2010年6月21日追記:

6月18日よりいよいよ改正貸金業法が全面施行された。テレビの特集番組や、ニュースで取り上げられているが、総借入額の年収の1/3規制や、主婦の借り入れも極端に制限される。

ここにきて噴出する問題点について1年以上前から警鐘をならしていたのは、消費生活評論家岩田昭男さんだ。

クレジットクランチ時代のサバイバル法を解説した消費生活評論家 岩田昭男氏の「あなたに貸す金はない」のあらすじを再掲する。

まさにタイムリーな話題を、自らの体験も織り込んで詳しく解説した名著である。


2009年6月15日初掲:

あなたに貸す金はない! 国が生み出す新しい「借金地獄」 (アスキー新書)あなたに貸す金はない! 国が生み出す新しい「借金地獄」 (アスキー新書)
著者:岩田 昭男
販売元:アスキー・メディアワークス
発売日:2009-05-08
おすすめ度:4.0
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このブログで紹介した「信用力格差社会」「信用偏差値」に続く、改正貸金業法の影響に警鐘を鳴らす消費生活評論家 岩田昭男氏の最新作。

「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-11
おすすめ度:4.0
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「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)
著者:岩田 昭男
販売元:文藝春秋
発売日:2008-11
おすすめ度:3.0
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いよいよ今月、2009年6月より改正貸金業法が一部施行され、個人の借り入れなどの信用情報が全金融機関で共有される様になる。

現在5社ある信用情報機関がグループ化され、統合された機関となるのは今年秋頃と見られるが、個人の信用情報の共有は機関が設立する前からスタートするのだ。

この件についてマスコミは全く騒いでいないが、この本の帯に書いてある通り「借金大パニック襲来!!1000万人が借りられなくなる!」ことになるのは必至なのだ。

岩田氏は、昨年から前掲の2冊で、警鐘を鳴らしていたが、本件についてはマスコミはまったく騒いでいないのは驚くべきことだ。


改正貸金業法の骨子

貸金業法の改正骨子をおさらいしておくと、次の5点が大きな改正点である。

1.金利規制(グレーゾーン金利撤廃)
2.過剰貸付の抑制(年収の1/3までの総量規制と、すべての業態をまとめる指定金融情報機関設立)
3.業務規制(貸金業登録の最低総資産額を500万円から5,000万円に引き上げ)
4.ヤミ金融対策(罰則強化)
5.多重債務者対策(借りられなくなる人のセーフティネット強化)

法律は2006年12月に成立し、2010年6月に完全施行される。すでに段階的に施行されており、グレーゾーン金利撤廃の影響で消費者金融会社とクレジットカード会社が3大金融グループの草刈り場となっているのは周知の通りだ。

岩田氏は最近タモリが、アコムのTVコマーシャルに出演していることを取り上げている。

サラ金という今までのイメージから、三菱UFJファイナンシャルグループというメガバンク傘下の消費者金融会社に変わったので、タモリもコマーシャルに出ても良いと思ったのではないかと。

今月からいよいよ影響が出てくるのは上記2.の過剰貸し付けの抑制だ。

具体的には個人の借入情報をすべての金融機関が見られることになり、その人の年収の1/3までが無担保貸し付けの限度額となり、これを越える借り入れは断られることになる。

また既に年収の1/3を超える借金がある人は、残高が年収の1/3を下回るまで新しい借り入れはできず、返済するだけとなる。

いままでは消費者金融の借り入れ残高は、クレジットカード会社や銀行ではアクセスできなかったので、クレジットカードのキャッシング枠で借り入れるとか、銀行のフリーローンで借り入れることができた。

業態ごとに信用情報の交流がないので、クレジットカードで多重債務に陥っても、消費者金融に行けば何度でも借り入れができるということができていた。

今度は総借入額が年収の1/3を超えると、一切新規の借り入れができなくなるのだ。


個人信用情報の統合

日本には現在次の5つの個人信用情報機関がある。

1.全国銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行系
2.CIC クレジットカード、信販系
3.CCB クレジットカード、信販系
4.全国信用情報センター連合会(全情連、JIC) 消費者金融系
5.テラネット 消費者金融系

このうち最も古く40年の歴史のある全情連のデータベースは加盟各社のデータがリアルタイムで統合されており、入金があるたびに更新されるという点で最も優れている。消費者金融業界の貸し倒れが少ないのも、このデータベースが充実しているからだといわれている。

上記の3,4,5が統合されることになりそうで、1,2については動向は決まっていないが、いずれにせよ2009年6月以降は信用情報はすべての機関で一本化されることが決まっている。

信用情報をより広く共有化することにより、多重債務を抑止しようとするものだ。


クレジットクランチ、借金難民続出の時代

これまでは年収の2倍まで借りられると言われていたのに、これが一挙に1/3までしか借りられなくなったら、多くの人は借金難民となり、おまけにクレジットカードも作れないというクレジットクランチ時代が到来し、カード難民が続出する。

筆者も住宅ローンと車のローンを抱えているが、岩田氏は、我が身を振り返って、借金は生活習慣病だと語る。

多重債務者は生活習慣病で、一時は財産100億円を超えていたのに詐欺をはたらいて有罪となった小室哲哉氏のように、収入が減少しても生活レベルは急には落とせないので放っておけば必ず再発すると。

だから本当に必要なのは借金メタボ対策のカウンセリングなのだと。借金メタボには生活ダイエットが必要であり、生活を切りつめることが必要なのだ。


借金サバイバル法

この本は岩田氏の借金サバイバル法が伝授されていて、大変参考になる。

たとえば最近弁護士がやたらテレビや電車の車内広告で借金整理の宣伝しているが、弁護士に頼むのはデメリットの方が大きいと言い切る。

返済している途中の弁護士や司法書士による債務整理は事故に当たるので、すぐにブラックリストに載ってしまう。一度ブラックリストに載ると5年間は借り入れできなくなる。

弁護士は「別にブラックリストに載っても良いではないか」と説明するらしいが、ブラックリストに載って5年間も一切借り入れもクレジットカードも作れないとなると、誰でも不安に思うだろう。

それと弁護士に頼むと着手金が1社あたり2万1千円、借り入れが5社だと10万円強がすぐに必要だ。そして過払い金を取り戻せても、弁護士が成功報酬2万1千円、返還金の20%とチャラになった残高の10%を取る。

業者が債務減額に応じただけだと、減額された金額の10%が弁護士報酬になる。

なんだかんだで弁護士報酬はバカにならない。弁護士も儲からなければ、あれだけ頻繁に大金をかけてテレビコマーシャルなどやらないはずだ。

岩田氏は弁護士を使わず、自分で過払い金請求をすることを勧め、この本で過払い金返還請求の手順まで懇切丁寧に説明している。

個人情報保護法の規定により、開示請求があれば貸金業者は取引経過を開示しなければならないという最高裁判決が出ているので、まずは取引経過を取り寄せ、次のような過払い金請求マニュアル本についている附属CDソフトで過払い金を計算し、利息分(5〜6%)を加えて配達証明郵便で業者に請求書を送るのだと。

そうすると業者から返還額を書いた書類を送ってくるので、それに同意して捺印して送り返すと1〜2ヶ月で入金するという。

Q&A 過払金返還請求の手引―サラ金からの簡易・迅速な回収をめざしてQ&A 過払金返還請求の手引―サラ金からの簡易・迅速な回収をめざして
販売元:民事法研究会
発売日:2008-06
おすすめ度:4.0
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50万円借りて、毎月1万3千円ずつ払って完済していた場合には、過払い請求するとなんと約73万円が返還されるという。


とっておきのノウハウ伝授

岩田さんは、最後にとっておきのノウハウも惜しげなく教えている。

数社から借金がある場合、まず1社を何が何でも完済するのだと。そして完済した後で、過払い金返還請求する。完済後は過払い金返還請求しても事故にはならないのだ。

そして過払い金が入金したらそれを使って2番目の業者の債務を完済して、完済後に同じく過払い金返還請求する。同じ事を3番目め、N番目の業者に繰り返すのだ。

すごい実践的アドバイスである。

そのほか、ノウハウとして、キャッシング=手数料と肝に銘じるとか、リボルビング払いはしないなどの、「岩田流 多重債務を防ぐポイント」として8ヶ条、家計簿をつけてみよう、収入を増やす努力をして、支出を切りつめる、いよいよとなったら公的機関に頼るなどの、「岩田流 借金生活脱出法」6ヶ条を紹介している。

東京都の場合、消費生活センターに連絡するとなんとかなるだろうと。

テレビによく出てくる「年収300万円シリーズ」で、自分は年収数千万円を稼いでいる評論家の本などとは全然違う地に足がついた実践的指南である。


参考になる情報が満載

貸金業法改正で影響が出るのは、年収400万円以下、特に200万円以下の人と、主婦やフリーターなどで、それ以外の人はあまり影響はないと思われるが、情報としても参考になる。

たとえば次のような情報が紹介されている。

★トヨタファイナンスはキャッシング枠をなくし、無担保ローンから撤退する。これはレクサスカードなどの優良顧客を守りたかったのではないかと岩田氏は推測する。

キャッシング枠があるとその情報は指定信用情報機関に上げられ、貸金業各社が見ることになり、優良顧客であればDM攻勢が来ることになる。トヨタファイナンスはそれを避けたかったのではないかと。

★年末派遣村にやってきた派遣切りにあった失業者の多くは多重債務者で、たとえ生活保護を受けるためでも住民登録は嫌がる人が多い。債権者に見つかってしまうからだ。

★本当は恐ろしいリボルビング払い これは説明不要だろう。アメリカのクレジットカードは基本がリボルビング払いなので、サブプライムローン問題が出てきた時に破産者が急増した理由の一つとなった。

★東京都はバングラデシュのグラミン銀行を参考にして、生活再生資金貸付事業を社団法人生活サポート基金に委託して行っている。

岩田さんの本だと年利12.5%、返済期間120回となっているが、ホームページでは最高300万円、年利3.5%(ただし保証人必要)、最長7年間となっている。保証人がいないと金利が異なるのだろう。

ただし、まだ実績は5件しかないという。

★岩手県消費者信用生協によるスイッチローンは、信用生協、県内市町村、岩手弁護士会、提携金融機関が共同で多重債務者を救済するという全国でも例を見ない優れたシステム。

★改正割賦販売法によりショッピング枠にも網がかかる。こちらは経済産業省の主管で、(年収 ー 生活維持費) x 大臣が定める係数(0.5〜1)でクレジットカードのショッピング枠を決めるという、いかにもお役所らしい計算式だ。

係数もまだ決まっていないし、車のローン除外、海外旅行時には最大2ヶ月限度額2倍とか、公共料金の支払いを除外するとか、主婦は無条件で合計30万円だが、世帯主の収入を主婦の限度額に算入できるとか、例外をめぐってまだまだ議論が続きそうだ。

★貸金業者数は2000年の3万社から、2008年の9千社にまで激減し、さらに減少が見込まれる。


PtoP個人間借金サイト

最後にこの本には載っていないが、最近のYahoo!のニュースで気がついたPtoPの個人間でお金を貸し借りするサイトが気になるので、紹介しておく。

maneoというサイトで、個人間の金銭貸借をオークション形式で仲介するサイトのようだ。手数料は1.5%だという。

maneo





日本では企業が貸金業をやることは、出資法で厳しく規制されており、ライセンスが必要だが、個人間の貸し借りだったら法の網をくぐれるということなのだろうか?

無規制でこんなサービスが日本でやれるとは信じられないような気がするが、今のところ貸付金総額7千5百万円ということなので、まるめて1億円としても手数料1.5%なら、創業以来の収入が150万円しかないので、このままでは採算が合わずサービス撤退は時間の問題だろう。

はたしてこのようなサービスが生き延びるのか興味があるところだ。

最近グラミン銀行のムハマド・ユヌス氏の自伝をオーディオブックで読んで(聞いて)感動したので、近々あらすじを紹介するが、グラミン銀行の場合、女性5人でグループをつくってお互いを励まし合うという「隣組」あるいは「細胞」のような組織がベースとなっているから、99%という高率の返済率となっている。

Banker to the Poor: Micro-Lending and the Battle Against World PovertyBanker to the Poor: Micro-Lending and the Battle Against World Poverty
著者:Muhammad Yunus
販売元:Blackstone Audiobooks
発売日:2007-01
おすすめ度:5.0
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そういうモラル面での歯止めがない個人間融資は、危険な賭けではないかと思うが、筆者の直感が間違っているかもしれない。


この本には、Q&Aも充実しており、興味ある質問ばかりで大変参考になる。

クレジットスコアやクレジットレポートの実例なども解説されており、これ一冊でクレジットクランチ時代の問題点やサバイバル法がすべてわかる。

この本に書いてあることは今日本で起こっていることだ。時宜を得た本で、わかりやすくためになる。

是非一読をおすすめする。


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