アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる (現代ビジネスブック)
著者:高橋 洋一
講談社(2013-03-28)
販売元:Amazon.co.jp
別ブログで紹介した「日本経済の真相」や「さらば財務省!」の著者、高橋洋一嘉悦大学教授の最新作。
2013年3月に出版されたばかりなので最新の話題も織り込んでいるが、基本的には「日本経済の真相」、さらには2008年の「この金融政策が日本を救う」と同じ路線である。
日本経済の真相
著者:高橋 洋一
中経出版(2012-02-15)
販売元:Amazon.co.jp
俗説を列挙して、論評を加えるスタイルも「日本経済の真相」と同じスタイルである。
アベノミクスの道筋は、大胆な金融緩和でインフレ予想がでてくれば、円安と株高になり、1〜2年内に消費、輸出、設備投資が増えて景気回復、雇用増加につながる。2年半程度で貸出も増え、インフレ率が高まってさらに実需がでて、賃金上昇につながるというものだ。
これが経済学のスタンダードな理論であると高橋さんは語る。
現在のアベノミクスを支える理論的基盤を与えているのは、日銀副総裁に就任した岩田規久男さんが率いていた「昭和恐慌研究会」のメンバーだ。この研究会は、2004年に「昭和恐慌の研究」という本を出して、日経・経済図書文化賞を受賞している。
昭和恐慌の研究
著者:岩田 規久男
東洋経済新報社(2004-03-19)
販売元:Amazon.co.jp
岩田さんは高橋さんの都立小石川高校の先輩という関係にある。
高橋さんがプリンストン大学留学から帰国した時に、岩田さんの「昭和恐慌研究会」に招かれて、プリンストンでバーナンキ経済学部長やクルーグマン教授などが、どんな議論をしているのかを説明し、それから研究会に参加するようになったという。
クルーグマンは、「日本の金融政策はアブノーマルだからおもしろい」と言っていたという。クルーグマンは1998年に日銀はインフレ・ターゲット政策を採用すべきだという論文を書いている。
15年も前に、世界的に有名な経済学者がインフレ・ターゲットの採用を日銀に提起していたのだ。
バーナンキも、「自ら機能マヒに陥った日本の金融政策」という論文も書いているという。
大恐慌を終息させた金融政策
大恐慌が終息したのは、ルーズベルトがニューディールなどの巨大な公共投資を推し進めた財政政策だというのが通説だったが、これに異論を唱え、金融政策の重要性を指摘したのがミルトン・フリードマンだった。
フリードマンの学説をさらに発展させたのがバーナンキや、カリフォルニア大学のバリー・アイケングリーンなどだ。
当時は岩田さんを中心とするグループはそれほど影響力をもっていなかった。世間には日銀に追随するような議論ばかりで、岩田さんのグループは、まるで「レジスタンス」のようだったという。
今回復刊された岩田規久男さんの「まずデフレをとめよ」は2003年の出版だが、「インフレ目標政策を導入せよ!」と本の帯に書いてあり、今復刊しても修正するところがないという。
日本経済再生 まずデフレをとめよ
著者:岩田 規久男
日本経済新聞出版社(2013-03-26)
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実質金利をマイナス金利に
「ゼロ金利のもとでは金融政策に限界がある」というのは誤りだ。名目金利はゼロ以下には下げられないが、予想インフレ率を高めれば、実質金利はなお下げることができる。これが最も重要なポイントであると高橋さんはいう。
たしかに筆者も高橋さんや岩田さんの本を読む前までは、ゼロ金利になっている以上、貸出金利をマイナス金利にすることは不可能だと思っていたが、この本を読んでよくわかった。
クルーグマンが早くから指摘していたのも、この点で、「日銀は人びとのインフレ予想を高めるような政策を打ち出せ」と主張し、具体的にはインフレターゲット政策を提起していた。
予想は英語だと"expectation"だ。誤解を招くので高橋さんは「期待」でなく、「予想」と訳しているという。
大蔵省の「洗脳」にのらなかった浜田教授
高橋さんは、かつて大蔵省の「洗脳部隊」に属していたという。学者やマスコミに、大蔵省に都合のよい主張をしてもらうことが仕事だ。やり方は勉強会や研究会に参加してもらい、時には海外視察などにつれていくのだと。
しかしこの洗脳部隊の時に、全く誘いを受け付けなかったのが、当時東大にいた浜田宏一イェール大学名誉教授だったという。
浜田教授は2年ほど前に「昭和恐慌研究会」のメンバーとなった。先日紹介した「アメリカは日本経済の復活を知っている」では、「20年もの間デフレに苦しむ日本の不況は、ほぼすべてが日銀の金融政策に由来するものである」と断言している。
アメリカは日本経済の復活を知っている
著者:浜田 宏一
講談社(2012-12-19)
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円安が好況の鍵
高橋さんは、小泉政権が成功したのは、日銀に量的金融緩和を実施させ、その結果円安が続いたためだと語っている。
高橋さんは第一次安倍内閣(2006年9月〜2007年9月)の時に、総理補佐官補というポジションで、総理官邸入りするように安倍総理から直接依頼された。
超党派の議員200人が集まり、「増税によらない復興財源を求める会」を結成した時にも、安倍さんに声をかけて加わってもらった経緯がある。
安倍さんは、「増税によらない復興財源を求める会」に参加するとともに、自民党内でも議員立法で日銀法を改正すべく同志を集めていた。結局谷垣総裁が待ったをかけたため、日銀法改正検討は進まなかったが、こういった活動を通して安倍さんは知識を蓄えていった。
そして自民党総裁選で「消費者物価上昇率2%を目標としたインフレ・ターゲット政策を日銀に求める」と宣言して自民党総裁に就任すると、今度は総選挙でもインフレ・ターゲットを自民党の目玉政策に掲げて、選挙に勝利したのだ。
日銀のレジームチェンジ
それまで安倍さんのインフレ・ターゲットを批判していた白川日銀総裁が、豹変してインフレ・ターゲットの受け入れをすぐさま示唆した。「金融政策のレジーム転換」が起こったのだ。
そして3月の黒田新総裁になって、「異次元の金融緩和策」が実施され、円安と株高の流れが加速したのだ。株価は野田民主党政権時のほぼ倍、円相場は30%下落、GDPはプラスに転じた。
平成26年度からの消費税アップもあり、高額商品が良く売れているという。
長期金利が上昇しているが、それでも0.9%という歴史的には低い水準だ。金利が低いうちに長期固定金利の住宅ローンを使って住宅を購入しようとする人が増えている。
国民の心理が「インフレ期待」に一変した。まさに「心理経済学」で大前研一さんが提唱していたように、人々の心理を動かした結果、円安株高がある。
大前流心理経済学 貯めるな使え!
著者:大前 研一
講談社(2007-11-09)
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アベノミクス登場以来、別ブログで高橋さんの本は何冊か紹介している。
この本もわかりやすいが、これ一冊ということなら、そのものズバリの2008年末の「この金融政策が日本を救う」だろう。浜田宏一教授の推薦書でもある。
この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)
著者:高橋洋一
光文社(2008-12-16)
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次は「この金融政策が日本を救う」のあらすじを紹介する。
参考になれば次クリック願う。
著者:高橋 洋一
講談社(2013-03-28)
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別ブログで紹介した「日本経済の真相」や「さらば財務省!」の著者、高橋洋一嘉悦大学教授の最新作。
2013年3月に出版されたばかりなので最新の話題も織り込んでいるが、基本的には「日本経済の真相」、さらには2008年の「この金融政策が日本を救う」と同じ路線である。
日本経済の真相
著者:高橋 洋一
中経出版(2012-02-15)
販売元:Amazon.co.jp
俗説を列挙して、論評を加えるスタイルも「日本経済の真相」と同じスタイルである。
アベノミクスの道筋は、大胆な金融緩和でインフレ予想がでてくれば、円安と株高になり、1〜2年内に消費、輸出、設備投資が増えて景気回復、雇用増加につながる。2年半程度で貸出も増え、インフレ率が高まってさらに実需がでて、賃金上昇につながるというものだ。
これが経済学のスタンダードな理論であると高橋さんは語る。
現在のアベノミクスを支える理論的基盤を与えているのは、日銀副総裁に就任した岩田規久男さんが率いていた「昭和恐慌研究会」のメンバーだ。この研究会は、2004年に「昭和恐慌の研究」という本を出して、日経・経済図書文化賞を受賞している。
昭和恐慌の研究
著者:岩田 規久男
東洋経済新報社(2004-03-19)
販売元:Amazon.co.jp
岩田さんは高橋さんの都立小石川高校の先輩という関係にある。
高橋さんがプリンストン大学留学から帰国した時に、岩田さんの「昭和恐慌研究会」に招かれて、プリンストンでバーナンキ経済学部長やクルーグマン教授などが、どんな議論をしているのかを説明し、それから研究会に参加するようになったという。
クルーグマンは、「日本の金融政策はアブノーマルだからおもしろい」と言っていたという。クルーグマンは1998年に日銀はインフレ・ターゲット政策を採用すべきだという論文を書いている。
15年も前に、世界的に有名な経済学者がインフレ・ターゲットの採用を日銀に提起していたのだ。
バーナンキも、「自ら機能マヒに陥った日本の金融政策」という論文も書いているという。
大恐慌を終息させた金融政策
大恐慌が終息したのは、ルーズベルトがニューディールなどの巨大な公共投資を推し進めた財政政策だというのが通説だったが、これに異論を唱え、金融政策の重要性を指摘したのがミルトン・フリードマンだった。
フリードマンの学説をさらに発展させたのがバーナンキや、カリフォルニア大学のバリー・アイケングリーンなどだ。
当時は岩田さんを中心とするグループはそれほど影響力をもっていなかった。世間には日銀に追随するような議論ばかりで、岩田さんのグループは、まるで「レジスタンス」のようだったという。
今回復刊された岩田規久男さんの「まずデフレをとめよ」は2003年の出版だが、「インフレ目標政策を導入せよ!」と本の帯に書いてあり、今復刊しても修正するところがないという。
日本経済再生 まずデフレをとめよ
著者:岩田 規久男
日本経済新聞出版社(2013-03-26)
販売元:Amazon.co.jp
実質金利をマイナス金利に
「ゼロ金利のもとでは金融政策に限界がある」というのは誤りだ。名目金利はゼロ以下には下げられないが、予想インフレ率を高めれば、実質金利はなお下げることができる。これが最も重要なポイントであると高橋さんはいう。
たしかに筆者も高橋さんや岩田さんの本を読む前までは、ゼロ金利になっている以上、貸出金利をマイナス金利にすることは不可能だと思っていたが、この本を読んでよくわかった。
クルーグマンが早くから指摘していたのも、この点で、「日銀は人びとのインフレ予想を高めるような政策を打ち出せ」と主張し、具体的にはインフレターゲット政策を提起していた。
予想は英語だと"expectation"だ。誤解を招くので高橋さんは「期待」でなく、「予想」と訳しているという。
大蔵省の「洗脳」にのらなかった浜田教授
高橋さんは、かつて大蔵省の「洗脳部隊」に属していたという。学者やマスコミに、大蔵省に都合のよい主張をしてもらうことが仕事だ。やり方は勉強会や研究会に参加してもらい、時には海外視察などにつれていくのだと。
しかしこの洗脳部隊の時に、全く誘いを受け付けなかったのが、当時東大にいた浜田宏一イェール大学名誉教授だったという。
浜田教授は2年ほど前に「昭和恐慌研究会」のメンバーとなった。先日紹介した「アメリカは日本経済の復活を知っている」では、「20年もの間デフレに苦しむ日本の不況は、ほぼすべてが日銀の金融政策に由来するものである」と断言している。
アメリカは日本経済の復活を知っている
著者:浜田 宏一
講談社(2012-12-19)
販売元:Amazon.co.jp
円安が好況の鍵
高橋さんは、小泉政権が成功したのは、日銀に量的金融緩和を実施させ、その結果円安が続いたためだと語っている。
高橋さんは第一次安倍内閣(2006年9月〜2007年9月)の時に、総理補佐官補というポジションで、総理官邸入りするように安倍総理から直接依頼された。
超党派の議員200人が集まり、「増税によらない復興財源を求める会」を結成した時にも、安倍さんに声をかけて加わってもらった経緯がある。
安倍さんは、「増税によらない復興財源を求める会」に参加するとともに、自民党内でも議員立法で日銀法を改正すべく同志を集めていた。結局谷垣総裁が待ったをかけたため、日銀法改正検討は進まなかったが、こういった活動を通して安倍さんは知識を蓄えていった。
そして自民党総裁選で「消費者物価上昇率2%を目標としたインフレ・ターゲット政策を日銀に求める」と宣言して自民党総裁に就任すると、今度は総選挙でもインフレ・ターゲットを自民党の目玉政策に掲げて、選挙に勝利したのだ。
日銀のレジームチェンジ
それまで安倍さんのインフレ・ターゲットを批判していた白川日銀総裁が、豹変してインフレ・ターゲットの受け入れをすぐさま示唆した。「金融政策のレジーム転換」が起こったのだ。
そして3月の黒田新総裁になって、「異次元の金融緩和策」が実施され、円安と株高の流れが加速したのだ。株価は野田民主党政権時のほぼ倍、円相場は30%下落、GDPはプラスに転じた。
平成26年度からの消費税アップもあり、高額商品が良く売れているという。
長期金利が上昇しているが、それでも0.9%という歴史的には低い水準だ。金利が低いうちに長期固定金利の住宅ローンを使って住宅を購入しようとする人が増えている。
国民の心理が「インフレ期待」に一変した。まさに「心理経済学」で大前研一さんが提唱していたように、人々の心理を動かした結果、円安株高がある。
大前流心理経済学 貯めるな使え!
著者:大前 研一
講談社(2007-11-09)
販売元:Amazon.co.jp
アベノミクス登場以来、別ブログで高橋さんの本は何冊か紹介している。
この本もわかりやすいが、これ一冊ということなら、そのものズバリの2008年末の「この金融政策が日本を救う」だろう。浜田宏一教授の推薦書でもある。
この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)
著者:高橋洋一
光文社(2008-12-16)
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