仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法
著者:内田 和成
販売元:東洋経済新報社
発売日:2006-03-31
おすすめ度:4.0
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BCG(ボストンコンサルティンググループ)の前日本代表内田和成さんの仮説による仕事の進め方。

BCGといえば、筆者が30年も前の学生時代に就職を考えていた時に、初任給が最高の会社として有名だった。筆者の友人でBCGに就職した人もいる。

当時はコンサルタントという職業はあまり有名でなく、マッキンゼーなどの名前も聞いたことがなかった時代だが、BCGはそのころから有名だった。

この本は仮説による仕事の進め方を紹介しており、非常に役立つ。

「仮説から始めれば作業量は激減する!」と本の帯に書いてある。「BCGコンサルタントが3倍速で仕事を進められる秘訣は本書にある!!」と。

BCGのコンサルタントは仕事が速いと言われたことがあると。しかし分析力のある人がコンサルタントとして大成するかというと、必ずしもそうではない。優秀な人は、仕事の進め方に差があるのだ。

内田さんも入社当時は『枝葉の男』と評されていたと。細かい分析は得意だし、ちょっとしたアイデアをすぐ思いついたが、コンサルタントとして最も大事な仕事である問題解決の全体像が描けないでいた。

手当たり次第に情報収集を行い、人一倍に分析作業を行うものの、有益な分析結果が少ない。問題の本質に到達するのに、膨大な時間を必要とした。

この悪循環から内田さんを救ったのが、先輩コンサルタントから学んだ仮説思考であると。

仮説思考とは情報が少ない段階から、常に問題の全体像や結論を考える思考スタイルである。仮説思考を実践すると、仕事がスムーズに進み、仕事の正確性も増したのだ。


オフト・マジック、羽生善治氏の将棋

以前の日本代表監督のハンス・オフト氏は試合前に、試合の展開や結果について選手や記者団に語り、それが的中することがたびたびあったという。

事前に相手を偵察し、選手の特性を見極めており、それをもとに仮説を立てていたのだ。

羽生善治氏も仮説思考の達人である。

羽生氏は将棋で大事なのは決断力だという。決断にはリスクを伴うが、それでも「あとはなるようになれ」という気持ちで指すのだと。

その時の意志決定を支えているのが仮説思考だ。

将棋には一つの局面で、80通りくらいの指し手があるが、羽生さんは大部分を考える必要がないと捨てて、2−3手に候補を絞るのだと。

網羅的にすべての手を検証してから、意志決定しているのではなく、大胆な仮説を立てて、「これがよいのではないか」と指しているのだと。

経験に裏打ちされた直感力、勘によるものだ。

直感は経験の積み重ねから「こういうケースの場合はこう対応したほうがいい」という無意識の流れに沿って浮かび上がってくるもので、直感の7割は正しいと語っている。


情報は集めるよりも捨てるのが大事

情報が多すぎると意志決定は遅くなる。

経営陣から一般社員まで情報コレクターになっている会社がよくある。

意志決定に使える時間には限りがあり、完璧な答えが出るまで意志決定を先送りしたくても、相手は待ってくれない。迅速な意志決定の為には、いまある選択肢をいかに絞り込むかという視点で情報収集すべきなのだ。

なにも実行しないことが、大きなリスクになる今日、網羅的に情報を収集し、意志決定を遅らせるのではなく、限られた情報をもとに、仮説思考によって最適な意志決定をすべきなのだ。

ゴルフスイングと同じで、企業も同時にあれこれてをつけるよりも、まず一カ所だけ集中して直したほうがうまくいくのだ。


実験する前に論文を書け

内田さんは日経新聞の私の履歴書に免疫学の権威石坂公成博士が書いていたことを引用する。石坂博士がアメリカで研究していたころ、恩師に「実験する前に論文を書け」と言われて驚いたそうだ。

「ご冗談でしょうといったら、ノーベル賞受賞者のランドシュタイナーはいつもそうしていた、今のお前にはできるはずだと」

「仕方がないので、先生の言葉にしたがって、予測のもとに論文を書いてから実験をしましたが、これは大変なアドバイスだったと思います。」

「書いてから実験すると、結論を出すために必要な対照は完璧に取れることになりますから、期待通りの結果が出なかった時でも、その実験は無駄にならない。」と。

つまり仮説思考をすれば、わずかな情報から問題に対する解決策や戦略まで含んだ全体像を考えることができ、もし仮説が間違っている場合でも初期段階で間違いに気づくので、余裕を持って軌道修正することができるのだ。

こんなにメリットのある仮説思考でも、仮説を後生大事にひとりで抱え込むのは禁物である。常に上司や顧客から指摘を受けて仮説を進化・検証しないと意味がないのだ。


三ヶ月の仕事でも二週間で結論をだす

コンサルタントの仕事でも内田さんは三ヶ月の仕事でも二週間で答えを出すようプロジェクトリーダーには求めていると。大局観と大きなストーリーがあれば、仕事もスムーズに進むことが多いからである。

人を説得するための大局観を持つためにも仮説思考は役に立つ。


問題発見の仮説と問題解決の仮説

ビジネスの実際では問題そのものを発見する問題発見の仮説と、明らかになった問題を解決する問題解決の仮説の二段階の仮説を使う。

問題発見の仮説は、事象の原因の仮説をツリーの様にいくつかたて、それぞれを検証していく。

仮説を検証し、問題が明らかになれば、次に問題解決の仮説を立てる。さらに問題解決の仮説のそれぞれに具体的打ち手の仮説を立てる。

さらにSWOT分析などを使って検証を繰り返し、打ち手を決めるのだ。この仮説・検証の繰り返しで業務を改善するのである。

セブン・イレブンが強いのも、常に仮説・検証を繰り返しているからだ。この本では、他に化粧品会社と高級加工食品のケースを挙げて説明している。


仮説の立て方と検証

仮説の立て方として、(1)分析結果から仮説を立てると、(2)インタビューから仮説をたてるの二つの手法を紹介している。

常にSo what?(だから何?)と、なぜ?を繰り返せと。なぜを繰り替えるのはトヨタが有名だが、身近な同僚、上司、家族、友人を練習台として、日常生活、実際の仕事でトレーニングすることを内田さんは薦めている。

仮説の検証についても、セブンイレブンの200円おにぎりやソニーのCDプレイヤー開発の例を挙げて、わかりやすく説明してある。


名刺の裏に書ききれないアイデアはたいしたアイデアではない

内田さんが非常に気に入っている言葉の一つに、米国のユナイテッドテクノロジーズ社がまとめた『アメリカの心』というエッセー集にある「名刺の裏一枚に書ききれないアイデアはたいしたアイデアではない」というのがある。

アメリカの心―全米を動かした75のメッセージ


説明するときに何枚も用紙が必要なアイデアは、本人がすごいと思っても、相手にはわかりにくくたいしたものでないのだ。


良い仮説は掘り下げられており、アクションに結びつく

たとえばこんな具合だ。

悪い仮説:営業マンの効率が悪い
良い仮説:営業マンがデスクワークに忙殺されて、取引先に出向く時間がない

悪い仮説:できない営業マンが多い
良い仮説;営業マン同士の情報交換が不十分で、できる営業マンのノウハウがシェアされていない


ビジネスパーソンとしての成功のカギは「優れた仮説の構築とその検証能力」であると内田さんは語る。

一流コンサルタントはどういう風に考えて仕事をすすめているのかわかり、ノウハウも満載で、非常に参考になる本だ。

ひさしぶりに読んでから買った本の一冊だ。是非一読をおすすめする。


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