イオンが仕掛ける流通大再編!イオンが仕掛ける流通大再編!
著者:鈴木 孝之
販売元:日本実業出版社
発売日:2008-02-28
おすすめ度:2.0
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西友出身で、西友シカゴ駐在員事務所長の後、バークレーズ証券、メリルリンチを経て独立してプリモリサーチジャパンという流通関係に強いコンサルタント会社を運営している鈴木孝之さんの本。2008年2月の発売だ。

日本の流通業界の一般知識を得るために読んでみた。この本にはスーパー業界のみならず、家電量販店やドラッグストア、コンビニ、百貨店などの売上高ランキングと上位企業の利益率なども掲載されており、参考になる。

目次は次の通りだ。

第1章 イオンが真の流通覇者になるときはいつか
第2章 セブン&アイは21世紀の主導者たり得るか
第3章 イオンが描く首都圏スーパーマーケット連合の全貌
第4章 ウォルマートが日本から撤退する日は来るのか
第5章 ウォルマート流は成功するか?−日本を狙う外資小売の課題
第6章 イオンとセブン&アイを取り巻く流通大再編のゆくえ

イオンは2001年に21世紀ビジョンとして、次を2010年までに達成することを発表している。

グループ売上高     7兆円
グループ経常利益    2,800億円
イオン本体の営業利益率 5%
グローバル10に入ること

売上高7兆円の内訳は、GMS(総合量販店)3兆円、SM(スーパーマーケット)2兆円、ドラッグストア1兆円、その他1兆円だ。

上記目標のうち、現時点で最も達成が難しいと見られているのが現状1.8%にとどまっている営業利益率だ。

利益率を改善するために、イオンが力を入れているのが、2、200億円を売り上げ日本最大のプライベートブランドとなったトップバリュ、仕入れの1割にまで拡大したサプライヤー60社強との直接取引、200を超えるメーカーとの間の需要共同予測システムだ。

イオンの国際部門の全社営業利益に占める割合は14%で、グローバルにタイ、マレーシア、香港、中国などに展開しており、中国にも日本と同じイオングループをつくるべくショッピングセンター型の「イオンモール」という形で進出している。

ちなみにこのブログでも紹介した世界第3位のTESCOとイオンはトップ同士が親交があるという。


イオンのGMS/SM部門

イオンのGMS/SM部門は自社及びグループ会社を含め、次から構成されている。日本最大のGMS/SMグループであること間違いない。

イオン(ジャスコ、イオンモール、まいばすけっと)
マックスバリュ
ダイエー
マイカル
マルエツ(イオン31%。含ポロロッカ、サンデーマート、フーデックスジャパン、リンコス)
カスミ(イオン32%)
いなげや(イオン15%)
ベルク(イオン15%)

これにコンビニのミニストップが加わる。


イオンのドラッグストア部門

イオン・ウェルシア・ストアーズが、世界最大のドラッグストアチェーンの米国ウォルグリーンを手本にして事業拡大を目指している。ドラッグストアグループとしては、No.1の8、500億円の売上げ規模で、2位のマツキヨグループは6,700億円である。

グループのCFS(ハックキミサワ)には、グループ離脱の問題がくすぶっている。


セブン&アイ

セブン&アイの問題点は、セブンイレブンの成功の後、21世紀のグランドデザインが書けていないことであり、これは鈴木敏文さんに次ぐ経営者が育っていないことも原因だと鈴木さんは指摘する。

鈴木敏文さんの著書は別ブログでも何冊か紹介しているが、立派な経営者であることは間違いないが、たしかに後継者は誰なのか名前と顔が浮かんでこない。

元そごうと西武百貨店のミレニアムリテイリングを傘下におさめたが、シナジーという面ではまだ発揮できていない。

次の転機はウォルマートが西友を売却検討するときではないかと鈴木さんは語る。ウォルマートのリー・スコットとセブンの鈴木さんとは親しく、ウォルマートがイトーヨーカドーの経営指導を受けたり、セブンがウォルマートの製品を販売したりで、緊密な関係があるという。

だからもしウォルマートが西友を手放す場合には、本当はイオンがベストな相手ではあるが、まずセブンに声を掛けるのではないかというのが鈴木さんの読みだ。


イオンのグループマーチャンダイジング

イオンは次の3社の機能会社を設立している。

イオントップバリュ
イオン商品調達
イオングローバルSCM

グローバル10に入るための、戦略ITと戦略物流を伸ばそうという考えだ。


ウォルマートの撤退はあるのか

鈴木さんは西友出身でもあり、ウォルマートについては全く評価していない。西友はウォルマートと提携する前までは、経営努力で黒字を続けていたが、ウォルマートが入ってきてから赤字が続いている。

売り場に魅力がなく、活気がなく、大幅な人員削減で店長の1/4が退社して、人材もいなくなったという。ウォルマートとの提携はあきらかに誤りだったと鈴木さんは指摘する。

西友はバブル崩壊で子会社の東京シティファイナンスが4,000億円の不良債権をかかえ、資金繰りに困っていた。メインバンクの第一勧業銀行に断られたので、まず住友商事の出資を受けた。次にイオンが西友に関心を示すが、西友が断り、結局ウォルマートの出資を受けてから凋落がはじまった。

イオンと提携していれば、イオンは首都圏の店が少なく、提携もうまく行っていたのではないかというのが鈴木さんの見立てだ。

ウォルマートはこれまで西友に約2,500億円をつぎ込んだが、赤字が続いているので、さらに500億円程度が必要と見られている。

ウォルマートが昨年1,000億円を掛けて西友を完全子会社化したのは、西友の信用不安をかき消し、ウォルマートの日本市場に対する不退転の決意を示すためだと思われているが、いかにウォルマートでも、赤字続きの西友をいつまでも支援するわけにはいかないだろうというのが鈴木さんの見方だ。

別ブログで紹介したロバート・ライシュ元労働長官の「暴走する資本主義」にも書いてあったが、ウォルマートは強大だが米国でもウォルマート出店反対運動が起こるなどの問題もある。鈴木さんは米国での問題点も含めて詳しく説明している。


共同持株会社による効率化

最後に鈴木さんは共同持株会社による統合は日本の小売業界にダイナミズムをもたらすと歓迎している。合併だと合併会社・被合併会社という色分けがつくが、経営統合なら参加企業は並列なので、さらに多くの企業を迎え入れることができるという。

小売業のメリットは、1.水平拡大、2.総合化、3.マルチブランド化だという。

家電量販店ではデオデオとエイデンが経営統合し、エディオンになった。ヤマダ電機に対抗するグループができた。


これからの再編の動き

これからはプライベートブランド戦略の優劣が競争力を決めること。総合商社と卸の系列が再編に加わること。ローソンとミニストップが統合の可能性があること。ちょうど10月10日に発表があった阪神・阪急と高島屋の経営統合などを鈴木さんは予測している。


わかりやすく簡単に読めて参考になる本だった。流通業に興味のある人には、是非おすすめできる本である。


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