時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2014年07月

イッシューからはじめよ 問題解決のハンドブック



元マッキンゼーで、脳神経学の博士号を持つ安宅和人さんの本。

安宅さんは現在はYahoo!のCOO室長、CSO(Chief Security Officer)として活躍している。安宅さんのツイッターのアカウントもある。

問題解決では、以前元BCGの内田さんの「仮説思考」を紹介した

仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法
内田 和成
東洋経済新報社
2006-03-31


「仮説思考」は筆者が読んでから買った数少ない本の一つで、大変参考になった。

「仮説思考」と同様に、この本も大変参考になる。

ほぼ日で糸井重里さんと安宅和人さんの対談が紹介されている。糸井さんはこの本を読んで、「一人ひとりが読み、チームで共有したい本」だと感じたという。

新刊.jpというサイトに、この本に関する安宅さんへのインタビューが載っており、この本のエッセンスが簡潔に紹介されているので、参考にしてほしい。

最初に、この本の主張が次のように整理されている。

★「問題を解く」より「問題を見極める」

★「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」

★「知れば知るほど知識が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」

★「一つひとつを速くやる」より「やることを削る」

★「数字のケタ数にこだわる」より「答えがだせるかにこだわる」


「犬の道」には踏み込むな

バリューのある仕事とは、安宅さんの定義だと、イシュー度が高く、解の質も高い仕事だという。

バリューのある仕事をやるためには、「根性」で一心不乱に大量の仕事をしてはいけない。それを安宅さんは「犬の道」と呼んでいる。

問題かもしれないという問題が100あるとしたら、そのうち2つか3つが本当に白黒つけるべき問題なのだと。理系の研究者の研究テーマは、このような考えで絞り込むのではないかと思う。

直観でこれが解決につながりそうだとか目星をつけてはいけない。じっくり考えて、なにが問題解決につながるイシューなのかを見極める。

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出典:本書32ページ

このようなアプローチをとれる人と取れない人では、一週間の仕事の進め方に次のような差がでる。

犬の道の人

月曜 やり方がわからずに途方にくれる
火曜 まだ途方にくれている
水曜 ひとまず役立ちそうな情報・資料をかき集める
木曜 引き続きかき集める
金曜 山のような資料に埋もれ、再び途方にくれる

イシューからはじめる人

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出典:本書34ページ


もっと前にこの本を知っていれば…

この本には上記の全体図のように図が多く使われ、コンサルなどの専門家でなくとも、わかりやすくイシュードリブンの問題解決法が理解できるようになっている。

またイシュードリブン、仮説ドリブンなどのステップではさらにいろいろな図が使われている。

たとえば、イシューを見極めるコツとして、1.一次情報に触れる、2.基本情報をスキャンする、3.集め過ぎない・知り過ぎないの3つが紹介されているが、次が2.の基本情報をスキャンする場合の図だ。

真ん中の四角で囲んだ部分がマイケル・ポーターの「ファイブ・フォース」であり、それに6.技術・イノベーション、7.法制・規則を加えたFAW(Forces at Work)である。

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出典:本書82ページ

惜しむらくは、事例があまり少なく、具体的でないことだが、現在会社に勤めていたり、研究に携わっている人は、経営者でなくても、自分の業務に当てはめて応用してみるとよいだろう。

たとえば、次の図は、イシューを分解するうえで、意味のある分解と意味のない分解を図示したものだ。これがMECEだと言われれば、納得できるだろう。

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出典:本書109ページ

筆者も2002年から2007年まで、子会社のネット企業を代表取締役副社長として経営していたことがある。今思えば、業界の全体図、伸びる分野、自社の占めるポジション、SWOTなどのビッグピクチャーをよく理解せずに、ただ日々の問題を解決するのに手いっぱいという感じで経営していた。全く汗顔の至りだ。

もっと前にこの本を知っていれば…と思う。

筆者の読んだものは、第10版で、本の帯には8万部突破と書いてある。

アマゾンの売り上げランキングでも全体の1,210位で、このブログで紹介した内田さんの「仮説思考」が1,718位、必読書「ロジカル・シンキング」が668位、バーバラ・ミントの「考える技術・書く技術」は1,464位だ。






つまり、これらの名著と同じくらい売れているということだ。

ハンドブックとしても役に立つ。この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次に続く、コンテンツをパラパラめくってほしい。

仕事の役に立ちそうなことがわかると思う。


参考になれば次クリックお願いします。



論文捏造 STAP細胞と高温超電導捏造事件の驚くべき類似性

論文捏造 (中公新書ラクレ)
村松 秀
中央公論新社
2006-09


世界的に有名な研究所。

しかし研究所の業績はパッとせず、研究資金を確保するために、スターを待ち焦がれていた。

そこへ現れた29歳のスター研究者。

世界的に有名な指導教官が論文の共著者となる。

ハンサム・ガイ。

「サイエンス」、そして「ネイチャー」に立て続けに論文を発表。

世界が驚いた研究成果。

メディアの注目の的。

しかし、世界中の研究者が追試を行うが誰も成功せず。

論文捏造疑惑が持ち上がる。

調べてみれば大学時代の博士論文から始まる写真・データの使い回し。

本人はいたって陽気に追試に参加。

しかし、追試は不成功。

やがて論文は取り下げられる。

本人は大学時代の捏造疑惑で博士号をはく奪され、今は一般企業の会社員としてひっそり暮らす。

…。

以上は小保方晴子ユニットリーダーの話ではない。

2000年に高温超電導で次々を記録を更新。ノーベル賞に最も近いと言われた男、ドイツ人科学者・ヤン・ヘンドリック・シェーンの話である。

シェーンはハンサムガイだ。

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出典:本書17ページ


ベル研究所といえば、トランジスターを発明した世界的に有名な超一流研究所だ。

ところが、1990年頃をピークに、ベル研究所の発表する論文数は次の図のようにジリ貧となっていた。

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出典:本書184ページ

IT不況の影響で、親会社のルーセント・テクノロジー(もともとはAT&Tだったが、AT&T分割で分社化された)の株価はピークの1/10となり、研究費がどんどん削られていたのだ。

理研も特定国立研究開発法人への指定を受けて、国から多額の研究予算をつけてもらうべく申請していた

名門だが、研究費の確保に苦労しているという状況は、当時のベル研究所の状態に似ている。

「スター誕生」が渇望されていたのだ。

この本は、2004年末にNHKで放送された論文捏造事件ドキュメンタリーをつくったディレクターが書いた。

シェーンを小保方さん、高温超電導をSTAP細胞と読み替えると、歴史は繰り返すという言葉通りになっていることに驚く。

ネイチャーに投稿した論文の掲載可否を決めるのは、次のプロセスだ。

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出典:本書137ページ

科学誌の記者に論文を評価する能力はない。その分野の一流研究者がレフェリーとなる。レフェリーが納得すれば、論文は「ネイチャー」に掲載されるのだ。

特許権の関係もあり、発表される論文は簡単なもので、詳細は明かされない。

たとえば1953年のワトソン・クリックのDNA論文はわずか1.5ページだ。論文は今も「ネイチャー」のサイトに公開されているので、ここをクリックして論文を見てほしい

「ネイチャー」に論文が出ると、世界中の研究者が自分たちの方法で追試を試みる。そして、自分たちの方法が発表者と違ったり、結果が発表者より良かったりすると、今度は自分たちが「ネイチャー」や「サイエンス」に発表するのだ。

当初、高温超電導は日本が世界をリードしていた。シェーンは日本の谷垣東北大学教授(論文発表時はNEC基礎研究所在籍)が1991年に高温超電導の世界記録(33K=Kは絶対零度=−273度)を打ち立てた方法とは、全く異なる次のような方法を発表した。

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出典:本書47ページ

しかし、他の誰も成功できない。同じ方法を実現するには、スパッタリングという電子ビームを金属片に当てて、とび出した金属原子でコーティングするマシンが必要だ。しかし、世界のどのスパッタリングマシンでもシェーンの方法は追試できなかった

いつしか、シェーンは出身校のドイツ・コンスタンツ大学の「マジック・マシン」を使って、高温超電導記録を塗り替えているんだという噂が広まった。

次がそのマジック・マシンの写真だ。

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出典:本書156ページ

なんのことはない、家庭用のマシンのようなもので、上に目覚まし時計がついているところがご愛嬌だ。

この写真を撮影したNHKは、世界で最初に「マジック・マシン」の写真を紹介したことで、スクープとなった。

だれもが思うように、こんなマシンで有機物に薄い酸化アルミの膜をスパッタリングできるはずがない。

衆目の監視する中で行われたシェーンの実験では、シェーンが全く実験に不慣れなことが露呈し、当然のごとく失敗に終わった。

シェーンのコンスタンツ大学時代の博士論文から捏造は始まっていたことがわかり、シェーンの捏造はもはや動かしがたい事実となった。

博士号をはく奪され、シェーンはいまはひっそりとドイツの片田舎で会社員として暮らしているという。

ES細胞では2005年に韓国の黄教授の論文捏造事件が起こっている。

捏造は繰り返されるし、繰り返されるとしたらパターンは同じなのだ。

あえて言うが、筆者は小保方さんはウソは言っていないのではないかと思っている。彼女は自分ではSTAP細胞と思ったものを造り出したことがあったのだろう。

筆者の大学の先輩が言っていたが、UFOを見たと言う人に、UFOは実在しないと証明することは不可能だ。

UFOを見たと言うなら見たんだろう。誰も否定はできない。

シェーンの場合は、頭の中で考えた方法を論文に書いて、それをいずれ実証してくれる人が現れるのを待っていたのではないかと思う。

そういう人が現れればもうけもの、自分はノーベル賞を取れるというシナリオだ。

小保方さんの場合には、そういった打算では動いていないのではないかと思う。

彼女はUFOならぬ、STAP細胞を見たのだろう。ただ、それが再現できないだけだ。


この本は2006年9月の初版だが、アマゾンの全体の売上ランキングで現在3,000位くらいになっている。全く陳腐さはない。STAP細胞事件が起こってから、売れ行きに拍車がかかっているようだ。

筆者が図書館で借りて読んでから買った数少ない本の一つだ。こんなにポストイットを貼っている。

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文章もこなれているし、専門的な内容も含んでいるが、大変わかりやすく書かれている。

いずれSTAP細胞事件そのものを取り上げた本も書かれると思うが、この本の情報量と取材力は圧倒的だ。さすがNHKと思わせる。

是非一読をおすすめする。


参考になれば次クリックお願いします。



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