暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)
著者:大井哲也
レクシスネクシス・ジャパン株式会社(2011-12-22)
販売元:Amazon.co.jp
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みずほ銀行が子会社のオリコを通じての暴力団関係者への融資を、金融庁にも隠していたことが大きな問題となっている

ほとんど報道されないが、この背景には暴力団向けの商行為を禁止した暴力団排除条例が平成22年4月以降、全国の自治体で制定・施行されたことがある。

つまりこの事態は、暴力団排除条例が全国であいついで施行された時に、公にして契約を解除していれば防げたコンプライアンス問題なのだ。

そこで各都道府県で制定・施行された「暴力団排除条例」対応のための模範文例まで完備したマニュアルのあらすじを紹介しておく。

この本は大手弁護士事務所のTMI総合法律事務所の弁護士と、福岡県で暴力団排除条例の制定にかかわった警察庁のエリート・黒川浩一氏、それと(株)エス・ピー・ネットワーク総合研究室という企業危機管理専門会社の共著。平成23年12月の発刊だ。

アマゾンのなか見!検索に対応しているので、詳しくはここをクリックして目次をチェックして欲しい。


この本の構成

この本の構成は次の通りだ。(カッコ内はその章の担当著者)これを見ればわかる通り、いろいろな切り口からの暴力団排除条例への対応マニュアルであり、具体的な模範文例も載っているので、非常に実用的だ。

第1章 反社会的勢力の侵入手口と企業の対応(SPネットワーク)
  機〆廼瓩糧深匆馘勢力排除の動向
  供ヾ覿箸悗糧深匆馘勢力の侵入(関与)事例 3件(上場・不動産)、(上場、小売)、(非上場・倉庫/運輸)
  掘“深匆馘勢力排除の内部統制システム

第2章 反社会的勢力のチェック方法(SPネットワーク)
  機,匹海泙任鯣深匆馘勢力とするのか
  供“深劵船Д奪のポイント

第3章 暴排条項の導入(TMI総合法律事務所)
  機,覆舎叔咯鮃爐必要なのか
  供)叔咯鮃狷各の留意点
  掘)叔咯鮃爐離丱螢─璽轡腑

第4章 契約の拒絶・解除の実務(TMI総合法律事務所)
  機〃戚鹹結前の取引拒絶
  供〃戚鹹結後の解除の法的リスク
  掘ヾ存取引先との関係解消の実務

第5章 海外の反社会的勢力(TMI総合法律事務所)
  機.哀蹇璽丱襪瞥彑舛亡悗垢觝廼瓩瞭宛
  供ヽこ鞍深卩喀の取り組み方
  掘ヽこ鞍深丗弍のための英文版誓約書・暴排条項

第6章 雇用関係等からの反社会的勢力排除(TMI総合法律事務所)
  機―抄醗に対する属性確認義務
  供―抄醗が反社会的勢力に該当する場合の対応
  掘ゞ般外兮スタッフの場合

第7章 上場審査の実務及び出資者・株主への対応(TMI総合法律事務所)
  機‐緇貎該困鮗ける場合
  供“深匆馘勢力との関係発覚による上場廃止
  掘―仍饉圈Τ主への対応

第8章 暴力団排除条例の解説(黒川浩一・前福岡県警察本部組織犯罪対策課長)
  機‐鯲秬定の背景と経緯
  供‐鯲磴亮腓糞定
  掘‐鯲秬定の狙い
  検)塾話弔紡个垢詬益供与の禁止規定の解説
  后)塾話弔紡个垢詭承疎澆靴龍愡
  此)塾話弔箸量接交際
  察仝共事業からの暴力団排除
  次〔唄峪業からの暴力団排除
  宗”堝飴瑳莪からの暴力団排除
  勝)塾話弔琉厠詫用そのものの禁止
 将機(_県条例の改正
 将供,泙箸
 資料 各都道府県の暴力団排除条例における特徴的な規定


暴力団の現状

平成22年度末の暴力団の構成員と準構成員総数は78,600人となっており、前年より2,300人減少しているものの、準構成員は増加している。

最近の判例では、広島のホテルが結婚式を予定していた暴力団関係者との契約を解除したことが有効と認められたり、暴力団関係者であることを隠して銀行から融資を受けた暴力団組員が詐欺罪で起訴されるというような事例を紹介している。

銀行業界では暴力団やそれに準ずる者には口座を開設させず、すでに開設された口座も解除することを決めており、全銀協が暴力団データベースを加盟行に提供している。

不動産業界、自動車販売業界、生命保険業界、旅館・旅行業界などの暴力団排除は進んでいるが、「密接交際者」の島田紳助が引退を余儀なくされたように、テレビ局や芸能界は「密接交際者」に対して甘い点があるという。


反社会的勢力のチェック方法

企業の法務担当者や総務とかでないと、法的手続きのマニュアルが役立つことはないかもしれないが、営業関係者でも時として反社会的勢力が支配する会社との商売の話が出てくることもあるので、第2章の「反社会的勢力の端緒チェックリスト」は参考になると思う。

このチェックリストは次のような構成のチェック項目を含む網羅的なリストとなっている。

・取引経緯等(8項目)
・商業登記情報(14項目)
・不動産登記情報(11項目)
・データベーススクリーニング(7項目)
・企業情報(13項目)
・事務所(7項目)
・社長・役員(4項目)
・従業員(4項目)
・商品・技術(5項目)
・サービス(4項目)
・風評(8項目)
・行為要件(4項目)
・支払い(6項目)

特に商業登記情報分析は重要だ。反社会勢力に乗っ取られたような会社は、次のような兆候があるという。

・主要事業の変更(業種転換)
・事業目的間の関連性が低い。事業目的が多岐にわたりすぎている。大幅に変更されている。
・短期間での大規模な増資や小口の増資、減資などが続く。
・商号、本店所在地、役員が頻繁に変わっている。
・複数役員が一斉に退任している。
・会社の合併、分割がある。
・商業登記簿謄本が存在しない。
・登記内容の変更手続が常態的に法定期間を超えている。

その他、インターネット上の風評や、業界情報なども与信管理という意味からも重要である。


個人情報保護法との関係

ひと言でいうと、反社会勢力との対応は、個人情報保護法の例外規定に該当し、本人同意取得や利用目的の通知など、ほとんどの個人情報保護法の義務は免除される。


暴力団排除条例の実際の活用

暴力団排除条例施行以前は、暴力排除条項を盛り込む根拠は政府指針及び企業の監督官庁の指導だけだったが、条例ができたことにより明確な根拠ができ、反社会的勢力と手を切る大義名分ができた。

たとえば東京都の暴力団排除条例は次のように規定している。

「第十八条 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。

2 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。」

つまり上記の18条2項で、契約書に暴力団関係者だと分かった時点で即時解除ができるという条項を入れることが努力義務となったのだ。この条項は紙の契約書のみならず、インターネットなどの約款にも盛り込む必要がある。


模範文例まで載っていて実用的

既存の契約相手先と契約を変更することが難しい場合は、相手から暴力団関係企業ではないという誓約書を出してもらうやり方を紹介している。

取引先への説明文案、誓約書のひな形まで掲載しているので便利だ。

暴排条項のサンプルも、最高水準から一般水準、簡易版、再委託をカバーしたひな形、全銀協、日本建設業連合会(日建連)、不動産流通4団体などの具体例、さらに契約解除通知ひな形もあり、非常に実用的である。

従業員や株主についても誓約書のひな形を紹介している。


警察による暴力団情報の提供

アマゾンのカスタマーレビューでは、警察が平成23年12月22日付けの新通達で、従来の「暴力団排除等のための部外への情報提供について」(平成12年9月14日付)を廃止して、事業者が条例上の義務を履行するために必要と認められる限度で情報の提供をするとして、従来の方針(不可欠の場合だけ情報提供をするという消極的な方針)を転換していることを指摘している。

警察も消極的な姿勢を改めたようなので、もし相手が暴力団ではないかという疑念があれば、警察にまずは相談すべきだろう。


反社会的勢力データベース

海外の反社会的勢力については、各種の国際規制違反者リストや、インターポールのMOST WANTEDリストなど、LexisNexis社などが提供する50弱の有償データベースを紹介しており、日本企業と同様に、暴力団排除条例に従った、英文版誓約書のひな形や、解除条項の英文版のサンプルを紹介している。


Q&Aが参考になる

一般人が読んで一番役に立つのは第8章の暴力団排除条例の解説だ。暴力団排除条例を日本で初めて制定した(平成21年10月制定、平成22年4月施行)福岡県の条例起草担当者の黒川氏が説明しているので、大変参考になる。

意見にあたる部分は黒川氏の私見であるとことわっているが、次のような十分突っ込んだ内容の実用的なQ&Aとなっている。(答えは続きを読むに記載したので、参照してほしい)

Q2.暴力団との関係を遮断したいが、報復が怖い。警察は守ってくれるのか?

Q3.機関紙の購読を依頼され購読料を支払った。条例違反になるのか?

Q4.暴力団の世話になったが、謝礼金の代わりに別会社を下請けに使ってほしいと言われた。条例違反になるのか?

Q5.暴力団事務所と知って宅配ピザを届ける行為は、条例違反となるのか?

Q6.オフィスの内装工事を暴力団員経営の会社と契約すると条例違反となるのか?

Q7.暴力団員との親密な交際を噂されている芸能人をイメージキャラクターとして起用したいが、問題はないか?

Q8.宅配便の配送先が暴力団だったが、配達すると条例違反になるか?

Q9.商店会の福引で暴力団組長が当選したら、賞品を渡すと条例違反になるか?

Q10.どんな行為が「暴力団の活動を助長する」か判断できない。条例の規定は問題あるのではないか?

Q12.暴力団事務所に電気、ガス、水道を供給することは条例違反となるか?

Q13.暴力団事務所に新聞を配達することは条例違反か?

Q14.暴力団から損害賠償訴訟を起こされ、和解金を払うことは条例違反か?

Q15.暴力団にスポンサーとなってもらい、利益を得ることは条例違反となるか?


要は相手が暴力団だとわかるまではやむないが、暴力団関係者だとわかったら、取引はしないというきっぱりした態度が肝要だろう。

この本の言うように暴力団排除条例ができたことを理由に、疑わしい相手からは暴力団関係者ではないという誓約書を取り付けるということがまず第一歩だろう。そして万が一暴力団関係者だとわかったら、条例を根拠に取引を止めることだ。

誓約書や契約書、通告文書などの文例も紹介されており、すぐに使えるマニュアルである。

企業の法務や総務担当者でなくても、基礎知識を得るために一度読んでおくことをおすすめする。

Q&Aの答えは”続きを読む”に簡単に書いておくが、実際の回答は詳細にわたるので、是非本書を参照してほしい。


参考になれば次クリック願う。

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