時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2017年05月

チャーチルの極秘文書 Mrs. Ferguson's Tea-set

チャーチルの極秘文書
関 榮次
学研プラス
2016-12-06


以前、元外交官で、特に太平洋戦争に至る歴史をチャーチルや蒋介石などの歴史の立役者に注目して研究している関榮次さんの2007年の"Mrs. Ferguson's Tea-set"(英文)のあらすじを紹介した。その翻訳が「チャーチルの極秘文書」という題で発売された。



第2次世界大戦初期、日本がまだ戦争に突入していない時期に、商船に仮装したドイツの軍艦が連合国側の商船やタンカーをインド洋や大西洋で拿捕して、積み荷の原料や原油を奪っていた。

大西洋で活躍していたUボートは商船や軍艦を撃沈させるだけだが、仮装商船は、敵船を拿捕して、積み荷が奪えるので、ドイツにとっては一石二鳥の効果があった。

その中の一隻の「アトランティス」という仮装巡洋艦は、1940年3月から1941年11月までの間に、合計22隻もの連合国側の商船を血祭りに挙げて大きな戦果を挙げていた。

atlantis voyage

















出典:本書 巻末資料

通常英国の外交文書が商船によって移送されるときは、何かの時には海深く沈むように錘のついた外交行李に入れて運ばれるので、商船が拿捕されても、外交行李は拿捕される前に海に投げ込まれて、沈んでしまい、ドイツ側が英国の秘密文書を抑えることはほとんどなかった。

ところが、「アトランティス」に拿捕、沈没させられた英国商船の一隻の「オートメドン」の船荷に入っていた英国のアジアにおける対日戦略と防衛力に関する重要な外交秘密文書は、船長以下の船員が砲撃で死亡したこともあり、偶然ドイツ側に渡り、それが日本に提供されて、日本の香港や、マレー、シンガポール攻撃の参考とされたのだ。

その外交秘密文書がドイツ側に発見されたきっかけとなったのが、Mrs. Ferguson's Tea-setだ。

「アトランティス」のロッゲ船長は、英語が堪能で、拿捕した「オートメドン」の乗客の一人のファーグソン夫人から、自分のティーセットが入ったトランクを「オートメドン」を沈める前に取り寄せてくれと言われ、寛容さを示して、部下にそのトランクを取りに行くよう指示した。

部下が「オートメドン」の倉庫を探しているときに、トランクとともに、外交行李を発見して、船長に届けた。1940年11月11日のことだ。

ロッゲ船長は、その外交文書の価値をすぐに理解し、ドイツ本国に連絡し、ドイツは英国の外交文書の写真コピーを日本のドイツ大使館の海軍武官から日本の海軍軍令部次長の近藤信竹中将に手渡した。

近藤中将は、「英帝国の弱体化は、外見以上にひどいようだ」との感想を漏らしたという。日本海軍では、極秘文書の真偽のほどを疑う声もあったが、内容に含まれている英国軍の配置が、日本側のスパイが収集してきた情報と合致していたことから、本物だという判定を下し、それ以降ドイツとの親密度を深めていった。

この秘密の外交文書が日本の開戦への決断にどう影響したかは、1940年以降の公文書類が敗戦前にすべて焼却されてしまったので、定かではないが、関さんは参謀本部編の「杉山メモ」の1940年12月27日付記述のなかで、政府と統帥部の第3回連絡会議で、及川海軍大臣が、”「文書諜報」によれば、英国はわが国が仏印にとどまる限り戦いは欲していない。しかし、蘭領東インドに手を出すと戦争は必至である”と語っていることを紹介している。



「文書諜報」により、英国の反応は予想していたが、最も重要な米国の仏印進駐に対する強烈な反応を読み違っていた。

また、英国も1940年9月にバトルオブブリテンで事実上勝利してからは、秘密文書が書かれた当時とは事情は異なってきていた。その辺も日本は見誤っていたと関さんは指摘する。

この本では、「オートメドン」の乗組員や乗客のドイツでの捕虜収容所での生活や、途中で脱走してフランス・スペイン経由英国に帰国した元乗組員の話など、面白いエピソードを取り上げている。

裏表紙には、Mrs. Fergusonの遺品となったTea-setの写真が載っている。興味のある方は、原著の"Mrs. Ferguson's Tea-set"のあらすじも紹介しているので、こちらも参照願いたい。

ストーリー展開が秀逸で、一気に読めてしまう。大変面白い戦争秘話である。


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大前研一 「ビジネスモデル」の教科書 生きた題材を使った経営の問題集



大前さんがBBT(ビジネス・ブレーク・スルー)大学で、実際に取り上げた12のRTOCS(Real Time Online Case Study)の事例を、大前流に分析・考察・結論付けしたもの。

多くのビジネススクールが、すでに時代遅れとなった過去の事例(たとえば、「コダックとポラロイドの戦い」とか「ゲートウェイ2000はいかにしてトップシェアを取ったか」などという、ネットからデータも取れないような古い過去の話)を扱っていたりするという。

それに対して、RTOCSは現在進行中のフレッシュな事例を取り上げ、当事者たるリーダーと同じ立場に立って、自分ならどうするという自分なりの結論を出す訓練だ。

結論を出すためにどういった情報を集めて、それらをどう読み、どう分析し、どう活かすのかを徹底的に考える癖をつけることが目的だ。

BBT大学の学生は毎週1回このRTOCSに取り組み、リーダーになった気持ちで経営課題を考え、クラスでディスカッションする。

こういったトレーニングを2年間やれば、100本ノックならぬ、100本ケーススタディで、頭の回転も驚くほど速くなり、リサーチ作業や収集した情報を整理、分析するスピードも格段に上がると大前さんはいう。

この本で取り上げている12の事例は次の通りだ。

CASE 1 Coca ColaのCEOだったら

CASE 2 ローソンの社長だったら

CASE 3 UberのCEOだったら

CASE 4 任天堂の社長だったら

CASE 5 キャノンのCEOだったら

CASE 6 シャオミ(小米)のCEOだったら

CASE 7 ゼンショーの社長だったら

CASE 8 クックバッドの代表だったら

CASE 9 日本経済新聞社の社長だったら

CASE10 AirbnbのCEOだったら

CASE11 ニトリの社長だったら

CASE12 島精機製作所の社長だったら

それぞれのケースにBBT大学総研が作成した分析チャートが多く配置されており、その会社の現状の姿と経営上の課題が浮き彫りになる。

本来ならその分析まで自分でやるべきところだが、BBT総研の分析は非常にわかりやすく、その会社の問題点がよくわかる。

そのうえで、大前さんが考えるその会社が取るべき経営戦略を解説している。

たとえば、ローソンについては、成城石井の商品を取り込んで「ショップ・イン・ショップ」形式で商品力を強化すること、都心店舗ではコンシェルジュサービスを導入して、顔の見える営業を展開し、半径200メートル内の住民を確実に囲い込むこと、地方店舗は現状維持というものだ。

また、2007年の4.5兆円をピークに、リーマンショック後は売上高が低迷しているキャノンは、オフィス向けソリューション、医療、理化学機器分野、商業用・産業用プリンターという3つの収益事業を強化するために、M&Aを積極的に仕掛け、各分野で圧倒的なトップを狙う、などというものだ。

BBT総研の分析がわかりやすく、チャートが見やすいので、ついつい大前さんの考える経営戦略まで読み進んでしまうが、この本が最高に役立つのは、その会社の現状分析のところで、いったん読み進むのをやめて、そこで自分なりにアイデアを練って、それから大前さんの案を読むという活用法だ。

経営に正解などない。大前さんの案とは違ってもいいので、自分なりのアイデアを考える経営の問題集としての活用をおすすめする。


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