中率にとどまっていた。

たしか大和の大砲は小田原から撃って、東京に届くという話を聞いたことがある。射程距離は最大42キロだという。しかし、現実問題そんなに離れていては光学照準機では到底ねらえない。

戦争中の艦隊決戦の例では、昭和17年のジャワ沖海戦では、日本の重巡洋艦は敵の15センチ砲にまさる20センチ砲を持っていたので、アウトレンジ戦法で砲撃したが、数百発の20センチ砲弾のうち1発が敵に命中しただけだった。

次に戦艦2隻が36センチ砲を打ち込んだが、300発撃って一発も命中しなかった。

アッツ島ではまたもアウトレンジ戦法で、900発撃って5発しか命中しなかった。

昭和19年のレイテ沖海戦では、栗田艦隊の戦艦大和と長門が最初で最後の砲撃を敵艦隊に浴びせるが、大和は約100発、長門は45発撃ち、金剛、榛名がそれぞれ100発づつ撃ったにもかかわらず、敵駆逐艦を1隻沈め、1隻を大破させただけだった。

アメリカ側はレーダー測敵器があるので、照準は正確だったようだ。これが前記の表の圧倒的な日米の艦艇損失の差になるのだ。


不備だらけの日本海軍の戦務

戦務とは旧海軍用語で、索敵、偵察、海上輸送護衛、補給などの戦争するための諸準備のことである。

燃料は海軍は当初の2年分の燃料は備蓄して戦争に臨んだと言われているが、実際には開戦時の備蓄は600万トンだった。

必要な燃料量を年280万トンと見込んで戦争に突入したが、実際には年500万トン近くを消費し、南方などからの石油供給も海上輸送路を攻撃されて満足にできなかった。昭和17年後半以降は常に燃料に苦しめられることとなった。

燃料備蓄量以外にも、日本艦船は日本近海の艦隊決戦を想定して建造されているので、航続距離に問題があったという。

さらに問題なのは弾薬で、開戦時に艦艇に定数通りの量を配給したら、弾薬庫には25ミリ機銃弾がなくなり、その後も弾薬の不足は解消されなかった。

日本海軍の対空砲の弾薬定数は高角砲200発(約10分)、機銃1,500発(約10分)のみで、撃ち尽くしても補充は受けられなかった。

これも艦隊決戦で大砲には一門の大砲が発射する弾数に限度があるので(大口径砲では120発。それ以上だと大砲が焼き付いてしまう)、それと同じ考えを対空火器まで適用したことが問題だった。

この点では相当期日にわたる会戦を単位に弾薬を準備していた日本陸軍の方がましだったと千早さんは語る。


日本は潜水艦による近代戦を理解しなかった

日本の潜水艦戦略には通商破壊戦の考え方はなく、艦隊決戦のみを想定していた。それでも対潜水艦対策は皆無だった。

「享楽的で質実剛健に乏しい米人は、困苦欠乏をもっとも必要とする潜水艦の乗員には適しない。従って、米国潜水艦はあまり恐れる必要はないだろう」とたかをくくっていたという。

有名な米国海軍のフロスト中佐は逆に「潜水艦は米人の使用に好適の艦種である。なんとなれば、米人は敏活、果断、独創に富み、潜水艦の乗員に最適な性質を具備している。われわれ米国海軍軍人は、潜水艦戦において、世界いずれの海軍軍人も凌駕することができる」と語っているという。

まさに日本の見方と正反対だが、これが結果的に真実となった。前述の「日米主要艦の戦力推移表」でも、米国潜水艦に沈められた空母や戦艦が多いことがわかる。

排水量わずか2,000トン程度の潜水艦が、3−5万トンの戦艦や航空母艦を葬り去るのである。実に効率のよい戦いである。

ノックス米海軍長官は「日本は近代戦を理解しないか、あるいはまた近代戦に参加する資格がないか、いずれかである」と語っていたという。


海軍大学の画一的で時代遅れの教育

千早さんは昭和18年7月に海軍大学に入学し、9ヶ月で繰り上げ卒業している。卒業したときはギルバート、マーシャル諸島は敵手に落ち、ラバウルも秋風落莫の状態だったという。

明治につくられ、最終改訂が昭和9年の最高機密「海戦要務令」が絶対規範として生きていた。

これは艦隊決戦主義で、航空部隊も潜水艦部隊もそれを支援するという域を出ていなかった。もちろん通商破壊もなく、対潜水艦作戦もない。いかに日本海軍の用兵者の考えが硬直的だったかがわかる。

海軍大学の戦略、戦術の研究は机上演習に終始し、日米海軍の決戦を想定した自己満足のものだった。

決戦が起こるのか、決戦が起きたら戦争は終わるのか、負けたらどうなるのかといった問題はまじめに研究されなかった。

おまけに机上演習ではゼロ戦は1機でヘルキャット10機に相当するなどという、ありえない前提が演習統監により出されていたという。

千早さんは海軍大学で教育を受けた画一的なエリートが参謀なり司令官なりになって戦争を指導したことが、日本海軍の敗因であると推論している。

アメリカ軍は日本軍の敗因は、チームワークの欠如にあったと分析しているという。マクロ的かつ長期的な総合性と計画性を欠く日本人特有の結果に基づくのではないかと。

たしかにたまたま真珠湾で大勝利してしまったがゆえに、徹底性を欠く一般的な日本人の性格、オペレーションリサーチマインドというか、科学的な彼我の戦術の分析の欠如が、敗戦につながったことは否めないと思う。

いろいろな戦記もののタネ本ともなっている本で、昭和22年に最初の原稿が完成し、まだ戦争の記憶が生々しいなかで書かれたこの本は、冷静な分析と反省に満ちている。

プレジデント社から2008年末再度発売されたことでもあり、是非一度手にとって見て欲しい本である。


参考になれば次クリック願う。




日本に足りない軍事力 本当に有効な戦力とは何かを考えさせられる

日本に足りない軍事力 (青春新書INTELLIGENCE)日本に足りない軍事力 (青春新書INTELLIGENCE)
著者:江畑 謙介
販売元:青春出版社
発売日:2008-09-02
おすすめ度:3.5
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終戦記念日が近づいているので、現在の日本の自衛隊の戦力をわかりやすく解説した本を紹介する。

この本は昨年急逝した江畑謙介さんの作品だ。

来週北朝鮮が人工衛星打ち上げロケット(テポドン?)を発射すると発表しているが、テポドンが発射されたらミサイルで迎撃する可能性もあるので読んでみた。

この本では最新の軍事技術や武器の多くが写真入りで紹介されていて参考になる。

様々な角度から日本の軍事力を分析すると、軍事費の面では世界第3位かもしれないが、戦闘機や戦車、イージス艦など正面装備は世界トップクラスのものを装備していても、本当の戦闘能力、国としての脅威に対処する戦略という意味で日本には大きな問題があることがわかる。

国家の安全保障上の義務は、予想される脅威に備えることだが、日本は予想される脅威に準備をしていない点が多い。

たとえば北朝鮮の脅威は弾道ミサイルだが、日本は1993年のノドン発射自体も米軍から教えてもらって初めてわかったありさまで、1998年のテポドン発射まで日本の体制に大きな変わりはない。

米国からパトリオットミサイルと軍艦から発射するスタンダードSM−3ミサイルを整備して、今度は北朝鮮の弾道ミサイルは迎撃できると言っているが、はたしてそれができるのか。

弾道ミサイルの発射を監視し、早期発見する軍事衛星網はすべて米国に頼っている。2008年に宇宙基本法が成立したので、日本も早期警戒衛星を持つ道が開けたが、江畑さんは衛星でなくともたとえば無人飛行船でも早期警戒はできると語る。

巡航ミサイル防衛もできていない。

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トマホーク巡航ミサイル

出展:Wikipedia

北朝鮮がウクライナから巡航ミサイルを買って、核攻撃能力を備えたというのが、手嶋龍一さんの「ウルトラダラー」のストーリーだが、日本は超低空で飛行する巡航ミサイルの迎撃体制はない。

ウルトラ・ダラー (新潮文庫)ウルトラ・ダラー (新潮文庫)
著者:手嶋 龍一
販売元:新潮社
発売日:2007-11
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


防衛庁は巡航ミサイル探知能力に優れるF−22導入を進めたい考えだが、巡航ミサイルを探知するために超高価でしかも米国が販売を許可しないF−22導入を考えるのは誤りだと江畑さんは指摘する。

F-22






出展:Wikipedia

早期警戒機や、早期探知気球など安価なソリューションが他にある。

日本には長距離地上攻撃能力も対地精密攻撃能力もない。北朝鮮の基地を叩こうといっても、どだい無理な相談なのである。

総合作戦能力もない。帝国陸軍、帝国海軍の連携の悪さを引きずり、陸上自衛隊のヘリコプターを船内に収納できる護衛艦はない。

専守防衛に反するとして、パワープロジェクション能力(短時間に兵員を投入できる能力)を整備していない。だから国際的な人道活動や平和維持軍などにも迅速に対応できない。

サイバー戦の準備も後手だ。2008年3月に自衛隊に「指揮通信システム隊」を発足させ、サイバー戦の準備を始めたが、中国などのサイバー攻撃に十分な防御ができるのかは疑問だ。

このような日本の軍事力の問題点がわかりやすく指摘されている。


最新の軍事技術

江畑さんが解説する最新の軍事技術で特筆すべきものを紹介しておく。

●飛躍的に上がった爆弾必中率

爆弾のCEP(半数必中率)はレーザー誘導と衛星誘導(GPS)の導入により飛躍的に向上している。たとえば1999年のユーゴ空爆ではGPS誘導爆弾のJDAMのCEPは実質3−4メートルになっているという。

これだけ必中率が上がると大型の爆弾を使用する必要はなく、小型の爆弾で良い。


●無人兵器の発達

ラスベガスの基地から誘導されてアフガニスタンやイラクで活躍しているプレデターは、トム・フリードマンの「フラット化する世界」でも紹介されていたが、これの改良型がリーバースカイ・ウォリアーだ。プレデターはヘルファイアーミサイルを搭載しており、リーバースカイ・ウォリアーは大型化され、ミサイルと爆弾まで搭載できる。

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プレデター

出展:Wikipedia

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リーパー(死に神の意味)

出展:Wikipedia

短距離空対地ミサイルの代表がヘルファイアーで、誘導装置も初期のレーザー誘導型から、ミサイル先端部分の誘導装置を交換すれば赤外線誘導型、ミリ波レーダーを使った画像認識誘導型にもできる。

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ヘルファイアーミサイル

出展: Wikipedia

ヘルファイアーはイギリスで改良され、プリムストーンミサイルになった。射程が7キロから12キロに伸び、弾頭はタンデム型(2段型)で、爆発反応装甲(ERA)に対する破壊力が増大している。次の写真の戦車に煉瓦のように積まれているものがERAだ。

先端の弾頭で戦車のERAを爆発させ、防御能力を減衰させてから2段目の弾頭ば戦車の装甲を貫通して爆発するのだ。

ERA






爆発反応装甲(ERA)

出展: Wikipedia

ブリムストーンミサイルは目標の自動発見、捕捉、攻撃能力を持つので、ファイア・アンド・フォゲットの攻撃が可能で、敵のフレア(赤外線妨害弾)やチャフ(レーダー妨害材)がある環境でも的確に目標を捉え、攻撃できる能力が増している。

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ブリムストーンミサイル

出展: Wikipedia

複数の目標にも1発ずつ個別に攻撃できるような誘導装置のアルゴリズムが開発され、一つの目標に複数のミサイルが命中するという無駄がなくなった。同志討ち防止や、家のような動かない目標は攻撃しないとか、水面上の船のような大きい目標のみ狙うとかといった設定もできる。

このような自律誘導型のミサイルを多数発射されると、地上部隊はよほど遠方から攻撃機を察知しないと、一方的にやられるままになるおそれがある。


●低コストで戦力アップーロケット弾のミサイル化

第2次世界大戦から使われてきたロケット弾も弾頭部にフィン付きのレーザー誘導装置やGSP誘導装置を取り付けると安価な精密誘導型ロケット弾になる。

自衛隊も持っているMLRS(多連装ロケット弾システム)の先端の弾頭を取り替えるだけで、小型精密ミサイルになり、射程が70キロと長いので”70キロ狙撃銃”に変身できるのだ。

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ハイドラ・ロケット弾

出展: Wikipedia


このように手持ちのロケット弾を精密ミサイルに安価に転換する武器が開発され、米軍が大量発注している。


●対レーダー兵器・無人兵器のない日本

日本の自衛隊ではARM(対レーダー攻撃ミサイル)ももっておらず、敵のレーダーを攻撃する兵器を持っていない。これでは危なくて航空機は戦場には近づけない。

これを見ても自衛隊は戦闘機や戦車、ミサイルなどの正面装備の調達には積極的だが、本当に有効な武器の調達には積極的でないと言わざるを得ない。

プレデターなどの無人兵器を展開するには、米国の様な陸軍・海軍・空軍が一体となった統合防御システムを構築する必要があり、これには多額の費用がかかることは間違いない。

しかし米国のソフトをライセンス導入するにしても、これらは日本企業で構築可能であり、今のような不況時にはF−22などに一機数百億円使うよりは、無人機による偵察・防衛システムを構築する方が景気対策にもなり、コスト的にも実効性の高い防御システムではないかと思う。

遠隔操作で操縦する操縦士の育成も必要だが、無人機の操縦士はジェットパイロットの様に身体も頑強である必要はないので、育成のコストも全然違うと思う。(もっとも無人機のパイロットは長時間勤務でメンタル面では結構つらいらしい


●サイバー戦争も現実化

1999年のユーゴ空爆では、実際には存在しないNATO軍機が到来するような偽の情報を米空軍はユーゴの防空システムに送り込み、別の方向から航空部隊を進入させたという。

この種のサイバー攻撃は、2007年のイスラエル軍がシリアの北朝鮮型黒鉛原子炉を爆撃する作戦でも、シリアの防空システムを無力化する手段の一つとして利用されたという。

2007年4月にはエストニアがサイバー攻撃にさらされ、約3週間政府機能や、銀行、携帯電話などのインフラが停止した。エストニアはE-stoninaと名乗るほど、国家としてIT化を進め、電子政府化でペーパーレスになっており、国政選挙にもネット投票が導入されているほど先進的だが、そのネットワークの脆弱部分が攻撃されてしまったという。


最新の軍事技術が写真入りで紹介されており、軍事予算が削減されている環境下で、各国とも低コストで有効な軍事力を備えるため、開発にしのぎを削っていることがよくわかる。

日本の自衛隊も安価で実効性の高い軍備を保有する必要があるのではないか。

田母神さんも指摘しているが、特に海岸線の長い日本で最も有効で、自衛隊が大量に保有しているクラスター爆弾を、国際条約に従い人道的でないとして廃棄するのは、筆者は間違いだと思う。米国・ロシアはクラスター爆弾禁止条約を承認していない。

現代の武器はもとより使う前提で配備するのではない。クラスター爆弾の持つ北朝鮮に対する抑止力は絶大なものがあると思う。安価で実効性の高い軍備ということではこれにまさるものはない。


ともあれ、日本の軍事力について考えさせられる本である。是非一度手にとってページをめくってみることをおすすめする。


参考になれば次クリックお願いします。



日本は原子爆弾をつくれるのか 海外在住の学者だから書ける原爆本

広島・長崎の原爆記念日が近づいている。今年はルース米国大使がはじめて広島の式典に参加することが話題になっている。

広島・長崎市民の念願の、オバマ大統領の原爆式典参加が現実味を帯びてきたと思う。

原爆記念日の前に、原子爆弾についての本を紹介する。

日本は原子爆弾をつくれるのか (PHP新書)日本は原子爆弾をつくれるのか (PHP新書)
著者:山田 克哉
販売元:PHP研究所
発売日:2009-01-16
おすすめ度:1.5
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原子爆弾や量子力学についてブルーバックスなどで入門書をいくつも書いているロサンジェルス・ピアース大学物理学教授の山田克哉さんの本。

どういうわけか原子爆弾についての入門書は、山田さんの本くらいしか見あたらない。海外在住の学者でないと自由に原爆について書けないのかもしれない。

この本はアマゾンのなか見検索に対応しているので、是非目次をチェックしてみてほしい。それぞれの項のタイトルまで読めば大体この本の内容が推測できると思う。

量子力学の基本から始めて、1938年ナチス時代のドイツで核分裂が発見され、ヒットラーが原子爆弾を開発することを恐れたアメリカがマンハッタン計画を立ち上げ、延べ45万人を投入して3年間で原子爆弾をつくりあげたこと。原子力発電技術と原子爆弾製造技術は全く異なるが、日本の技術をもってすれば3年から5年程度で原爆は作れる可能性があることなどを説明している。

しかし核武装についての国民のコンセンサスが得られないだろうし、たとえ原爆製造能力はあっても、日本は決して原爆製造をすべきでないと結んでいる。


放射能と放射線

原爆が怖いのは、爆発したときの衝撃波と超高熱もあるが、放射能放射線による人体への影響が長期間にわたって続くことだ。

放射線は放射性物質が放つもので、次の4種類がある。

1.アルファ線
ウランなどがアルファ崩壊するとエネルギーとともに、ヘリウム原子の核と同じ2個の陽子と2個の中性子が核から吐き出される。これがアルファ線で電荷(プラス)も質量もある。

アルファ線は物質や人体を構成している原子と激しい電気反応を起こす。人体に当たると皮膚で激しく反応し、呼吸器から吸い込まれると肺の細胞を壊し肺がんを誘発する。

2.ベータ線
核がベータ崩壊すると中性子が陽子に変わり、電子が核外に飛び出す。これがベータ線で、マイナス電荷をもつ。質量はアルファ粒子の1/7000。

ベータ線が人体に入ると原子から電子を弾き飛ばすので細胞が機能を失い、場合によっては細胞は死滅する。大量のベータ線が頭にあたると髪の付け根の細胞が死滅し、髪が簡単に抜けてしまう。

3.ガンマ線
核がアルファ崩壊、ベータ崩壊を起こした後、エネルギーの高いガンマ光子と呼ばれる粒子が核から吐き出される。これがガンマ崩壊で、放出されるのがガンマ線だ。電磁波なので電荷も質量もない。
  
ガンマ線も電子を吹き飛ばし、ベータ線のように細胞を死滅させることがある。

4.中性子線
核から中性子が時間をかけて飛び出すもの。電荷はないが質量はある。

中性子は核に吸収されやすく、中性子過剰になった核はベータ崩壊を起こし、元素自体が放射性物質に変化してしまう。


原子爆弾の構造

原爆には広島型(砲弾型ウラン爆弾)と長崎型(爆縮型プルトニウム爆弾)の2種類がある。

広島型はリトルボーイと呼ばれ、砲弾(ガン・バレル)型ウラン爆弾で、二つに分けたウラン塊を爆着させることで、臨界を起こし、核分裂を起こさせる。課題は核分裂の持続時間がせいぜい100万分の1秒程度と短く、多くの核が分裂しないまま爆発してしまうことだ。

リトルボーイの爆弾の重さは4トン、使われた濃縮ウラン(86%)は20Kgだ(Wikipediaでは約60Kgとなっている。どちらが正しいのか不明)。

Little_boy





出展:Wikipedia

一方長崎型プルトニウム爆弾はファットマンと呼ばれる球状の爆縮型で、真ん中がポロニウムとベリリウムでできた中性子発生体。次に直径4.2Cm,重さ6.2Kgのプルトニウム、まわりを厚さ7Cmのウランで固めている。

それをさらに燃焼速度の異なる二種類の爆薬でつくられた爆縮レンズで取り囲み、爆薬の衝撃波でプルトニウムの臨界をつくり核分裂を起こすのだ。

Fat_man





出展:Wikipedia


Implosion_Nuclear_weapon






出展:Wikipedia

次の図はアニメーションになっていて、爆縮する過程を示しているので、クリックしてみてほしい。

Implosion_bomb_animated








出展:Wikipedia

砲弾型より爆縮型の方が核分裂効率が高く、少ないプルトニウムあるいはウラン量で爆弾ができるので、こちらが主流だ。

爆縮レンズは2種類の爆薬を組み合わせた複雑な構造をしているが、これが可能となったのはフォン・ノイマンの数学的計算によるものだという。

アメリカは1956年に小型原爆の開発に成功し、スワンと名付けている。これは第三の原爆とも呼べるもので、英語でBoosted fission weaponと呼ばれている。重水素(D)と三重水素(T)のD−Tガスをプルトニウム球の中心に入れた構造のものだ。

D−T型原爆がもっとも効率が良く分裂比率が30%、長崎型で14%、広島型は1.4%だという。

その他の核兵器としては、核融合反応を用いた水爆、中性子爆弾(建造物に影響は少ないが、生物の細胞を破壊する)、コバルト爆弾(放射能汚染がひどい)、そして劣化ウラン弾がある。

湾岸戦争でも使われた劣化ウラン弾は、ウラン濃縮で残るウラン238を砲弾につかったもので、鉛の倍の比重があり貫通量が高く、敵の装甲を貫通するときに1200度の高熱を発するので、敵戦車の乗員を焼死させ、さらにウランが放射性微粒子となって空中に飛散するので、肺がんや白血病の原因となる。


原爆研究のはじまり

ナチス政権下の1938年にベルリンのカイザー・ウィルヘルム研究所で、オットー・ハーンリーぜ・マイトナーがウラン235のみに起こる中性子による核分裂を発見、この事実が一躍世界に知られた。当時世界では超ウラン元素の研究を至るところで行っており、日本でも理化学研究所が研究していた。

ハーンは戦争中の1944年にノーベル化学賞を受賞している。一方マイトナーはナチスの迫害をさけるためにスウェーデンに行っていたため、オットーハーンのみがノーベル賞を受けた。

核分裂が起こると、発生するエネルギーは化学反応の100万倍以上で、数百万度の温度になる。連鎖的に核分裂を起こさせると(臨界)巨大なエネルギーが生まれることがわかった。科学者達の頭に爆弾というアイデアが浮かんだのだ。

戦争に突入したこともあり、各国はそれぞれ独自に核爆弾の研究を始めた。日本でも陸軍は理化学研究所の仁科芳雄博士に原爆の研究を依頼し、二号研究という名前で、熱拡散法によるウラン濃縮技術を研究した。

海軍も「F研究」の名称で、有名な物理学者を集め、こちらは遠心分離法によるウラン濃縮を研究したが、結局ウラン濃縮には成功しなかった。

この過程でサイクロトロンを戦争中に完成させていたが、敗戦後占領軍がサイクロトロンを東京湾に投棄させた。

ドイツの敗戦直前の1945年3月にドイツを出たU−234号にドイツから日本に供与されたMe262ジェット戦闘機、ジェットエンジン、光学ガラス、航空機の設計図と装置類、そして酸化ウラン560Kgが積まれていたが、日本へ向かう途中にドイツが降伏し、艦長は投降を決定、乗船していた日本の技術将校二人は自決した。

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出展:Wikipedia

この話は別ブログで紹介している「深海の使者」という小説になっている。

深海の使者 (文春文庫)深海の使者 (文春文庫)
著者:吉村 昭
販売元:文芸春秋
発売日:1976-01
おすすめ度:5.0
クチコミを見る



マンハッタン計画

アメリカはナチスが原爆をつくることをおそれ、当時の金で20億ドルという巨費を費やして延べ45万人(うち科学者10万人)を動員して、原子爆弾の製造を1942年に始め、わずか3年間で原子爆弾を完成させた。これがマンハッタン計画だ。

マンハッタン計画では次の三カ所の研究所が新設された。

1.クリントン研究所(現オークリッジ国立研究所) テネシー州 
  ウラン濃縮のため、K−25と呼ばれた巨大なガス拡散法によるウラン濃縮工場で製造した濃縮ウランを、Y−12と呼ばれた電磁法(カルトロン)によるウラン濃縮工場にかけてようやく濃縮度90%近くの濃縮ウラン235を製造した。ここにはX−10と呼ばれた原子炉と熱拡散によるウラン濃縮装置も建設された。

その濃縮ウランはロスアラモス研究所に運ばれて、リトルボーイが完成した。リトルボーイは実験することなしに広島に投下された。

2.ハンフォード研究所 ワシントン州
  原子炉(黒鉛炉)によるプルトニウム239生産工場。ここのプルトニウム摘出装置は現在の核燃料再処理工場の原型である。

3.ロスアラモス国立研究所 ニューメキシコ州
  前述の爆縮機構を含む原子爆弾の起爆装置と本体を製造

ファットマンは、ハンフォード研究所の原子炉でプルトニウム239が製造され、ロスアラモス研究所で2個の爆弾がつくられ、1個で実験して威力を確認後、残る1個が長崎に投下された。

筆者の山田さんはテネシー大学の原子力工学科に留学したので、マンハッタン計画に使われたテネシー州のオークリッジ国立研究所に一年間通ったそうだが、その巨大さに驚いたという。

コードネームX−10もY−12も東大本郷キャンパスの3倍程度で、K−25に至っては本郷の10倍という広さで、研究所というより大工場を思わせたという。

アポロ計画もすごいが、ゼロから3年で原爆を完成させたマンハッタン計画は、ヒットラーが原爆を開発する前に完成させるという切迫感に迫られたプロジェクトだった。


原爆用のウラン製造

ウランは自然界に存在するものの、原子爆弾に使える放射性物質のウラン235はウラン鉱の0.7%のみで、残りの99.3%は安定したウラン238だ。この天然ウラン精鉱(次の写真のイエローケーキと呼ばれる)をフッ素化合物とし、6フッ化ウランとしてガス化する。

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出展:Wikipedia

そのガスを加熱かつ1分間に10万回転という超高速回転するシリンダーに入れ、ウラン238を外側に飛ばし、ウラン235と分ける。

ウラン235もウラン238も同じ元素で単に原子量が違うアイソトープなので、技術的に分離することが非常に難しい。

すこしずつウラン235の濃度を高めていって、原爆用の濃度90%程度のウラン235をつくるには、7、000台もの遠心分離機を通すことが必要だ。だからマンハッタン計画で使われたテネシー州のオークリッジ研究所は、研究所というよりは巨大工場みたいだという。


原爆用のプルトニウム製造

プルトニウムは自然界には存在しないので、原子炉をつかって作り出す必要がある。

原子炉のタイプには軽水炉(普通の水を中性子の減速剤につかうので、燃料のウラン235はロスを補うために3−5%に濃縮する)、重水炉(高価な重水を使うので、減速ロスがないので天然ウランが使える)、黒鉛炉(減速剤として黒鉛を使用。天然ウランが使える)の3タイプがある。

日本の原子力発電所はすべて軽水炉タイプで、このタイプの原子炉の使用済み核燃料棒は再処理され、ウランとプルトニウムに分離されるが、軽水炉の核燃料再処理で取り出されるプルトニウムは「原子炉級プルトニウム」と呼ばれているプルトニウムアイソトープの混合体だ。

プルトニウム238から242までの多種が含まれており、原爆に使われるプルトニウム239は60%、残りが238,240,241,242のプルトニウムであり、プルトニウム239の純度は低く原子爆弾の原料には使えない。

またプルトニウム240が曲者で、自然に未熟爆発を起こし熱を発生させるので、非常に扱いにくい放射性物質である。

高速増殖炉は、核燃料再処理で得られたプルトニウム239とウラン238を混合させた燃料棒が使われ、プルトニウム239が核分裂して飛び出した中性子でウラン238がプルトニウム239に変わる。

入れたプルトニム239が1.3倍になって帰ってくるというまさにネーミングの通り「文殊(もんじゅ)の知恵」の様な技術だが、日本では1994年に運転を開始した1年後にナトリウム漏れ事故があり、それ以来停止している。

新しい技術として、日本ではプル・サーマル原子炉の建設計画があるが、住民の反対が強くなかなか前に進まないままである。


日本は原爆をつくれるのか?

日本にはこれまでの軽水炉での核燃料再処理で得た原子炉級プルトニウムが内外にあわせて44トンあると言われているが、問題はプルトニウム240による未熟爆発で、そのままでは原子爆弾には使えない。

アメリカエネルギー省は1962年に原子炉級プルトニウムを使って長崎型原爆と同規模の原爆を作ったと発表しているが、真相は不明のままである。

原子爆弾級のプルトニウムはプルトニウム239が90%以上で、これを作るには黒鉛炉か重水炉の使用済み核燃料を再処理するか、高速増殖炉でプルトニウム239を生産するかだが、日本のもんじゅは停止したままだ。

現在の核保有国アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスでは黒鉛炉で兵器級プルトニウムを生産している。上記5カ国以外にインド、パキスタンが核保有国となり、イスラエルは核保有の噂が絶えず、最近では北朝鮮が核実験を行ったが、いずれも黒鉛炉を持っている。

さらに原爆ができても運搬手段がなくては意味がないので、ミサイル制御技術も欠かせないが、日本の宇宙ロケット開発技術をつぎ込めば、弾道ミサイルを開発することは可能だろう。

山田さんは日本が核軍備に走ることを絶対反対という立場ながらも、原子爆弾をつくるシミュレーションを行っている。

必要な設備は:

1.ウラン濃縮装置
特に理化学研究所で長年研究してきた赤外線レーザー法濃縮技術を使うと、ウラン235の濃縮は比較的小規模な設備で非常に効率よくできる可能性があるという。ウラン235に赤外線レーザーの波長をあわせれば、電荷を帯びて集合して電極に塊となってたまる。このプロセスを繰り返して濃縮ウランを製造するのだ。

2.兵器級プルトニウム生産原子炉
高速増殖炉か黒鉛炉または兵器用重水炉。

3.核再処理設備


この本で説明されている要素技術を組み合わせれば、原爆一個つくるだけなら3年、たぶん5年程度で日本は原子爆弾の製造とミサイルによる運搬手段の核軍備が可能であろうと。

しかし世界で唯一の被爆国である日本で核武装をすることなど、到底国民感情が許すとは思えないし、山田さんも日本の核軍備には絶対反対だという。


原爆の基礎的なことがわかって、参考になる。一部の右翼政治家の日本が核武装する気になれば、すぐに数千発の原子爆弾をつくれるという発言が科学的根拠に基づいていないことがわかった。

科学、原子爆弾の知識を手軽につけるには適当な本である。まずはアマゾンのなか見検索で目次を読み、書店で一度手にとってパラパラっと読むことをおすすめする。


参考になれば次クリックお願いします。



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