時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2014年10月

深読みサッカー論 ブラジルワールドカップ前の対談

深読みサッカー論 (日経プレミアシリーズ)
山本 昌邦
日本経済新聞出版社
2014-04-09


ブラジルワールドカップ直前に出された元オリンピック代表監督の山本昌邦さんと日経新聞編集委員の武智幸徳さんの対談。

実は日経新聞の企画で、この二人がブラジルワールドカップ直後に町田で対談したので、その対談を聞いてから、この本を読んでみた。

筆者は湘南高校でサッカーをやっていたので、興味深く読めた(ボールセンスがないので、サッカーは2年であきらめ、3年生からは受験勉強に専念したが)。

日本人初のブンデスリーガーとして活躍した奥寺康彦さんは、筆者が湘南高校1年の時の相模工業大学付属高校(今の湘南工科大学付属高校)3年生で、湘南高校サッカー部は関東大会県予選決勝まで行って、奥寺さんを擁する相工大付属に3:1で負けた。

奥寺さんはその後、古河電工を経て、ドイツのIFCケルン、ヘルタベルリン、ヴェルダー・ブレーメンと合計10年間ドイツで活躍した。

山本昌邦さんは、年次で言うと筆者の4年後輩だが、同じ年代なので、対談もこの本も楽しめた。

ブラジルワールドカップではドイツが優勝した。



2014年4月に出たこの本では、決勝戦ではブラジルとアルゼンチンの南米対決を、その可能性は高いとして予想していながらも、ドイツをヨーロッパ勢の中では最も期待できると評価している。

一人一人がメンタル的にも強く、タフな環境にも強い。流れを変えられる選手が何人もいるし、何よりもチームが成熟しているから隙がないし、交代のカードがことごとくいい仕事をしていると山本さんは評している。

「ここというときの75分から90分が非常に強い。おそらく決勝トーナメントに進んで延長戦になったら、ますます力を発揮すると思います。

勝負所で強いというのは、交代のカードで入ってきた選手が、みんなものすごく仕事をするからなんですね。疲れた相手の弱いところをどんどん突くし、自分たちがちょっと苦しくなったときに、疲れた仲間をしっかりカバーできる。そういう力があります。」

まさに山本さんの予言的中だ。

参考になったのは、チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督の話だ。

もともとボビー・ロブソン監督の通訳としてポルトガルのスポルティング・リスボン、ポルトで働いていたが、監督として大成し、いまはチェルシーの監督だ。

モウリーニョは試合の展開を読み切って作戦を立てるという。

ある想定練習をしていると、それに異論を唱えたプレーヤーに「いや、俺たちがリードしていると、あの選手はこの時間帯に必ずピッチに送り込まれてくる。これは、俺たちが勝っている状況での、残りの15分のシナリオなんだ」と説明するのだと。

それで翌日の試合ではモウリーニョが言った通りに、その選手が想定したとおりのポジションで出てくる。

それでモウリーニョの選手たちは、「おおっー」、「うちのボスは何でもお見通しだ!」となる。

中田英寿も、個別の局面についての視点が優れているという。

山本さんは、海外のメディアの試合前の監督インタビューでの、援護射撃について語っている。

海外メディアは、自国の選手を持ち上げて、強い印象を相手チームに植付けようと、「あの選手はヘディングが強いが、どう守るつもりだ」みたいに、監督に単刀直入に聞いて、自国チームの援護射撃をするのだと。

日本のメディアにも、チームと一緒に戦って欲しいと注文を付けている。

日本には高校サッカー、大学サッカーという学生を育てるという意味では、世界でもダントツのクオリティの育成の仕組みと組織があると、山本さんは語る。

トルシエもジーコもオシムも全国高校サッカー選手権を見て、驚いていたという。

あとがきで、武智さんは山本さんの懸念を紹介している。

「強気な山本氏が不安視する数少ない要素に「監督力」がある。山本氏の目には、日本代表を率いるアルベルト・ザッケローニ監督のチーム運営はどちらかというと「信頼」をベースにしたクラブの監督っぽく映るようだ。

プロ野球の日本シリーズで勝てる監督は、1、2戦までに使える選手と使えない選手の峻別をやってのけるというが、短期決戦のワールドカップも時に監督には果断が求められる。

サッケローニ監督は「勝負師」になれるかどうか。そこは私も注目したいところである。」

まさにこの不安が的中した。試合中のメンバー交代やポジションチェンジのちぐはぐな指令。だから負けたというわけではないが、結局交代のカードを切って試合の流れを変えるとか、最後の15分に集中するとかいった戦いかたができなかったことは事実だ。

予定通り後半30分だけにドログバを投入して、日本を逆転したコートジボアールの戦いかたは見事だった。(YouTubeには日本語解説のものは見つからないので、解説はロシア語か東欧系の言葉ではないかと思う。たぶん著作権の関係だろう)



ギリシャ戦では一人少ない相手に対して、攻めあぐねた。



コロンビア戦では、守りの弱さを修正できなかった。



町田での講演では、山本さんはブラジルの試合会場のコンディション(たとえばレシフェは気温30度以上で、雨が多く、湿度80%!)にもふれており、スペインなども含め、涼しいところでキャンプしていた国は大体敗退したと言っていた。

またサブ組は、ワールドカップ期間中、トレーニングマッチの準備がなく、準備不十分だったと。

コートジボアールとの試合でも、日本選手で試合中に10キロ以上走った選手は5人しかいなかった。タックル成功率も60:40で負けていた。メンタル面も含め、コンディショニングに失敗したのだ。

Jリーグで優勝したサンフレッチェ広島のように、球際に強く、シュートブロックやタックル成功率が高いチームが勝ち残った。特にアルゼンチンのマスチェラーノのタックル成功率は驚異的だったと語っていた。


悪い予感が当たったという結果となった日本のワールドカップでの戦いだった。

ワールドカップが終わったあとで、いまさら読もうという気にならないかもしれないが、読んでみれば楽しく読めて参考になる本である。


参考になれば次クリックお願いします。


重火器の科学 仮想敵国の嫌がる武器が最大の抑止力



自衛隊の武器補給処技術課研究班に勤務し、2004年に定年退官した かのよしのりさんの本。

図書館の新刊書コーナーに置いてあったので読んでみた。

大砲やロケット弾、地雷、手りゅう弾などの基礎が学べる。

かのさんは他にも「自衛隊VS中国軍」や「銃の科学」といった著書を書いているので、今度読んでみる。

自衛隊vs中国軍 (宝島社新書)
かの よしのり
宝島社
2013-03-09




最も参考になったことは、簡単で安上がりな兵器が最も防衛に適しており、周辺国はすべて普通に装備しているのに、日本はそれらを人道的見地から放棄したということだ。

たとえばクラスター弾だ。日本は2008年クラスター爆弾禁止条約に調印した。そして国土防衛用に配備していた多連装ロケット発射器から打ち出すクラスターロケット弾も廃棄した。

自衛隊は敵が上陸してきた場合、海岸に密集しているタイミングでクラスター弾で打撃を加える戦略だったが、みずからその有効な手段を放棄した。

一方、米国はじめ中国、ロシア、韓国、北朝鮮、台湾のいずれもクラスター爆弾禁止条約には参加していない。

日本は自ら安価で有効な国土防衛の武器を放棄したのだ。

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出典:本書90〜91ページ

そして対人地雷禁止条約にも調印しているので、地雷も廃棄した。こちらも米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮、台湾はいずれも調印していない。

人道的な見地から、これらの残虐な兵器を禁止するという趣旨は理解できるが、全世界の国、特に仮想敵国となりうる国がすべて参加しない限り、相手が嫌がる武器を自ら放棄して、防衛力を弱めるだけになるだろう。

日本には恐るべき地雷があった。

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出典:本書150〜151ページ

ショックを与えると本体が1メートル程度ジャンプして、空中で爆発し、250個の鉄球をばらまいて殺傷するという恐ろしい兵器だ。敵の兵士に与える恐怖感は絶大だろう。

中国の人民解放軍の兵士が持っている手りゅう弾は、直径3ミリの鉄球1,600個を飛散させる。

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出典:本書184〜185ページ

最近では小銃で実弾を使って、手榴弾や擲弾を発射できる。

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出典:本書188〜189ページ

もし中国軍が日本に侵攻してきたら、まずはクラスターロケット弾で自衛隊の陣地にクラスター弾を雨あられと降らせて打撃を与え、近接戦では小銃擲弾と手榴弾を使って日本の兵士を攻撃するだろう。

日本も反撃するだろうが、クラスター弾でダメージを受けた部隊は、はたして立て直すことができるのか?

ヒューマニズムの精神にはもちろん賛成だが、日本の仮想敵国である周辺国すべてがダーティな武器を持ち続ける以上、日本だけが放棄しては抑止力の低下はまぬがれない。

相手の嫌がる武器を持つことが、安価で有効な抑止力ではないのか。そんなことを考えさせられる本である。


参考になれば次クリックお願いします。


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