時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

データ分析

マネーボール ビッグデータを野球に適用するとこうなる



データ分析をビジネスに活用した例として、このブログであらすじを紹介しているデータ分析の教科書の「分析力を武器とする企業」で紹介されていたので読んでみた。

分析力を武器とする企業
トーマス・H・ダベンポート
日経BP社
2008-07-24


ブラッド・ピット主演で映画化されている。



ボストン・レッドソックスが採用したことで有名なセイバー・メトリクスを使ったデータ野球の本だと思って読んでみたが、抜群に面白い。

松井秀喜中島裕之が一時在籍していたオークランド・アスレティックスは30年ほど前は、ホセ・カンセコマーク・マグワイアを擁する大リーグ屈指の金満強豪球団だったが、オーナーが代わり、資金の余裕がなくなって、大リーグでも最低予算球団に仲間入りした。

アステレィックスはワールドシリーズ優勝は1989年以来ないものの、それでも毎年のようにプレーオフには出場する。金満球団との競争のなかで、いかにオークランド・アスレティックスがタレントの宝庫ともいえるような戦力をつけていったのかを明かしている。

主人公のアスレティックスの前GMであるビリー・ビーンは、スポーツ万能で体格にも恵まれ、将来を嘱望されて高卒でニューヨークメッツに入団したが、生来の短気さが災いし、メンタル面での弱さが足を引っ張り、メジャーでは目立った成績を残せなかった。

筆者はたまにやるゴルフでミスショットをすると、それが後を引いてスコアを崩すことがよくある。コンバット・フライト・シミュレーターなどのコンピューターゲーム(ちょっと古いか。今はゲームをやらないので)をやる時も、カーッとなって、機械に八つ当たりする傾向がある。

ビリーのように頭に血が上らないように気をつけなければならない。

Microsoft Combat Flight Simulator
マイクロソフト
1998-11-13


ビリーはメッツがワールドシリーズで優勝した時の中心選手、ダリル・ストロベリーと同期の1980年のドラフト入団組で、翌年入団のレニー・ダイクストラとは2年間同じ部屋に住んだ仲だ。

レニー・ダイクストラからは「おい、読書なんてしてどうする。目が悪くなるぞ」と言われたという。

ビリーはむらが多く、三振するとバットを折ったり、壁に穴をあけて八つ当たりする。ビリーの打順が回ってくると、控え投手がブルペンから出てきて、ビリーが三振して暴れまくるところを見物していたという。

メッツからツインズにトレードされ、ツインズで1987年のワールドシリーズ制覇、それからタイガースを経てアスレティックスにトレードされ1989年のワールドシリーズ制覇のベンチにいた。

メジャーリーガーだったら誰でも欲しいワールドシリーズの優勝記念指輪を2個持つビリーは、野球界の「フォレスト・ガンプ」だと自嘲的にいう。

アスレティックスのワールドシリーズ制覇にベンチウォーマーとして参加した翌年、現役をやめてアドバンス・スカウトになる。「とくに野球をやりたいってわけじゃないんだ」というのがビリーの本心だった。

出塁率に注目した野球理論を発掘した当時のアスレティックスのサンディ・アルダーソンGMの右腕として頭角を現し、1999年にアスレティックスのGMに就任する。

GMに就任してからはハーバード大学出身のポール・デポデスタにデータ分析を担当させ、旧来の新人発掘スカウトを全員クビにする。

競争相手が気が付かない、データに基づいた野球を目指して低コストで強いチームを作り上げた。ただし、GMのできることはチームをプレイオフに進出させることまでで、後は運だという。たしかに、アスレティックスは1989年のワールドシリーズ優勝以来、ワールドシリーズ制覇から遠ざかっている。

この本では、抜群の選球眼で、高い出塁率を誇るスコット・ハッテバーグや、大リーグでは珍しい長身の下手投げ投手チャド・ブラッドフォードなどを取り上げている。長年ボストン・レッドソックスで活躍し、最後は楽天に短期間来たケビン・ユーキリスは、ビリーが欲しがった選手として紹介されている。

独自の基準で目を付けた新人を育て上げ、安い年俸の時に活躍させ、高い年俸を払わざるを得なくなるFAの直前に他のチームにトレードして対価を稼ぐのがビリーのやりかただ。

アスレティックスはティム・ハドソンバリー・ジートマーク・マルダーの”ビッグ3”はじめ、後に大成する投手を何人も新人として発掘しているが、意外だったのは、アスレティックスは投手より打者を優先的に獲得するという方針だという。

たしかに、アスレティックスは前記のマーク・マグワイア、ホセ・カンセコ、ジェイソン・ジアンビなど打者としてその後大リーグを代表する存在になる選手も数多く育てている。

そして他のチームから受け入れるのは力の割には評価されていない年俸が低い選手がもっぱらだ。松井秀喜が良い例である。アスレティックスにいた時の松井の年俸はヤンキース時代よりも大幅に下がっているが、打点ではチーム2位と貢献している。

クローザーは買うより育てた方が安いという方針も、たしかにその通りかもしれない。

驚かされるのは、著者のマイケル・ルイスの取材の緻密さだ。どのページを開いても、メジャーリーガーか、ドラフトにかけられるルーキーの名前が誰かしら載っており、それぞれの特徴を簡潔に紹介している。大リーグに親しみのない人でも抵抗感なく読める本に仕上がっている。

ビジネスにも役立つ。選手起用や対戦相手研究にデータ分析を使うことは、いわば当たり前であるが、GMとしてチーム戦力アップのためにデータ分析を使い、低予算で強いチームを作り上げることは、誰でもできることではない。

怒るとイスや壁に当たり散らし、試合観戦はしない主義だというビリーや、電話会議で行われるドラフト会議など、もともと「絵になるシーン」の連続のような本なだけに、ブラッド・ピット主演の映画も大変面白い。

ビリー・ビーンは、スタンフォード大学への進学が決まっていたのに、大リーグの契約金に目がくらみ、高卒でプロ野球選手となったことを、ずっと悔やんでいたという。

GMとして成功してボストン・レッドソックスから250万ドルX5年という巨額の年棒で契約オファーがあったときも、「私は、金のためだけに決断を下したことが一度だけある。スタンフォード進学をやめて、メッツと契約したときだ。そして私は、二度と金によって人生を左右されまい、と心に決めたんだ。」といって断った。

データの信奉者らしからぬ発言ではあるが、信念を曲げないビリーらしい行動だ。

マネー・ボールで取り上げられている選手は成功者ばかりではない。この本でデータ分析による新人選考の結果、有望新人として大きく取り上げられているジェレミー・ブラウンは、結局目が出ず、大リーグ出場はわずか5試合にとどまった。

高卒をドラフトで採用しても、多くはジェレミー・ブラウンの様に目が出ないケースが多い。

日本ハムの大谷翔平も、高卒でメジャーに行くよりも、まずは日本のプロ野球で成功して、それから大リーグに挑戦するほうが正解なのだろう。

あまり野球に興味のない人でも、面白く読める。映画もお勧めだ。


参考になれば次クリックお願いします。


あの夏、サバ缶はなぜ売れたのか? データ分析もPDCAサイクルだ



博報堂グループで制作と広告・プロモーションをワンストップで提供する博報堂プロダクツのデータベースマーケティング部長大木真吾さんの本。

顧客分析は筆者が最も興味を持っている分野の一つで、いままで世界最高のCRM能力を持つといわれている「TESCO顧客ロイヤルティ戦略」や「アナリティクス界のドラッカー」(大木さんの表現)といわれる米国ダブソン大学のトーマス・ダベンポート教授の「分析力を武器とする企業」などのあらすじを詳しく紹介してきた。

Tesco顧客ロイヤルティ戦略
C. ハンビィ
海文堂出版
2007-09



分析力を武器とする企業
トーマス・H・ダベンポート
日経BP社
2008-07-24


この本では、データ活用のPDCAサイクルを次の様に紹介している。

PLAN : 「意志を持つ」フェーズ データ分析の目的を明確にして仮説を構築する

DO   : 「可視化する」フェーズ データを収集し、分析作業を行う

CHECK: 「翻訳する」フェーズ   分析結果の意味するところを解釈し、課題解決を目指す施策を打ち出す

ACTION: 「アクションする」フェーズ あらかじめ目標を設定し、実際に分析結果に基づいたアクションをする

参考になったのは、JALが行った「海外女子旅」プロジェクト。最初はデータには全く触れず、JALの旅客販売統括部WEB販売部と博報堂プロダクツの社員で構成されるプロジェクトチームが、顧客の旅行パターンを思い思いに挙げて70の「行動仮説」をつくった。

それをさらにふるいにかけて、十数個のグループにわけ、それぞれにJAL顧客のデータをあてはめていって、「海外女子旅」というグループを見つけた。

このグループは:
1.JALのホームページにログインしたうえで、WEB経由で購買している。
2.過去2年間に1回以上、日本発のJAL国際線に搭乗している。
3.20〜45歳の女性マイレージ会員である。
4.比較的同年代の女性同志での搭乗が1回以上ある。

クロス分析の結果、1万人の海外女子旅経験者を抽出できた。、

次に、この1万人の海外女子旅経験者をプロファイリングして、ペルソナ化(擬人化)して、同様の人を探した結果、母集団8万人から、1万7千人の「近い将来海外女子旅をするかもしれない候補者」グループをあぶりだすことができた。

母集団8万人は、今や次のようなグループに分けられた。

1万人 海外女子旅経験者
1万7千人 近い将来海外女子旅をするかもしれない候補者
5万人 海外女子旅をしないと思われる候補者

同じ「海外女子旅」のバナー広告などを表示した結果、上記の1万7千人の「近い将来海外女子旅をするかもしれない候補者」グループが、5万人の「海外女子旅をしないと思われる候補者」より10倍も売り上げが上がったという。

データ分析の成功例だ。

この本ではID−POSデータ(ポイント会員組織を持つスーパーなどでのPOSレジ売り上げデータ)を分析した例も紹介されている。

本のタイトルになっている「あの夏(=2013年)、サバ缶はなぜ売れたのか?」は、2013年7月30日に「たけしの健康エンターテインメント! みんなの家庭の医学 新発見!やせるホルモンで病の元凶【肥満】を解消SP」で「サバの水煮缶」がダイエット効果があると放送されたからだった。

大雪と「雪見だいふく」の関係とか、食べるラー油とキムチにラー油をかけた「キムラ君」など、テレビCMとの関係が紹介されている。

その他には「シュークリーム男子」とか、「地域ナンバーワンスーパーが、ネットサービスの会員を増やしたい」、「居酒屋の顧客単価を上げる」などの例が紹介されている。

平易に読めるのはいいが、いかんせん具体例が弱い。

顧客データ分析では、英国のTESCO社と、NECTAR共通ポイントプログラムを英国、イタリア、チリなどで運営するカナダのAIMIA社が世界最高峰だ。

残念ながら日本の顧客分析は、到底英国のレベルに達していない。

最大の原因は、英国の流通業界は寡占で、TESCOやAIMIA(運営会社は英国のLMG=Loyalty Management Group、スーパーはSainsburry)は、英国の全世帯数の半分以上の情報を持っているのに対し、日本最大の流通業のイオンでもマーケットシェアは10%強程度だからだ。

日本の消費者は、スーパーのチラシで特売情報を入手し、いつも行くスーパー数社の中から選択している。それだけスーパーは競争も激しいし、結果として消費者の購買情報はスーパー数社で散逸してしまう。

だから集められるデータが少なく、たとえID=顧客情報を持っていても、一人の顧客の全体像がつかめないのだ。

それと誰も問題にしていないが、実は日本の郵便番号のメッシュは荒すぎて、たとえば建物一つ一つに郵便番号がついている英国とは比べ物にならない。

階級社会の英国は、年収や勤務先などのデータがなくても郵便番号だけで、どういったクラスの人が住んでいる場所なのか判別できるという。郵便番号をプロファイリングデータの一つとして活用しているのだ。

実際、筆者が英国出張中にNECTARのカードをロンドン支店の住所で申し込んだら、その住所には住んでいる人はいないので、正しい住所を連絡して欲しいという回答があった。

日本ではこういう具合にはいかないだろう。

この本では、データ分析はどういう具合にやるのかがわかって、参考になった。しかし、ビッグデータ時代到来と騒がれているが、日本の所与の条件で、どれだけデータ分析が進歩していくのか不安を感じさせる内容でもあった。


参考になれば次クリックお願いします。


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