時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

政治・外交

日本会議の研究 まるで謎解きのようなノンフィクション



大学の先輩から勧められて読んだ。

それまで日本会議なるものの存在すら知らなかったので、こんなに政治的にパワフルな右翼集団が、自民党を動かしているとは知らなかった。

日本の国会議員の4割が日本会議に参加しているという報道もある。

ちなみに、ともに就任直後に辞任した松島みどり元法相と小渕優子元経産相は日本会議議連のメンバーではなく、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバーでもなかった珍しい例だという

日本国憲法を改正しようという勢力は、2016年7月10日の参議院選挙で勝利して、参議院の2/3の議席を確保し、憲法改正ができる基盤を整備しようとしている。

それの中心が日本会議だ。

日本会議はホームページを開設している。日本会議のブログへのリンクなど、日本会議の現在の活動がわかるリンクもあるので、参照してほしい。

この本の著者の菅野完(すがのたもつ)さんは、サラリーマン時代にコツコツと日本会議の資料を集め、会社をやめて著述業に専念するようになったという経歴を持つ。Wikipediaでも菅野さんの経歴が紹介されているが、毀誉褒貶が多く、何が正しいのかよくわからない。

日本会議から出版元の扶桑社に対して、この本の出版停止要求が出されており、それもあってアマゾンでは本のベストセラーの17位(本稿執筆時点)となっている。

日本会議は、1960年代後半の長崎大学の学園紛争に勝利した椛島有三現日本会議事務総長らの右派学生を中心とした日本青年協議会が母体となっており、もともとは宗教団体の生長の家の信者の政治活動とも密接なつながりを持っていた。

安倍首相のブレーンの一人とされる日本政策研究センター所長の伊藤哲夫氏、政府の御用学者となっている百地章国士舘大学大学院客員教授などが日本会議の主要メンバーだ。

日本会議の動員力はすごい。現在も憲法改正を実現するために、1,000万人の署名を集めており、ホームページにも「憲法改正を実現する1,000万人ネットワーク」へのリンクが張ってある。菅野さんがこの本で紹介している「武道館1万人大会」の様子も紹介されている。

集客力こそ自民党が日本会議と切っても切れない絆を保っている理由だろう。

生長の家は、谷口雅春氏が創始者の宗教団体で、谷口氏の著書の「生命の実相」は全40巻で、通算1,900万部売れているという。

生命の実相―頭注版 (第1巻)
谷口 雅春
日本教文社
1962-05


生長の家は1980年代に政治活動をやめている。

生長の家の現総裁の谷口雅宣氏は、この本を推薦し、2016年7月10日の参議院選挙では、与党とその候補者を支持しないとブログで語っている

現在の生長の家は、元信者の多くがつくった日本会議を支持していないのだ。

この本は日本会議と主要な日本会議のメンバーの活動に関し謎解きのような展開で、大変興味深く読める。

詳しい内容については、ネタバレになるので詳しく紹介しないが、アマゾンで、なんと193件ものカスタマーレビューが寄せられており、カスタマーレビューをざっと見ただけでも大体の感じはわかると思う。

ベストセラーとなっているので、ぜひ本屋で手に取ってパラパラ見てほしい。新たな発見があるはずだ。


参考になれば次クリックお願いします。


中国の大問題 前中国大使 丹羽宇一郎さんの経験談

中国の大問題 (PHP新書)
丹羽 宇一郎
PHP研究所
2014-06-14


元伊藤忠社長で、前中国大使の丹羽宇一郎さんの本。「中国の大問題」として次のような切り口から中国の現状を論じている。

第1章 14億人という大問題
第2章 経済という大問題
第3章 地方という大問題
第4章 少数民族という大問題
第5章 日中関係という大問題
第6章 安全保障という大問題

まるで池上彰さんの「大問題」シリーズ本のコピーの様だ。




終章で、「日本という大問題」として、中国と比較しての日本の教育支出の少なさ、偉くならなくても満足な若者たちなどのテーマを「10年後に死んでいるかもしれない人間のメッセージ」として論じている。

これが丹羽さんが最も言いたかったことなのだろう。

日本の将来を考えたとき、教育の充実こそが、日本が世界で生き残る最重要にして必須の条件となると論じている。

「非正規社員の全廃」、「(出世することの)インセンティブを提示せよ」等の主張を打ち出している。

日本の教育費については、注釈が必要だと思う。中国は国防費の3倍、国家予算の17%を教育費に使っていると丹羽さんは語る。

この本では日本の教育費の国家予算に対する比率を記載していないが、ネットで調べると日本の公財政教育支出の対GDP比は3.3%(つまり国防費の3.3倍)で、一般政府総支出に占める公財政教育支出の割合は9.5%だ。

しかし、日本では公的な教育資金が少ない分、家計から教育費をねん出しているから、家計で負担している私的教育費を含めた教育費はGDPの5%(つまり国防費の5倍)になる。これは塾などの副次的な教育支出を除いた家計負担分だ。

2009年の統計だが、公財政支出と私的教育費を合計したグラフを載せているブログを見つけたので、紹介しておく。

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出典:社会実情データ図録

たぶん財務省筋だと思うが、日本の場合は少子化のため、生徒数が少ない。だから生徒一人当たりを取ってみれば、日本はOECDでもそん色はないという議論もある。

平成20年教育費の現状_ページ_9















しかし、日本の問題は韓国や他の先進国が教育予算の比率を増やしているのに対して、国家予算の教育費比率を据え置いていることだ。次の文部科学白書2009にある図を見るとわかりやすい。

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出典:文部科学白書2009図表1−1−29

丹羽さんの教育が最重要投資であるという問題提起は正しい。どう実現していくかが問題だが、具体的アイデアはこの本にはない。言いっぱなしで、「10年後に死んでいるかもしれない人間のメッセージ」と自分で言うゆえんだろう。

中国の指導部との人的コネクションはさすが

ともあれ、中国の指導者層と人的なコネクションを広く持つ人だけに、これから習近平体制を支える人脈の読みなども参考になる。

丹羽さんは、習近平には10数回会っているという。

習近平は長崎県と姉妹都市関係にある福建省に14年間居たからだと。丹羽さん自身は、習近平は比較的親日的でフェアな人物という印象を持っているという。

現在は権力闘争が続いているが、5年後は習近平体制が確立し、そのための準備を着々と行っている。たとえば、前政権の中央政治局常務委員の一人だった周永康とその関係者350人を汚職容疑で拘束した

着々と反対派を排して、習近平体制を作りあげている。

次がこの本に紹介されている習近平体制の顔ぶれだ。

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出典:本書41ページ

次のリーダーとして有望なのは、汪洋、孫政才、胡春華という50代の3人だという。それぞれ地方の書記を経験している。

チャイナセブンと呼ばれる、トップの中のトップの常務委員の中では、国際は金融のプロである王岐山が注目だという。

また常務委員でもないのに、国家副主席になっている李源潮も次期国家主席とも目される実力者だと。

習近平体制では、日本の小沢一郎のもとでホームステイした経験を持つNo.2の李克強国務院総理をはじめ、汪洋、孫政才、胡春華、李源潮は知日派で、じつはきわめて親日体制なのだと。

習近平体制を考えるときは、そうした視点を見落としてはならないと丹羽さんは語る。


行動する中国大使

丹羽さんは、中国大使としての在任期間中に、33ある一級行政区のうち27地区を訪問し、その時々で日本の経済人を同行して経済と友好の両方を推進したという。また伊藤忠の社長時代には、北京市、江蘇省、吉林省などの経済顧問を歴任したという。

次が丹羽さんが訪問した27の行政区の地図だ。

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出典:本書88−89ページ


丹羽さんは民主党政権の目玉の民間大使として就任した。日中友好を深めるイベントを多く開催したことや、経済面での行動力はさすがだと思う。


評判を落とした尖閣国有化の時の丹羽発言

石原都知事が尖閣列島を東京都で買い上げることを発表したことをきっかけに、民主党政権はすぐに尖閣列島の国有化を宣言した。その時、日中関係を悪化させるので、国有化を急ぐなと注文を出したのが丹羽大使だった

当時は丹羽大使の発言は、日本政府の公式方針に沿っていないとして批判された。しかし、この本では、「領土は1ミリも譲歩できない」とあらためて持論を展開し、あの時は国有化のタイミングを考え直すべきだと発言したものだと釈明している。

このあたりが、アマゾンのカスタマーレビューで☆一つのレビューが多くある原因だろう。言い訳本だと。

「棚上げ合意」はあったのか、という点については「棚上げ合意」は無かったと結論づけている一方で、尖閣問題は「フリーズ」すべきだと語る。

現在もなお外務省のホームページの「尖閣諸島に関するQ&A」には日中国交回復前後の「棚上げ論」が公開されている。

公式な「棚上げ合意」はもちろん無かったが、外務省がホームページで公表している周恩来や小平の意見を踏まえて、尖閣列島付近の日本企業の資源開発に待ったを掛けてきたのは日本政府であり、事実上「棚上げ」を黙認していた事実がある。

それが素人外交の民主党に代わり、石原元都知事のペースにはまって、性急に国有化を宣言したことから現在の尖閣での緊張は始まっている。

丹羽さんの本心としては、「おいおい、棚上げしたはずじゃなかったの?寝た子を起こすなよ」という趣旨だったのだろう。

元中国大使なだけに、丹羽さんもいまさら政府の方針と異なることは言えないので、この本では「棚上げ」ではなく、「フリーズ」と言っている。


商社マンの大先輩なだけに、プロの外交官とは違った中国との交流拡大を実践した功績は高く評価したいが、外交という意味では無力で、かつ最後は使い捨てされたと言わざるを得ない。田中真紀子が小泉内閣の外務大臣に就任した時に、「外務省は伏魔殿」と評したことが、思い出される。

シャドーバンキングについて、「私の試算では…GDPの16%、シャドーバンキングで中国の経済が崩壊することはないだろう」とか、データで見る限り中国は人口減少時代には入らないとか、中国の将来を危ぶむ声が多いなかで、中国を再評価する冷静な発言は参考になる。

また、重慶とドイツを結ぶ国際貨物列車の登場により、チャイナランドブリッジで約10数日で運べるようになったというのも参考になった。

民間人として初めての中国大使としての経験談は興味深く、経済や政治面での分析についても参考になる本である。


参考になれば次クリックお願いします。


竹島密約 安倍首相が面談した韓国人歴史家 ロー・ダニエル氏の研究

+++今回のあらすじは長いです+++

文庫 竹島密約 (草思社文庫)
ロー ダニエル
草思社
2013-02-02


この本を知ったのは、たぶん鳥居民さんが著書でこの本を紹介していたからだと思うが、何気なく見ていた安倍首相の日々の行動の2014年4月16日11:05〜12:15に、韓国の日本研究者・ロー・ダニエル氏のインタビューと書かれていることに気が付いた。

なぜ安倍首相がロー・ダニエルさんと会ったのか。その理由はこの本のあとがきを読むとわかる。

あとがきの重要部分だけ紹介しておく。

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出典:本書(文庫版)297ページ

なんと、密約締結関係者の一人の中曽根康弘元総理が、ロー・ダニエルさんに真相を究明して欲しいと依頼し、秘書を通じて多くのサポートを与えたというのだ。

中曽根元総理は先日9回目の年男パーティを迎え、5回目の年男の安倍総理他の多くの政治家が集まった。

杖をつきながらも、自分で動けて、発言もしっかりしているのは立派だが、さすがに年齢による衰えは隠せない。

中曽根元総理も、自分が元気なうちに、自分も関係した竹島密約の真実を伝えたかったので、ロー・ダニエルさんに執筆を依頼したのだろう。

関係者の多くは亡くなっているが、それでもロー・ダニエルさんは直接の関係者数名にインタビューしており、この本の信ぴょう性を高めている。

「なか見!検索」は必見

この本は文庫版となってアマゾンの「なか見!検索」に対応するようになった。立ち読み感覚で、重要な部分が読めるので、ぜひここをクリックして、ネット立ち読みしてほしい。特に最初の目次、主な関係者とプロローグ、あとがきをぜひ見てほしい。

あらすじを紹介する前に、竹島がどのあたりにあるのかを紹介しておく。

次が文庫版14ページにある地図だ。「なか見!検索」でも、見られるので、ここをクリックして、目次と登場人物紹介に続く竹島付近の地図を参照して欲しい。

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出典:本書14〜15ページ

まさに日本と韓国のちょうど中間地点にあることがわかると思う。

竹島は尖閣列島と違って、地下資源があるという話もなく、日比谷公園程度の大きさで、本来何の役にも立たない無人島である。いままで何度も「爆破したら」という選択肢が、外交の場では半分本気・半分冗談として出されてきた。

しかし、竹島の存在は漁業資源に関係する排他的経済水域の設定には大きな意味を持つ。

昭和20〜30年代生まれまでの人は、「李承晩ライン」という言葉を覚えているだろう。李承晩は、初めての韓国大統領で、反日・反共を貫き、日本との間に勝手に「李承晩ライン」という排他的漁業水域を設け、日本の漁船を多数拿捕した。

日本が韓国との日韓漁業協定締結を急務としたのは、こういった漁船拿捕による漁民からの要望も強かったからだ。

尖閣列島については、1978年の日中平和友好条約交渉の際に、小平が先送りを提案したが、公式には日本側はそれには応じなかったとされている(外務省のホームページによると”福田総理より応答はなし。”とされている)。

しかし、その後、日本企業が尖閣列島付近の資源開発を検討しても、日本政府として許可を出さずに、事実上小平提案の解決の棚上げを尊重してきたという経緯がある。

この本では、日中間の尖閣列島問題の先送り合意の13年以上も前の1965年に、日韓間で竹島問題の先送りを秘密裏に合意していた密約が存在することを明かしている。

竹島密約は次のような簡単なものだ。

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出典:本書227ページ

この本では、講和条約交渉の際に、当初は韓国領とされていた竹島が、日本側の外交努力で、1949年12月29日の第6次草案から日本領に変わり、ディーン・ラスク国務次官補は竹島は日本領とみなすと韓国側にレターで回答していることを明かしている。ところが、サンフランシスコ講和条約では竹島に関する記述は抜け落ちて1951年9月8日に調印された。

講和条約が1952年4月28日に発効する前に、李承晩大統領は、竹島は韓国領として「李承晩」ラインを設定、1952年9月から日本漁船の拿捕を始めた。

日韓国交正常化交渉は、1953年10月に外務省参与・久保田貫一郎が、「日本が講和条約を締結する前に韓国が独立したのは不法である。日本の36年間にわたる統治は韓国にとって有益だった」と発言したことから紛糾し、その後4年以上再開されなかった。

その間、1957年2月に首相に就任した岸信介は、地元の山口県の漁民が韓国に抑留され、漁業にダメージを受けているので、自らの「策士」の矢次一夫を使って、韓国に様々なアプローチをしていた。

岸信介は自ら「親韓派」と称していた。

矢次は、岸首相の就任日に、韓国外務部の政治局長と駐日韓国大使館の参事官を秘密裏に、岸首相の南平台にある私邸に案内した。

そのころ岸信介の娘と結婚した安倍晋太郎は、岸信介の秘書として、岸の私邸に同居していた。矢次一行は裏口から入り、オムツの干してある中を通って、就任したばかりの岸信介首相と面談したという。

このオムツをしていたのが、当時2歳だった安倍晋三総理だ。

岸信介は、矢次を使って蒋介石とも連絡を取り、蒋介石・李承晩・岸信介というアジアの反共産主義ラインをつくるろうとしていた。

しかし、1960年に岸信介は新日米安保条約問題で、李承晩は不正選挙問題で退陣する。

李承晩の後は、短期間、民主党の張勉が政権を取り、翌1961年5月16日の朴正煕少将が率いる軍事クーデター後、親日派の朴正煕大統領が誕生する。

朴正煕大統領は、1979年に暗殺されるまで、18年の間、韓国の大統領として、アジアの最貧国の一つだった韓国が先進国クラブのOECDに加盟できるまでに成長させた。

朴正煕大統領と一緒に親日政策を展開したのが、朴正煕の義理の甥の金鍾泌だ。

この本では、第2章”叔父と甥の対日外交”として、、旧陸軍や一橋大学出身者など韓国の親日派が中心となって池田隼人首相の日本と請求権交渉をまとめ上げたことを紹介している。

朴正煕大統領は、就任後アメリカ訪問の前に日本に立ち寄り、政財界の代表の前で、「われわれが、過去のよろしくない歴史を暴きたてるのは賢明なことではありません。両国は共同の理念と目標のために親善を図らなければなりません」と述べて好印象を与えた。

また、岸信介前首相、佐藤栄作、大野伴睦、石井光次郎、船田中、矢次一夫らの政界の「韓国ロビイストの集まり」ともいえるメンバーとの会食では、「未熟な小生をよろしくご指導ください」と日本語であいさつしたという。

韓国の親日派を相手とする請求権交渉では、当初韓国案8億ドル、日本案1億ドルと大きな隔たりがあった。しかし、最終的には1962年10月に金鍾泌中央情報部長が訪日して大平外務大臣と交渉し、有償3億、無償2億、民間借款1億ドルの6億ドルで決着した。これがその後の韓国の発展につながる経済開発5か年計画の資金となった。

請求権交渉が妥結したことで、李承晩ラインも消え、漁船の拿捕もなくなった。次の問題は日韓基本条約の締結だ。

この交渉の過程で、ロッキード事件で一躍有名になったフィクサーの児玉誉士夫の名前も出てくる。

外務省や大平外相は、竹島問題の国際司法裁判所への提訴を条件としたが、韓国側は「未解決の状態で維持する」という作戦にでた。これが後の「未解決の解決」という竹島密約につながる。

金鍾泌は訪日後、下野して外遊、その後1963年12月の朴正煕の第5代大統領就任とともに、与党共和党議長として復帰した。

しかし、「対日屈辱外交反対」を唱える野党勢力や学生デモの前に、朴正煕大統領を守るためのスケープゴートとして辞任した。そのあとを継いで、対日交渉を担当したのが、満州軍官学校出身で、1964年5月に就任した丁一権国務総理と金鍾泌の兄の銀行家金鍾珞だった。

日本川の交渉役は、1964年5月に大野伴睦が亡くなった後、河野一郎が継いだ。

主流派の佐藤派は日韓条約締結に積極的だったが、河野派は佐藤派より5人少ないだけで、党内の第2の勢力だった。もし河野派が反対するとなにもできない。だからキャスティングボードは、党人派を代表する河野一郎が握っていた。

河野一郎を日韓交渉に引っ張りだすには、ちょうど韓国を訪問中だった中川一郎や中曽根康弘が協力した。

そして日韓交渉全体を密にフォローし、時には間を取り持ったのが、大野伴睦の盟友の渡邉恒雄(ナベツネ)の読売新聞社だった。渡辺の指示で、日韓関係をとりもったのが当時の読売新聞のソウル特派員で、幼少期を韓国で過ごした嶋元謙郎さんだ。嶋元さんはこの本の取材に全面協力したので、この本は嶋元謙郎、恵美子夫妻にささげられている。

河野一郎はこのままでは総理になれないというあせりから、日韓交渉を引き受けた。

河野の腹心の宇野宗佑と金鍾泌の兄の金鍾珞が交渉代理人、斡旋役が嶋元謙郎、交渉の責任者が河野一郎、丁一権という交渉チームが出来上がった。

東京オリンピックが1964年10月10日から開催され、池田首相は病気のため、オリンピックを花道に退陣した。そのあとを継いだ佐藤栄作首相の1965年1月の訪米前に、日韓交渉を合意させるというギリギリのタイムテーブル下で、日韓交渉は進められ、1964年末にすべてが決着した。

竹島については、上記に紹介した竹島密約が河野一郎と丁一権の間で成立した。1965年1月11日のことだった。2日後に朴正煕大統領も承認し、1月13日にジョンソン大統領との会談直前の佐藤栄作首相に電話で日韓合意が伝えられた。

日韓基本条約は1965年2月20日に仮調印され、1965年6月22日に正式締結した。河野一郎が病で亡くなったのはその2週間後の7月8日だ。

全斗煥盧泰愚らを中心とする軍部内の「ハナ会」は、朴正煕大統領が暗殺されると、12・12事件を起こして、権力を掌握し、全斗煥が大統領に就任した。

ハナ会」はいわば朴正煕ファンクラブで、メンバーは慶尚道出身の軍人で、滅私奉公に徹した朴正煕を崇拝し、日本流の軍人精神を慕った。

彼らの愛読書は、山崎豊子の「不毛地帯」で、主人公のモデルの伊藤忠の瀬島龍三さんを尊敬していたという。

瀬島龍三さんも、1980年に東急の五島会長と訪韓して、全斗煥、盧泰愚両将軍と面談していることを著書の「幾山河」に書いている。



幾山河―瀬島龍三回想録
瀬島 龍三
産経新聞ニュースサービス
1996-07


竹島密約は、軍人親日主義の朴正煕、全斗煥、盧泰愚の「軍人親日主義」体制では守られた。しかし、盧泰愚大統領を継いだ非軍人の金泳三大統領には伝わらなかった。

野党政治家として半生を送った金泳三大統領は、「歴史の清算」として、光州事件の再調査、全斗煥、盧泰愚両前大統領の逮捕、朝鮮総督府の建物の解体などを実施した。

金泳三大統領自身は、日本語が流暢で、大統領退任後は早稲田大学の特命教授を務めるなど、日本との友好にも貢献した。

金泳三大統領以後は、日韓関係は、金大中大統領や李明博大統領の就任当初や、盧武鉉大統領・小泉純一郎総理のシャトル外交など、一時的な改善の時期はあったが、ほぼ一貫して悪化してきた。

中曽根康弘首相は、首相に就任すると、すぐに「竹島密約」の存在を調査させている。日本の外務省は承知していたが、全斗煥政権の韓国では、発覚を恐れ、密約の紙は処分されていた。

密約の紙自体も、密約の精神自体も消失したのだ。

竹島は、それ自体は何の意味もないが、韓国大統領の対日強硬姿勢を示す格好の話題として、政権の支持率アップのためのプロパガンダとして使われている。韓国の天気予報では、必ず竹島の天気も紹介されるという。

李明博大統領は、竹島に上陸してテレビ中継させている。朴槿恵大統領もいずれ竹島を訪問することだろう。

たかだ日比谷公園程度の島に、そんなに意味があるのか?

引き継がれなかった「竹島密約」の先人の知恵に、あらためて思いを致す本である。


参考になれば次クリックお願いします。



呆韓論 呆れる写真も満載! 元時事通信ソウル特派員の室谷さんの韓国批判

呆韓論 (産経セレクト S 1)
室谷克実
産経新聞出版
2013-12-05


元時事通信ソウル特派員の室谷克実さんの韓国批判。別ブログでは室谷さんの「日韓がタブーにする半島の歴史」を紹介している




韓国の対日感情は、朴正煕大統領に続く、全 斗煥、盧泰愚までの軍事政権の時はそれほど悪くなかったが、長年の反日教育のためにどんどん悪化しているのは、憂慮すべきことだ。

最近でも、李明博大統領は経済界出身で、大阪生まれだ。李明博大統領なら、日韓関係も少しは改善するかと期待して、ソウル市長時代の「都市伝説 ソウル大改造」や、「すべては夜明け前から始まる」のあらすじを紹介した。



しかし、李明博大統領も、当初こそ日本に対する関係改善の姿勢を示したが、その後は支持率低下に苦しみ、最後は竹島を訪問するなど、スタンドプレイに走った。

現在の朴槿恵大統領にも期待して、大統領就任の時に「朴槿恵の挑戦」のあらすじを紹介している




朴槿恵大統領は、親日派だった朴正煕大統領の娘なので、「高木正雄」(=朴正煕の日本名)の娘と言われるのを極端に嫌っているという。少しでも親日の姿勢を示せば、「それ見たことか、やはり親日派か」と言われて国民の支持を失うことを恐れ、日本には厳しくあたらなければならないのだろう。

それにしても、日米間の首脳会議の時の朴槿恵大統領のかたくなな態度と、中国の習近平主席には笑顔をふりまく両極端な態度は、最近の「中国という蟻地獄に落ちた韓国」などの本が指摘している通り、韓国は中国の属国として生きていくつもりなのかと思わせるほどだ。




朴槿恵大統領の正当性が疑われている

この本の最初に、朴槿恵政権の正当性が疑われていることが紹介されている。

朴槿恵大統領は2013年2月に就任した。2012年12月に行われた大統領選挙は、朴槿恵候補51%:文在寅候補48%という接戦だった。

当選した要因として、朴候補は選挙戦中に、国家情報院(元KCIA)や国軍サイバー司令部によるツイッターやSNSへの応援書き込み支援を受けていたことが判明している

また高齢層の支持を得るために、65歳以上のすべてに毎月20万ウォン(2万円)の年金を支給すると公約していた。しかし、当選した後は、財政状況が厳しいため、「詐欺公約」と非難されるほど内容が切り詰められてしまった。

これら国家情報院や国軍サイバー専門部隊の支援と、「詐欺公約」がなければ、朴槿恵は大統領にはなれなかっただろう。加えて、「セウォル号」事故で、不信任も急増している。こんな政治基盤が弱い大統領だけに、反日の姿勢を貫いて国民の支持を得るのは必須なのだろうと思う。


この本の目次

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、目次を紹介しておく。

はじめに

序章 妄想と非常識に巻き込まれた日本

第1章 「自由と民主主義」の価値を同じくしない国

第2章 恥を知らない国際非常識国家

第3章 反日ならすぐにバレる嘘でも吐く

第4章 世界から軽蔑される哀れな反日病

第5章 歪みだらけのオンリー・イン・コリア

第6章 呆れかえるウリジナルの暴走

第7章 本当に恐ろしい人間差別大国

第8章 「売春輸出大国」の鉄面皮

第9章 わかりあえない不衛生・不法・不道徳

第1 0章 反撃の種「対馬」の仕込み方

終章 官邸、皇居の耳目役への警鐘

おわりに


序章を読めば大体の論点がわかる

この本の序章に最も重要な部分が、かいつまんで説明されている。

日の丸を食いちぎる人や、安倍首相と橋下大阪市長の顔写真を踏みつける人、韓国サッカー応援団の安重根フラッグ、ソウルの日本体感前に置かれた慰安婦像などの写真も序章に紹介されている。

実は序章を読めば、この本の論点が簡単に理解できる。本当は「なか見!検索」に最適の本なのだが、仕方がないので、まずは書店で序章を立ち読みすることをおすすめする。


朴槿恵大統領の「1000年恨み節」

序章の中で、朴槿恵大統領が、2013年3月1日(独立運動記念日)の記念演説で、「1000年恨み節」を語ったことを紹介している。曰く、「被害者と加害者の立場は1000年経っても変わらない」と

「1000年恨み節」なら、元寇は1274年と、1281年。もとはといえば、高麗の皇太子が元のフビライに日本征服を促したことが原因だと室谷さんは言う。

ネットで「元寇」で検索したら玉川大学の公開サイトで、元寇について詳しく解説しているものがあるので、ここをクリックして見てほしい

本も出ているので、今度読んでみる。

知るほど楽しい鎌倉時代
多賀 譲治
理工図書
2011-01



参考になった点をいくつか紹介しておく。

★「日帝統治の体験者ほど反日の度合いが低い」
室谷さんは特派員時代に、韓国13代目の大統領となった盧泰愚が体育相だった時に、パーティで話したことがあるという。

韓国人記者もたくさんいたので、室谷さんは韓国語で話かけたら、盧泰愚は日本語で答えたという。

「あなたの韓国語より、私の日本語の方がうまい。遠慮はいりません。日本語でどうぞ」

さらに話を続けると、

「私たちの世代で日本語を話せないとしたら、バカですよ。若い人は日本語を知らないから、私と全斗煥は、副官に聞かれたくない話は日本語で話したものです。今でも電話をしていて微妙な話題になると、秘書に聞かれないよう、どちらからともなく日本語になります」。

盧泰愚氏は、国民学校で担任だった日本人の教師をソウルに招待したという。

上の親日派世代は鬼籍に入るか、発言力を失う中、反日ファンタジー歴史学しか知らない人びとが韓国の政界、マスコミを牛耳っているのだと。

★朴槿恵大統領は中国語が堪能
朴槿恵大統領は、西江大学電子工学科卒、フランス留学経験があり、学生の時に習った中国語が堪能と言われている。

韓国が中国傾斜を強めている最近の傾向には、こういった背景もあるのだろう。

外華内貧
韓国人にとって大切なことは、外面を華やかに飾ることだと。「外華内貧」は朝鮮半島で創作された数少ない4文字熟語で、「見栄っ張り」、「格好つけ屋」などという意味だという。この4文字熟語ほど韓国人の何たるかを示す言葉はないと室谷さんは語る。

この本ではあまり詳しく紹介していないが、室谷さんの「悪韓論」では、韓国型新幹線(KTX)の韓国製部品の強度の問題によるエンジントラブル多発や、わいろを受け取って、不合格品を原子力発電所に取り付けさせて逮捕された100人余りの技術者のことを紹介している。

悪韓論 (新潮新書)
室谷 克実
新潮社
2013-04-17






★信じがたい離職率
この本のなかで”2007年の古いデータで恐縮だが”と紹介されている雇用統計に驚く。

入社1年以内の離職率     : 30.1%
入社2年以内の離職率     : 68.9%(青年求職者対象となっている)
3年以上一つの職場に勤めた率: 18.3%(つまり離職率81.7%!)

いくら韓国の離職率が高いとはいっても、にわかには信じられないデータだ。

額に汗する仕事そのものを蔑視し、そうした仕事をする人を露骨に軽蔑し、そして、そうした仕事に携わる人自身も、自分の職業に何らの誇りも持っていない。これが、朝鮮半島の歴史が作り上げた産業文化の底流だという。

彼らが作る製品あるいは半製品・部品が精度に欠けるのは、至極当然の帰結なのだと室谷さんは語る。

★慶尚道と全羅道の対立
金大中氏が大統領になるまでは、全羅道(後期百済の中心地域)に対する差別はすさまじかったという。もともとは、高麗王朝の始祖、王建が残した「訓要十条」に、旧百済地区からの人材登用を戒め、それがため高麗、李朝を通じて、全羅道の両班はほとんど官職に就けなかった。

朴正煕、全 斗煥、盧泰愚、金泳三と続いた慶尚道出身の大統領時代に、官民、軍警とともに、慶尚道優位の人材登用、予算配分が続き、全羅道差別は極みに達したという。

もともと異民族のように扱われていた済州島出身者も同様だったという。ちなみに呉善花さんは済州島出身だ。

2012年12月の大統領選挙の結果を見ても、全羅道では野党候補が9割の得票率で、全羅道の中心地の光州での朴槿恵の得票率は7.8%しかなかった。一方、慶尚北道では朴槿恵支持が8割だった。

百済と新羅の対立が現代まで残っているとは!

まとめるのが難しい国である。だから対日批判で国をまとめようとするのだろう。

室谷さんの本は、「悪韓論」も読んだ。こちらは、具体例が多く取り上げられているので、今度あらすじを紹介する。

悪韓論 (新潮新書)
室谷 克実
新潮社
2013-04-17



冒頭に記したように、序章を読めば、この本の表紙(蜂をまとって?日章旗を踏みつける人)にあるようなまさに呆れるような写真とともに、このの本の論点が理解できる。まずは書店で序章を立ち読みすることをおすすめする。


参考になれば次クリックお願いします。



中国はもう終わっている 二人の帰化日本人の対談



中国からの帰化日本人の石平さんと、台湾からの帰化日本人の黄文雄さんの対談。

この本はアマゾンの「なか見、検索!」に対応していないので、ちょっと長くなるが、”なんちゃってなか見、検索!”で目次を紹介しておく。

第1章 中国経済の崩壊でこれから何が起こるのか
・中国の株価下落でなぜ世界が大騒ぎしたのか
・いまごろリーマン・ショックのつけが表面に
・中国でシャドーバンキングはなぜ生まれたのか
・中国の不良債権は300兆円
・地方政府の崩壊が秒読み
・ますます信用できなくなっている中国の統計
・続々と撤退する外国資本と大量失業者の発生
・中国社会を崩壊させる2つのグループ

第2章 習近平体制は間もなく破綻する
・身内を攻撃する習近平
・習近平と江沢民派との闘いが始まった
・習近平は「大政奉還」を狙っている
・毛沢東路線に回帰する習近平
・習近平が煽るウルトラ・ナショナリズム
・憲政をめぐって分裂する中国
・中国で民主化は可能なのか
・李克強は習近平に取って代わるか
・胡錦濤と習近平の「最終戦争」

第3章 日中はこうして激突する
・アベノミクスを執拗に攻撃する中国
・中国とともに沈没する韓国
・オバマに「宿題」を突きつけられた習近平
・スノーデン問題で冷え込む米中関係
・着々と進む安倍政権の「中国包囲網」
・TPP経済圏の出現に焦る中国
・中韓接近で変化する朝鮮半島情勢
・中国と接近した国の末路
・中国は尖閣問題をどうしたいのか
・中国の本当の狙いは南シナ海か
・習近平が恐れる軍部の暴走
・靖国問題はもう中国のカードにならない
・沖縄問題と反原発に媚中派が結集
・沖縄は中国に飲み込まれるか
・台湾も香港も中国離れが進む

第4章 2014年世界から見捨てられる中国
・偽りの経済成長で深刻化する大気汚染と疫病蔓延
・350年前の人口爆発から始まった環境汚染
・環境悪化が中国の経済成長を不可能にする
・ウイグル問題の爆発が迫っている
・世界から締め出される中国
・日本は中国崩壊に備えよ

目次を読むだけでも、大体の内容が推測できると思う。最近の話題が多く、刺激的なタイトルばかり並んでいて、すぐにでも習近平体制が崩壊しそうな印象を受ける。

そんなに危ういのか、にわかには判断ができないが、参考になった点を紹介しておく。

ちなみに、石平さんは、結構激しいことを言っている。

「私から見ると、まるで中国と韓国は「ドラえもん」のジャイアンとスネ夫ですね。共倒れ同士がお互いを慰めあって、連携して日本に無理な要求をしている。彼らが生き残る道は、頭を下げて日本といい関係をつくるしかないのに、変な意地を通している。とくに、韓国を待っているのは、中国の属国になって中国と共倒れになるという、哀れな将来ですよ。」

まるで長谷川慶太郎さんのようだ。

破綻する中国、繁栄する日本
長谷川 慶太郎
実業之日本社
2014-01-31


★中国の高度成長は終わった。これでせっかく生まれた中産階級は冷え、不動産が暴落し、地方政府の財政が破たんする。富裕層はますます海外に逃げ出す。

★2013年7月に卒業して、9月に就職する中国の大学生は約700万人いる。2013年5月時点で就職内定率は16.8%で、「史上最悪の就職氷河期」と言われており、大量の大学卒業生が職にあぶれることになる。都市と農村の中間地区に集団で暮らす蟻族(平均月収は2,000元=2万6千円以下)が増加する。

★習近平は訪米して、オバマ大統領と8時間も費やして会談したが、延々と日本批判を繰り返す習近平に対して、オバマは「それまでだ。日本はアメリカの同盟国であり、友人だ。あなたはその点をはっきり理解する必要がある」と反論したという。子供の教育問題で時間がないという理由で、習近平の奥さんもオバマ夫人と会えなかった。

★オバマ大統領の最大の関心事は、サイバー攻撃問題と北朝鮮問題で、習近平主席からかなりの譲歩を取り付けた。しかし習近平にはたいした成果はなかった。

★中国によって侵害されているアメリカの知的財産権は年間3,000億ドル(30兆円)にも上る。ハッキング、情報窃盗に協力しているという疑いが、華為技術(ファーウェイ)にかけられている。華為は1988年に人民解放軍の元幹部の任正非社長が人民解放軍の仲間と設立した。

★アジアの中で日本を嫌いなのは中国と韓国だけ。安倍政権の「中国包囲網」は着々と進んでいる。日露間でも2+2(外務大臣と防衛大臣による安全保障協議委員会)設置で合意した。インドとの協力関係も進んでいる。安倍政権は、戦後初めて国益に基づいた戦略的外交を展開している。

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出典:本書134ページ

★韓国軍の統帥権は、朝鮮戦争以来アメリカにゆだねられており、これが2012年に返還される予定だったが、2015年に延長してもらった。それ以降は韓国軍が自ら作戦を指揮しなければならない。韓国は日本の集団的自衛権に反対しているので、韓国が攻撃された場合、アメリカは当然韓国を支援するだろうが、日本は韓国を支援することはできなくなる。

★現実的に中国軍が尖閣に上陸して、占領することは、アメリカが尖閣を日米安保条約の適用範囲と明言しているから不可能。せいぜい、国民に見える形でギリギリの挑発を繰り返すしかない。あわよくば、それで何とか安倍政権に圧力をかけて屈服させたいと思っている。

★南シナ海が中国の本当の狙い。アメリカの軍事力に対抗するために、南シナ海の海底に原子力潜水艦の基地をつくって、そこからICBMでアメリカ本土を核攻撃できる体制をつくることができる。これが中国の対アメリカの切り札となり、南シナ海こそ「核心的利益」だ。

★中国のアフリカ援助は、中国人を派遣し、現地に雇用を生まない「ひもつき援助」なので、ザンビアのマイケル・マタ大統領は、「中国資本をたたきだせ」、「彼らはインベスターではなく、インフェスター(寄生者)だ」と主張して2011年の大統領選挙に勝利した。また、ボツワナのイアン・カーマ大統領も「中国が労働者をつれてくるなら、それは『ノー』だ」と語っているという。

★日本は中国とは正反対のやり方で、直接見返りは求めずに、無償援助や技術移転を中心にアフリカ外交をやっており、中国は脅威に感じている。


石平さんと黄文雄さんは、中国と韓国を悪く言い過ぎではないかという気もするが、ここまで日本の肩を持ってくれる帰化中国人も少ないと思う。

中国、韓国の今後の動向が、この本の指摘するようになるのかどうかはわからないが、いずれにせよ目が離せないことは間違いない。一つの見方として参考になる本だった。


参考になれば次クリックお願いします。


韓国併合への道 完全版 日本に帰化した呉善花さんの本



1910年の韓国併合に至る歴史的事実と、1945年までの日本統治下の韓国、そして日本統治時代の評価についての拓殖大学教授・呉善花(オ・ソンファ)さんの本。

生い立ちや日本に来た1983年前後の事情は、ベストセラーとなった処女作「スカートの風」に詳しい。今度このあらすじも紹介する。



ちなみに「スカートの風」=チマパラムという言葉の意味は、女の浮気や、ホストクラブ通いなど自由奔放な女性を指す言葉だという。

呉さんは、1956年韓国済州島に生まれる。韓国人だったら誰でも求める、お金と権力にあこがれて、大学から志願して軍人となり、軍人との結婚を目指す(当時、韓国の歴代大統領は軍人だった)。

軍人との初恋はあえなく破れ、27歳の時に日本に留学する。日本の大東文化大学を卒業後、東京外国語大学大学院でマスターを取った。日本の大学で教えながら活発に執筆活動しており、2005年に日本に帰化している。

日本統治時代を客観的に評価する姿勢が韓国で国賊扱いを受けており、2007年の母親の葬儀の時には、空港で入国拒否をくらい、日本領事館の抗議で、葬儀にだけ参列できた。

2013年7月に親戚の結婚式で韓国に行ったところ、仁川空港で入国を拒否され、日本に強制送還されるという事件が起きている。



入国拒否となったのは、全3部作となった「スカートの風」や、この本の影響も大きい。

この本の初版は2000年に発売され、その時は第10章までで終わっている。




次が初版に集録されている1〜10章までのタイトルだ。

第1章 李朝末期の衰亡と恐怖政治

第2章 朝鮮の門戸を押し開けた日本

第3章 清国の軍事制圧と国家腐敗の惨状

第4章 独立・開化を目指した青年官僚たちの活躍

第5章 一大政変の画策へ乗り出した金玉均

第6章 夢と果てた厳冬のクーデター

第7章 国内自主改革の放棄

第8章 新たなる事大主義

第9章 民族独立運動と日韓合邦運動の挫折

第10章 韓国併合を決定づけたもの


上記の通り第1〜10章は歴史書である。

その後、2012年に「完全版」として、11章と12章が追加された。これら2つの追加が本当に重要な日本統治時代の評価に関する部分なので、これらについては、節のタイトルまで紹介しておく。

第11章 日本の統治は悪だったのか

・西洋列強による植民地統治との違い

・韓国教科書に載る「土地収奪」の嘘

・英仏蘭が行った一方的な領土宣言

・巨額投資による産業経済の発展

・原料収奪をもっぱらとした西洋諸国

・武力的な威圧はあったか?

・武断統治から文化統治への転換

・植民地で行われた弾圧と虐殺

・学校数の激増と識字率の急伸

・教育を普及させなかった西洋列強

・差別と格差をなくそうとした同化政策

・戦時体制下の内鮮一体化政策

第12章 反日政策と従軍慰安婦

・反日民族主義という「歴史認識」

・国民に知らされない日本の経済援助

・親日派一掃のための「過去清算」

・韓国人自身の「過去清算」への弾圧

・「従軍慰安婦」問題の再燃

・政権危機と対日強硬姿勢の関係


この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応している。目次は節タイトルまで記載しているので、ここをクリックして、全部の目次をチェックしてほしい。

この本を読んでいて、1〜10章までは歴史の叙述で、正直やや冗長なので、ダレ感があったが、最後の2章の思い切った発言は前の10章までとは全然異なっており、目が覚める思いだ。

2005年に日本国籍を取得して、2012年の「完全版」で、呉さんが思っていたことをやっと書けたということだと思う。それが上記のような韓国政府の入国拒否という事態を招いたのだろう。

第11章の「日本の統治は悪だったのか?」では、日本による朝鮮統治と西洋列強の植民地統治との違いとして次の4点を挙げている。

1.収奪によって内地を潤すという政策をとらなかったこと

2.武力的な威圧をもっての統治政策を全般的にとらなかったこと

3.文化・社会・教育の近代化を強力に推し進めたこと

4.本土人への同化(一体化)を目指したこと

たとえば、現在韓国で使われている地籍公簿(土地台帳、地籍図)は1910年から1918年までの間に朝鮮総督府が作ったものだ。近代国家体制の確立していなかった朝鮮に、本格的な土地調査を導入し、これにより土地の所有者を明確にした。

ところが、韓国の歴史教科書では、「全農地の約40%にあたる膨大な土地が朝鮮総督府に占有され、朝鮮総督府はこの土地を東洋拓殖株式会社など、日本人の土地会社に払い下げるか、我が国に移住してくる日本人たちに安い値段で売り渡した」(2002年の中学校国史の国定教科書を呉さんが引用)と書いている。

日本による土地調査事業について、ソウル大学の李榮薫教授の調査報告を紹介している。

「総督府は未申告地が発生しないように綿密な行政指導をした。(中略)その結果、墳墓、雑種地を中心に0.05%が未申告で残った。あの時、私たちが持っていた植民地朝鮮のイメージが架空の創作物なのを悟った」。

「日帝の殖民統治史料を詳らか(つまびらか)にのぞき見れば、朝鮮の永久併合が植民地統治の目的だったことがわかる。収奪・掠奪ではなく、日本本土と等しい制度と社会基盤を取り揃えた国に作って、永久編入しようとする野心的な支配計画を持っていた。近代的土地・財産制度などは、このための過程だった」。

しかし 李榮薫教授などは少数派だ。韓国の教科書フォーラムで聴衆に殴られる李教授の姿がYouTubeに掲載されている。



李榮薫教授は、「大韓民国の物語」で、韓国の歴史教科書を変えよと主張している。

大韓民国の物語
李 榮薫
文藝春秋
2009-02



この本で呉さんは、日本は西洋列強の収奪を目的とした植民地支配とは異なり、差別と格差をなくそうとした同化政策を取っていることを指摘している。李榮薫教授も、「地理的に接していて、人種的に似ていて、文化的によほど似たり寄ったりで、一つの大きな日本を作ろうとしていたのだ」と語っている。


創氏改名の真実

創氏改名についても、韓国でしばしば主張されているような「朝鮮人の姓名を強制的に日本名に改めさせること」ではない。

昭和15年に施行された創氏改名は次のような条件で行われた。

1.創氏は6か月間限定の届け出制。届け出なかったものは従来の朝鮮の姓が氏としてそのまま設定される。

2.創氏しても従来の姓がなくなるわけではなく、氏の設定後も姓および本貫はそのまま戸籍に残る。

3.日本式の氏名などへの改名は強制ではなく、期限なく、いつでもしてよい制度である。

朝鮮では本貫(ほんがん)と姓がある、たとえば慶州出身の李さんなら慶州李氏が本貫で、李が姓だ。本貫・姓では女性は結婚しても夫の姓にはならないので、本貫・姓に代わる家族名として「氏」を創設できる制度だ。結果として朝鮮在住者の80%が創氏して日本風の名前に変更している。

改名は名を変えることで、こちらは10%以下が改名した。

韓国国民に知らされない日本の経済援助

韓国の初代大統領となった李承晩は、日本の植民地支配に甘んじてきた屈辱の歴史を清算し、民族の誇りを取り戻すために、反日民族主義を打ち出した。

日本は終戦の時に、朝鮮のすべての日本及び日本人保有の私有財産・工場設備・インフラなどを米軍経由韓国に委譲し、北朝鮮にあった資産はすべてロシアが没収した。

ハーグ条約は占領軍が占領地の私有財産を没収することを禁じている。しかし、日本はこの主張を1957年に取り下げ、在朝鮮資産を正式に放棄した。

日本と韓国は戦争をしたわけではないので、本来日本に戦争賠償責任は生じない。

それにもかかわらず日本は1965年の日韓国交正常化を機に、日韓経済協力協定を締結して韓国に多額の援助をした。1950年代には国民一人当たりのGDPがわずか60ドルという世界最貧国の韓国にはまさに干天の慈雨となった。

日韓経済協力協定に基づく日本の援助額は、10年で有償2億ドル、無償3億ドル、民間経済協力3億ドル以上の合計8億ドル以上である。これは当時の日本の外貨準備のほぼ半分にあたる巨額の援助である。

このほか民間人に対する補償として1975年に軍人、軍属または労務者として召集され終戦までに亡くなった者を対象に、その直系遺族9,500人にそれぞれ30万ウォンが支払われている。同時に日本の金融機関への預金などの財産関係の補償として9万4千件に対して総額66億ウォンが支払われている。

韓国は日本からの資金を使って朝鮮戦争で荒廃した港湾、鉄道、鉄橋などのインフラや、農業近代化、中小企業育成、POSCO製鉄所などの重化学工業団地などを建設した。

1970〜1980年には約2,000億円が援助され、1980年からは追加の約3,300億円が地下鉄建設、ダム建設、下水処理などに活用されている。


韓国人自身の過去の清算

1997年1月の韓国の通貨危機以降、「韓国人自身の過去の清算」という言葉が登場し、日本の過去ばかりでなく、自らの過去を問い直そうという動きがでてきた。この表れが1998年10月に日本を訪問した金大中大統領の「もはや過去について論及することはない」という発言だった。

続く盧武鉉大統領も「過去は問わない、未来を見つめよう」と登場したが、金大中も盧武鉉も支持率低下とともに、対日強硬姿勢に転換している。


反日姿勢は大統領支持率アップに必須

盧武鉉はさらに親日反民族行為を糾弾するとして、106名を公表し、財産を没収した。これで親日派を一掃したのだ。

言論も弾圧された。2002年に韓国で出版された「親日派のための弁解」は青少年有害図書とされ、著者のキム・ワンソプは独立運動家の名誉棄損で在宅起訴された。




韓国の日本に対する賠償請求権は、1965年の「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」で消滅している。

しかし、韓国政府は盧武鉉政権の2005年以来、「従軍慰安婦、サハリン残留韓国人、韓国人被爆者は対象外だったので、解決していない」という態度を取っている。

どの政権でも政権支持率が下がる3,4年目には必ず対日強硬姿勢を打ち出しているのが現状だ。

朴槿恵(パククネ)大統領に至っては、就任当初から対日強硬姿勢を打ち出している。これは2011年8月に、韓国憲法裁判所が「韓国政府が賠償請求権の交渉努力をしないことは違憲」とする判断を示したことに始まっている。

つい最近もソウル高等裁判所で、新日鐵住金に対して戦時中の朝鮮人労働者に対して雇用条件と異なった重労働をさせたという理由で賠償を認める判決がでており、新日鐵住金は韓国大法院(最高裁判所)に上告した。

日本人から見ればきりがない韓国の賠償や謝罪要求は、実はすべて両国間で解決済みの問題であることを呉さんは冷静に指摘している。

呉さんは親日的な発言に目をつけられて、今は韓国入国を禁止されている元韓国人だが、その主張は拝聴すべきものと思う。

大変参考になる本だった。筆者が読んでから買った数少ない本の一つだ。


参考になれば次クリック願う。

戦後史の正体 元外務省・国際情報局長が書いた「米国の圧力」史

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)
著者:孫崎 享
創元社(2012-07-24)
販売元:Amazon.co.jp

昨年から話題となっている外務省の元・国際情報局長の孫崎享(まごさき・うける)氏が書いた「米国からの圧力」を軸とした戦後史。

昨年7月に発売されて以来ベストセラーとなっている。現在でもアマゾンの売り上げランキング500位くらいに入っている。

いわゆる「とんでも本」だと思っていて、いままで読んでいなかったが、外務省の元・局長だけに、興味深い指摘もある。


日本が負担した占領軍駐留経費

戦後日本の復興に、アメリカのガリロア・エロア資金(1946〜1951年までに18億ドル。うち5億ドルは返済)が大変役立った。米国による寛大な占領だったと言われている。しかし、実は同じ時期に日本は占領軍の駐留経費を約50億ドル負担しており、占領軍のゴルフ場代から、特別列車代まで負担していた。

孫崎さんは、一般に言われているほど「寛大な占領」ではなかったという。むしろ経済的な負担も日本に過酷なものがあった。

ちなみに、ガリオア・エロアは、人の名前か地名の様に思えるが、ガリオアはGovernment Appropriation for Relief in Occupied Areaの頭文字を取った"GARIOA"で、エロアは Economic Rehabilitation in Occupied Area Fundの頭文字を取った"EROA"だ。

本書によると、日本の負担した占領軍駐留経費は次の通りだ。

  年       金額     一般会計に占める割合
1946年    379億円   32%
1947年    641億円   31%
1948年  1,061億円   23%
1949年    997億円   14%
1950年    984億円   16%
1951年    931億円   12%

日本政府は戦争に敗れ、国土も産業も荒廃した大変な経済困難のなかで、6年間で5,000億円、国家予算の2〜3割を米軍経費に充てている。

この時、米国に駐留費の減額を求めて公職追放されたのが石橋湛山で、米国の言う通りにしたのが吉田茂だと孫崎さんはいう。

吉田茂の功績を高く評価している高坂正堯(こうさかまさたか)の「宰相吉田茂」などとは全く異なる評価である。

宰相吉田茂 (中公クラシックス (J31))宰相吉田茂 (中公クラシックス (J31))
著者:高坂 正尭
中央公論新社(2006-11)
販売元:Amazon.co.jp

吉田の考えは、「占領下だから文句をいってもしょうがない。なまじっか正論をはいて米国からにらまれたら大変だ」というものだったという。だから吉田は、対米追随派の代表であると。

別ブログでは北康利さんの「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」のあらすじも紹介している。吉田茂の政治姿勢を表す言葉として、「戦争に負けて外交で勝った歴史はある」というものがある。これが吉田の政治信条を貫いていたのではないかと筆者は考えている。

吉田茂 ポピュリズムに背を向けて吉田茂 ポピュリズムに背を向けて
著者:北 康利
講談社(2009-04-21)
販売元:Amazon.co.jp

孫崎さんの自主派/対米追随派で分けるというのは、偏った見方という気がするが、これがこの本を貫く孫崎さんの姿勢である。


自主派か対米追従派か

孫崎さんは、政治家は次の様に自主派と対米追随派に大別できるという。

自主派:
・重光葵(外相)
・石橋湛山
・芦田均
・岸信介
・鳩山一郎
・佐藤栄作
・田中角栄
・福田赳夫
・宮沢喜一
・細川護煕
・鳩山由紀夫

対米追随派:
・吉田茂
・池田隼人
・三木武夫
・中曽根康弘
・小泉純一郎
・海部俊樹、小渕恵三、森喜朗、安倍晋三、麻生太郎、管直人、野田佳彦

一部抵抗派:
・鈴木善幸
・竹下登
・橋本龍太郎
・福田康夫


日本の「自主派」政治家を引きずりおろす米国のツールは、検察、マスコミ、学者

検察特捜部は、もともとGHQの指揮下にあった「隠匿退蔵物資事件捜査部」(戦後に日本人が隠匿した資産を探し出してGHQに差し出すのが任務)だった。だから、孫崎さんは、創設当初から検察特捜部は米国と密接な関係を維持してきたと指摘する。

占領直後は、GHQは「公職追放」というまさに偏見と独断がまかり通る武器を持っていた。孫崎さんによると、米国からバージされた首相・政治家は次の通りだ。

芦田均以前の政治家は別として、田中角栄、小沢一郎が米国に目をつけられたというのは、うなずける。

・石橋湛山(公職追放)
・鳩山一郎(公職追放)
・芦田均(昭電疑獄)
・田中角栄(ロッキード事件)
・小沢一郎(越山会疑惑)


マスコミ、学界、官僚も親米

米国は、日本の大手マスコミのなかで、「米国と特別な関係を持つ人々」を育成してきた。また、外務省、防衛省、財務省、大学にも「米国と特別な関係を持つ人々」がいる。

松田武著の「戦後日本におけるアメリカのソフト・パワー 半永久的依存の起源」では、日本の米国学界が「米国に批判的な、いかなる言葉も許されない」状況でスタートし、米国から多額の援助を受けたことを指摘しているという。 

戦後日本におけるアメリカのソフト・パワー―半永久的依存の起源戦後日本におけるアメリカのソフト・パワー―半永久的依存の起源
著者:松田 武
岩波書店(2008-10-28)
販売元:Amazon.co.jp


アメリカの望みは「望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させること」

1950年にトルーマン大統領は、対日講和条約締結交渉を開始するように指示し、それを受けて1951年にジョン・フォスター・ダレス(後の国務長官)が来日する。

その時のダレスの交渉姿勢が、「われわれは日本に、われわれが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保できるだろうか。これが根本問題である」だった。

孫崎さんは、この姿勢が現在に至るまで変わっていないと指摘する。

たとえば鳩山首相の「普天間飛行場の移転先を最低でも県外」という発言は、米国の方針に反するために、鳩山首相は米国につぶされたと孫崎さんはいう。

たしかに鳩山首相の「最低でも県外」は、混乱を招いた。しかし、それ以外にも鳩山首相のお母さんからの毎月1,500万円の「こども手当」とか、国連総会で勝手に「2020年に温暖化ガス25%削減」とか言いだしたとかの要因もあって国内外の信頼を失って退任したので、別に米国の虎の尾を踏んだから退任したわけではないと思う。

ちなみに、普天間飛行場の返還・移転交渉については、守屋元防衛事務次官の「普天間交渉秘録」のあらすじを紹介しているので、参照願いたい。

「普天間」交渉秘録「普天間」交渉秘録
著者:守屋 武昌
新潮社(2010-07-09)
販売元:Amazon.co.jp


行政協定(地位協定)のための安保条約?

戦前の外務省アメリカ局長で、1946年に外務次官になった寺崎太郎は、「行政協定(注:現在は地位協定)のための安保条約、安保条約のための平和条約でしかなかったことは、今日までに明らかとなっている。つまり本能寺は最後の行政協定にこそあったのだ」と語っている。

朝鮮戦争が勃発したことから、米国は日本に対する考えを変え「ソ連との戦争の防波堤」としようとした。

日米地位協定では、第2条で基地の使用を認め、「いずれか一方の要請があるときは、(中略)返還すべきこと、または新たに施設および区域を提供することをを合意することができる」となっている。

ダレスの「望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させること」が実現しているのだ。


「北方領土問題」は米国発案

孫崎さんは、北方領土問題は米国が、日本とソ連との間に紛争のタネをのこし、友好関係に入らないためにつくったものだと語る。

というのは米国ルーズベルト大統領はスターリンにソ連参戦の条件として国後、択捉の領有権をソ連に約束している。しかし冷戦の勃発後は、国後、択捉島のソ連による領有に米国は反対している。

孫崎さんが頻繁に引用する米国の歴史家・マイケル・シャラーさんの「『日米関係』とは何だったのか」でも、この件が紹介されている。

「うまくいけば、北方領土についての争いが何年間も日ソ関係を険悪なものにするかもしれないと彼らは考えた」。

「日米関係」とは何だったのか―占領期から冷戦終結後まで「日米関係」とは何だったのか―占領期から冷戦終結後まで
著者:マイケル シャラー
草思社(2004-06)
販売元:Amazon.co.jp

この本も図書館で借りたので読んでみる。

紛争のタネを残しておくというのは、インド・パキスタンの間のカシミール問題、アラブ諸国の間の飛び地問題、日韓の竹島問題、日中の尖閣列島などにも当てはまり、外交上よく行われる手口だという。


「イコール・パートナー」を提唱したライシャワー大使

孫崎さんは、ライシャワー大使についての逸話をいくつか紹介している。

一つは東京オリンピックの時の選手村が当初朝霞に決まっていたのを、外務省がライシャワー大使の口添えで代々木の米軍キャンプを移転させ、跡地を選手村にしたことだ。

この時は、オリンピックの主管官庁の文部省が反対し、「朝霞に決めたので主管官庁でもない外務省が口を出すな」と全く動かなかったので、事務次官会議を通さずに閣議に上げたという。

東京生まれのライシャワー大使は、戦前も対日戦争に反対し、戦後は沖縄返還のきっかけをつくった。まさに「二つの祖国」を橋渡しした人である。

日本への自叙伝日本への自叙伝
著者:エドウィン・O・ライシャワー
日本放送出版協会(1982-01)
販売元:Amazon.co.jp


自主派の佐藤栄作首相

佐藤首相時代に日本は「核保有国は、非保有国を攻撃しない義務を負うべきだ」という政策を立案し、1968年に国連の「非核保有国の安全保障に関する安保理決議」として結実している。

佐藤首相は、1965年に沖縄を訪問し、「沖縄の祖国復帰が実現しないかぎり、わが国にとっての戦後が終わっていない」という声明を読み上げた。

これは外務省と全く打合せしていなかったという。

佐藤首相は、退任後、1974年に「非核三原則」の提唱により、ノーベル平和賞を受賞した。筆者も賛否両論がおこったことを覚えている(どちらかというと、「否」の方が多かったと思うが)。

たしかに「核保有国は、非保有国を攻撃しない」という義務が、本当に国際的に確立できれば、ノーベル平和賞にも値するだろう。


ニクソンと佐藤首相の密約

1969年に訪米した佐藤首相は、ニクソン大統領との間で二つの密約を締結する。一つは沖縄に核兵器を持ち込むような事態が将来生じた場合、日本政府は理解を示すという「核持ち込み密約」。

もう一つはニクソンが大統領選挙対策上もっとも重視していた南部各州対策のための繊維製品の対米輸出枠の密約だ。

佐藤首相は帰国後密約は存在しないという立場をとり、合意を実行しなかった。ニクソンと交渉にあたったキッシンジャーは激怒し、報復を始めた。


ニクソンの報復

第1弾は日本には事前通告なく発表されたニクソン訪中。第2弾はニクソンショック(金ードル交換停止)だと孫崎さんはいう。

ニクソン訪中については納得できるが、ニクソンショックはたぶん密約無視とは関係ないだろう。


田中角栄失脚

ロッキード事件が米国発で起こり、田中角栄が失脚任したことは、一般的にはロシアからのガス輸入や北海油田開発などの日本独自のエネルギー政策が、米国の怒りを買ったといわれている。

しかし、孫崎さんは田中角栄が、米国より先に日中国交回復を実現したことが、米国の怒りをかったのだと説く。

米国は日本の頭ごなしに、ニクソン訪中を1972年2月に実現していながら、中国との実際の国交樹立は議会の反対で1979年までできなかった。

ところが、田中角栄は中国を訪問した1972年9月に日中国交回復を実現している。これが中国が田中真紀子や、小沢一郎などの旧田中派の政治家を「老朋友」と遇する理由だ。


日本のP3C大量配備は米国防衛のため

孫崎さんは、日本のP3C対潜哨戒機大量配備は、日本のためではなく、米国のためだと指摘している。

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出典:Wikipedia

オホーツク海に潜むロシアの潜水艦はSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を持っており、それのターゲットは米国で、日本ではない。

しかし米国はシーレーン防衛という名目でP3Cを大量に買わせて、米国の防衛の肩代わりをさせているのだと。

一面ではたしかに孫崎さんの指摘するような面はある。しかし、現代の防衛はイージス艦や、三沢など各地にある米軍の高性能レーダー、AWACS早期警戒機、海峡に設置された音波収録器など、様々な情報を管制してはじめて成り立つのであり、単に対潜哨戒機だけ持てば役に立つわけではない。

特に昨今は、中国潜水艦と思われる国籍不明潜水艦も日本近海に出没するようになってきている。

孫崎さんの説は、あまりに狭量というか、外務省の元高官が言う言葉ではないと思うが…。


2005年の日米同盟の変質

2005年小泉政権が締結した「日米同盟 未来のための変革と再編」は従来の安保条約を変質させている。

1.日米軍事協力の対象が極東から世界に拡大された。

2.戦略の目的が、「国際安全保障環境を改善する」こととされた。


TPPは日本にとってきわめて危険

TPPの狙いは日本社会を米国流に改革し、米国企業に日本市場を席巻させることで、日本にとってきわめて危険な要素を含んでいると孫崎さんは語る。

被害は限りなく想定されるという。

たとえば国民健康保険制度が崩壊するという危険性を挙げているが、意味がよくわからない。TPPを米国が日本にせまる理由も、日本が中国に接近することへの恐れと、米国経済の深刻な不振だという。

こういった議論については、今度紹介する「米韓FTAの真実」という本が、参考になると思う。

TPPの正しい議論にかかせない米韓FTAの真実TPPの正しい議論にかかせない米韓FTAの真実
著者:高安雄一
学文社(2012-11-22)
販売元:Amazon.co.jp

注意して読むと、外交官時代に自分が見たり聞いたりした情報はふくまれていない。公務員として守秘義務が課せられているからだろう。

自分が持っている情報は一切出さないが、公表されている情報をまとめて対米追随派/自主派という論理を組み立て、政治家や過去の事件を分類している。

佐藤優さんの本だったか、インテリジェンスのほとんどは新聞や雑誌などの公開情報の寄せ集めという話があった。公開情報を分析して、その奥に潜む真実や、その国の真意を探り当てるのがインテリジェンスだ。

外務省のインテリジェンス部門の国際情報局長をつとめた人だけに、同じ手法をとってこの本を書いているものと思う。

結論として、やはり「とんでも本」というか、「偏向本」ではないかと思うが、的確な指摘も含んでいる。どう評価したらよいのか、よくわからない本である。


参考になれば次クリック願う。



朴槿恵の挑戦 韓国と「結魂」した新大統領に期待する

朴槿恵〈パク・クネ〉の挑戦 - ムクゲの花が咲くとき朴槿恵〈パク・クネ〉の挑戦 - ムクゲの花が咲くとき
著者:李 相哲
中央公論新社(2012-11-08)
販売元:Amazon.co.jp

先日韓国初の女性大統領として就任した朴槿恵(パク・クネ)の生い立ちや政治信条などを紹介した本。


槿(ムクゲ)は韓国の国花

朴槿恵の槿(ムクゲ)は無窮花(ムグンファ)と呼ばれ、国歌(愛国歌)にも歌われている。韓国人にとってはムクゲは特別の花だ。

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出典: Wikipedia



朴槿恵の父・故・朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が3日かかって考えた名前だという。

朴槿恵は60歳。若く見えるが、その経歴はすさまじいものがある。

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出典: Wikipedia

22歳の時(1974年)に、朴正煕大統領夫人の母・陸英修が在日朝鮮人の文世光に銃撃されて死亡

その5年後の1979年に、朴正煕大統領も腹心の部下のKCIA部長の金戴圭に暗殺される。この時、朴正煕大統領はまだ61歳だった。


良くも悪くも朴正煕の娘

朴正煕大統領の手法は「開発的独裁」と呼ばれ、軍事クーデターを起こした1961年には一人当たり80ドルだった国民所得を、暗殺された1979年には1,620ドルにまで急成長させた「漢江の奇跡」の立役者として評価されている。

その一方で、クーデターを起こして政権を強奪した手法や、民主化を抑圧し、ベトナム戦争に韓国軍を派兵するなど、独裁者として権力をほしいままにした。米国のカーター政権の圧力をはねのけて、秘密裏に核開発を進めていたこともわかっている。

個人的には清廉潔白な人だったといわれ、韓国にM−16小銃を供給することになったマクドネル・ダグラス社からの賄賂の百万ドルの小切手を受け取らず、代わりに小銃を出してくれと言って突っ返したという逸話がある。

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出典:Wikipedia

この本の半分以上は故・朴正煕大統領の人物伝となっている。朴槿恵〈パク・クネ〉が紹介されるときは、朴正煕の長女と紹介されることが多いので、やむを得ないところかもしれない。


朴正煕の経歴

朴正煕の経歴を簡単に紹介しておく。朴正熙は1917年に貧しい農村に5男2女の末っ子として生まれ、師範学校を卒業して聞慶国民学校で教師をした後、1940年に満州に渡って、満州国軍軍官学校に入学した。

2年で主席で卒業して、日本の陸軍士官学校に編入。1944年に卒業した後は、満州国軍に配属され、終戦時には満州国軍中尉だった。一時日本名に改名したことがあり、高木正雄と名乗った。蒋介石のように日本陸軍に在籍したことはないが、酔うと日本の軍歌などを歌っていたという。

終戦後、韓国軍の中心的存在としてランクを高めていき、1961年5月16日の軍事クーデターの時は、第2軍副指揮官だった。(写真の右側のサングラス・ジャンバー姿が朴正煕)

朴正煕クーデター





出典:Wikipedia

クーデター後、朴正煕は国家再建最高会議議長に就任し、1963年に韓国大統領に就任した。1964年には中断していた日韓交渉を再開させた。

反対勢力を押し切るために1964年6月に戒厳令を発布、1965年6月に日韓基本条約を締結し、日本から無償3億ドル、有償2億ドル、融資3億ドルの援助を取り付ける。韓国の輸出額が年間1億ドルしかない時代だった。これが「漢口の奇跡」の原資となった。

竹島をめぐる日本と韓国の間の領有権問題について「両国友好のためにあんな島など沈めてしまえ」と発言したと言われているが、真偽のほどは確認できていないようだ。

1972年に10月に国会を解散、政党・政治活動を禁止して、大学を閉鎖して全土に非常戒厳令を発布する政治改革を断行する国家非常事態宣言を発表した。10月維新と呼ばれる事態である。

1973年8月に、日本を訪問していた金大中がホテルから拉致されるという金大中事件が起こる。

10月維新時代に辛酸をなめた活動家や一般市民に、朴槿恵は謝罪している。2004年に金大中を訪ね謝罪した時は、金大中は「本当にうれしかった。世の中にこんなこともあるんだなと思った。朴正煕が生き返って私に握手をもとめているような気がした」と自伝で書いている。

金大中自伝(II)歴史を信じて――平和統一への道金大中自伝(II)歴史を信じて――平和統一への道
著者:金 大中
岩波書店(2011-02-26)
販売元:Amazon.co.jp

1972年の10月維新の後、1974年に母親の陸英修が在日韓国人の文世光に銃撃されて死亡、1979年には父親の朴正煕が暗殺されたことは前述のとおりだ。


朴槿恵の政治活動

父親が暗殺された後、朴槿恵は政治からは遠ざかっていた。しかし、1997年に韓国経済が破綻し、IMFの管理下に置かれると、朴槿恵は国の危機を救うために政治家となることを決断し、1998年に国会議員となった。

ハンナラ党の主要メンバーとして積極的に活動し、一時ハンナラ党を離れたことはあるが、ほどなく復党した。2004年にはハンナラ党総裁となって、選挙を勝ち抜き、「ハンナラ党のジャンヌ・ダルク」と呼ばれた。

2006年の遊説中に男にカッターナイフで切りつけられ、右耳から顎に60針縫う傷を負わされた。傷口があと1センチ深かったら、頸動脈に達し、命を落としかねなかったという。

この時の心境を朴槿恵は次のように書いている。「手術台に横になった時、両親を思い出した。手術が行われている間、私の頭には、ずっと、銃創で苦痛に耐えている父と母の顔が浮かんでいた。…」


大統領候補に

2007年に大統領候補を李明博と争ったが1.5ポイント差で敗れ、李明博が大統領として就任する。李明博の「すべては夜明け前から始まる」などの著書を、別ブログでも紹介しているので、参照してほしい。

すべては夜明け前から始まる―大韓民国CEO実用主義の大統領李明博の心の軌跡すべては夜明け前から始まる―大韓民国CEO実用主義の大統領李明博の心の軌跡
著者:李 和馥
理論社 (発売) 現文メディア (発行)(2008-02-15)
販売元:Amazon.co.jp

その後、李明博大統領と朴槿恵は、2009年に世宗市問題で対立することになる。世宗市はソウルの集中化を緩和するために、ソウルに代わる首都として韓国中部に新たに建設する都市で、首都移転計画を見直す李明博に、当初計画通りに建設すべしとして朴槿恵が迫ったのだ。


尊敬する政治家は父とサッチャー

「尊敬する政治家」を聞かれて、朴槿恵は、「父とサッチャー」と答えた。サッチャー自身も「人間として必要なことはすべて父から学んだ」と父アルフレッドを尊敬していたという。

朴槿恵は、両親が亡くなった後、大事なことを決めるときに、「父だったら、母だったらどうしただろう」と考える習慣ができたという。


朴槿恵への質問状インタビュー

この本の最後に、朴槿恵への質問状に対する彼女の回答が紹介されている。時間の関係で、インタビューができなかったために、質問状形式での受け答えとなったものだ。

現在の韓国の問題点と解決の方向性が示されているので、興味深い。参考になるものを紹介しておく。

★私は結婚はしておりませんが、「結魂」はしました。何度も公の場で言ったことがありますが、私はずっと前に、大韓民国と結婚(結魂)したのです。ですから、私は大韓民国にすべてをささげてきましたし、これからもそうするつもりです。私は一人でも、独身でもありません。亡くなった父も、きっとこの結婚は喜んでくれているでしょう。

★今、我が国の抱えているさまざまな問題のうち、至急解決しなければならない切実な課題の一つは、さまざまな勢力、社会各層、地域の間に生じている「対立」、「不信」、「不公正」を解決することです。それらの問題を解決して「大統合」を実現するのが何より大事です。

★そのために「国民幸福推進委員会」を作り、誰も疎外されたり、立ち遅れたりすることのないように、どの地域に住んでいようが、どの分野の仕事に従事していようが、みんなが自分の未来を夢見ることのできるような社会を目指します。

★今まで、我が国では、国家の経済成長が必ずしも一人ひとりの幸せに繋がっていませんでした。(中略)私は「国民みなが自分の能力を発揮できる国」にしようと思います。

★それを実現するために、我が国の強みでもある情報通信技術、科学技術を産業全般に応用して創業者を増やし、若い人たちに働きの場を提供するための政策を推進します。今後、製造業中心の伝統的な産業を高付加価値産業へと変貌させ、文化産業、ソフトウェア産業のような未来型産業を積極的に育成し、働き口を増やします。

★中小企業と大企業が共に成長し、正規雇用と非正規雇用との間に差別のない制度を整備する努力が必要です。そのために「経済民主化」を主張しています。(中略)「韓国型福祉制度」を作りたいのです。

★私は、不正腐敗の問題を非常に深刻に受け止めています。政治が存在するもっとも大きな理由、政治の使命は、国民の生活をよりよくすることにあります。つまり「民生」を第一に考えなければならないのです。ところが、我が国の政治は、国民の生活とは関係のない不正腐敗をはたらいて、逆に国民から批判される場合が多い。

★これについては本当に痛恨の思いを持っています。恥ずかしいことです。私はこれから、この国の誰であろうが、不正腐敗に関与した場合は、絶対容認しないでしょう。真の改革は私から、私の周辺から始めなければならないと思います。権力に関連のある不正腐敗問題については、「特別監察官制度」を作り、事前予防に努めます。

★北韓は、核兵器が典型的ですが、武力で相手を脅迫し、屈服させようとする計略が通用しないことを認識し、そうした考えを捨てなければなりません。そこで初めて、相互尊重、相互信頼の雰囲気が作られるでしょう。そのような雰囲気を作り出すため、私は韓半島信頼プロセスを推進しようと思っています。

★私と我が国民は2400万人の北韓同胞を決して忘れることはありませんし、実際、忘れてもいません。我々は同胞愛と人道的な立場に立っていつでも助ける準備ができています。

特に最後の質問の回答が大変参考になった。

この人は「自責」(他人の責任をあげつらう「他責」に対して、自分の責任をまず考える態度の人)の人だと思う。

やっかいな金正恩という隣人の取り扱いは大変だと思うが、日韓関係改善を含め、朴槿恵大統領の今後の活躍を大いに期待したい。


参考になれば次クリック願う。


中国大分裂 長谷川慶太郎さんの中国分裂予測

中国大分裂 改革開放路線の終焉と反動中国大分裂 改革開放路線の終焉と反動
著者:長谷川 慶太郎
実業之日本社(2012-07-12)
販売元:Amazon.co.jp

85歳になった今でも、「大局を読む」シリーズなど、するどい状況分析に基づく政治・経済予測を毎年出している長谷川慶太郎さんの近著。

先日決行された北朝鮮の3回目の核実験をはっきり予想している。長谷川さんの見方が正しかったことが証明された結果となった。

その他の論点についても論理の筋道が立っており参考になる。

この本と同じ路線の「2014年、中国は崩壊する」も読んでみた。

こちらは元マイカル法務部でマイカル大連などの出店経験があるという現国会新聞社編集次長の宇田川 敬介さんが書いたものだ。

北京駅の荷物検査場には手りゅう弾を爆発されるための円筒形のコンクリートの箱があったとか、一人っ子政策に反して生まれた戸籍のない人=黒子が車に轢かれても、警官は死体を崖下に投げ落とすのを見た。さらに黒子の遺族は、車の運転手に器物損壊で訴えられたというような話が宇田川さんの本では載っている。

中国人にとってメンツがいかに重要かという宇田川さんの議論はよくわかったが、上記のような話は、いくらなんでもあり得ないのではないかと思う。

2014年、中国は崩壊する (扶桑社新書)2014年、中国は崩壊する (扶桑社新書)
著者:宇田川 敬介
扶桑社(2012-06-01)
販売元:Amazon.co.jp


この本で長谷川さんが予想しているシナリオは次の通りだ。

1.中国ではいままで毛沢東の系譜を継ぐ文革路線の人民解放軍と、胡錦濤・温家宝らが推進する改革開放路線の中国共産党の対立があった。人民解放軍は毛沢東思想を信奉し革命を推し進めるという立場だが、中国共産党は革命を放棄している。

2.人民解放軍の7つある軍区のうち最大の勢力は瀋陽軍区だ。瀋陽軍区には核兵器はないが、ロシアと国境を接しているので5つの機械化軍団のうち4軍団を傘下におき、最強の軍事力を誇っている。

中国の軍区は次の図の通りだ。

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出典:本書4−5ページ

3.2012年に毛沢東派の薄煕来・重慶市共産党書記・党中央政治局員が、収賄と妻の英人ビジネスマン殺人容疑により失脚し、中国共産党トップの9人の政治局常務委員には人民解放軍の代表はいなくなった。薄煕来は、重慶市に行く前は遼寧省省長や大連市長を歴任した瀋陽軍区の出世頭だった。

4.北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)は瀋陽軍区の傀儡で、先日のミサイル発射もすべて瀋陽軍区の命令を受けて金正恩が実施している。北朝鮮の軍事パレードには瀋陽軍区が貸し出した武器が使われている。

5.北朝鮮は3度目の核実験を近いうちに必ず実施する。瀋陽軍区は核兵器を持っていないため、北朝鮮に核兵器を開発させ、それを瀋陽軍区の切り札として北京政府を恫喝したいからだ。

6.北朝鮮が3度目の核実験を行うと、国連はいままでの経済制裁では効果がないとして、武力制裁を決議する可能性が高い。そうすると常任理事国の中国は、武力制裁に同意せざるをえない。

そうなると北朝鮮の実質支配者である瀋陽軍区が北京政府に叛旗を翻し、中国は分裂状態になる。最終的には中国は、7つの軍区に分かれた連邦制になると長谷川さんは予想している。

7.こういった情勢をわかっていないのは日本だけで、米国は中国が分裂状態になることを予想している。その際に北京政府が米国に助けを求めてくる可能性もあるとみて、2011年に第7艦隊の空母を2隻に増やした。それがトモダチ作戦で活躍した空母ロナルド・リーガンだ。



沖縄にオスプレイを配備して海兵隊の機動性を増したのもその戦略の一環である。



昨年の反日デモでは、暴徒が毛沢東の肖像画を掲げているのが目についた。



毛沢東の主導した文化大革命がいかに悲惨なものだったかは、このブログで紹介した「私の紅衛兵時代」で紹介した通りだ。

長谷川さんの見立てが正しいかどうかわからないが、中国が混乱に陥る可能性はあるのではないかと思う。

そのほか参考になった点をいくつか紹介しておく。

★パナソニックは主力のマレーシアのコンプレッサー工場が、中国のメーカーとの競争に負けて閉鎖に追い込まれた。パナソニックの中国のテレビなどの工場も赤字で閉鎖したいが、中国政府が閉鎖を認めないので、操業中止状態にある。

★中国では輸出不調と不動産価格下落のため失業者は1億人いる。銀行が不動産融資を絞ったため、不動産価格は暴落している。不動産価格は2011年末時点で前年比半額以下になったという。

★中国には預金保険制度がないので、銀行はみんな粉飾決算をしている。中国政府は必死に銀行をテコ入れしている。

★高速鉄道網建設は、総延長8万キロの予定が実績は2万キロしか建設できていない。2011年1年間では300キロしか建設できていない。建設資金が滞ったことと、乗客が少ないためだ。2011年7月の浙江省温洲の高速鉄道事故では、あれだけの大事故なのに死者は40名だけだった。乗客が少なかったからだ。

★中国の富裕層の海外移住で一番人気はカナダだ。固定資産と流動資産160万カナダドルを持ち込むと国籍が買える。カナダのマンションを、香港の財界人の李嘉誠は多く開発し、中国人の富裕層に売っているという。

★上海のブランドショップは店員が偽物をつかませるという噂がある。だから中国人は東京に来てブランド物を買うのだ。

★中国の不穏な動きに敏感に反応したミャンマーは中国離れをして、中国のプロジェクトの多くは中止となった。しかし西側の経済進出で活気を呈している。

★韓国の朴正煕大統領は一切蓄財をしない立派な大統領だったという。娘の朴さんが今回大統領になったが、2DKのマンションに住んで質素な生活をしているという。

★米国の陸・海・空軍は米国議会の上院下院の本会議で戦争決議が成立しないと軍事行動をとれないが、海兵隊は例外で大統領の命令で戦闘行動がとれる。

だから朝鮮半島になにか事が起これば、沖縄の海兵隊がオスプレイで飛ぶのだ。沖縄の海兵隊がいなければ、韓国の国防は成立しない。

★尖閣列島は、人民解放軍の南海艦隊が勝手に動いていて、北京政府は後追いで追認している。先軍政治色が強くなっている。

★中国では電圧もコンセントの形状も地域によってバラバラだ。北京と天津を結ぶ高圧電線もない。

★中国の原子炉はいろいろな国の技術のつぎはぎで、安全性には大きな疑問がある。しかし、すでに15基の原子炉が稼働している。

★日本のメタンハイドレードの開発技術はカナダから導入している。カナダのハドソン湾にもメタンハイドレードが大量に埋蔵されており、その開発技術を使っている。

★アメリカ経済の立役者となるシェールガス革命によりロシアの相対的発言力は低下している。プーチンは日本に天然ガスを買ってもらいたいと思っている。

カナダもインドネシアも天然ガスを売りたいので、日本は有利に交渉を進めることができる。

上記のように様々な情報をポンポン紹介している。しかし、真偽のほどは筆者はまだ確かめていない。まずは未確認情報としておいていただきたい。


参考になれば次クリック願う。



国会議員の仕事 自民党・民主党の若手ホープの政治家のつくりかた

2012年12月18日追記:

総選挙の結果、民主党の津村啓介さんが小選挙区では落選したが、比例で当選した。小沢一郎について行って民主党→未来の党で立候補し、落選した友人もいるので、まずはおめでとうといいたい。

民主党でやれることは少ないと思うが、是々非々で民主党も自民党と協力して国政を動かしていってほしいものだ。


2012年12月14日初掲:
国会議員の仕事―職業としての政治 (中公新書)国会議員の仕事―職業としての政治 (中公新書)
著者:林 芳正
中央公論新社(2011-03)
販売元:Amazon.co.jp

国会議員の仕事を、自民党の世襲政治家で参議院議員の林芳正さんと、民主党でサラリーマン家庭に育った元日銀マンの津村啓介さんが、それぞれの履歴や政治活動について語っている。

衆議院選挙は2012年12月16日投票だ。林さんは参議院議員なので、選挙には臨まないが、津村さんの民主党には逆風が吹いているので、厳しい選挙になると思う。是非切り抜けて4期目当選と果たしてほしいものだ。

「職業としての政治」というタイトルでは、もちろん筆者も学生時代に読んだマックス・ウェーバーの著書が有名だ。

職業としての政治 (岩波文庫)職業としての政治 (岩波文庫)
著者:マックス ヴェーバー
岩波書店(1980-03-17)
販売元:Amazon.co.jp

この本では、ウェーバーのようなアカデミックな立場でなく、政治家として活動しているお二人の実際の行動が具体例として紹介されていて興味深い。

この本では林さんと津村さんが、機ス餡餤聴になるまで、供ス餡餤聴の仕事と生活、掘ゾ泉政権から政権交代へ、検ダ権交代後の1年について、それぞれが書き、最後の后ァ嵜Χ箸箸靴討寮治」を語ろうで、林さん、津村さんが対談するという構成になっている。

親類に政治家がいる人は林さんのパターン(林さんはちなみに4代目)。まったく徒手空拳の人は、津村さんパターンが参考になると思う。

次に目次とキーワードを箇条書きで紹介しておく。大体の内容がわかると思う。

林芳正:

機ス餡餤聴になるまで
1.「政治家の家系」ではあるけれど
  政治には「無意識」だった 
  父親の「注文」(文兇任覆文気法
  商社マンになる 世界を見たことが転機に

2.決意と戸惑い
  「どうするか考えなさい」(三井物産を退社して父親のカバン持ちに)
  (ハーバード大学ケネディスクール卒業) 
  大蔵大臣政務秘書官 
  「チャンスをもらえる人間はそうはいない」(1995年の参議院選挙で初当選) 

供ス餡餤聴の仕事と生活
1.行政の仕組みを知る
  橋本対小泉
  (父と仲人の宮澤喜一さんが属する宏池会に入る)
  規制緩和で役所と対峙(「ここで先生とお話ししても、何も決まりませんから」と労働省の役人に言われる)
  財政金融委員会

2.大蔵政務次官・参議院副幹事長
  「ゼロ金利」をめぐる攻防(デフレの始まり) 
  宮沢喜一流の指導(次官を鍛える) 
  参議院の独自性を高める

3.小泉政権
  「加藤の乱」の現場 突如変わった「風」
  (小泉内閣支持率80%に急上昇) 
  外交防衛委員会委員長(FTA推進) 
  郵政解散 小泉政治の功罪
  (罪の方が大きい。)
  (『政策がわかっている人』ではない。消費税・集団的自衛権を先送りし、郵政民営化を優先した。)
  靖国参拝で中国・韓国との関係悪化)

掘ゾ泉政権から政権交代へ
1.安倍内閣
  「強力政権」のツケ 
  三期目の選挙

2.防衛大臣(2008年8月改造福田内閣)
  予算委員会の仕事 
  初入閣でまずやったこと(所管事項のレクを受ける)
  ”チーム”の大事さ(自衛官を入れて26万人の大所帯)
 「防衛大綱」見直しに着手(大臣の承認を得ない『専決』の見直し。普天間決着を逃す)

3.2度目の入閣と自民党の下野
  唐突な「大連立」だったが 
  首相の条件(角栄の原則:内政と外交の重要閣僚、党三役の少なくとも2つを経験した人間でなければ、総理の資格はない) 
  勝負の時を誤った(麻生内閣の1年弱) 
  経済財政政策特命大臣(2009年7月から1か月)

そして2009年8月に政権交代が起こる。次は過去の衆参両院の政党別人数の推移だ。

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出典:本書265ページ


検ダ権交代後の1年
1.政権交代は必然だった
  自民党下野の根本原因
  (「旧態依然」の自民党に国民が”NO”。 小選挙区制は日本になじまない

2.民主党政権の諸問題
  マニフェストはなぜ「破綻」したか
  (間違いだらけで、作り方がいい加減。パブリックコメントも経ていない) 
  乗数効果問答(「乗数効果」を知らない菅財務大臣)
  「政治主導」の弊害 軸なき民主党外交が残したもの(普天間迷走)
  「政策不況」はいつまで続く?
  (日米FTAを無視してなぜTPPか?)
  ”青い鳥”は果たしているか?

3.自民党は何をなすべきか
  野党になってできたこと 
  今の私の目標(2010年1月に自民党の綱領を作り直し)


津村啓介

機ス餡餤聴になるまで
1.サラリーマン家庭
  われら団塊ジュニア世代(出身は岡山県津山市)
  (麻布から東大法学部) 
  日本銀行(1994年ー2002年) 
  (日銀で直属上司の証券課長が『ノーパンしゃぶしゃ事件』で逮捕される)

2.政治家をめざす
  オックスフォード大学MBA留学で保守党クラブに入る 
  江田五月さんとの出会い 
  民主党の候補者公募制度(イギリスの制度をモデルに) 
  親の反対
  (お兄ちゃんの人生なんだから、お兄ちゃんの好きなようにさせてあげなさいよ)

3.若い力を国会へ
  「落下傘候補」 
  初めての街頭演説(1に毎日、2に堂々、3に短いフレーズ)
  党からのサポート 
  ポスター貼りのこだわり(馬淵澄夫議員に指導を受ける) 
  労働組合とのつきあい 
  (2003年選挙で小選挙区落選、比例区で当選)
 
供ス餡餤聴の仕事と生活
1.国会という場
  新人議員の失望
  (質問者も大臣も原稿棒読み 本会議は単なるセレモニー。法律は官僚によって作られ、国会の審理はアリバイつくり) 
  一期生の仕事は「次の選挙に勝つこと」
  (一気に9人の秘書を雇い、130万円/月の歳費はすべて人件費に充て、ボーナス550万円を生活費に。週に岡山・東京を2往復 小さな祭りや神事を優先してイベントにすべて顔を出す) 
  戦後初の「戒告」処分

次が津村さんの平均的な岡山での日程だという。たしかにいろいろなイベントに顔をだしまくっている。

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出典:本書124ページ

2.国会質問
  国会質問の作り方(福井日銀総裁に質問)
  国益とは何かー外務、安全保障委員会 
  超党派の課題ー天皇制の危機

3.政治とカネ
  国会議員個人の収支(歳費+文書通信交通滞在費 100万円/月) 
  政治資金ー収入(政党交付金 1,000万円/年、パーティ代+寄付) 
  政治資金―支出(公設秘書3人は国が負担、ほかに6名を私設秘書として雇う。事務所を4ヶ所 250万円/月) 
  議員宿舎(赤坂の3LDK 家賃10万円/月)と議員パス

4.東京と地元
  「金帰火来」 
  個人事業主としての側面(優秀な秘書に支えられている)
  民主党岡山県連代表としての運営(候補者選びの人事権を握る)

掘ゾ泉政権から政権交代へ
1.民主党の試練
  初の本格代表選挙から年金未納まで 
  岡田代表の挫折 「郵政選挙」の大敗北 
  若き前原代表の登場と挑戦 ニセメール事件の意味するもの

2.小沢代表のリーダーシップ
  小沢代表と大連立構想 
  衆参ねじれ国会 
  日銀総裁空席問題

3.政権交代ー2009年8月30日
  解散先送りと底をつく資金 
  小沢代表の辞任ー西松事件 
  全国初の「予備選挙」 
  臓器移植法をめぐるドラマ 
  熱気あふれる衆議院本会議場

検ダ権交代後の一年
1.政治主導の最前線
  最初の罠(任命直後から政治家をコントロールしようとする)
  秘書官人事がターニングポイント(日銀と内閣府から1名ずつ指名)
  官僚の記者会見を禁止 
  政務三役(大臣、副大臣、政務官)会議「準備会合」が主戦場
  (官僚との良い関係作り)

2.国家戦略室の理想と現実
  政治主導のシンボル 
  菅大臣の顔が見えない 
  突然の大臣交代 
  機能変更 
  政府・与党の一元化をめぐって

3.民主党の経済財政戦記
  史上最悪の失業率とデフレ宣言
  GDP統計の整備 
  景気「踊り場」論争の内側
  「日本銀行の独立性」を高めるために

4.科学・技術政策と日本の未来
  事業仕分けの衝撃 
  科学・技術の可能性 
  国会議員の仕事ー官僚との役割分担

后ァ嵜Χ箸箸靴討寮治」を語ろう
  本物の「政治主導」とは何か 
  日本は選挙が多すぎる 
  民主党は路線を明確化できるか 
  これからの日本経済をどうする 
  政治家の資質とは 
  総理大臣をめざす(林さんは3年後に総理をめざす。津村さんは17年後に総理をめざす)

そのほかに2点ほど参考になったポイントを紹介しておく。


小選挙区制と政党交付金制度が公募政治家を生んだ

津村さんは1994年の政治改革がなかったら政治家にはなれなかっただろうと語る。小選挙区制度と政党交付金制度が、公募世代の政治家を生んだのだ。

8年目で日銀を辞めたときの1,000万円が軍資金だった。民主党の公認候補への活動費が最初は50万円、そのあと100万円になり、そのうち30万円は個人の生活費として使えた。最終的に初めての選挙が終わった段階では、700万円貯金は残っていたという。自己資金300万円しか使わなかった計算になる。

選挙本番では1,500万円の公認料が支給された。これも政党交付金制度のおかげである。さらに民主党公認となれば、お金のかからない選挙ノウハウを熟知している労働組合が支援してくれ、党幹部の有名政治家が応援に来てくれる。


官僚との戦い

林さんは一年生議員の時に、派遣法の説明にきた労働省の役人に、「どうしてこんな規制をするのだ」と聞いたところ、役人は答える代りに、「ここで先生とお話ししても、何も決まりませんから」と言い放ったという。

猛勉強して商工委員会で追及したそうだが、規制緩和に関しては、役所と正面から向き合うので、役所が何をやっているのか熟知しないといけないという。

特に注意すべきなのは「…等」」という言葉だ。「…等」とあったら、必ず「この『等』は具体的には何?」と聞かなければならない。往々にして羅列されている事柄の何倍ものものが、「等」に隠されているのだと。

管直人元総理の「大臣」という本には、そのような「罠」がいくつも紹介されているという。

大臣 増補版 (岩波新書)大臣 増補版 (岩波新書)
著者:菅 直人
岩波書店(2009-12-18)
販売元:Amazon.co.jp


政治家の自伝はいくつか読んだが、これほど率直に自らの国会議員としての生活を描いた本は少ないと思う。所属政党は違うが、官僚統治と闘っていることでは同じ経験をしている。

副題の「職業としての政治」というタイトルは、この本の内容を正確にあらわしている。政治家に興味がある人には参考になると思う。彼ら二人を応援したくなる本である。


参考になれば次クリック願う。


さらば財務省! 竹中改革の懐刀 異能の官僚 高橋洋一さんの内実レポート

さらば財務省! 政権交代を嗤う官僚たちとの訣別 (講談社プラスアルファ文庫)さらば財務省! 政権交代を嗤う官僚たちとの訣別 (講談社プラスアルファ文庫)
著者:高橋 洋一
講談社(2010-06-21)
販売元:Amazon.co.jp
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別ブログで榊原英資さんの「財務省」を紹介したので、榊原さんに反・財務省の反逆者として批判されている高橋洋一さんの財務省、官邸の内実レポートを紹介する。

財務省 (新潮新書)財務省 (新潮新書)
著者:榊原 英資
新潮社(2012-06-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

高橋さんは東大の数学科出身で、自称「変人枠」で大蔵省に採用され、資金企画室長時代に異能を生かして、3ヶ月でALM(Asset Liability Management)システムを自力で構築して日銀からの攻勢を一蹴し、一時は大蔵省の「中興の祖」を呼ばれたという。
この作品で高橋さんは山本七平賞を受賞している。

高橋さんは「霞ヶ関埋蔵金」という特別会計に隠された国の資産の存在を公表したことでも有名だ。この本のサブタイトルにも「官僚すべてを敵にした男」と書いてある。

「さらば○○省!」というと同じ講談社で前例がある。筆者も読んだことがある「さらば外務省!」という本があるが、高橋さんは政府の政策決定に直接携わっていたので、外務省の天木さんの本とはかなり差がある。

さらば外務省!―私は小泉首相と売国官僚を許さないさらば外務省!―私は小泉首相と売国官僚を許さない
著者:天木 直人
販売元:講談社
発売日:2003-10
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

この種の内実暴露本は、上記の天木さんの本を含めて後味が悪い本が多いが、高橋さんの本は個人攻撃という面は少なく、霞ヶ関の力学がわかって参考になる。

高橋さんは理系、しかも数学科出身なので、問題を論理的に解いていった。導いた答えを役所はどう思うかを考えずにいた点は、うかつだったと語る。財務省が高橋さんを協調性がないということで、攻撃するのは一面当たっているという。


歌って踊れるエコノミスト

高橋さんが小泉政権の時に政府に重用されていたのは、竹中平蔵さんの引きによるものだ。1982年に大蔵省財政金融研究所に勤務していた時に、日本開発銀行から竹中さんが出向してきており、高橋さんの上司だったという。

大蔵省は東大法学部卒が幅をきかしており、大蔵省の「植民地」の日本開発銀行出身で、一橋大学出身の竹中さんは、完全に格下扱いされていて相当フラストレーションが溜まっていたのではないだろうかと。

高橋さんは違っていたので、すぐにうち解けて、IMFからの出向外人とトリオで、六本木などのライブハウスで盛り上がっていたという。竹中さんは「歌って踊れるエコノミストになろう」と言っていたそうだ。

「英語と会計はよく勉強しておいた方がいいよ」というのは当時の竹中さんのアドバイスである。このブログでも竹中さんの「竹中式マトリクス勉強法」を紹介しているので、参照して欲しい。

竹中さんは映画「千と千尋」に出てくる妖怪カオナシだと高橋さんは評する。カオナシはあたりにあるものすべてを吸い込む。竹中さんも旺盛な吸収力と軽快なフットワークで様々な理論を取り入れ、まとめ上げるという。


「議論するときはみんな同期」

当時の大蔵省は、筋さえ通っていれば議論に上下の関係は持ち込まないという「議論するときはみんな同期」という文化があった。当たり前ではないかという気がするが、年功序列の役所だからこそ、こんなことをルールにしないと議論もできなかったのだろう。

東大法学部卒の役人は数字に弱く、知識や理論は知り合いの学者から仕入れた耳学問なので、上司にたてつく議論ができるほど理解していなかったという。高橋さんが異能を発揮できたわけだ。


日銀マンが答えられない大学入試センター試験問題

高橋さんがトピックとして紹介しているが、2008年度の大学入試センター試験で、次のような中央銀行の政策で最も適当なものを選ぶ問題が出たという。

1.デフレが進んでいる時に通貨供給量を減少させる
2.インフレが進んでいる時に預金準備率を引き下げる
3.不況時に市中銀行から国債を買い入れる
4.好況時に市中銀行に資金を貸す際の金利を引き下げる

正解は3.だが、これには日銀マンは答えられないだろうと。というのは日銀のやっているのは、1.で3.ではないからだ。

国債を買うことは、財務省への屈伏、敗北を意味するので、日銀のエリートとしての矜持がそれを許さないのだ。これは戦前の軍備拡張を日銀が国債買い上げで際限なく引き受け、戦後ハイバーインフレが起こった反省によるものだという。


幻に終わった日銀の大蔵省攻撃三部作

日銀は1998年までは大蔵省の下部機関だったので、日銀生え抜きからすれば、大蔵省に一矢報いたいという気持ちは強かった。

それで国庫金を預かる大蔵省のリスク管理の甘さを衝こうと、経済理論のエースだった深尾光洋さんを中心に3部作の論文を2−3年掛けてまとめ、大蔵省にぶつけようとしていた。

大蔵省出身の日銀理事から、不穏な動きが報告され、大蔵省はなんとかして撃退すべく、リスク管理の必要性を説いていた高橋さんにALM(Asset Liability Management)システム構築の命令が下った。

外注すれば数十億円、2−3年構築にかかるシステムだが、隠密にやれということで、高橋さんが2年前に作っていたシステムの原型を使って3ヶ月でシステムを稼働させた。

日銀が乗り込んできた時に、大蔵省はALMを使って「この数字は違いますね」で逆襲して20分で決着がつき、日銀の3年の努力のたまものの3部作は幻と消えたという。

「今までは竹槍を持ってB29と戦っていたようなものだ。高橋君の開発したシステムはパトリオットミサイルだ」と賞賛され、高橋さんは「大蔵省中興の祖」と呼ばれたという。


大蔵省の権限を手放す財投改革を立案

高橋さんは次に、大蔵省が郵貯や年金積立金など政府系金融機関から預託金として一手に預かっていた財投の改革を橋本内閣で実現した。

これで郵貯は長年の悲願であった大蔵省に頼らない自主運用が可能となり、郵貯関係者からは「郵貯100年の悲願を達成してくれた高橋さん」と感謝されたという。

しかし今まで国債しか運用したことのない郵貯が自主運用を任されると、国営ではやっていけず、経営責任の取れる民営化するしかないことは自明の理で、小泉さんが総理にならなくとも、郵政民営化は実現しただろうと。


プリンストン大学の客員研究員、帰国後「雷鳥」ポスト就任

財投の入り口の郵貯と、出口の特殊法人改革も同時に行い、それらが実現したときに、1998年からプリンストン大学に客員研究員として高橋さんは派遣された。現FRB議長のバーナンキ(Bernanke)プリンストン大学経済学部長やポール・クルーグマン教授アラン・ブラインダー教授、マイケル・ウッドフォード教授らと親しくなったという。

経済学の泰斗ばかりそろった教授陣は、日銀のゼロ金利解除政策は間違っていると非難していたが、彼らの見方が正しかったことは、デフレ不況解消の道筋すら立っていない現在の状態を見ればわかるという。

プリンストン滞在を1年延ばして貰い、高橋さんは2001年に帰国して、国土交通省の中の大蔵省の出島の特別調整課長を命じられる。国土交通省の予算を削る役割のポストだ。予算が高く飛ばないようにするポストなので「雷鳥」と呼ばれていたという。


秘密のアジトで竹中大臣の懐刀となる

高橋さんが帰国すると竹中さんが経済財政政策担当大臣になっていた。

竹中さんの部下は内閣府。有名な学者が参加する経済財政諮問会議をベースに議論をして政策を練り上げようと楽しみにしていた竹中さんは足をすくわれる。内閣府で竹中つぶしをもくろむ一派が委員を使って、議事をリークさせていたのだ。

御用学者の中には、日当や旅費を二重取りする人や、役人のつくったペーパーを読むだけの先生もいたという。

審議会をコントロールして都合の良い結論を出させるのは、官僚たちのテクニックで、たとえば役所は反対意見を持つメンバーが出られないような日にちに審議会を設定するのだという。また意に反する結論だと、延々と議論させて結論がでなかったと打ち切る。


郵政民営化準備室に

竹中さんの郵政民営化を手伝って欲しいという希望が通り、高橋さんは関東財務局理財部長から経済諮問会議特命室に引っ張られ、晴れて竹中さんのスタッフとなった。前経済財政政策担当大臣の大田弘子さんもメンバーだった。

いよいよ郵政民営化を実現するために郵政民営化準備室が各官庁から人を集めて発足した。高橋さんはこの準備室に前金融庁長官で、現日本郵政会社副社長の高木さんと参加した。

他の省庁から集まったメンバーは郵政反対か無関心だったが、竹中さんの政務秘書官だった経済産業省出身で現慶應大学教授の岸博幸さんが協力してくれたという。

4年近く官僚と戦い続けてきた竹中さんは、役人に関与させると骨抜きにされることを学習していた。だから役人を集めた郵政民営化準備室は実は「座敷牢」で、経済財政諮問会議では竹中チームでつくった民間議員提案を議論して、総理に提出しようというものだった。

諮問会議で唯一反対したのは、その後の麻生前総理の発言でもあるとおり、麻生太郎総務大臣だった。諮問会議の議論は、郵政を管轄する麻生総務大臣と竹中チームとの間で行われた。結局小泉さんが竹中案を100%採用して、竹中チームの勝利となったが、システム構築が間に合わないというクセ球が投げられた。

そこで高橋さんは郵政システムを担当するベンダーの80名のSEと対決して、一つ一つつぶし、機能をそぎ落として1年半で完成ということまでこぎ着けたという。

郵政民営化反対の官僚は、特殊会社経由の民営化を画策していた。これなら、政権が変われば法律を改正して、郵政民営化をやめることができる。高橋さんは、このことを竹中さんに進言し、民営化したら直ちに商法会社にすることを小泉総理が指示した。

そこで2005年8月の郵政民営化選挙の大勝を受けて郵政民営化が実現し、システムは2007年10月から稼働した。


郵政改革の次は政策金融機関改革

政府系の政策金融機関8機関の整理は財務省と経産省の逆鱗に触れた。ある財務省高官は「高橋は三回殺しても殺したりない」と言ったという。いままで財務省の事務次官の天下り先だった国際協力銀行と日本政策投資銀行を整理してしまったからだ。

中川昭一経済産業大臣と、谷垣禎一財務大臣が霞ヶ関の意向を代弁して、政府系金融機関は必要だという論陣を張ったが、小泉総理は内閣改造で反対派を退けた。しかし竹中さんの後任に与謝野馨さんを持ってきたことから、経済諮問会議は頓挫して、霞ヶ関派がコントロールする方向になった。

一方自民党の中川秀直政調会長が政策金融機関改革を支持してくれたので、財投改革案は自民党案として再浮上した。

小泉総理は元々大蔵族なので、飯島勲筆頭秘書官と財務省からの秘書官を使って財務省とのパイプを保って郵政民営化を進めた。他方霞ヶ関の改革は竹中さんにやらせた。巧みな二元コントロールだという。

竹中さんや中川秀直さんは「上げ潮派」で、経済成長率を上げることによって税収を増やし、歳出カットで財政再建を目指す。これに対する谷垣さんとか与謝野さんの「財政タカ派」はまず増税ありきで、財政さえ立ち直れば国民経済は多少がたついても良いという考えだ。

ふるさと納税も高橋さんが発案者の一人だという。ふるさと納税は、「税額控除方式による寄付」に他ならず、「家計が主計官」というのは中川秀直元幹事長の言葉だ。これに財務省は反発したという。


霞ヶ関埋蔵金

2007年秋中川秀直元幹事長が、「国民に還元すべき埋蔵金がある」と発言、これに谷垣、与謝野大臣が反論したが、これ以降自民党の最大派閥である清和政策研究会が埋蔵金を財政健全化に使うべきと主張し、3度目のパワーシフトが起きた。

2008年になって財務省はあっさり埋蔵金を認め、財政融資資金特別会計から10兆円を取り崩すと発表した。「モンテカルロシミュレーションしたら、リスクを減らしても大丈夫なことがわかった」と言ったという。

埋蔵金については塩川正十郎元財務相が、「母屋でがお粥で辛抱しているのに、離れではスキヤキを食べている」と発言して注目されている。

年金は破綻寸前だが、おおかたの特別会計で超過積立金があり、総額は50兆円を超えるという。最大のものは、財政融資資金特別会計で27兆円、次に外国為替資金特別会計が17兆円ある。これに続くのが国土交通省の道路特別会計の6兆円だ。

他に独立行政法人の整理で20兆円くらい整理益が出る可能性がある。2005年に初めてつくられた国のバランスシートは隠し資産を明るみに出す結果となったのだ。


日本は財政危機ではない

日本は834兆円もの債務を抱えており、これはGDPの160%にも上る危機的数字だという財務省の増税やむなしの論調があるが、834兆円はグロスの債務であり、これから政府が持つ莫大な金融資産を差し引くとネットの債務は300兆円まで減る。

この論法は財務省が米国の格付け会社に送った意見書にも述べられており、財務省の国内向けのアナウンスと海外向けのアナウンスとは全く異なっている。

高橋さんは名目成長率が上がれば、景気も良くなり、税収もアップする。改革で支出を減らし、財政再建は可能だと結論づける。世界の学者が驚くデフレの時に通貨供給量を減らすという日銀の愚かな金融政策が日本経済の名目成長率を引き下げ、現在の状態に追い込んでいるという。


猪瀬直樹さんに協力して道路公団債務超過のウソを暴く

高橋さんは、「日本国の研究」のデータチェックを手伝った時から猪瀬さんと知り合いで、道路公団の資産査定で協力した。

続・日本国の研究 (文春文庫)続・日本国の研究 (文春文庫)
著者:猪瀬 直樹
販売元:文藝春秋
発売日:2002-05
おすすめ度:4.0
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道路公団は民営化をやめさせるべく6兆円から7兆円の債務超過という情報を流していたが、これには将来の補助金と高速道路収入債権が入っておらず、この債権を入れると少なく見積もっても2−3兆円の資産超過となったという。


安倍内閣の官邸特命室に

高橋さんは安倍内閣の官邸特命室に任命され、公務員制度改革案を大田経済財政政策担当大臣の主管する経済財政諮問会議に提出した。安倍内閣のほとんどの大臣が各省庁を代表して反対する中で、新任の渡辺喜美行革担当大臣が高橋さんを呼び出して支持を表明したという。

官僚はマスコミに渡辺大臣と異なる方針をリークしたが、渡辺大臣は官僚を一喝したという。安倍総理も事務次官等会議を経ないで閣議に提案した。

これに対抗し、官僚は経済財政諮問会議委員で政府税調会長の本間正明教授のスキャンダルを報道し、議事を混乱させようとしたという。本間教授は竹中大臣の財政金融研究所時代からの友人だ。


消えた年金

社会保険庁の5000万件のでたらめなデータがあるのは以前から分かっていたという。高橋さんは1990年ころに、厚生年金基金の欠陥を指摘する論文を経済週刊誌に発表しようとしたら、厚生労働省が雑誌を傘下の厚生年金基金に購読させないと圧力を掛けてきたという。


小泉政権の中枢の竹中大臣の懐刀として構造改革に取り組んだ六年半は、コンテンツクリエーター冥利につきる年月だったという。

財務省には感謝していると高橋さんは語る。


高橋さんは昨年銭湯で腕時計などを盗んだとして、窃盗の現行犯で逮捕され、不起訴にはなっているが、スキャンダルを起こしている。冤罪という説もあるが、真相は不明だ。




人物的にはやや暗い感じがあるが、山本七平賞を受賞した作品だけに面白く、読んでためになる本である。


参考になれば次クリックお願いします。







体制維新 − 大阪都 橋下徹さんの大阪都構想と堺屋太一さんとの対談

体制維新――大阪都 (文春新書)体制維新――大阪都 (文春新書)
著者:橋下 徹
文藝春秋(2011-11-01)
販売元:Amazon.co.jp
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大阪市と大阪府の行政組織を統合して大阪都をつくる構想をぶち上げている橋下徹大阪市長の本。

2011年11月に行われた大阪市長選挙では、橋下氏が民主党・自民党・共産党(!)の支持を得た平松氏を大差で破って大阪市長になった。大阪府知事に当選した大阪維新の会の幹事長の松井氏とタッグを組んで、大阪都構想を実現できる体制が整った。

昔の「行列のできる法律相談所」時代のイメージしかなかったので、橋下さんは丸山和也参議院議員と同様の、単なるタレント市長かと思っていたが、この本を読んで、しっかりした信念と優れたバランス感覚を持った政治家であることがわかった。

正直、あまり期待していなかったが、得るところが大きい本だった。

橋下さんは、1969年東京生まれ。大阪で育ち、北野高校で全国高校ラグビー選手権に出場し、ベスト16まで行ったという。その後早稲田大学から弁護士となり、1998年に橋下綜合法律事務所を設立した。

テレビの「行列のできる法律相談所」でテレビ受けするあまのじゃくな回答で人気を博していた。

対談で登場する堺屋太一さんが1965年、通産省時代に大阪万博をやろうと言いだした時から、大阪府と大阪市は仲が悪く、「府市あわせ(ふしあわせ)」と呼ばれ、サントリーの佐治敬三さんなどの財界人が仲に入ったりして40年間話し合いを続けてきたが、関係は一歩も進んでいないという。

大阪の問題は人口260万人の大阪市と、人口880万人の大阪府が二重行政となっており、別々に大学も美術館も図書館もあり、もちろん役所も別だ。東京都もかつては東京府と東京市の2つがあったが、1943年に、東条英機首相時代に一体化されている。

大阪市には地域団体組織、市役所、市長という「大阪版鉄のトライアングル」があり、平松市長時代は公金を使った政治活動を認めていたのだと。さらに大阪市の24ある行政区長は公選でなく任命制なので、すべて一律でなければ気がすまず、区をよくしようという意欲が全くないという。

世界各国では個々の都市の成長を促して、都市と都市をつないでいくのが国の役割となっているという。ロンドン市長、ニューヨーク市長、パリ市長、ローマ市長、ソウル市長と競いあうのだと。それには大阪市では小さすぎ、大阪都が必要なのだと。



大阪維新の会で、市長、府長、大阪府議会の過半数を押さえているので、ぜひ橋下市長のリーダーシップで大阪都構想を実現して、関西経済圏の復権を目指してほしいものだ。


公務員もクビにできる制度に

橋下さんの大阪維新の会が提出している2大法案は、職員基本条例と教育基本条例だ。

以前中田前横浜市長の「政治家の殺し方」で紹介した様に、橋下さんもたぶん「死ね」メールなどを職員から顕名で受け取っているのではないかと思う。あまりにひどい公務員はクビにできるようにして、幹部は公募制とすることを提案している。

政治家の殺し方政治家の殺し方
著者:中田 宏
幻冬舎(2011-10-26)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

そして教育関係では私立高校の授業料助成金が橋下さんの目玉政策だ。

全国ワースト1位かそれに近い大阪の少年犯罪率、失業率、離婚率などの根幹は教育にあるという橋下さんの認識をもとに、公立でも私立でもどちらでも選ぶことができるようにすることが、大阪ワースト問題を解決するカギとなり、教育の質も向上するというものだ。



世帯年収610万円以下で無料、610万円から800万円までは実質年間10万円。これで大阪府の世帯の7割をカバーする。私立高校の授業料は上限58万円に抑える。2011年は公立から私立に3,500人ほどの生徒が移動した。これで公立高校も必死になり、大阪の高校教育は劇的に変わったという。「


政治を語ることと、組織を動かすことは全く別物

政治を語ることと組織を動かすことは全く別物。そのことが日本の政治の世界では理解されていないと橋下さんは語る。

政治家の役目は、一定の方向性を示し、実現に必要な人やお金の配置をし、組織が機能する環境を整え、組織が動かなくなる弊害を取り除くといった組織マネジメントだ。

個別の政策を実行するのは、行政組織にしかできない。政治家が自分でやろうとしたら失敗してしまう、その典型が政権交代直後の民主党なのだ。

民主党が政権をとっても、鳩山さんも管さんも組織を動かした経験がないので、行政組織を動かせなかった。橋下さんは弁護士時代に社課外取締役等で企業経営にかかわった経験がが役に立ったという。橋下さんから見れば、野田首相は組織マネジメントに力を入れているという。

中国では地方の行政組織を動かして実績を上げた人が中央でも出世する。江沢民胡錦濤習近平がその例だ。アメリカでもクリントン大統領、ブッシュJR大統領が州知事あがりだ。

前評判の高かったオバマ大統領が苦戦しているのも、組織を動かした経験がないからだと思うと橋下さんは言う。


大阪府でPDCAサイクルをまわす

この本を読んで、橋下さんは行政のトップとして成功するだろうと感じた。それは次のようなことを言っているからだ。

大阪府では、府庁の意思決定システムがなかった。10億円を超える大きな予算でもまったく記録が残されていなかった。議事録もない。

だから、橋下さんは最高意思決定機関として戦略本部会議を設けて、部局長がつくったマニフェストを議論させた。部局長マニフェストは数値目標を原則として、PDCAサイクルをまわす。

各現場は部局長のマニフェストに沿って自分の方針をつくって、自律的に動く。こういったしくみを作らないと巨大な組織は一定方向に動かないという。

昔ながらの職員からは、知事はすべて職員に仕事を任せて、最後の責任を取るというマネジメントをしてもらいたいとも言われたが、今の時代では組織の方向をきっちり固めるのが重要だ。

組織の一定の方針の下で、各現場に自律的に動いてもらう。その結果の責任はトップが当然取るという仕組みなのだ。

行政のトップでPDCAサイクル(継続的改善のためのシステム)を意識して組織を動かしている人はほとんどいないと思う。その意味でも、筆者は橋下さんに期待するところ大である。


政治を自動車輸送にたとえると

この本の最初と最後にある堺屋太一さんとの対談も面白い。

政治を自動車輸送にたとえると、タクシーのようなものだと堺屋さんは言う。国民に選ばれた政治家が後部座席に座って、行先を決めて、運転は技術と経験がある官僚が担当する。これが本来の民主主義なのだ。

ところが民主党は、政権交代をするなり、「政治主導」でやると、いきなり運転席に座ったものだから、経験と技能がないので、たちまち事故を起こしてしまった。

事故に懲りて客席に戻ったら、今度はタクシーでなく路線バスになった。「官僚権限の強化」という行先の路線バスなのだと。


財務官僚は財政赤字を減らそうと努力していない

財務省は国の財政問題で赤字を減らそうとしていると思ったら、大間違いで、本当は彼らは、財政赤字を増やして増税し、経済への影響力を強めようとしているのだと。

堺屋さんの子供の時に陸軍の軍人は敵を減らすために戦ってくれていると思っていたが、実際は軍人は敵を次々と増やしていた。

満州で張作霖を爆死させると、ノモンハンに行ってソ連・モンゴル軍と戦う、ノモンハンで勝てなかったら、北京政府に干渉し、それが逃げたら、今度は上海・南京で蒋介石軍と戦う。蒋介石軍を重慶に追いだしたら、今度は仏印に出ていくというふうに、常に敵を増やしていた。

敵を増やすことによって、軍事予算が増え、徴兵権が強くなり、陸軍の統制力が強化される。それが軍務官僚の正体だったのだと。

今の財務官僚も同じことしている。国家事業を効率化するのでなく、予算要求の上限をつけて、いらないものを全部温存して赤字を増やす。その挙句に、この不況のさなかに増税する。

仕組みが官僚権限を拡大するようにできあがっているので、困ったことに財務官僚も昔の陸軍軍人もその自覚がないのだと。


役所の間の人事異動はほとんどない

現在の厚生労働省のトップは1970年代から1980年代初めに入省した人たちで、当時は通産省、農林省は巨大な官庁で文系キャリアを25人前後取っていたのに対して、厚生省や労働者は小さい官庁だったので、せいぜい7人くらいだった。

ところが、30年たって厚生労働省は巨大化して人材不足、農林水産省は人余りとなっている。やむなく農水省は自分たちがコントロールできる制度として「賞味期限」というものをひねり出したという。

役所間の人事異動はほとんどないので、巨大化した厚労省では人材が手薄になっている部局がある。安倍・福田内閣では、省間の人事異動をやろうとしたが実現しなかったという。


政治マネジメントとは

橋下さんがやってきたことは、大阪府庁の仕事の1%以下で、残りの99%は組織が粛々と仕事をしている。

しかし、その1%は組織の在り方や、組織全体の方向性を決める質的に重要なもので、伊丹空港廃港、庁舎移転、学力テスト結果公表、りんくうタウン再生、直轄事業負担金制度廃止などの重要な決定だ。

市町村別の学力試験結果を公表したことで市町村教育委員会の意識が変わった。

文科省、教育委員会、朝日新聞、毎日新聞は「市町村別結果の公表をしたら過度な競争が生じる、不当な学校序列が生じる」と非難していたが、そんな弊害は生じておらず、大阪の教育現場は学力向上に向けて動いているという。



橋下府知事時代に橋下さんは、直轄事業負担金は「ぼったくりバー」と発言して問題を提起し、国の直轄事業負担金制度の見直しを実現させた。



伊丹空港廃止問題は、前原国交相がリーダーシップを発揮し、伊丹空港と関空を経営統合して、運営権を民間に売却するという案をだし、2012年4月に新会社が設立された。



府議会議員の定数を109名から88名まで減らすと大阪維新の会は決断した。これに対して朝日新聞は批判したという。

知事としていかなるとき前面に出るべきなのか、どの部分を行政組織に任せるべきなのか、線引きに日々神経をとがらせてきたと橋下さんは語る。たとえば槇尾川ダム建設中止の決断は行政ではできない。知事の決断なのだ。



政治家の賞味期限

政治家だけで政策を作り上げることができないことは、政権交代時の民主党のマニフェストで明らかだという。

また今の地方議会事務局には、知事部局ほどの体制が整っていないために、そもそも議会が条例をつくれる体制になっていない。

政治家は直感、勘、府民感覚であるべき方向性を示し、その方向性で行政マンが選択肢をつくり、中身を詰める。行政マン同士で見解の相違があるなら、徹底的に議論してもらう。

その際のルールは次のようなものだ。

1.原則は行政的な論理に勝っている方を選択する。

2.論理的に5分5分なら、知事が政治的に選択する。

3.行政論理に負けていても、これはというものは、政治決定で選択する。この時は行政の言い分が勝っていることを認めるが、政治的な思いからあえて選択したことをしっかりと説く。

直感、勘、府民感覚で賞味期限が切れれば、政治家としては使い物にならない。「終了」だと。日本には自分の政治家としての賞味期限切れに気づかない政治家が多いと。

民主党の事業仕分けも、行政マン同士で議論させて、政治家や第三者が見守り、上記1,2,3のルールで判断していけば、組織は動いたのではないかと。「戦略は細部に宿る」のだと。


たしかに地方自治体の首長をつとめて行政のトップだった人が、国政も担当するというのは、英語で言うと"make sense"、腑に落ちる考え方である。

YouTubeの映像をいくつか紹介したが、元タレント弁護士だけにテレビ慣れしている。日本では珍しい劇場型政治家だ。得るところが大きい本である。


参考になれば次クリックお願いします。




政治家の殺し方 前横浜市長・中田宏さんの暴露本 ノンフィクション小説のようだ

政治家の殺し方政治家の殺し方
著者:中田 宏
幻冬舎(2011-10-26)
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前横浜市長・中田宏さんの暴露本。この本を読むと横浜市に巣くっている様々な闇・おもて勢力の実態がわかる。

ブログを書き始める前なので、あらすじは紹介していないが、中田さんの本は何冊か読んだことがある。特に「偏差値38からの挑戦」というサブタイトルがついている「なせば成る」は面白かった。

なせば成る (講談社プラスアルファ文庫)なせば成る (講談社プラスアルファ文庫)
著者:中田 宏
講談社(2005-11-25)
販売元:Amazon.co.jp
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突然の市長辞任の理由

中田さんが横浜市長選挙に出馬しないと表明したので、このブログでも著書を何冊か紹介している元ダイエー会長の林文子さんを民主党がかついで、林さんが横浜市長になったのは、ちょうど前回の衆議院選挙が行われた2009年夏だった。

筆者は中田さんが衆議院選に出馬するので、市長を辞めたものとばかり思っていたが、実は市議会の有力者達とつながる闇勢力から「ハレンチ市長」として、ありもしないでっちあげスキャンダルで攻撃されていたという。

そして自民・公明・民主がオール与党として談合している市議会勢力に、次の市長選挙を牛耳られないように、衆議院総選挙と横浜市長選挙を同一日にするためにあのタイミングで市長を辞めたのだという。


中田市長追い落とし作戦

2007年11月から7週間にわたって「週刊現代」の見出しに「私の中に指入れ合コン」とか、「口封じ恫喝肉声テープ」、「公金横領疑惑」などと事実無根の記事を書かれ、挙句の果てには「中田の愛人」と称する女性までテレビに登場するというスキャンダルを起こされていたという。

中田さんが市長をやめて後、週刊現代を発行する講談社を名誉棄損で訴え、2010年10月には全面勝訴を勝ち取っている。また”フィアンセ”と称する女性から慰謝料を求められた裁判でも、付き合った事実すらないとして全面勝訴した。

スキャンダルの疑いは晴れたが、政治には闇の世界があることを知ってほしいためにこの本を書いたのだという。


ノンフィクション小説のように面白い

中田さんは横浜市出身で、神奈川県立霧が丘高等学校を卒業し、2浪して青山学院大学に入り、松下政経塾を経て28歳で衆議院議員となり、2002年に37歳で横浜市長に当選する。当時は史上最年少の政令指定都市の市長だった。

筆者は神奈川県藤沢市出身だ。しかし友人から横浜スタジアムをめぐる利権について聞いたことはあったが、同じ県にある横浜市の政界がこれだけ腐敗しており、公務員も既得権を守るのに汲々としているとはこの本を読むまで全く知らなかった。

この本は中田さんの横浜市の闇勢力との抗争ドキュメンタリーで、ノンフィクション小説のように面白い。あまり詳しく紹介すると、読んだときに興ざめなので、簡単に紹介しておく。

★中田さん追い落としのねつ造スキャンダルは2007年11月の「週刊現代」から始まった。根も葉もない上記のような内容だ。

★2008年12月には中田の愛人と名乗る元ホステスの女性が全国ニュースに登場、3000万円の慰謝料を請求して裁判を起こした。しかし、幸いなことに、家族のきずなは保てたという。この女性は裁判には一度も出廷しなかった。金をもらって訴えたに過ぎないのだ。

★中田さんを恨んでいたのは、まずは指名競争入札で仲間同士で仕事を融通しあっていた建設業界だ。一般競争入札にしたので、競争がきびしくなったからだ。

★公務員組合も恨んでいた。公務員の定数を1000人当たり8人から5人まで減らし、各種手当も減らした。退職時昇給という最後の一日だけ昇給して、それが退職金のベースを高くするというお手盛りも辞めさせた。

★暴力団もからむ風俗業界も恨んでいた。京浜急行の日ノ出町駅から黄金町駅の間に違法売春風俗店が250店もあったのを、県知事、神奈川県警本部長、警察庁長官の協力を得て撲滅した。

★さらにAという市会議員が中田さんの政敵だったという。横浜市に住んでいる人は、Aというのが誰なのかわかるのだと思う。

★選挙の開票を翌日開票とすると1億3千万円もコストが下がるので、それを実施したら、朝刊しかない地元新聞は大反対したという。地元新聞も自社の利益優先で、県のコスト削減など二の次だったのだ。

★横浜市の公務員の待遇うは信じられないほど優遇されている。
希望しなければ10年間異動なしで、しかも毎年昇給するという「渡り」を辞めさせ、3年で強制配転としたので、公務員組合から敵視された。そのほかにも一律だった管理職のボーナスを上下100万円の差をつけたとか、鎌倉市などの隣の市に行くだけでもらえる出張手当も辞めさせた。

★おどろくことに、市職員からは実名で「おまえはバカだ」、「死ね」メールまで部署名・氏名入りで送られてきたという。公務員であれば、たとえ態度が悪くても懲戒免職などされないことを知っているからだ。

昔の長野県の田中康夫知事名刺折り曲げ事件を思い出させる公務員の暴挙である。

★定期を1か月定期から半年定期にしたら職員から規則違反と言われた。いままで差額をネコババしていたので、既得権と思っている職員がいたのだ。なんのことはない、ほかの自治体も同じで、横浜市が先陣を切って半年定期化したのだと。


こんな具合に、信じられない地方政治の実態が語られている。簡単に読める面白い読み物である。


参考になれば次クリックお願いします。




田中角栄 封じられた資源戦略 日本の原子力・エネルギー戦略の基礎は田中角栄がつくった

田中角栄 封じられた資源戦略田中角栄 封じられた資源戦略
著者:山岡淳一郎
草思社(2009-10-22)
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故・田中角栄元総理を中心とした日本の資源外交についての本。

1973年に第四次中東戦争を契機とするオイルショックが起こり、米国やロスチャイルド、ロックフェラーなどの国際財閥が日本を抑えつけようとしたにもかかわらず、日本は田中角栄の強いリーダーシップで独自の資源外交を展開した。

田中角栄が日本の原子力・エネルギー戦略の基礎をつくったのだ。

もっとも田中角栄といっても、若い人にはピンとこないかもしれない。田中眞紀子元外相のお父さんといった方がよいのかもしれない。

中学卒の苦労人ながら、政治センスと戦略的判断はバツグン。土木業界出身なので「コンピューター付きブルドーザー」と呼ばれていた。

ちなみにこの本の表紙の写真で、田中角栄の後ろに座って横を向いているのが、若き日の小沢一郎だ。

田中角栄について詳しく知りたい人には次の本を紹介しておく。マンガが多く、簡単に読めると思う。

知識ゼロからの田中角栄入門知識ゼロからの田中角栄入門
幻冬舎(2009-03)
販売元:Amazon.co.jp
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東電の原発事故が起こったこともあり、日本の原子力政策や資源政策がどのような経緯で現在に至っているかを知るために読んでみた。


アイゼンハワーのアトムズ・フォー・ピース

原子力研究は当初、第2次世界大戦中のアメリカの「マンハッタン計画」で、広島・長崎に落とされた原子爆弾をつくるために進められ、第2次世界大戦直後の東西冷戦時代には原子爆弾より強力な水素爆弾も開発された。

原爆や水爆開発に利用されていた原子力をアメリカのアイゼンハワー大統領が「アトムズ・フォー・ピース」(原子力の平和利用)を呼びかけ、これを受けて全世界に原子力発電所や核関連施設が続々建設された。

これに伴い、原子炉メーカー、核燃料濃縮事業、核燃料再処理事業、ウラン資源確保などの分野で各国の企業が政界を巻き込んで激しい競争が繰り広げ、買収・汚職・リベートなどの工作資金も使うという事態が各国で起こっていた。

日本もこの流れに乗って原子力発電を推進した。日本の原子力政策の基礎をつくったのが田中角栄だった。

日本は戦前から理化学研究所の仁科研究室で、サイクロトロンをつくって核融合を研究していたが、敗戦後進駐軍にサイクロトロンを東京湾に投棄させられ、一旦日本の原子力研究には幕が引かれた。

田中角栄は新潟から15歳で出てきて、一時理化学研究所で働いた。理化学研究所総帥の大河内正敏氏にかわいがられたという。原子力研究とは元から縁があったのだ。

アイゼンハワー大統領の「アトムズ・フォー・ピース」政策を受け、日本では読売グループの総帥・正力松太郎がイギリスの原子炉技術を推す。いわゆる「大・正力」と呼ばれる人で、政界入りして総理大臣を狙うという野望を抱いていた。

ちなみに正力から当時若手政治家の中曽根康弘の相手役として指名されたのがナベツネ、渡邉恒雄だったという。

この当時CIAが日本の政治家に秘密資金を提供していたことが、最近公開されたアメリカ政府内部資料でわかっている。結果として日本は英国製原子炉でなくアメリカから軽水炉原子炉技術を買うことになった。

福島型原発のBWR(沸騰水型)と、関西電力などのPWR(加圧水型)はいずれもアメリカの技術で開発された軽水炉だ。

フランスはアメリカ・イギリスと距離を取り、独自の原子力利用技術を磨いた。ドイツはKWUという原子炉メーカーがあったが、現在はシーメンスの一部門となり、フランスのアルバと協力している。

ちなみに筆者の住んでいたアルゼンチンの原子炉はこのKWU製で、たしかイスラエルが完成前に爆撃したイラクの原子炉を建設していたのもKWUだったと思う。


オイルショックと日本の資源政策

田中角栄の首相在任は1972年7月から1974年12月まで。わずか2年半の在任期間だったが、この間の1973年10月に第4次中東戦争が勃発。アラブ諸国が親イスラエル国には石油を売らないという政策に転じたことから、第一次オイルショックが起こるという激動の時代だった。

オイルショックが日本の資源政策に大きな影響を与えた。この本では石油確保のために次のような政策を打ち出したことが書かれている。

★親イスラエルと見なされないために、アメリカの圧力にもかかわらずアラブ諸国に必死でアプローチした
★インドネシア石油の新しい輸入ルートをつくった
★最初の「日の丸油田」として日本アラビア石油がカフジ油田を開発した
★北海油田開発にも参加した。出てきた原油は欧州で販売し、代わりにアジアで原油を受け取るスワップ取引を進めた
★ロシアのチュメニ油田の開発交渉
★日本全体のエネルギーに占める原子力発電の比率を上げた



日本の原子力発電

原子力発電では1976年のアメリカ・スリーマイル島の原発事故以来、アメリカでは原子炉は一基も新設できなくなった。新規の原子炉建設は、日本などがメインになった。

1986年のチェルノブイリ原発事故からは、ヨーロッパでも新規の原子力発電所建設がほぼストップしたので、原子力発電比率が世界一高いフランスを除いて欧州企業は、原子力ビジネスから次第に撤退していったが、日本は国策としてCO2排出量が少ない原子力発電の比率をむしろ上げる方向だった。

そのために必要なのがウラン資源の確保だ。

田中首相の時代にフランスと濃縮ウランの委託加工を決定する。当時の朝日新聞の記事がこの本で引用されているので、紹介しておく。

「日本がフランスに濃縮ウランの委託加工を依存することは、米国の『核支配』をくつがえすことをねらったフランスの原子力政策を一段と推進するばかりか、米国の核燃料独占供給体制の一角が崩れることを意味し、世界的に与える影響は極めて大きい」

原出典:朝日新聞 1973年9月28日付

田中首相と当時のポンピドー大統領はパリで会談し、ポンピドー大統領は「モナリザ」の日本貸出を申し出、田中首相を喜ばせたという。田中首相は「これが本当のトップ商談というものだよ」と語っていたという。

田中首相は他にもオーストラリアやブラジルでのウラン資源開発、カナダからのウラン鉱の輸入を積極的に推し進めた。


アメリカの圧力

当時のアメリカ大統領はフォードで、国務長官はキッシンジャーだった、フォード政権は田中首相の独自資源外交を好ましくないと思っており、1973年に行われたフォード・田中会談は予定時間の半分のわずか1時間で切り上げられた。

田中首相は米国の冷淡な態度に圧力を感じたが、逆にいかに脅されても資源外交に突き進もうと覚悟を決めた。


首相退陣とロッキード事件

1974年10月号の文藝春秋に掲載された立花隆の「田中角栄研究」が田中金脈問題を告発し、1974年12月に内閣総辞職に追い込まれた。

田中角栄研究―全記録 (上) (講談社文庫)田中角栄研究―全記録 (上) (講談社文庫)
著者:立花 隆
講談社(1982-08)
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1976年には米国でロッキード社が日本でもワイロ工作をしていることを暴露、田中角栄は全日空がロッキード・トライスター機を購入したときの口利きで、5億円を受け取ったとして受託収賄罪で逮捕される。ロッキード事件だ。

その後田中角栄は政界のキングメーカーとして隠然たる影響力を持ち続ける。首相在任中から高血圧に悩まされており、次第に政治力は衰え、1993年12月に75歳で死去する。ロッキード事件の収賄罪は結局最高裁まで争ったが、被告人死亡のため棄却された。


毀誉褒貶は激しいが、偉大な政治家

毀誉褒貶は激しいが、田中角栄が偉大な政治家であることは間違いない。田中角栄に比べれば、今の政治家は本当に小粒に思える。田中角栄の功績のいくつかを紹介しておく。

★通産大臣に就任してすぐにアメリカとの繊維交渉にあたり、それまで3年間かかっても決着していなかった交渉を、佐藤首相に直談判して「繊維は任せた」と言質を取った。交渉をまとめるため繊維業界の損失補償に2,000億円の予算を大蔵省に了承させた。

大蔵省との交渉に向かう通産官僚に持たせた名刺には「徳田博美主計官殿 繊維問題解決のため2000億円ご用立て、よろしく、頼む。田中角栄」と書いてあったという。就任わずか2−3ヶ月で対米交渉を決着させ、大蔵省の主計官に直接話をつける大臣に通産官僚は意気に感じたという。

★1972年2月に日本の頭ごなしでニクソンが訪中した。田中角栄は首相就任後すぐ1972年9月に訪中し、周恩来首相と国交回復交渉にあたった。日本軍の残虐行為を具体的に指摘する周恩来首相との交渉は、何度も決裂しそうになったが、田中首相はジョークで切り抜けたという。

「私も陸軍二等兵として、中国大陸に来ました。いろいろ大変な迷惑をおかけしたかもしれません。しかし、私の鉄砲は北(ソ連)を向いていましたよ」

当時中ソ関係は冷え切っていた。これで周恩来はそれ以上追求するのをやめたという。

条約文の交渉では、周恩来が条文にこだわる高島条約局長を「法匪」(ほうひ)と呼ぶなど、膠着状態に陥りそうになったが、毛沢東が急遽田中首相との会見を入れ、「もうケンカはすみましたか。ケンカをしないとダメですよ」と水を向けた。中国側も折り合い日中共同声明が成立し、国交が復活した。

周恩来は帰国する田中首相を特別機のタラップの下まで見送りに来た。

アメリカはニクソンが1972年2月に訪中して日本の先を越すが、台湾ロビーの巻き返しで、中国と正式に国交回復したのは1979年のカーター大統領の時だ。日本の国交回復のすばやさが光る。

★1956年の日ソ国交回復時の鳩山総理以来はじめて、総理として1973年にソ連を訪問し、当時のブレジネフ書記長と会談し、「領土問題が未解決」なことを確認する。

ただしブレジネフは「諸問題」と複数形にして欲しいと言ってきたので、日ソ共同声明にはその通り記載された。

山岡さんは、環境エネルギー政策研究所の飯田所長の「日本版グリーン革命で経済・雇用と立て直す」から引用して、日本でグリーンエネルギー利用が進まない原因として「電力幕藩体制」が自然エネルギー利用を阻んでいると指摘する。

日本版グリーン革命で経済・雇用を立て直す (新書y)日本版グリーン革命で経済・雇用を立て直す (新書y)
著者:飯田 哲也
洋泉社(2009-06-06)
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「田中角栄がもし生きていたら、エネルギー供給源を多角化し、「持たざる国」日本の危機を回避するためにグリーン・ニューディールに突っ走った、と想像する自由は残しておこう」というのが山岡さんの結びの言葉だ。

タイトルから想像して、アメリカからの各種の妨害工作やサボタージュで、田中角栄が主導する多角的資源確保戦略が邪魔されたという内容だと思って読んだが、アメリカの圧力の部分はあまり書いていない。

ちなみに別ブログで紹介した元特捜検事の田中森一さんは「反転」の中で、「ロッキード事件アメリカ側からの仕掛けという説も根強いが、うなずける面もある」と語っている。

「田中角栄は、ソ連への経済援助やシベリア共同開発、中国との国交回復など、従来のアメリカ一辺倒から、よりグローバルな国際外交戦略に転じようとしていたので、日本を属国とみるアメリカの怒りをかったのではないか。

現にアメリカの異常ともいえる捜査への協力は、田中政権つぶしの意思をあからさまに示していたのではないか。」

反転―闇社会の守護神と呼ばれて (幻冬舎アウトロー文庫)反転―闇社会の守護神と呼ばれて (幻冬舎アウトロー文庫)
著者:田中 森一
幻冬舎(2008-06)
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福島原子力発電所事故以来、日本のエネルギー政策は抜本的な見直しが必要となってきている。そのためには田中角栄のような使命感を持った馬力のある政治家が必要なのだが、今の政治家には誰一人として適任者は見あたらない。

現在メインテナンス休止中の原子炉はすべて再稼働が延期されており、日本の原子力政策はヘッドレスチキン状態にある。このままでは日本全国で電力不足という事態となりかねない。

先日紹介した原子炉廃止論を言い続ける広瀬隆さんは、日本には原発は必要ないと言うが、筆者はそうは思わない。

原子炉時限爆弾原子炉時限爆弾
著者:広瀬 隆
ダイヤモンド社(2010-08-27)
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基地問題と同様に、NIMBY(Not In My Back Yard=総論賛成、ただし自分の町には来ないで欲しい)という問題はあるが、地球温暖化の最も有効な解決策として、日本に原子力発電は必要だ。原発がある自治体も原発受入による雇用拡大と金銭的メリットがあるので今まで受け入れているわけだ。

いままで日本では廃炉の実例は少ないが、米国ではすでに筆者がピッツバーグに駐在していた時から廃炉は進められている。ちなみに筆者の駐在したピッツバーグ郊外にはアメリカで最初の原発のシッピングポート原発があり、この一号機は15年ほど前に廃炉になった。

日本でもこれからは廃炉と新規建設で新陳代謝を図ることになると思う。日本のエネルギー戦略を見直す意味でこの本は参考になった。


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民主の敵 野田佳彦総理の本 冷めたピザ二世か?

民主の敵―政権交代に大義あり (新潮新書)民主の敵―政権交代に大義あり (新潮新書)
著者:野田 佳彦
新潮社(2009-07)
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平成23年9月に総理大臣に就任した野田佳彦首相の本。平成21年7月、つまり政権交代が起こった第45回衆議院選挙の直前に発行されたものだ。野田総理が誕生して、最近また本屋に平積みにされている。

別ブログで紹介した政治家の本の中では、韓国の李明博大統領の本と台湾の李登輝元総統の本が良かった。日本の政治家では中曽根康弘さんの本もよかったが、これは総理大臣を引退してだいぶ経った後の本なので、比較にはならない。

これから総理大臣をめざそうという人の本としては、古くは田中角栄の「日本列島改造論」そして田中角栄の直系の小沢一郎の「日本列造計画」がある。

日本列島改造論 (1972年)
著者:田中 角栄
日刊工業新聞社(1972)
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日本改造計画日本改造計画
著者:小沢 一郎
講談社(1993-05-21)
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野田首相の本は、野党だった民主党が政権交代を実現するという目的のもとに書かれた本なので、「政権交代に大義あり」という副題がついている。

まだ読んでいない人も多いと思うので、あまり詳しくは述べない。昔の小渕恵三総理が、アメリカのメディアに「冷めたピザ」と呼ばれたことがあった。しかし、野田さんを「冷めたピザ」と呼ばずして、誰を呼ぶのかという気にさせる本だ。

全くビジョンがない。アマゾンのカスタマーレビューでもメタメタだ。当たり前だろう。

この人には喫緊の問題の1,000兆円に到達する日本の国債と公的債務をどうするのか、現在の財政赤字をどう解消するのかというビジョンがない。よしんんば増税するにせよ、それをどうやって国民の納得を得るのかという日本の政治家として最も重要な問題への解決策がない。

当時の自民党政権への攻撃と、政権交代の必要性を訴えるだけで、この人に任せたら日本は良い方向に進むだろうという確信が全く持てない。

しかも、いったん政権交代したら、数年交代でまた自民党政権に戻ってもよいという弱気な態度にも鼻白む思いだ。

船橋駅で熱心に街頭演説を長年やってきたそうだが、ほとんど誰も聞いていないところで一方的に話してもなんの自慢にもならない。

野田首相になったら、なにが変わるのか?菅前首相夫人の菅伸子さんのように、聞いてみたいところである。

あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの (幻冬舎新書)あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの (幻冬舎新書)
著者:菅 伸子
幻冬舎(2010-07-21)
販売元:Amazon.co.jp
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ともあれ、印象に残った点を紹介しておく。

★2008年1月の当時の大田弘子内閣府特命担当大臣の「日本経済はもはや一流ではない」というセリフに食いついている。大田さんは長年、経済財政諮問会議の委員で、大臣にまでなった人なので、日本の方向性を決めてきたメンバーの一人である。あなたにだけは言われたくない、と思い出すたびに怒りが込み上げてくるという。

筆者には、経済財政諮問会議が日本の国の方向性をきめて来たとは思えない。ましてや大田弘子さんが政策を決める力があったとは思えない。たしかに傍観者的な発言に怒るという気持ちはわからないでもないが、「そんな大した人か?」という感じだ。

★小沢一郎の自由党と管直人の民主党が合併した時に、「モーニング娘。に天童よしみが加入」という感じだったと語る。

なにが天童よしみなのかよくわからないが、信念を持った政治家であれば、ベテランでも若手でも変わりはないはずである。中曽根さんは28歳で衆議院議員に当選し、早くから首相公選を訴えていた。国民に選ばれた政治家の間でモーニング娘。と天童よしみに比べるほどの差はないのではないか?

★野田さんは田中角栄さん以来、記憶にある範囲で「宰相」という重みを感じる人は中曽根康弘元総理だけだと語る。これには筆者も賛成だ。中曽根さんはビジョンがあったと思う。それにブレーンをうまく使った。そんな偉大な政治家を、年齢だけを理由に国会議員を辞めさせたのは小泉純一郎元総理だ。

★政権交代の醍醐味は、お金の使い方を変えることで、役人に緊張感を持たせることだ。しかしいずれは緊張感がなくなり、自民党と同じ過ちを犯す可能性はあるので、5年から8年で政権は交代していくべきだろう。政党には、頭を冷やして勉強しなおす時期があってしかるべきだと。

★衆議院は300人で十分だという。その通り実現して欲しいものだ。世襲はやめるべきで、同一選挙区から連続してその国会議員の配偶者や3親等内の親族が立候補できないという内規を民主党はつくったという。

塩川正十郎(塩ジイ)が「母屋ではおかゆをすすりながら、離れではすき焼きを食っている」という有名な言葉を残している特別会計については、2005年に民主党が特別会計改革・野田プランを発表している。

いったんすべてをゼロベースで見直し、31特別会計、60勘定のうち、24特別会計を廃止する方針だという。特別会計のことを「誰一人金の流れを把握できていない異常」と呼んでいる。是非実現して欲しいものだが、民主党政権下の現状はどうなのだろうか?

★政と官の癒着がつくりあげた関係が天下りと「渡り」だと。働きアリの国民が納めた血税と子供たちのポケットに手を突っ込んで得たお金で、シロアリのような天下り団体を温存させようとしている。

民主党が調べた結果では、2万6千人の国家公務員OBが4,700の法人に天下っており、それらの天下り法人に12兆6千億円もの血税が流れていると語る。天下り撲滅だと言う。

こういうおおざっぱな議論には、ケチをつけたくなる。ファンクションがあって、能力があれば元官僚でも全く問題ない。大体、12兆6千億円はどこから出てきた金額なのかわからない。

★国連至上主義を排し、集団的自衛権を認める時期で、「自衛官の倅(せがれ)」の外交・安全保障論だと。この辺は国連至上主義に近い小沢一郎と一線を画すところだ。さらに田母神さんを英雄視してはいけない。航空自衛隊の制服組のトップの戦略眼を疑うという。


★松下幸之助の200年かけて日本の海を埋め立てて国土を広げていくという「新国土創成論」に対してバージョンアップした「新日本創成論」をやりたいという。

新国土創成論―日本をひらく (1976年)
著者:松下 幸之助
PHP研究所(1976)
販売元:Amazon.co.jp
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日本は宇宙先進国であり、これからは宇宙と海とハブ化で立体的に発展を目指すという。ちなみに超党派で宇宙基本法を2008年に制定したことを紹介している。宇宙や海に行く前に日本の現在の公的債務問題をどうするのか?どこから宇宙や海を開発する予算を出すのか?

★憲法は「日本」がテーマの企画書。野田さんは新憲法制定論者だという。世界の憲法のなかで15番目に古い憲法なのだと。

憲法は「古い」と「悪い」のか?時代に合わない点を改憲する事でも良いのではないか?なぜすべて新憲法にする必要があるのか?


筆者は本にはケチはつけない主義だ。酷評するくらいならあらすじを載せない。あらすじを載せる価値もないということで無視するわけだ。

しかしこの本は、現職の総理大臣が書いた本なので、無視する訳にはいかない。だからツッコミ付きで、あらすじを掲載する。

筆者の見立てが間違っている可能性もあるので、興味があればまずは図書館でリクエストして読むことをおすすめする。


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原発はほんとうに危険か? フランスの元文部科学大臣の対談

フランスからの提言 原発はほんとうに危険か?フランスからの提言 原発はほんとうに危険か?
著者:クロード・アレグレ
原書房(2011-07-07)
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フランスの元文部科学大臣がジャーナリストとの対談を通して原子力政策について語る本。どの雑誌だったか忘れたが、立花隆さんの書いたものに紹介されていたので読んでみた。

書店に置いてある本には次のような帯がかかっている。

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しかしこの本をくまなく読んでみたが、「技術は二流、人は三流」という発言はない。フランスの原子力技術は日本やドイツなどより上だというような発言はあるが、このような刺激的な発言ばない。

元々日本の政府や東電を批判する目的の本ではなく、フランスの原子力政策を肯定する本なので、「日本のあるべき姿をさし示す」という帯のセールス・キャッチは、「売らんかな」という編集者の創作だと思う。

別ブログでは広瀬隆さんの本京都大学の小出助教の反原発本を紹介してきた。

広瀬さんや小出さんの本は、いままでは中小の出版社から出版されていた。しかし福島第一原発の事故以降、反原発本が一流出版社から出版され、原発推進派の本はこの本の原書房のように中小出版社から出版されるという風に完全に逆転した。

この本もアマゾンの売り上げ順位で85,000位と、あまり売れていない様だ。

今や菅前総理はじめ多くの人が、日本国民の福島原発事故以来の原子力アレルギーを考えて反原発という姿勢を表明している。本当にそれで良いのかと冷静に考える必要があると思う。

その意味では、この本と大前健一さんの最近作で今度あらすじを紹介する「『リーダーの条件』が変わった」が参考になる。

「リーダーの条件」が変わった (小学館101新書)「リーダーの条件」が変わった (小学館101新書)
著者:大前 研一
小学館(2011-09-20)
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筆者のクロード・アレグレさんのメッセージ

「日本語版によせて」に著者のクロード・アレグレさんのメッセージが載っている。

最初に福島原発事故の被災者にお見舞いを表明するとともに、福島第一原発は旧式だったために、大災害に対する対策が不十分で、事故後の当局の対応を後手にまわったと結論づけている。

そして日本の将来的なエネルギー政策を再考するにあたって、西ヨーロッパ諸国にない自然災害というリスクを考えると脱原発という選択肢もあるが、それだとおそらく電気料金は2倍となり、温室効果ガスの排出量も増える。

だから原子力政策を維持・発展することも選択肢の一つだと訴える。

この場合には、日本の固有事情も考慮しながら、すべての原発を安全対策を強化した近代的コンセプトの原発に交換する。

具体的には冷却水パイプラインなどを敷設することにより海岸から離れた立地、完全密閉型の石棺の内部に小型の原子炉を格納、海底に原子炉を開発などの方策を提案している。

また政治やビジネスから影響を受けない独立の国家原子力委員会の必要性を説いている。日本は「原子力村」による政策から決別すべきだと。

原子力発電のリスクはいままで制御されてきており、これからも制御されなければならない。科学技術大国である日本はそれが十分可能な選択だアレグレさんは語っている。


ゴチャ混ぜ思考に警鐘

アレグレさんはまず「ゴチャ混ぜ思考」に警鐘を鳴らす。民生用原発のリスクは軍事用原子力、核廃棄物の脅威や核分裂物質の闇市場の脅威に比べればはるかに低く、「脅威」ではなく「リスク」であると語る。

天然のウラン鉱石中の核分裂を起こすウラン235含有量は0.73%、原発に使うウランはウラン235含有量4%、そして原爆に使う濃縮ウランはウラン235含有量80〜95%と濃縮度が全然違う。

だから万が一原発が爆発しても原爆にはならないのだとアレグレさんは繰り返し述べている。

フランスには地震も津波もないため、日本の原発とは全く事情が異なる。原子力技術も日本よりはるかに進歩しており、原発はきちんと管理され、直接・間接的に20万人の雇用を生んでいる。

フランスのメディアは在日フランス人や、日本から避難してくるフランス人の話ばかり報道していたが、メディアはフランスの切り札である原子力産業を弱体化させ、失業者を増やしたいのかと切り返している。


原子力エネルギー発祥の地はフランス

アレグレさんは、原子力エネルギー発祥の地はフランスで、アンリ・ベクレルがドイツ人レントゲンの発見したX線と呼ばれる謎の電磁波をウラン鉱石が放出していることを1896年に発見したのが最初だ。

ベクレルの研究にピエールとマリー・キュリー夫妻が加わり、ウラン以外にも放射性物質はあることが突き止められ、1903年3人は揃ってノーベル物理学賞を受賞した。

キュリー夫人は夫とベクレルの死後も研究を続け、1911年にはラジウムの発見でノーベル化学賞を受賞する。

原子爆弾の開発につながる原子核分裂は1938年12月22日のドイツのオットー・ハーンとストラスマンが発見した。

これにはイタリアのエンリコ・フェルミ、キュリ−夫人の娘イレーヌ・ジョリオと夫フレデリック、ナチから逃れたユダヤ人のリーゼ・マイトナー、オットー・フリッシュなども直接間接に関わっている。

アインシュタインがルーズベルトに原爆開発を薦める手紙が有名だが、実際にはアインシュタインの手紙はアメリカ軍部は夢物語としてまともに取り合わなかった。

マンハッタン計画を実現したのは、中性子を発見したイギリスのジェームズ・チャドウィックが1941年にチャーチルを説得し、チャーチルがルーズベルトを説得したからで、アメリカが原爆の開発・製造に踏み切り、イギリスも参加した。


原発の危険性

原発の燃料は核分裂を起こすウラン235の割合が4%程度なので、原子爆弾のように一挙に核分裂を起こすことはない。

核分裂で発生する中性子を次の核分裂につなげるためには、20回ほど水の分子とぶつけて減速する必要がある。そのために大量の水が使われており、その水がウランと接触して高濃度の放射性物質を含んでいるのだ。

福島原発の原子炉建屋の爆発は、原子炉の電源が断たれたので、圧力容器内の核反応が暴走し温度が上昇して原子炉内の水が蒸発した。そして建屋内に充満した水蒸気が分解されて水素と酸素に分かれ、水素爆発を起こして建屋を破壊し、放射能を含んだ水素や水蒸気が大気中に放出され、地域が汚染されたのだ。

フランスの原発には生成された水素は、すぐに酸素と結合させて水にする触媒装置が備わっているが、日本の原発には「水素再結合装置」がなかったという。

大気中に放出された水蒸気の他にも、原子炉建屋附近で残留している大量の汚染された水の処理がこれからの問題である。同じことを大前さんの「『リーダーの条件』が変わった」でも指摘している。

福島の原発はBWR沸騰水型炉だったので、水の循環系は一系統だけだった。しかしフランスに多いPWR加圧水型炉は、核燃料と接触する一次冷却系とタービンをまわる二次冷却系の二つがあるので、一次冷却系が破壊されなければ、外部が放射能で汚染される恐れはない。

沸騰水型原子炉

BoilingWaterReactor





加圧水型原子炉

PressurizedWaterReactor





フランスの加圧水式原子炉は、一次冷却系は300度Cの水が流れており、155気圧に維持されているという。この熱が熱交換機を通じて二次冷却系の水を温め、発電タービンを回すのだ。

地震のないフランスはともかく、筆者の感覚では地震のある日本では、155気圧という超高圧システムが必要な加圧水型原子炉の方が、かえってリスクがあるように思えるが、アレグレさんはその辺はコメントしていない。


その他、参考になった点を紹介しておく。

★いままで軍事核実験により17万人が犠牲になっており、被曝量のめやすは被曝した人を長年にわたって追跡調査して割り出した数字だ。

普通に暮らしていて年間に受ける放射線量は2.4ミリシーベルト、250ミリシーベルトを超えるあたりから警戒が必要で、1,000ミリシーベルトを超えると白血球が変化する。2,400ミリシーベルトを超えると発ガンする確率が高まる。そして5,000ミリシーベルトを超えると致死量だ。

★放射性同位元素は、体内に入ると体内被曝を起こす。たとえば放射性ヨウ素は甲状腺に貯まりやすく、甲状腺から内部被曝を起こす。それで前もって安定同位体元素のヨウ素を飲んでおけば、放射性ヨウ素が集積するのを防げるのだ。

このブログで紹介した大前健一さんの「日本復興計画」では、大前さんのアメリカ人妻にもアメリカ大使館からヨウ素カリが配られたという。ヨウ素カリを飲んで、被曝する前に甲状腺をブロックしようという考えだ。

★フランスは高速増殖炉のスーパーフェニックスは停止させ、同じ原理のフェニックスは再稼働させた。同じ技術でも大規模のものは制御ができなかったからだ。日本の高速増殖炉「もんじゅ」にも同じナトリウム漏洩問題が発生した。

高速増殖炉の魅力は、天然ウランを利用した核燃料ができることだ。天然ウランの99%は、ウラン238で、これを中性子をぶつけてウラン239にして、それからネプツニウム239を経てプルトニウム239を作るのだ。

ただし二次冷却材の材質に問題がある。水は中性子を減速してしまうので使えないため、液体ナトリウムを使ったが、非常に危険でうまく制御できなかった。フェニックスの規模なら制御できたが、スーパーフェニックスの規模では制御不能だったという。

★トリウム炉はウランの埋蔵量の4倍のトリウムからウラン233を作り出して燃焼させる。現在は実験炉の段階だが、トリウム炉は廃棄物がほとんど排出されない点がメリットだ。

この本では風力発電、太陽光発電、水力発電、バイオ燃料などについても手短にまとめている。

★シェールガスは既にアメリカのエネルギー消費の20%を占めている。水平に掘削し、水圧破砕法でシェールガスを回収するが、大量の水が必要なので、環境汚染の問題が起こる恐れがある。ヨーロッパにもアメリカと同じくらいの莫大なシェールガス埋蔵量があるだろうが、環境問題から開発は進んでいない。


監修者の言葉は正しいのか

監修者の岡山大学教授は、彼が最も衝撃を受けたのは、原発周辺には津波によって瓦礫に埋もれて助けを求めていた人がいたにもかかわらず、彼らを見殺しにしたことだと告発している。これは戦後の日本の歴史の痛恨の汚点であると。

本来であれば国民の命や財産を守るはずの法律を盾にして政府並びに関係者は人命を見捨てたのだと。

この情報は知らなかったが、ありうべしだと思う。


今や反原発が主流で、原発促進波が少数派のようになってしまったが、果たしてそれで良いのか。考えさせられる本である。


参考になれば次クリックお願いします。




日本中枢の崩壊 経産省古賀茂明さんの本 キワモノ告発本にあらず

日本中枢の崩壊日本中枢の崩壊
著者:古賀 茂明
講談社(2011-05-20)
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最近テレビで見かける経済産業省大臣官房付の古賀茂明さんの本。家内が図書館から借りていたので読んでみた。アマゾンの売り上げで現在316位のベストセラーだ。書店で平積みにしてある本には次のような帯がついている。

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本の帯には「日本の裏支配者が誰か教えよう」とかいういかにもキワモノ的なキャッチが書いてあるので、以前からあるようなキワモノの(元)官僚による個人攻撃だらけの告発本かと思ったら全然違った。

告発している部分もあるが、政治家などの公人を除き、官僚の個人名は一切伏せられており、告発が目的の本ではないことがわかる。

次に目次を紹介しておく。細かく各節の題が載っており、目次だけを読んでも内容が推測できるすぐれた目次である。序章と終章だけ各節のタイトルを紹介しておく。まずは書店で立ち読みして目次を読んで欲しい。


序章 福島原発事故の裏で

・賞賛される日本人、批判される日本政府
・官房副長官「懇談メモ」驚愕の内容
・「ベント」の真実
・東電の序列は総理よりも上なのか
・天下りを送る経産省よりも強い東電
・「日本中枢の崩壊」の縮図

第1章 暗転した官僚人生

第2章 公務員制度改革の大逆流

第3章 霞ヶ関の過ちを知った出張

第4章 役人たちが暴走する仕組み

第5章 民主党政権が躓いた場所

第6章 政治主導を実現する3つの組織

第7章 役人ーその困った生態

第8章 官僚の政策が壊す日本

終章  起死回生の策

・「政府閉鎖」が起こる日
・増税主義の悲劇、「疎い」総理を持つ不幸
・財務官僚は経済が分かっているのか
・若者は社会保険料も税金も払うな
・「最小不幸社会」は最悪の政治メッセージ
・だめ企業の淘汰が生産性アップのカギ
・まだ足りなかった構造改革
・農業生産額は先進国で2位
・「逆農地改革」を断行せよ
・農業にもプラスになるFTAとTPP
・「平成の身分制度」撤廃
・中国人経営者の警句
・「死亡時精算方式」と年金の失業保険化
・富裕層を対象とした高級病院があれば
・観光は未来のリーディング産業
・人口より多い観光客が訪れるフランスは
・「壊す公共事業」と「作らない公共事業」
・日本を変えるのは総理のリーダーシップだけ
・大連立は是か非か

補論  投稿を止められた「東京電力の処理案



この本を読んで古賀さんが真の憂国の士であることがよくわかった。古賀さんは既得権に執着する霞ヶ関の官僚が、公務員制度改革を骨抜きにしている実態を明らかにしたことから、出身の経産省はもとより、財務省からもにらまれ、経産省からは2010年10月末で退職しろという勧告を受けるなど様々な圧力、誹謗中傷を浴びている。

古賀さんは経産省の大臣官房付という閑職に1年以上も追いやられているが、雑誌・テレビ等のマスコミに頻繁に登場する古賀さんを経産省の幹部は苦々しく思っている様だ。

この本を読むといかに菅政権の打ち出した公務員制度改革を官僚が骨抜きにしていったのかがよくわかる。ただ公務員制度は戦後何十年も掛けてできあがったいわば「エコシステム」であり、古賀さんのような異端者がポッと出ても事態は変わらないだろう。


天下りがなぜいけないのか

古賀さんは2010年10月15日の参議委員予算委員会で、天下りの問題点について発言し、その場で当時の仙石官房長官の恫喝を受けた経緯を語っている。

その国会発言のなかで、なぜ天下りがいけないか次のように整理している。

天下りがいけない理由は、第1には天下りによってそのポストを維持することにより、大きな無駄が生まれ、無駄な予算が維持される。第2には民間企業も含め天下り先と癒着が生じる。これにより企業・業界を守るために規制は変えられないとか、ひどい場合には官製談合のような法律違反も出てくる。

一部に退職金を2回取るのが問題という話もあるが、それは本質的な問題ではなく、無駄な予算が山のように出来る、癒着がどんどん出来るのが問題だと。

これに対する現在の霞ヶ関のロジックは、1.官庁からの天下りの斡旋等は一切ない、あくまで本人が求職活動をしたものである。2.現役出向は「官民交流法」に基づいた民間のノウハウ吸収である。(現役出向先の企業への再就職も、一旦役所に戻って定年退職した後はOK)というものだ。

特に現役出向に関する菅政権の「退職管理基本方針」の問題点について古賀さんが「週刊東洋経済」に寄稿したところ、霞ヶ関の「アルカイーダ」、「掟破り」として古賀さんは全霞ヶ関から監視されているという。

週刊 東洋経済 2010年 10/2号 [雑誌]週刊 東洋経済 2010年 10/2号 [雑誌]
東洋経済新報社(2010-09-27)
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古賀さんは大腸ガンで手術して、その後腸閉塞を併発して体調を崩し抗ガン剤を飲みながら闘病を続けていたこともあるという。

大腸ガンは死亡率が高く、男性でガン死亡率の第3位、女性ではガン死亡率の1位になっている病気だ。ひょっとすると長くは生きられないかもという不安が、古賀さんの勇気ある発言を支えているのかもしれない。

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出典:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2158.html

この本では古賀さんの官僚人生での功績にも触れている。GHQが財閥解体のために残していった純粋持株会社を解禁する独禁法第9条の改正、ガソリンスタンドのセルフ給油解禁、クレジットカード犯罪の刑罰化などが古賀さんの成果だ。官僚の仕事の進め方がわかって興味深い。


古賀さんの日本起死回生策

上記目次で紹介したように、古賀さんはこの本の終章で具体的な起死回生策を提案している。「若者は社会保険料も税金も払うな」などという過激な提案もあるが、さすがに政策論争に慣れた経済官僚だけあって、提案内容は練れていると感じる。

ただこれらの政策提案は、上記の目次を見るとわかるように、いわば「暴論」であり、これらが現状では政策として実現する可能性は低いといわざるをえない。

日本の財政破綻を回避する方法として、政府は増税で何とかしようという知恵しかない。これは自民党政権でも菅政権でもバリバリの増税論者の与謝野馨氏を経済財政政策担当大臣にしたことから明らかだ。これは消費税増税を狙う財務省のたくらみ通りである。

このままいくと日本の消費税は30%になり、経済は縮小し、町には失業者があふれ、犯罪も増え治安も悪いという悲惨な国になっていく可能性が高い。数年内に歳入不足で「政府閉鎖」が起こる可能性もある。

英国の「エコノミスト」誌は、「日本人はこの震災を機に、自らの対応能力と世界から寄せられる畏敬の念によって自信を取り戻すかも知れない」と語っているという。この世界からの期待に応えられるような社会を作らなければならない。

そのための古賀さんの起死回生策をまとめると次のようなものだ。実現性は非常に疑問ではあるが、方向性として正しい議論もある。

1.国の保有資産はJT,NTT株でも公務員宿舎でも独立行政法人の資産でも何でも売って数百兆円の資産売却を行う。

2.社会保障費の削減。支給額削減、先延ばし、富裕層支給カット。「死亡時精算方式」、年金の失業保険化

3.農業、中小企業、組合だからという助成策はすべてやめる。

4.公務員は大幅削減、給与も民間以上にカット、天下り団体は廃止。

5.タブー廃止。農業への株式会社参入OK,休耕地課税、TPP参加、時間をかけても関税撤廃。3ちゃん農業=兼業農家保護縮小。

6.消費税アップだけでなく相続税改革も含めた税制改革を行う

7.衰退産業・企業は潰して有望な企業・産業にスクラップ・アンド・ビルド 観光を未来のリーディング産業に



特記事項

他にも参考になった情報をいくつか紹介しておく。ただし、真偽のほどは確認する必要があるということを言い添えておく。

・東電を含め電力業界は、日本最大の調達企業なので他の業界のお客さんだ。自民党の有力な政治家を影響下に置き、労組を動かせば民主党も言うことを聞く。巨額の広告料でテレビ・新聞などマスコミを支配し、学界に対しても研究費で影響力を持っており、誰も東電には逆らえない。だから菅総理が怒り狂って東電に殴り込みにいっても、「総理といえども相手にせず」という態度だった。

・OECD駐在中に送電分離を唱えた古賀さんはあやうくクビになるところだった。

・現みんなの党渡辺喜美代表から、自民党時代に行革・規制改革担当大臣になったときに補佐官就任要請があったが、大腸ガンの予後が悪く断ったという。渡辺さんは即断の人だという。

・2008年6月福田内閣で成立した「国家戦略スタッフ創設」、「内閣人事局の創設」、「キャリア制度の廃止」、「官民交流の促進」などを柱にした国家公務員制度改革基本法案を中曽根元総理は「これは革命だよ」と言ったという。

・2008年7月に発足した国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官に就任した古賀さんは、それから官僚人生の暗転が始まったという。

・経産省では日本企業の細やかな「擦り合わせ」こそ、他国がマネのできない特有の文化で、日本の競争力の原動力との解釈がまかり通っている。

・国税庁は普通に暮らしている人を脱税で摘発し、刑事被告人として告訴できる。金の流れが不透明な政治家は国税庁が怖く、国税庁を管轄する財務省には刃向かえない。ジャーナリストもマスコミも同じだ。古賀さんもマスコミ関係者から「国税のことは書かない方が良いよ」といわれたという。

・小泉首相は政策は竹中平蔵氏をトップとする竹中チーム、マスコミ対策は飯島秘書官の飯島チームを持っていたので、強力なリーダーシップを発揮できたが安倍さんは自前のチームを持たなかった。


現役官僚の暴露本というキワモノではない。政策の妥当性はさておいて、日本の将来を本気で心配する古賀さんの官僚としての良心がわかる本である。


参考になれば次クリックお願いします。



われ日本海の橋とならん 中国で最も有名な日本人 加藤嘉一さんの本

われ日本海の橋とならんわれ日本海の橋とならん
著者:加藤 嘉一
ダイヤモンド社(2011-07-23)
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以前紹介した一新塾のメンバーの友人から紹介されて読んでみた。

明治時代、新渡戸稲造は、アメリカ留学に際して「われ太平洋の橋とならん」と語ったという。

それにならって、”中国で一番有名な日本人”の加藤嘉一(よしかず)さんが、中国政府の官費留学生として北京大学に学び、大学院まで卒業した自らの経験を紹介し、日本の若者に対し、日本人が海外に出て行くことは”ローリスク・ハイリターン”なのだと、海外への雄飛を呼びかける。

楽天の三木谷さんもツイッターでこの本を紹介していた

「友人に頂き読みましたが。本当に共感するところが多い本でした。このような若者がどんどんとでてこないと!」

書店に並んでいる本には、次のような帯がついている。

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著者の加藤嘉一さんは、1984年静岡県の伊豆地方の生まれ。現在27歳の若者だ。

山梨学院大学附属高校から提携校の北京大学に中国政府の官費留学生として学部4年間と大学院の2年間学ぶ。(ちなみに学生は全員寮生活で、宿舎費は年間1万3千円、食費は一日15元=200円程度だという)


言葉は世界へのパスポート

箱根駅伝で有名な山梨学院大学の附属高校という校名でピンとくるように、中学時代から陸上競技に打ち込む一方、いずれは世界に出るべく英語勉強にも精を出す。

加藤さんの英語勉強法は、1.毎日辞書を読み覚える。2.自転車通学途上で「一人芝居」で英語会話をする。3.英語新聞を毎日読む。というものだ。中・高時代は、国連職員になるというのが目標だったという。

加藤さんは2003年から北京大学に留学する。ちょうどSARS問題で半年間休講だったので、その間毎日、色々な人と世間話9時間、単語の読み書き2時間、人民日報を音読して暗記、ラジオで中国語放送を聞くという中国語漬けの生活を送って、半年でネイティブなみの中国を話すようになる。

言葉は「世界」へのパスポートであり、その国の人々から受け入れられ、心の永住権を得るためのグリーンカードなのだと。

筆者も全く同感である。筆者は会社に入って3年目でアルゼンチンの研修生として2年間ブエノスアイレスで暮らした。その後米国ピッツバーグには2回にわたり合計9年間駐在した。

「芸は身を助ける」ならぬ「言葉は身を助ける」が筆者の持論だ。


北京大学での学生生活

北京大学の公用語は英語で、英語力とパワーポイントなどを使ってのプレゼン能力は、若者フォーラムで交流のある東大生も舌を巻くほどで、比較にならないという。加藤さん自身も「世界には、こんなにすごいやつがいるのか!」と衝撃を受けたという。

学内のコピー料金は安く、分厚い専門書も200円もあればコピーできてしまうので、学生は英語の専門書や「タイム」や「ニューズウィーク」など海外の雑誌もまわし読みかコピーで必ず目を通すという。


中国のテレビのインタビューで一躍有名人に

中国語がかなりできるようになった2005年4月に、反日デモで日本大使館が投石されたり、日本料理屋が壊されたりした最中に、香港のテレビ局のインタビューを受ける。

インタビューで日中どちらに非があるかを問われ、簡単に現状分析を語り、「外交的な案件であるかぎり、どちらに非があるというようなものではない」と切り返し、「問題解決には相互理解に基づく建設的な議論が必要である」と語った。

その時の受け答えが見事で、中国語が完璧だったことから、中国メディアの取材が殺到し、現在はテレビ局のコメンテーターや中国語版ファイナンシャルタイムズに自分のコラム「第3の目」を持ってコラムニストとしても活躍している。

年間300本以上の取材を受け、100回以上の講演を行い、毎年2〜3冊のペースで出版し、胡錦涛主席とも会見し、胡錦涛主席は加藤さんのブログの読者だという。加藤さんは中国共産党の指導部と個人的にコンタクトできる間柄だという。

中国のメディアは「加藤現象」と呼び、「中国でもっとも有名な日本人」と呼ばれているという。

まさに「言葉は身を助ける」の典型だ。


加藤さんのストライクゾーン

加藤さん自身は次の4つの観点から自分の発言をコントロールしているという。

1.自分は日本人であること。2.ここは中国であること。3.政府・インテリ層にとって価値ある提言であること。4.大衆に伝わる言葉であること。この4つの接点が加藤さんのストラークゾーンなのだと。


中国についての7つのよくある質問

加藤さんは、次の7つのよくある質問から始めている。

1.中国に自由はあるのか? 
民主主義国の日本でも目に見えないタブーがある。中国には天安門事件という最大のタブーがあるが、それ以外は比較的自由だ。

2.共産党の一党独裁は絶対なのか?
中国共産党は7800万人もの党員を抱える世界最大の政党である。民主主義的選挙はないが、政治は国内世論を後ろ盾とする健全な権力闘争が存在し、成果主義が根付いている。

3.人々は民主化を求めているか?
天安門事件で最も流血を見たのは北京大学生だった。人々は現実主義者となり、民主主義信奉者は少ない。共産主義も民主主義も手段なのだと考えている。

4.ジャーナリズムは存在するのか?
一部の官製メディアを除き、地方メディアは独立採算、これにインターネットメディアが加わる。天安門事件という最大のタブーはあるがそれ以外は誰にもコントロールはできない状態だ。

ちなみに中国にはGoogleもFacebookもYouTubeもないが、中国版のGoogle, Facebook,YouTubeの様なサイトがあるので、ほぼ同じサービス・情報が得られるのだと。

5.本当に覇権主義国家なのか?
中国の人口は13億人。13億人をまとめるのは大変な仕事であり、中国の指導者が最も恐れているのは国内の分裂だ。インターネットにより情報統制は不可能となったので、国民の世論が爆発しそうな国家主権と領土保全問題には、強い態度を取らざるをえない。これが中国が「核心的利益」を追求する背景だ。

6.途上国なのか超大国なのか?
経済規模はアメリカに次ぐ規模だが、いまなお「戦略的途上国」の立場を取るという「ダブルスタンダード」がある。加藤さんは「戦略的途上国」を卒業せよと訴えているという。

先日読んだ「2011〜2015年の中国経済」という東大の田中修教授の本の最後にも”中国は「大国」か”という文があった。

2011~2015年の中国経済―第12次5カ年計画を読む2011~2015年の中国経済―第12次5カ年計画を読む
著者:田中 修
蒼蒼社(2011-07)
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田中教授は「心・技・体」が揃わない中国はまだ大国とはいえないと、加藤さんと若干異なる観点から同様の結論を出していた。

7.反日感情はどの程度なのか?
中国は第2次世界大戦の戦勝国であり、日本軍国主義と戦って勝利し、戦禍と貧困にあえぐ中国人民を解放し、新生中国を建設したのは共産党だという「建国神話」がある。(筆者注:これが「神話」である理由は、日本を倒したのは米国とその圧倒的な武器・物資支援であって、共産党は山の中に閉じこもっていただけという見方があるためだ)

そのため「親日国」ではないが、日本製品の評価は高く、親日的な人もいる。


日中関係について

加藤さんは、尖閣列島沖中国漁船拿捕事件の時に、中国政府がレアアースの輸出停止を打ち出したのは、中国政府が事前にシミュレーションを行って、先手を打ってきたものだと語る。

中国は天安門事件の反省から、1990年代から「愛国教育」を行ってきた。その結果、「反日は正義」と考える若者が「日本の横暴を許すのか!」と爆発してしまう新しいリスクが生じてきている。

中国政府にとって、日本と敵対するメリットはなにもないが、反日は「建国神話」ともつながり、厳しい態度を取らざるを得ないのだ。

だから小泉首相の靖国問題が一段落すると、当時の谷内外務次官と戴秉国(たいへいこく)外交部常務副部長との間で、「日中総合政策対話」を始め、その成果として「戦略的互恵関係」を打ち出した。

これは以前別ブログで紹介した、宮本前駐北京日本大使の「これから中国とどう付き合うか」に詳しい。

これから、中国とどう付き合うかこれから、中国とどう付き合うか
著者:宮本 雄二
日本経済新聞出版社(2011-01-06)
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その象徴的なできごとが、東日本大震災に際し、中国が日本に初めて救援物資を送り、救援隊を送ったことだ。

中国は3000万元(3.8億円)の救援物資と15名の救助隊を派遣し。約20億円のガソリン、ディーゼルオイル、ミネラルウォーターなどを日本に初めて送った。


「暇人」という政治勢力

加藤さんは若者と並び、失うものを持たない政治勢力があるという。それを仮に「暇人」と呼んでいる。仕事はしないが、不動産はあるので最低限の生活はできる人たちだと。

この「暇人」=政治パワー論は初めて聞いた。まさに北京で学生・民衆と一緒になって生活していないと分からない指摘なのだと思う。


日本の政治不在に警鐘

加藤さんは日本の政治不在にも警鐘を鳴らしている。

中国の四川省大地震の時に、温家宝首相はその日のうちに被災地入りし、胡錦涛主席が5日目に現地入りした。

トップダウンで取り組む姿勢が明らかだし、わかりやすい。

さらに四川大地震の復興には、自治体レベルの復興支援が機能した。たとえば北京市がA市、上海市がB市、天津市がC市という具合だ。

一方日本の菅直人首相が現地入りしたのは23日後、それ以前はヘリコプターで上空から視察しだたけだった。

中国と対比するとリーダーシップ不在の日本の現状が浮かび上がる。中国は3.11以降、トップダウンですべての原発計画を白紙に戻している。


見方がちょっと外人化?

加藤さんは3.11地震の翌週の月曜日にいつも通り通勤する東京のサラリーマンを見て驚いたという。

「今日くらいは家族と一緒に過ごしたらどうなんだ?ここで有給休暇を使わずしていつ使うのか?」。日本人は忍耐心や我慢心が強すぎるのではないかと。

加藤さんに指摘されるまで、そんな考えは思いもつかなかった。筆者自身も家では本棚の本が倒れたり、ランプや飾り皿などが破損するという被害があったが、会社を休むという発想は全くなかった。

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あの時は日本人誰もが、大地震・津波から一刻も早く"Business as usual"、いつもの状態に戻ろうとしていたのだと思う。その意味で加藤さんの「休みを取る」という発想には違和感を感じる。

やはり日本に住んでいないと、良い意味でも悪い意味でも一般的な日本人のセンスとはズレる部分があるようだ。


若者よ海外に出でよ

最後に加藤さんは、日本の若者に海外に出ようと呼びかける。

具体的にはすべての大学生に2年間の猶予を与え、1年間は海外留学、1年間は社会で介護事業などでインターンとして働くことを提案している。1年間の留学費を後半の1年間の労働でまかなうのだと。

筆者も24歳でアルゼンチンに赴任した。加藤さんのアイデアの実現性はともかく、是非日本人には”ローリスク・ハイリターン”の海外を目指して欲しい。


参考になれば次クリックお願いします。



「普天間」交渉秘録 元防衛事務次官 守屋武昌さんの交渉録

+++今回のあらすじは長いです+++

「普天間」交渉秘録「普天間」交渉秘録
著者:守屋 武昌
新潮社(2010-07-09)
販売元:Amazon.co.jp
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2003年から4年の長きにわたり防衛事務次官を務めた守屋武昌さんの普天間問題交渉録。守屋さんは山田洋行から度重なる夫婦ゴルフ接待など便宜を受けたとして収賄罪で起訴され、現在最高裁で係争中だ。

「普天間」問題が「V」字滑走路で決着したと報道されている。はたまた米国上院で普天間の海兵隊ヘリコプター部隊を嘉手納に統合する案が出されたりしている。

この本ではその「普天間」の解決案がどのように変わってきたのか、そしてその背景は何なのかを、防衛省でずっと交渉を担当してきた守屋さんが、過去の詳細な日記を元に明らかにしている。

守屋さんは1審で有罪となり、懲役2年6ヶ月、追徴金1,250万円という判決を受け、それが2審でも支持された。上告中なので、裁判は未決ではあるが、すでに退職金も全額自主返納したという。

しかし、山田洋行をめぐる疑惑については、便宜を図ったことは誓ってないが、多大な迷惑をかけたことをお詫びしたいと、この本では一切釈明していない。

在日米軍基地再編問題と防衛省昇格についてだけ書いている。その意味では立派だと思う。

普天間問題については、鳩山前首相を初めとする民主党が、何も知らずに県外移設とかコミットしてしまい、ファンブルしたという印象を筆者は持っている。

今年の初め、沖縄総領事だったケビン・メア米国国務省日本部長が、「沖縄はゆすりの名人」という、学生の前でポロッとしゃべったオフレコ発言が問題にされて辞任している。

「日本の文化は合意に基づく和の文化だ。合意形成は日本文化において重要だ。しかし、彼らは合意と言うが、ここで言う合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。

合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。」


この本では「在日米軍の基地の74%が沖縄に集中している」と主張をする沖縄が、既に合意している米軍基地施設返還に協力しなかったり、普天間移設についても、できるだけ埋め立て工事などの公共事業が生まれるように動いている現実があることが明らかにされている。

メア氏は日本語も流ちょうと聞くが、問題発言は英語だと思う。どういう言葉を使ったのか興味があるところだ。「ゆすり」という言葉で、日本政府と合意しても沖縄県の反対で、いっこうに実行されない普天間移設案に対するメア氏のいらだちが、非公式の場でポロリと出たのだと思う。


守屋さんの経歴

守屋さんは、1944年宮城県塩竃市の出身。1971年に防衛庁に入庁し、防衛庁内の数々のポジションを歴任したほか、内閣審議官として官邸に出向していた経歴を持ち、小泉首相はじめ多くの政治家と太いパイプを持つ防衛省きっての実力者だった。だから防衛次官として異例の4年間という任期をつとめ、小池百合子防衛大臣と衝突して退任し、山田洋行がらみの収賄罪で有罪判決を受けた。

この本でも小泉首相から直接了解を得て、外務省をすっ飛ばして米国側と交渉していた守屋さんの実力のほどが伺える。首相に直接話し、首相からお墨付きを貰うなど、普通の官僚ではなかなかできないことだ。


9.11以降の米軍の世界戦略に基づく米軍再編

次が守屋さんが小泉首相に2004年9月に説明した米軍再編問題だ。

2001年9月11日以降、米国は2002年に国土安全保障省(FEMA: Federal Emergency Management Agency)を新設し、日本でいえば税関、入国管理局、警察庁、消防庁、国土交通省の防災局、海上保安庁を一緒にした。同時に米軍の配置見直し(GPR: Global Posture Review)を行い、ヨーロッパ諸国、韓国と在留米軍の見直しについて合意し、最後に残ったのが日本との米軍再編問題だった。

米国が日本に提示したのは次の2点で、これはトータル・パッケージと呼ばれている。米軍は冷戦終了とともに世界戦略の中心をヨーロッパからアジアに移してきている。いまや在日米軍のトップ経験者が次の米軍のトップになるようになったのだ。

1.米陸軍第一軍司令部(ワシントン州フォート・ルイス)をキャンプ座間に移す。
2.横田基地にある第5空軍司令部をグアムに移転する。

外務省はこのうち2.だけを認めるスモール・パッケージの考えだが、これではアメリカと合意することは難しい。むしろこの機会に米軍問題を解決して、「日本の戦後」を終わらせるために次の3点も提案すべきだと守屋さんは小泉首相に説明した。

1.厚木基地の空母艦載機部隊を岩国の海兵隊基地へ移す。
2.相模原補給廠省や牧港補給廠(沖縄)の返還。
3.普天間飛行場移設合意の見直し。

この案は守屋さんが、旧知の米国のカート・キャンベル現国防次官補とすりあわせた案だという。小泉首相は、「本当に日本の戦後を終わらせることが出来るんだな?」と聞いたという。

実は現在でも東京の港区、渋谷区、新宿区、西部地域の上空7千メートルまでは米軍の空域となっている。羽田に向かう旅客機が銚子から回り込むように着陸しているのは、この空域を避けて飛ばなければならないからだ。このルートはハワイ、グアムから最短距離で朝鮮に行く航空路だ。だから守屋さんが「戦後を終わらせる」と言っているものだ。


普天間返還問題

この本の大半が普天間問題の経緯についてだ。普天間飛行場は1945年に建設された海兵隊のヘリコプター飛行場で、建設された当時は普天間町は1万5千人ほどの人口だったのが、9万人を超え、市街地の中の飛行場になっている。

まず日米間で1996年に名護市沖の海上浮体方式とする移転案が合意された。

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出典:本書26ページ

ところが、当時の大田知事が単純返還を主張、その後の稲嶺知事は軍民共用飛行場を辺野古沖(キャンプ・シュワブ)に埋め立てで建設する案を出したが、結局なにもせず環境アセスメントが遅れる。

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出典:本書27ページ

2004年に米軍ヘリの墜落事件が起こり、普天間移設は政治問題化する。辺野古沖軍民共用空港案は巨額の建設費用がかかる上に、アセスメントが進まないことで事実上凍結となる。

代わりに出てきたのが、今回も出てきている嘉手納統合案だ。しかし低速のヘリコプターと高速の戦闘機の航空管制は異なる。発着回数の激増が飛行場運用を難しくし、なおかつ地元住民の負担が増すという問題がある。

一方守屋さんはキャンプ・シュワブ陸上案を推し進める。

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出典:本書47ページ

ところがアメリカから提案された案は、名護ライト案という名護市の土建業の有力者が推す案だった。その有力者はワシントンまで出向いてペンタゴン担当者にこの案を説明し、これなら沖縄住民は賛成すると吹き込んでいたという。

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出典:本書55ページ

ところがこの名護ライト案では珊瑚礁のきれいな海を埋め立てるという問題がある。ジュゴンの生態にも影響を与え、国民の支持を失う恐れがあったので、守屋さんはキャンプ・シュワブ宿営地案L字型案を出す。

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出典:本書61ページ

これならサンゴの少ない海を埋め立てることになり、埋め立て面積も大きいので地元(土建業者)も納得するはずという考えだった。当初米国は難色を示したが、なんとか乗り切り米国もL字案で合意した。

合意の直後、守屋さんは夫妻で園遊会に呼ばれて天皇陛下にお会いしたという。各省の事務次官は2年に一度園遊会に呼ばれるのだという。守屋さんは防衛次官としては20年ぶりに今上天皇陛下にご進講したことがあったので、天皇陛下から「この間はありがとう」と声を掛けられたという。

2006年になると1月5日に鈴木宗男議員から「検察が防衛庁をねらっているから気を付けろ」という不可解な電話が入る。防衛施設庁の空調工事汚職でOBと現役役人が逮捕された。

聞いて驚く話だが、2.26事件以来警察と防衛庁は仲が悪い。2.26事件で軍の前に警察は無力だったからその怨念があるという。

一旦日米で合意したL字案は、その後住宅地の上をヘリが通る等の理由で、名護市から300メートル海上にずらせというX字案が出てくる。これで建設費は500億円増える。土木工事利権のからんだ非常に政治的な動きだ。

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出典:本書125ページ

さらに飛行ルートの安全性も考慮して最終的に名護市と合意したのがV字案だった。

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出典:本書139ページ

ところが合意の会見場で、稲嶺知事は合意していないと言い張る。その後沖縄を訪問した小泉首相には「防衛は国の専権事項で地方がどうこう言える問題ではない。しかし県内的には基地は容認できないという立場をとらないと私は生きていけない。どうぞ総理、理解してください」と言っていたという。

こういう話は他でも出てくる。稲嶺知事は合意書の形式を拒否したという。「合意書の形をとることは、私がいかにも国に歩み寄った格好になり、県民の反発を呼ぶことになるから

その後も稲嶺知事の後を継いだ元通産省技官の仲井真知事や、名護市島袋市長などの沖縄側から、山崎拓副総裁などを経由して、さらに沖合に550メートル出せと圧力がある。

沖合に出す距離を50メートルから数百メートルの間で、まさに手を変え品を変えて沖縄側は交渉してきた経緯がこの本には実名で詳しく書いてある。

「V字案を受け入れる条件として、1.那覇空港の滑走路の新設、2.モノレールの北部地域までの延伸、3.高規格道路、4.カジノ」という話が仲井真知事の使者と名乗る人物(本には実名が書いてある)から寄せられたという。


「アメとムチ」の沖縄対策費

沖縄に支給されている基地対策予算は巨額だ。2006年度の北部振興事業費は総額115億円。このうち国が98億円負担している。

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出典:本書162−163ページ

沖縄県には北部振興策を含め、約3,000億円の「沖縄振興開発事業費」が支払われている。これは1972年の沖縄復帰の際に制定された「沖縄振興開発特別措置法」で決められている。振興事業にかかわる経費の95%は国が負担するという特別措置だ(他の都道府県では3分の1以下)。

普天間移転は8年経っても進まないのに、北部振興策には毎年予算がついていた。

守屋さんは太平洋セメントの諸井虔(もろい・けん)相談役から「政府は沖縄に悪い癖をつけてしまったね。何も進まなくてもカネはやるという、悪い癖をつけてしまったんだよ」と言われたという。

逆に、沖縄側から振興策は「アメとムチで沖縄県民の心を引き裂くものではないか」と言われ、当時の橋本首相は「そういう言い方をされるのは悲しい」と語った。しかし、それが現実で、沖縄の政治のFAW(Forces at work=動かす力)となっていることを示している。

もっとも、筆者はこのことで沖縄を非難するつもりはない。これは沖縄だけの話ではないからだ。誰もNIMBY(Not In My Back Yard=自分の地域では困る)と思うから、原発立地や基地立地の自治体には手厚い支援があるのは当然だ。

定年延長して防衛次官を務めていた守屋さんを退任させたのが小池百合子大臣だ。この本では小池百合子防衛大臣の就任の時に、小泉首相から守屋さんに直接電話があったことや、防衛省をバカにした小池大臣の発言が引用されている。

「防衛省には英語ができる人、いないんでしょ。私は外国からのお客さんと直接やるから、英語がわかる秘書官でないと困るわ。それから私が環境大臣だったときに作らせたエコカーね、あれを持ってきて私の公用車にしてほしい」

現在は防衛省は民間の語学学校で6ヶ月の語学研修を受けさせ、さらに米英の大学への留学、在外公館への勤務などで人材の育成に努めているという。


防衛事務次官人事で小池大臣と衝突

各省の事務次官、各局長などの人事は次の手順で決められると守屋さんは書いている。

1.各省庁の事務方が大臣の了解した人事案をつくり、官邸に提出する。
2.官邸では内閣官房長官と三人の内閣官房副長官から成る「人事検討会議」に諮られ検討される。
3.人事検討会議の審査が終わってから、直近の閣議に諮られ了解される。

この不文律は政治と行政の間で国家公務員の身分保障を確保する「最後の砦」として存在していた。小池大臣が守屋次官の退任と後任人事を新聞にリークしたのは、これらのルールを無視したものなので、守屋もファイトバックした。

小池大臣に協力した西川官房長(後任次官として新聞で発表されていた)を「役人として恥を知れ」と怒鳴りつけ、「閣議了解の前に公にされた場合は、その人事は差し替えられる」という4番目の不文律に従って官房長官に新たな人事案を提出し、西川次官という新聞辞令は葬られた。守屋さんの後任は増田人事教育局長となった。


日本の地政学的重要性

日本の国土は世界で61番目で、イギリス、イタリアより大きく、ドイツとほぼ同じ面積だ。先進国としては遜色のない面積を持っている。さらに200海里の排他的経済水域を入れると日本は世界で6番目となる。

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出典:本書331ページ

日本本土の在日米軍基地

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出典:本書10ページ

沖縄県内の在日米軍基地

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出典:本書11ページ

実名で書いてあるので、暴露本という面もある。内容も守屋さんの立場を正当化しているので、実名で書かれた人には異論があるだろうし、当事者の一方的な理解を伝えているにすぎない。

その分は差し引いて読む必要があるが、いまだにくすぶり続けている普天間移設問題と沖縄の基地問題の経緯と力学がわかって大変参考になる本だった。


参考になれば次クリック願う。




最高指導者の条件 李登輝さんの「政治家の品格」

菅直人首相他と小沢一郎議員との間で、民主党内紛につながりそうな動きが出ている。政権党が民主党に代わって、失望した人が多いと思う。そんな中で、政治指導者のリーダーシップについて書かれている、台湾の李登輝元総統の「最高指導者の条件」を紹介する。

最高指導者の条件最高指導者の条件
著者:李 登輝
PHP研究所(2008-02-19)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

台湾の元総統、日本でもファンの多い李登輝さんの本。2008年3月の発売である。

李登輝さんの著作は、奥の細道を辿った「日本国へのメッセージ」を以前紹介したが、日本文化に対する深い教養と愛着がわかり、まさに戦前型日本人としか言えないという印象を強く持った。

この本は李登輝さんの政治リーダーとしての信念の源が何かを明らかにしており、いわば「政治家の品格」とも呼ぶべき本だ。


中華民族初の民選総統

李登輝さんは蒋介石の息子蒋経国総統が死去した後を継いで1988年に国民党総裁/台湾総統に就任した。

そして自ら公選制度をつくって史上初の台湾総統選挙で勝利し、1996年に初代民選台湾総統となる。

中華民族の歴史で初めて国民の選挙により選ばれた指導者の誕生だった。

李さんの総統就任前後、中国は台湾独立派の動きに神経をとがらせ、台湾海峡で軍事演習を行い、ミサイルを発射して台湾に圧力をかけようとしたので、米国が2隻の航空母艦を台湾海峡に派遣し、中国を威圧した経緯がある。

しかし李さんは中国の脅しに全く動揺せず、毅然とした態度を貫いた。

李さんは中国の演習は心理的な作戦であり、実際の武力侵攻はないという情報をつかんでいたから、軍をあわてて動かさないという選択肢を取れたのだという。

リーダーの決断力を裏打ちする情報力の発揮だ。

その後2000年の総統選挙には出馬せず、結果的に国民党は敗れ、民主進歩党の陳水扁氏が総統に就任した。

これも中華民族初の平和的政権交代だ。

陳水扁氏は2008年5月まで総統を務め、今年国民党のハーバードロースクール出身のハンサムガイ馬英九氏に代わり、国民党が政権の座に返り咲いたことは記憶に新しい。


李登輝さんと信仰

李登輝さんの政治的信念はキリスト教の信仰に裏打ちされている。李さんは日本時代は唯心論、戦後は唯物論でマルクス主義にのめり込んだ時期もあった。アメリカに留学して帰国してから台湾の教会をまわり、神が存在するのかを考え続けた。

「なぜマリアは処女にしてイエスを産んだのか?」
「なぜイエスは磔にされ、そして生き返ったのか?」
この2つの奇跡を信じろとキリスト教は言う。

李登輝さんは理屈っぽい人間なので、なかなか納得できず、聖書を隅から隅まで読んだという。

ヨハネによる福音書第20章に、使徒トマスは復活したイエスを信ぜず、イエスの手と脇に手を入れて初めて信じたという一節がある。

イエスの言葉として「なんじ我を見しによりて信じたり、見ずして信ずる者は幸いなり」という言葉が紹介されている。

つまり「見えないから信じない。見えるから信じる」では信仰を持つことができない。まず「信じること」から始まる、それが信仰の第一歩なのだと理解したという。


戦前日本のエリート教育

李登輝さんは日本の旧制中学、高校、帝国大学という戦前日本のエリート教育を受け、大量の東西の名作文学や哲学書に接した。

19世紀のイギリスの思想家カーライルの「衣裳哲学」や「英雄および英雄崇拝論」は李さんの大好きな作品だという。

古典を読むことで哲学が生まれると。ゲーテニーチェショーペンハウエルカントヘーゲルマルクスサルトル鈴木大拙の「禅と日本文化}、西田幾多郎などの作品を読んだという。

李登輝さんはいまでもカントの「純粋理性批判」と「実践理性批判」が判断の指針になっていると語る。まさに哲人政治家である。

筆者もカントの「純粋理性批判」や「実践理性批判」は学生の時に読んだが、単に字づらを追っただけで、全く頭に入っていない。いずれはこのあらすじブログでも挑戦しなければならない本である。

純粋理性批判 上 岩波文庫 青 625-3


実践理性批判 (岩波文庫)


筆者の学生の時は、マックス・ウェーバーをみんなが読んでいた。これもまた再読しなければならない名著だ。

ちなみにこの本はアマゾンでもベストセラー1,645位で、経済学分野でNo.1だ。やはり名著は時代を超えて読まれるものだ。

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)



緊急時のリーダーシップ

李登輝さんは1999年の台湾大地震時の非常事態に於ける総統の役割を語る。地震が起きたのが深夜2時頃、電話は通じなかったが軍に出動命令を1時間後に出し、朝6時にヘリコプターで現地入りした。

9時には指揮所が設置され、救援活動が始まっていたという。小池百合子議員から電話があり、「仮設住宅を1,500戸送りたいが、日本の仮設住宅は8坪しかないがいいか?」と聞いてきたので、即座に受け取ると返事したという。

李登輝さんは地震発生から1ヶ月のうち21日は現地にいて、対策を直接指揮したという。また軍の参謀総長と総督府の秘書長(官房長官)の2人をつれ、軍と政府がすぐに動ける様な体制をとった。

中国の温家宝首相も四川省で地震が起こったらすぐに現地入りして救援活動を陣頭指揮をした。胡錦濤主席もほどなく現地入りして救援活動を支援したのは、台湾大地震の時の李登輝さんの奮戦ぶりを参考にしたのかもしれない。


後藤新平の台湾近代化

強いリーダーシップ論では、台湾の発展に大きな足跡を残した後藤新平を高く評価している。後藤新平は、今年NHKで2年間のドラマとしてスタートする「坂の上の雲」で有名な児玉源太郎台湾提督に請われて、1898年に台湾民政長官となった。

坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)


着任早々高等官吏1000人あまりのクビをすげ替え、人心を一新し、優秀な人材を登用した。「武士道」の著者、新渡戸稲造もこのときの一人だ。

武士道 (岩波文庫)


匪賊を撲滅し、保甲制度(隣組、自治組織)、疫病対策、教育振興、台湾事業公債による資金調達、鉄道建設、アヘンや塩、酒、タバコの専売制、台湾銀行設立、台湾銀行券発行など、8年7ヶ月の在任期間中に大きな業績を残した。


リーダーの行動原理

李さんは上に立つ者の行動原理として次を挙げている。主なサブタイトルも参考までに紹介しておく。

1.誠実に説く  指導者に不可欠な「お願い」の姿勢

2.忍耐力  民主主義は「回り道」(ターンパイク)を認める制度

3.惻隠(そくいん)の情  「仁政」に不可欠な「惻隠」の情

4.大局観を持つ  「知識」や「能力」を超えて求められるもの

5.構想力  コンセンサスを得たビジョンがもたらす力

6.発想の転換  最も貧しい県が見違えるほど発展 農村が観光地となるアイデア

7.行動力と強い意志  行政改革に必要な行動力 

8.未来への提言力  台湾の民主化と教育改革 台湾がめざすべき4つの分野(金融、衛星メディア、空港、港湾)


指導者の養成

世界中のどこの国でも困っているのは指導者の問題であり、アメリカ、イギリスはもとより多くの国で将来の指導者となるエリート層を養成している。

ところが戦後の日本はこれを怠っており、米国式教育に表面的に倣い、テクニカルなレベルで一生懸命になるばかりで、本当に必要な「指導者をつくりあげる教育」を全く実施していないと李登輝さんは語る。

それを象徴するのが、東京大学を筆頭に、旧帝国大学系の国立大学から総理大臣が出てこないことだと。

たしかに先日紹介した「歴代首相知れば知るほど」の最近の首相を見ると、私立大学出身が圧倒的だ。平成になってからだと、わずかに宮澤喜一さん一人が東大出身で、それ以外はすべて私立大学出身だ。

李登輝さんは手厳しく語る。

戦前は帝国大学が国を治める人材を輩出したのに、なぜ戦後は駄目なのか。法律に縛られて、法律上問題があるかないかという発想しかできず、政治の世界で使えない人が多いからだろう。

法律屋の秀才たちは役所に就職し、行政の担い手となるが、彼らはえてして精神の面で貧困である。相当数の官僚が第一に求めるのは自分の出世であり、頭の中に国家という存在が希薄なのだ。

目先のことしか見えない人は、政治家になっても自分の利益を漁りまくる。「何のための民主主義なのか」、「指導者は何をすべきなのか」がわかっていない。

さらにいえば、金銭や権力は一時的なものにすぎず、「品格」、「教養」、「愛国」、「愛民」などの精神的価値こそが生涯を通じて追求すべきものだということもわかっていない。このような政治家が指導する国家はきわめて危うい。


まさに現在の日本にとっての警鐘である。

筆者は思うのだが、最近の問題は日本の政治家は事実上世襲制となっていることだ。福田康夫、安倍晋三、小沢一郎、鳩山由紀夫、麻生太郎、すべてが二世三世議員だ。

筆者の友人の松島みどり議員の様に、新聞記者出身で、徒手空拳で政治家となった人は珍しい。

地盤と利権を引き継ぎ、地元の利益追求型の政治家ばかり増えて、日本という国のビジョンがなくなっているのではないだろうか。愛国心を持って日本をより良い国にしようという気概を持った政治家が出てきて欲しいものだ。


この本では戦前の日本の優れたエリート教育を受けた哲人政治家の考えが、わかりやすく説明されている。

李登輝さんは古き良き日の輝かしい日本の伝統に触れたことを感謝していると語っており、「台湾の今日あるのは日本のおかげ」と感謝している台湾人は多いと公言している。

ここ数年「××の品格」という本がいくつかベストセラーになっているが、そういう本を読んで満足せずに、自らが名著を読んで、品格を磨かなければならない。

昔の一高第二〇回記念祭寮歌(明治43年)「藝文の花」の「万巻の書は庫(くら)にあり」という一節を思い出す。

藝文の花






ちなみにこの寮歌が掲載されている第一高等学校ホームページというのは初めて知ったが、写真集や寮歌集も収録されていて興味深い。もちろん今は第一高等学校などないが、東大駒場の中に一高同窓会という団体があり、そこがこのホームページを運営している。

世の中には万巻どころか、世界全体なら数千万あるいは億の書物があり、グーグルが世界中の本をすべてスキャンして、人類の叡智のデータベースをつくろうとしている(グーグルブックサーチ)のは、「ウェブ進化論」などで紹介されている。

筆者ももっと名著を読んで教養を積み、品格を磨かなければならないという気になった。

たぶん本のタイトルも「政治家の品格」とかにしたら、もっと売れることだろう。最近の流行キーワードでもある「品格」に興味がある人には、是非一度手に取ってみて頂きたい本だ。


参考になれば次クリック願う。


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