時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

百田尚樹

雑談力 百田尚樹の56の話のネタ 南京大虐殺についても

雑談力 (PHP新書)
百田 尚樹
PHP研究所
2016-10-15


「書くよりしゃべるほうが100倍好き」を語るベストセラー作家百田尚樹さんの話のヒント集。百田さんは原稿、プレゼン等なしで、何時間でもしゃべれるという。そんな話のネタがたくさん詰まっているのがこの本だ(本の帯では、56のネタを公開と書いてある)。

ちょうどアパホテルグループ代表の元谷さんの本が、南京大虐殺で30万人も殺したのは虚偽としている自著をホテルの部屋に置いていることが問題となっているが、百田さんもこの本の最終章に「親友と議論する話題」ということで、南京大虐殺、従軍慰安婦、靖国神社問題について書いている。

百田さんも30万人虐殺なんて虚偽だという意見だ。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、抜粋した目次と主な話のネタを紹介しておく。( )でくくってあるのは筆者のコメント。

第1章 人を引き付ける話をする技術
・起承転結が基本
・つかみが大事
 最初の1ぺージで物語を動かす
 「バーバリライオン」の話のつかみをどうするか
 (バーバリライオンは単に例として出てきたものだ。1920年代に絶滅したと思われていた巨大なライオンのことで、普通のライオンの1.5倍、体長4メートルを超えるという。モロッコ国王の私設動物園で生きていたのが発見され、絶滅種のリストから外された。ちなみにファッションのバーバリーはBurberryで、スペルが異なる)。

・質問から入る
 
・常識を揺さぶるような話から入る
 人工衛星は永遠に落ち続けている
 自然界で生きていけない動物はカイコ

・単純なうんちくほどつまらないものはない
 (葛飾北斎は生涯で93回引っ越しをした(ちなみに北斎は30回も号を変えている)) 

・数字は重要
 シャチの体重は10トン
 万里の長城は本当に2万キロもあるのか?

・面白い話にはストーリーがある
 (ロゼッタストーンと解読者のフランスのシャンポリオンの話)

・数学でさえ、面白い話になる
 微積分はいかにして生まれたか
 (微積分はニュートン(とライプニッツ)の発明で、楕円形の惑星の軌道の断面積を求めるために、楕円をピンストライプの様に細い長方形で埋め尽くして面積を求めるやり方を考えたものだ)。

・話の急所を理解していること

・ストックを持とう
 (本を読む時も、テレビを見る時も、人の話を聞く時も面白いと思えば、それを覚えて話のネタにする)
 
・自慢話で人を感動させるのは難しい
 (共感や感動を生む普遍性が求められる)

・失敗談ほど面白いものはない
 ラブレターで大失敗
 (高校受験の話。百田さんは、県で偏差値最下位1,2位を争うくらい偏差値の低い高校出身だという) 

・雑談で選ばない方が無難なテーマ
 (動物の性の話など)

第2章 その気になれば、誰でも雑談上手になれる
・相手ではなく、自分が関心を持つ話題を探せ
 私の小説のテーマ
 零戦の話 − 機体に直線がない奇跡の戦闘機
・一番大切なことは「人を楽しませたい」という気持ち
 同じ「自分の話」でもまったく違う

・自分の感性に自信を持て
 (自分が面白いものは、他人も面白いという自信を持つ)

・ネタをどう仕込むか
 (以下は目次を読めば大体百田さんの言っていることがわかると思う)

・「面白さ」の7割以上が話術

・面白い話は何度でもできる

・話が上手くなる一番の方法は、経験を積むこと

・話し上手は聞き上手

・話は生き物 − 私が講演で行っていること

・とっておきの練習法 − 映画や小説の話をする
 (たとえば「7人の侍」の話を説明する)

第3章 こんな話に人は夢中になる
・意外なオチは記憶に残る
 「板垣死すとも、自由は死なず」とは言っていない?
 ガガーリンの小噺
 アメリカは「120億ドル」のスペースペン、ソ連は…

・スポーツ選手のすごさを伝える時のコツ
 超人的な大投手 サチェル・ペイジ
 同時3階級制覇 ヘンリー・アームストロング

・個人的な思い出話でも、普遍性を持たせればOK
 「ラ・フォンテーヌ寓話」はネタの宝庫

ラ・フォンテーヌ寓話
ラ・フォンテーヌ
ロクリン社
2016-04-11


 「宇治拾遺物語」と「徒然草」もネタの宝庫。

宇治拾遺物語 (角川ソフィア文庫)
中島 悦次
KADOKAWA/角川学芸出版
1962-04-30





・時代の不運に泣いた人の話は共感を呼ぶ
 世界で初めてグライダー飛行をしたのは日本人?
 (浮田幸吉の話)

ちなみに浮田幸吉の話は、本になっている。

始祖鳥記 (小学館文庫)
飯嶋 和一
小学館
2002-11


 あまりにも不遇だった日本の天才研究者たち
 (光ファイバーの原理の発見者の西澤潤一教授やフェライトの父と呼ばれる武井武氏)

・色恋の話は男女問わず受ける
 作曲家ベルリオーズの屈折した愛情
 ブラームスクララ・シューマン

・数字も見方を変えれば面白くなる
 後宮3千人
 国鉄の赤字37兆円!
 宝くじの1等当選確率は250万分の1

・犯罪ものの話題は難しいが、面白い
 オランダの「英雄」メーヘレン
 (ナチスに偽物のフェルメールを売った男)

 「偉大な寓話」とすら思える脱獄囚の話

日本の脱獄囚の話は小説になっている。
破獄 (新潮文庫)
吉村 昭
新潮社
1986-12-23


・歴史上の有名人の意外な裏話
 宮本武蔵の新資料発見(宮本武蔵は卑怯だった?)
 野口英世の唖然とする実像

第4章 親友とする真面目な話
・殺害された市民の数は、全人口より多い? 
 計算が合わない
 南京大虐殺の復活

・一人の男の虚言が大問題を生んだ(従軍慰安婦問題
 吉田証言の衝撃
 吉田清治とは何者か
 ミステリー

・戦後40年、突然の抗議(靖国神社問題
 中国の靖国批判はいつはじまったか
 バチカンも認めた靖国神社

(たぶんこの本で一番百田さんが言いたかったのは、最終章の南京大虐殺、従軍慰安婦、靖国神社問題についてだったと思う。親友と議論する話題ということで紹介している)

簡単に読める軽い本だが、最終章の話題は重い。話のネタとして役立つと思う。


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夢を売る男 百田尚樹さんの出版界を描いたブラックユーモア小説

夢を売る男
百田 尚樹
太田出版
2013-02-15


処女作「永遠の0」が映画化とともに、爆発的に売れ、「海賊とよばれた男」も本屋大賞一位と、一躍売れっ子作家になった百田尚樹さんの出版界を題材にした小説。

まさに小説はエンターテインメント、文句なしに楽しめる。

主人公の牛河原勘治は、中小出版社の丸栄社の取締役編集部長。元は文芸出版社の夏波書房の編集長だったが、売れない小説ばかり出すことに疲れて、印刷会社上がりの丸栄社に転職した(この岩波書店を想起させる夏波書房というのが、大沢在昌がいう「小説のトゲ」だ)。

丸栄社は、著者に出版費用を一部負担させるというジョイント・プレスというビジネスモデルで、他の出版社が本が売れなくて万年赤字経営が続いているのを尻目に、毎年大幅な黒字を続けていた。

普通の自費出版なら30万円程度で、本はすべて著者のものになる。

しかしこのジョイント・プレスという方式は、著者が200〜300万円を負担するにもかかわらず、できた本自体はすべて丸栄社のものだ。

本が欲しかったら著者は自分で著者割引を受けて、丸栄社から購入しなければならない。もう絶版というときには、著者はあわてて500部単位で購入する。

本が売れても売れなくても、丸栄社は儲かる。丸儲けのビジネスモデルなのだ。

プライドの高い素人や、どうしても自分の本を出したい作家志望者などを、どんどん落として、本を出させていく口八丁、手八丁のやりとりが軽妙で面白い。

曰く、「新聞広告を出す」、「取次ルートで販売する」、「ISBNコードもつく」、「国会図書館にも納められる」、「プロが編集し、校正する」等々。

百田さん自身も、

「元テレビ局の百田何某(なにがし)みたいに、毎日、全然違うメニューを出すような作家も問題だがな。前に食ったラーメンが美味かったから、また来てみたらカレー屋になっているような店に顧客がつくはずもない。しかも次に来てみれば、たこ焼き屋になってる始末だからな」

「馬鹿ですね」

「まあ、じきに消える作家だ」

という風に登場する。

一作ごとに違った芸風なのはさすがだ。このブログで小説家育成講座の「売れる作家の全技術」を紹介した大沢在昌は、次のように言っている。

「プロになっても、引き出しが少ないために苦労している人は実はたくさんいる。書く時間よりも読む時間をはるかに多く持ち、どんどん読んで、どんどん引き出しを増やして、アイデアを膨らましている人が作家を目指している。」

小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない
大沢 在昌
角川書店(角川グループパブリッシング)
2012-08-01


まさにこの通り。百田さんの引き出しの多さには敬服する。

この程度のあらすじにとどめておく。大変楽しめる小説である。

是非一読をおすすめする。

なお、本当に本を出したい人には、商社に勤めるビジネスマンが書いた、こちらの本をおすすめする。

ビジネスマンのための40歳からの本を書く技術
三輪 裕範
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2009-01-18




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