時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2013年04月

朴槿恵の挑戦 韓国と「結魂」した新大統領に期待する

朴槿恵〈パク・クネ〉の挑戦 - ムクゲの花が咲くとき朴槿恵〈パク・クネ〉の挑戦 - ムクゲの花が咲くとき
著者:李 相哲
中央公論新社(2012-11-08)
販売元:Amazon.co.jp

先日韓国初の女性大統領として就任した朴槿恵(パク・クネ)の生い立ちや政治信条などを紹介した本。


槿(ムクゲ)は韓国の国花

朴槿恵の槿(ムクゲ)は無窮花(ムグンファ)と呼ばれ、国歌(愛国歌)にも歌われている。韓国人にとってはムクゲは特別の花だ。

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出典: Wikipedia



朴槿恵の父・故・朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が3日かかって考えた名前だという。

朴槿恵は60歳。若く見えるが、その経歴はすさまじいものがある。

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出典: Wikipedia

22歳の時(1974年)に、朴正煕大統領夫人の母・陸英修が在日朝鮮人の文世光に銃撃されて死亡

その5年後の1979年に、朴正煕大統領も腹心の部下のKCIA部長の金戴圭に暗殺される。この時、朴正煕大統領はまだ61歳だった。


良くも悪くも朴正煕の娘

朴正煕大統領の手法は「開発的独裁」と呼ばれ、軍事クーデターを起こした1961年には一人当たり80ドルだった国民所得を、暗殺された1979年には1,620ドルにまで急成長させた「漢江の奇跡」の立役者として評価されている。

その一方で、クーデターを起こして政権を強奪した手法や、民主化を抑圧し、ベトナム戦争に韓国軍を派兵するなど、独裁者として権力をほしいままにした。米国のカーター政権の圧力をはねのけて、秘密裏に核開発を進めていたこともわかっている。

個人的には清廉潔白な人だったといわれ、韓国にM−16小銃を供給することになったマクドネル・ダグラス社からの賄賂の百万ドルの小切手を受け取らず、代わりに小銃を出してくれと言って突っ返したという逸話がある。

M−16小銃

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出典:Wikipedia

この本の半分以上は故・朴正煕大統領の人物伝となっている。朴槿恵〈パク・クネ〉が紹介されるときは、朴正煕の長女と紹介されることが多いので、やむを得ないところかもしれない。


朴正煕の経歴

朴正煕の経歴を簡単に紹介しておく。朴正熙は1917年に貧しい農村に5男2女の末っ子として生まれ、師範学校を卒業して聞慶国民学校で教師をした後、1940年に満州に渡って、満州国軍軍官学校に入学した。

2年で主席で卒業して、日本の陸軍士官学校に編入。1944年に卒業した後は、満州国軍に配属され、終戦時には満州国軍中尉だった。一時日本名に改名したことがあり、高木正雄と名乗った。蒋介石のように日本陸軍に在籍したことはないが、酔うと日本の軍歌などを歌っていたという。

終戦後、韓国軍の中心的存在としてランクを高めていき、1961年5月16日の軍事クーデターの時は、第2軍副指揮官だった。(写真の右側のサングラス・ジャンバー姿が朴正煕)

朴正煕クーデター





出典:Wikipedia

クーデター後、朴正煕は国家再建最高会議議長に就任し、1963年に韓国大統領に就任した。1964年には中断していた日韓交渉を再開させた。

反対勢力を押し切るために1964年6月に戒厳令を発布、1965年6月に日韓基本条約を締結し、日本から無償3億ドル、有償2億ドル、融資3億ドルの援助を取り付ける。韓国の輸出額が年間1億ドルしかない時代だった。これが「漢口の奇跡」の原資となった。

竹島をめぐる日本と韓国の間の領有権問題について「両国友好のためにあんな島など沈めてしまえ」と発言したと言われているが、真偽のほどは確認できていないようだ。

1972年に10月に国会を解散、政党・政治活動を禁止して、大学を閉鎖して全土に非常戒厳令を発布する政治改革を断行する国家非常事態宣言を発表した。10月維新と呼ばれる事態である。

1973年8月に、日本を訪問していた金大中がホテルから拉致されるという金大中事件が起こる。

10月維新時代に辛酸をなめた活動家や一般市民に、朴槿恵は謝罪している。2004年に金大中を訪ね謝罪した時は、金大中は「本当にうれしかった。世の中にこんなこともあるんだなと思った。朴正煕が生き返って私に握手をもとめているような気がした」と自伝で書いている。

金大中自伝(II)歴史を信じて――平和統一への道金大中自伝(II)歴史を信じて――平和統一への道
著者:金 大中
岩波書店(2011-02-26)
販売元:Amazon.co.jp

1972年の10月維新の後、1974年に母親の陸英修が在日韓国人の文世光に銃撃されて死亡、1979年には父親の朴正煕が暗殺されたことは前述のとおりだ。


朴槿恵の政治活動

父親が暗殺された後、朴槿恵は政治からは遠ざかっていた。しかし、1997年に韓国経済が破綻し、IMFの管理下に置かれると、朴槿恵は国の危機を救うために政治家となることを決断し、1998年に国会議員となった。

ハンナラ党の主要メンバーとして積極的に活動し、一時ハンナラ党を離れたことはあるが、ほどなく復党した。2004年にはハンナラ党総裁となって、選挙を勝ち抜き、「ハンナラ党のジャンヌ・ダルク」と呼ばれた。

2006年の遊説中に男にカッターナイフで切りつけられ、右耳から顎に60針縫う傷を負わされた。傷口があと1センチ深かったら、頸動脈に達し、命を落としかねなかったという。

この時の心境を朴槿恵は次のように書いている。「手術台に横になった時、両親を思い出した。手術が行われている間、私の頭には、ずっと、銃創で苦痛に耐えている父と母の顔が浮かんでいた。…」


大統領候補に

2007年に大統領候補を李明博と争ったが1.5ポイント差で敗れ、李明博が大統領として就任する。李明博の「すべては夜明け前から始まる」などの著書を、別ブログでも紹介しているので、参照してほしい。

すべては夜明け前から始まる―大韓民国CEO実用主義の大統領李明博の心の軌跡すべては夜明け前から始まる―大韓民国CEO実用主義の大統領李明博の心の軌跡
著者:李 和馥
理論社 (発売) 現文メディア (発行)(2008-02-15)
販売元:Amazon.co.jp

その後、李明博大統領と朴槿恵は、2009年に世宗市問題で対立することになる。世宗市はソウルの集中化を緩和するために、ソウルに代わる首都として韓国中部に新たに建設する都市で、首都移転計画を見直す李明博に、当初計画通りに建設すべしとして朴槿恵が迫ったのだ。


尊敬する政治家は父とサッチャー

「尊敬する政治家」を聞かれて、朴槿恵は、「父とサッチャー」と答えた。サッチャー自身も「人間として必要なことはすべて父から学んだ」と父アルフレッドを尊敬していたという。

朴槿恵は、両親が亡くなった後、大事なことを決めるときに、「父だったら、母だったらどうしただろう」と考える習慣ができたという。


朴槿恵への質問状インタビュー

この本の最後に、朴槿恵への質問状に対する彼女の回答が紹介されている。時間の関係で、インタビューができなかったために、質問状形式での受け答えとなったものだ。

現在の韓国の問題点と解決の方向性が示されているので、興味深い。参考になるものを紹介しておく。

★私は結婚はしておりませんが、「結魂」はしました。何度も公の場で言ったことがありますが、私はずっと前に、大韓民国と結婚(結魂)したのです。ですから、私は大韓民国にすべてをささげてきましたし、これからもそうするつもりです。私は一人でも、独身でもありません。亡くなった父も、きっとこの結婚は喜んでくれているでしょう。

★今、我が国の抱えているさまざまな問題のうち、至急解決しなければならない切実な課題の一つは、さまざまな勢力、社会各層、地域の間に生じている「対立」、「不信」、「不公正」を解決することです。それらの問題を解決して「大統合」を実現するのが何より大事です。

★そのために「国民幸福推進委員会」を作り、誰も疎外されたり、立ち遅れたりすることのないように、どの地域に住んでいようが、どの分野の仕事に従事していようが、みんなが自分の未来を夢見ることのできるような社会を目指します。

★今まで、我が国では、国家の経済成長が必ずしも一人ひとりの幸せに繋がっていませんでした。(中略)私は「国民みなが自分の能力を発揮できる国」にしようと思います。

★それを実現するために、我が国の強みでもある情報通信技術、科学技術を産業全般に応用して創業者を増やし、若い人たちに働きの場を提供するための政策を推進します。今後、製造業中心の伝統的な産業を高付加価値産業へと変貌させ、文化産業、ソフトウェア産業のような未来型産業を積極的に育成し、働き口を増やします。

★中小企業と大企業が共に成長し、正規雇用と非正規雇用との間に差別のない制度を整備する努力が必要です。そのために「経済民主化」を主張しています。(中略)「韓国型福祉制度」を作りたいのです。

★私は、不正腐敗の問題を非常に深刻に受け止めています。政治が存在するもっとも大きな理由、政治の使命は、国民の生活をよりよくすることにあります。つまり「民生」を第一に考えなければならないのです。ところが、我が国の政治は、国民の生活とは関係のない不正腐敗をはたらいて、逆に国民から批判される場合が多い。

★これについては本当に痛恨の思いを持っています。恥ずかしいことです。私はこれから、この国の誰であろうが、不正腐敗に関与した場合は、絶対容認しないでしょう。真の改革は私から、私の周辺から始めなければならないと思います。権力に関連のある不正腐敗問題については、「特別監察官制度」を作り、事前予防に努めます。

★北韓は、核兵器が典型的ですが、武力で相手を脅迫し、屈服させようとする計略が通用しないことを認識し、そうした考えを捨てなければなりません。そこで初めて、相互尊重、相互信頼の雰囲気が作られるでしょう。そのような雰囲気を作り出すため、私は韓半島信頼プロセスを推進しようと思っています。

★私と我が国民は2400万人の北韓同胞を決して忘れることはありませんし、実際、忘れてもいません。我々は同胞愛と人道的な立場に立っていつでも助ける準備ができています。

特に最後の質問の回答が大変参考になった。

この人は「自責」(他人の責任をあげつらう「他責」に対して、自分の責任をまず考える態度の人)の人だと思う。

やっかいな金正恩という隣人の取り扱いは大変だと思うが、日韓関係改善を含め、朴槿恵大統領の今後の活躍を大いに期待したい。


参考になれば次クリック願う。


日本銀行デフレの番人 日銀副総裁に就任した岩田規久男さんの脱デフレ策

日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)
著者:岩田 規久男
日本経済新聞出版社(2012-06-09)
販売元:Amazon.co.jp

2013年3月末に日銀副総裁に就任した岩田規久男・学習院大学教授の脱デフレ策。

先日紹介した浜田宏一・イェール大学名誉教授の「アメリカは日本経済の復活を知っている」でも、岩田規久男教授は、日銀総裁候補の一人に挙げられていた。

この本では白川・日銀を「デフレの番人」や「物価安定化不合格率67%」などと批判し、リフレ具体策を提案している。


黒田・岩田チームが早速始動

2013年4月4日、黒田東彦日銀総裁と岩田規久男副総裁が就任して初めての金融政策決定会合で、「ツー・バイ・フォー」と言われる、2年間でインフレ率2%をめざし、マネタリーベースは2倍、国債買い入れも2倍にするという「異次元の金融緩和」を発表した。

4月4日と5日で、日経平均は1,000円近く上昇。円相場は4円ほど円安になった。これで2012年11月の「アベノミクス」発表後、日経平均はほぼ5,000円上昇し、ドル・円相場はほぼ20円下落した。(リンクをクリックすると、株価と円相場の相関グラフが表示される)

大胆な金融緩和策が、「インフレ予想」を抱かせ、デフレ脱却に効果があることがはっきり示された。

筆者は大学を卒業して40年近く経済界にいるが、今回ほど経済理論が機能した実例は記憶にない。

大胆な金融緩和→「インフレ予想」形成→円安→企業の収益回復を期待した株価上昇→景気回復の「良いサイクル」が始まったのだ。


2012年バレンタインデーのインフレターゲット実験

この本で岩田教授は、2012年2月14日バレンタインデーの日銀による「インフレ1%目途」発表後、円安が進み、株価も上昇した事実から、対ドル円相場が1円下落すると、株価を225円押し上げる影響があると分析している。

浜田宏一教授が、「アメリカは日本経済の復活を知っている」で、「義理チョコ緩和」と呼んでいる日銀のインフレターゲット実験だ。

アメリカは日本経済の復活を知っているアメリカは日本経済の復活を知っている
著者:浜田 宏一
講談社(2012-12-19)
販売元:Amazon.co.jp

岩田教授は、この「インフレ目途1%」実験が、日銀理論の誤りを実証したと語っている。

ちなみに、「アベノミクス」による昨年11月頃からの円安、株高も、ほぼこれと同じような1円の円安=200〜250円の株価上昇という関係になる。(リンクをクリックすると、株価と円相場の相関グラフが表示される)


「デフレの番人」・日銀のみじめな成績

岩田教授は、総合消費者物価の前年同月比の上昇率が0〜2%の月を「合格」、0%以下の月を「不合格」、2%を超えた月を「引き分け」とする評価基準を持ち込んでいる。

これによると、新日銀法施行以後の14年間の成績は41勝、124敗、3引き分けで、勝率は2割4分だと評価している。

白川総裁の在任中では、13勝、32敗、3引き分けで、勝率は2割7分1厘だ。

筆者自身は、物価の安定という意味では、0%以下を「不合格」とする評価方法には疑問を感じる。

しかし、物価上昇率0%以下が、あまりに長期間続いたからこそ、日本経済が低成長を続けていると考えれば、岩田教授の通信簿は一つの評価かもしれない。その意味では、日銀はインフレ率を0%以下に守ってきた「デフレの番人」であると言えるだろう。


日銀理論ーデフレの責任は日銀にはない?

藻谷浩介氏のベストセラー、「デフレの正体」では、デフレの正体は生産年齢人口の減少、つまり「人口オーナス」だと主張していることは、以前別ブログで紹介した通りだ。

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
著者:藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-06-10)
販売元:Amazon.co.jp

日銀の白川総裁も同じ見方を採っており、「日本の経験している緩やかなデフレという現象は、趨勢的な成長力低下という根源的な問題の表れ」と講演で語っている。

これに対して岩田教授は、藻谷氏を門外漢と切り捨て、白川総裁を次のように批判している。

「経済学の本は読んだことがないと宣言している藻谷氏が、実質値(相対価格)と名目値(物価)の区別がつかないのは、いたし方ない」。

「しかし、貨幣を扱い、「物価の安定」を仕事とする日銀の総裁ともあろう人が、実質値と名目値の区別がつかないことは、看過できない問題である」。

日本以外で人口が減少している国は中欧諸国(ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、クロアチアなど)や、旧ソ連諸国(ウクライナ、グルジア、ラトビア、リトアニア、エストニアなど)がある。

岩田教授はこれらをリストアップして、日本以外ではすべてインフレになっていることを表で示している。

さらに、生産年齢人口が減少している先進4カ国との比較表を示し、国際比較のない「デフレ原因説」を信じてはいけない、と岩田教授は警告する。

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出典:本書86ページ

日銀は金融政策は「インフレ予想」の形成に働きかけることができることを理解していないのだと。


岩田教授の提案

岩田教授は、この本で日銀にインフレ目標の達成を義務付けるために、日銀法を改正して、政府が物価安定目標を決定し、日銀にその目標を中期的に(1.5〜2年程度)達成することを義務づけることを提案している(達成手段の選択は日銀に任せる)。

日銀法改正までは、まだ道筋がついていないが、このまま「アベノミクス」で景気が順調に回復し、2013年夏の参議院選挙で自民党が過半数を抑えることになれば、日銀法改正も視野に入ってくるだろう。


リフレ政策はなぜ景気回復に寄与するのか?

岩田教授は、リフレ政策は次のような展開で日本の景気回復に貢献すると説明している。

日本の予想インフレ率が上昇する

円安・ドル高になる

輸出が増え・輸入が減る

輸出企業中心に株価が上がる

株式含み益が増大し、バランスシートが改善する

企業の設備投資が拡大する

株高で個人の資産価値が増え、積極的に消費を拡大させる

景気が拡大する

2013年4月5日に、財務省関連の(一財)金融財政事情研究会が主催した「月間『消費者信用』創刊30周年記念シンポジウム」で、パネリストの一人が言っていたことを思い出す。

最近、若い年代を対象に行ったアンケートでは、「給料が上がる」と答えた人の数が、「給料が下がる」と答えた人の倍だったという。これは、長い期間なかったことだ。

「アベノミクス」、そして2014年度から実施される消費税アップが、人びとの心理に影響しているのだ。

筆者の友人から聞いた話では、株価が上がったので、個人の保有資産の評価額が上がり、ゴルフ会員権の買い希望が増え、売り物が払底しているという。また、REIT=不動産証券相場は急上昇している(リンクをクリックすると、REIT相場グラフが表示される)。

リフレ政策で、日本経済がデフレから脱却し、再びそこそこの経済成長を続けることができれば、自民党の支持基盤は盤石のものとなるだろう。

民主党に政権運営を任せて、大変な失望を味わった4年間は、自民党の臥薪嘗胆につながった。その結果、日銀の刷新と日本経済の活性化が生まれつつある。

4年間はいかにも長すぎたかもしれないが、民主党への政権交代は、日本国民にとっても、自民党にとっても無駄ではなかった(?)と言える日が来るかもしれない。

最後に、なぜリフレ政策が、インフレとなるのかを明確に示しているデータを紹介しておく。

次が浜田宏一教授や岩田教授などが、よく使っている、米国や英国の中央銀行がリーマンショックから立ち直るために、マネタリー・ベースを大幅に拡大したのに対し、日銀が「金融政策の問題ではない」、と何もしなかったことを示しているグラフだ。

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期間は異なるが、次の表は歴代の大統領の在任期間中の米国の財政赤字額と、財政赤字がGDPに占める割合の推移表だ。

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出典:住商総研「Business EYE」2013年春号 7ページ

FRBの大胆な金融緩和とは、大規模かつ急激な米国政府の歳入赤字の増大に他ならない。

今度の黒田日銀の大胆な金融緩和で、マネタリー・ベースを倍増させるということは、単純に言うと日銀が追加で140兆円のお金を発行するということだ。この140兆円のほとんどは、政府の「通貨発行益」=シニョレッジ(Seigniorage)となる。

政府がどんどんお金を発行すれば、通貨の価値が下がり、当然インフレとなる。インフレと消費税アップ、そして給料アップで、モノみな上がるとなれば、国民は当然早めにマンションなどの不動産を購入したり、高額商品の購入に走るだろう。

それが結果として日本の景気回復と、成長率アップをもたらす。日本経済の規模が大きくなれば、膨れ上がった国債発行残高も返済可能なレンジになっていく。

このブログで紹介した2008年の榊原英資さんの本の様に、「強い円は日本の国益」とか言っている場合ではないのだ。

強い円は日本の国益強い円は日本の国益
著者:榊原 英資
東洋経済新報社(2008-09-04)
販売元:Amazon.co.jp


米国のようになりふり構わず、強い経済を取り戻す。それが日本が再び活性化する唯一の道だと思う。その意味で、筆者は今回のリフレ政策に賛成だ。

アメリカのニューヨーク・ダウ平均株価は、過去最高を更新している。日本の株価も、何年かかってもよいので、1989年大納会(12月29日)の日経平均38、915円を更新して欲しいものである。


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MAKERS メイカーズ 「フリー」の著者・クリス・アンダーソンの近著

MAKERS―21世紀の産業革命が始まるMAKERS―21世紀の産業革命が始まる
著者:クリス・アンダーソン
NHK出版(2012-10-23)
販売元:Amazon.co.jp

前作「フリー」を大ヒットさせた米国「ワイアード(Wired)」誌編集長、クリス・アンダーソンの近著。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
日本放送出版協会(2009-11-21)
販売元:Amazon.co.jp

Wired [US] March 2013 (単号)Wired [US] March 2013 (単号)
Conde Nast Publications(2013-02-22)
販売元:Amazon.co.jp

「MAKERS」というタイトルでもわかる通り、今度は製造業だ。

いま世界中におよそ1,000か所以上の工作スペースがあり、その数は増えている。キンコーズのような誰でも使える工作スペースを展開しているのがTechShopだ。

手作り品の職人のためのウェブ市場、Etsyでは、2011年に100万人の売り手が、5億ドルを超える取引を行った。サンマテオはじめ、各地で開催されるメイカーフェアは、どこも盛況だという。

オバマ政権は、2012年から4年間で、全国の1,000か所の学校に3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を完備した「工作室」を開くことを決定した。

オンラインを、現実の製造の世界にも持ち込めることになってきたのだ。

何千という中小のメイカーが、キックスターター(Kickstarter)をはじめとするクラウドファンディングでプロジェクト資金を調達している。

いままではオンライン・スタートアップ企業はオンラインのみのサービスが多かったが、いまやリアル世界の製造業スタートアップ企業が増えているのだ。

特に少量の小口生産品などは、企業がつくると多額の費用が掛かるが、個人で金型などを作って、製造すればむしろ企業より個人の方が競争力がある。

それを可能としたのは、3Dプリンターや、3Dスキャナーなどの情報機器と、小口でも部品の注文に応じることができるインターネット企業だ。誰でもアイデアさえあれば、製造業を始められる時代になったのだ。

立体造形できる積層式3Dプリンター 良蔵 (よいぞう)
立体造形できる積層式3Dプリンター 良蔵 (よいぞう)

3D Printer Printrbot LC キット3D Printer Printrbot LC キット
Printrbot LC
販売元:Amazon.co.jp

この本では、具体的な例として次のようなものをあげている。

★娘たちのドールハウスの家具
種類が少ない上に、高価なドールハウスの家具も、自分で3Dプリンターでつくれば、思い通りのデザインとサイズのものができる。

デザインは3Dデザイン共有サイトのThingivereseで手に入れ、3Dプリンターをつないで、「作成」をクリックすると、20分後にはドールハウス用の家具が完成したという。

ちなみにThingivereseは3DプリンターのMakerBotと提携している。

3D Printer MakerBot Replicato singletype3D Printer MakerBot Replicato singletype
MakerBot
販売元:Amazon.co.jp


★歯科矯正用のマウスピース
すこしずつ形を変えたマウスピースを2−3週間ずつ装着し、数か月かけて歯の位置を調整することができる。

専用ソフトウェアを使えば、すこしずつ形を変えて最終的な理想形まで到達するまでの中間的なマウスピースを簡単に制作できる。

★3Dプリンターでチョコレートなどを押し出してカップケーキの装飾をつくる

★バイオプリンターで幹細胞(ES細胞)の層を積み重ねて臓器をつくる
まだ実験段階だが、将来は、iPS細胞が使えるようになるだろう。

ローカルモーターズという自動車会社は、自分たちで自動車をつくりたいという2,000人がアイデア、知識を持ち寄って、一部は既存の車の部品を活用することでラリーファイターという車をつくりあげた。

次のビデオがローカル・モーターズの製造現場を紹介している。



★ローカルモーターズは国防総省のクラウドデザインによる次期戦闘用車両(XC2V)のコンテストにも優勝している。次のビデオがデザインを基にモデルを実際に手作りで仕上げている様子を紹介している。



★ブリックアームズは、レゴの正規品にはないAK−47などの現代的な武器をレゴ用につくっている。まずはCADソフトでデザインしてデスクトップの工作機械で試作品を作る。それが良ければ金型をつくって、米国国内の工場で射出成型して販売している。レゴ本社では、現代的な武器はご法度なので、こういった傍流レゴを容認している。

★BtoBでは、2000年前後に、はやったe-steelやメタルサイトなどのBtoBサイトや逆オークションなどは、ITバブルにまぎれて衰退した。残ったのはMFGドットコムという、特注品の見積もりを取るサイトだ。見積もり比較の機能はなく、入札もないが、これで十分だったという。

逆オークションについては、筆者も一時注目して、これが筆者が鉄鋼原料からIT業界に移るきっかけとなった。

CADの図面を送って、見積もりを取るだけという単機能でよかったと言われると、その通りかもしれないと思うが、こういった工業用の資材には品質の問題がある。

サプライヤーの品質が信頼できるのかどうかわからない。

それがこのブログでも紹介した中国発のBtoBサイト、アリババの問題でもある。

ちなみに、アリババの創業者・ジャック・マーは、著者のクリス・アンダーソンが初めて会った時は体重35キロくらいで、英語が抜群にうまかったという。

アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦
著者:張 剛
東洋経済新報社(2010-07-09)
販売元:Amazon.co.jp

結局はBtoBの工業用資材には簡単な調達法はないのだ。

アマゾンのジェフ・ベゾスがMFGドットコムに注目し、大株主となった。いまでは、20万人以上の会員がいて、これまでに1150億ドルの取引が行われ、ひと月の取引額は20〜40億ドルに上るという。

どんな会社でもCADファイルをアップロードすれば、見積もりを取ることができる。これは同じファイル形式を使っているから、情報伝達のロスがなくなり、取引コストが下がったからだ。

この他にも最新の事例が紹介されている。いつもながら、刺激に富む本である。


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アメリカは日本経済の復活を知っている イェール大学浜田教授の最終講義

アメリカは日本経済の復活を知っているアメリカは日本経済の復活を知っている
著者:浜田 宏一
講談社(2012-12-19)
販売元:Amazon.co.jp

安倍首相のご意見番・イェール大学浜田宏一名誉教授の「最終講義」。

浜田さんは1954年に湘南高校を卒業して東大法学部に入学し、卒業後経済学部に学士入学した。その後大学院の修士課程に進み。館龍一郎教授のアドバイスで、フルブライト留学生としてイェール大学のジェームズ・トービン教授に学んだ。その後東大教授を経て、イェール大学で長く教鞭を取っている。

この本を出版する直前に、安倍自民党総裁から衆議院選挙に臨むうえでの政見について国際電話で相談を受け、「安倍総裁の政見は正しいので、自信を持って進むように」とアドバイスしたことを明かしている。浜田教授と安倍首相との親密さがわかるエピソードだ。

この本は、以前紹介した「伝説の教授に学べ」の、続編のような位置づけで、前著の冒頭に載っていた白川日銀総裁への公開書簡の顛末を紹介している。

伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本
著者:浜田 宏一
東洋経済新報社(2010-06-25)
販売元:Amazon.co.jp

白川総裁と日銀審議委員に「伝説の教授に学べ!」を献本したところ、白川総裁は「自分で買います」という返書をつけて送り返してきたという。

白川総裁の対応は、大人げないように思えるが、公開書簡が白川総裁の気に障ったのだろう。

浜田教授は、「人は『ノーベル経済学賞候補者の一人』と持ち上げてくれるが、教え子である白川総裁を正しく導くことができなかった。とてもそんな資格はない」と語る。

「日銀は、アダム・スミス以来200年の経済学の普遍の法則を無視して、世界孤高の『日銀流理論』を振りかざし、円高を招き、株安をつくり、失業や倒産を生み出している」。

金融政策をうまく使えば、日本経済が苦しむデフレ、円高、不況、空洞化といった問題が解決できるのに、金融政策を独占する日銀が金融政策を使うのを拒否している。

だから、ズバリ、「20年もの間デフレに苦しむ日本の不況は、ほぼすべてが日銀の金融政策に由来するものである」と結論づけている。


この本の目次

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、なんちゃってなか見!検索で、章題だけを紹介しておく。実際の目次は、サブタイトルまですべて掲載されているので、目次だけで8ページもある。

序章  教え子、日銀総裁への公開書簡

第1章 経済学200年の常識を無視する国

第2章 日銀と財務省のための経済政策

第3章 天才経済学者たちが語る日本経済

第4章 それでも経済学は日本を救う

第5章 2012年2月14日の衝撃

第6章 増税前に絶対必要な政策

第7章 「官報複合体」の罠

終章  日本はいますぐ復活する


全体の要約

目次では、内容が推測しづらいので、全体を要約しておく:

デフレ脱出のために、インフレターゲットを設定して、金融緩和をするのが経済学の通説・法則であり、世界中の経済学者や日本の心ある経済学者は、日銀がなぜそれをやらないのか不思議に思っている。

日銀は経済学の法則からかけ離れた「日銀理論」を持っており、自らをインフレの番人として、インフレ対策は熱心に行うが、デフレは軽く見て、リーマンショックの後でもほとんど何もしなかった。

他方米国や英国は、FRBやイングランド銀行のトップに著名な経済学者を据え、経済学の法則に従って、急激にバランスシートを拡大し、大幅な金融緩和を実施した。

その結果、何もしない日本は円高となり、産業の競争力が失われ、株式市場は低迷を続けた。サブプライムローンに端を発した世界同時不況により、本来サブプライムローン問題とは無縁の日本経済が、最も大きなダメージを食らった。

これはひとえに、日銀がデフレの唯一の対策である金融緩和を推し進めなかったからだ。浜田教授は元教え子の白川総裁に公開書簡まで発表して、「歌を忘れたカナリア」からの脱却を求めたが、日銀は無視して何も動かなかった。

しかし、2012年2月14日のバレンタインデーに日銀はインフレ1%を「目途」とすると発表した。とたんに市場の「期待」は変わり、円高と株高に転じた。ところが、日銀は1%と発表しただけで、実際には強力な金融緩和を実施しなかったので、日銀のバレンタインデー発表は「義理チョコ」に終わった。

自民党の安倍総裁は、経済法則をよく理解し、浜田教授他の「リフレ論者」のアドバイスに基づいて、2%のインフレ目標と、日銀法改正も辞さないことを、2012年末の衆議院選挙前に発表した。とたんに市場の「期待」が変わり、円は75円から95円、株式市場は8,000円台から、12,500円にまで回復した(2013年3月中旬現在)。

浜田教授らの主張するリフレ政策、通称「アベノミクス」は正しい経済学の法則に基づく政策であり、正しい金融政策を取れば、日本経済は必ず復活することを、世界は知っているのだ。


60人を超える世界の経済学者などにインタビュー

浜田教授は学究生活の集大成として、日米の政治家、中央銀行関係者、政策当事者、学者、エコノミスト、ジャーナリストなど60人を超える人にインタビューを行った。

その中にはグレゴリー・マンキューウィリアム・ノードハウスマーティン・フェロドシュタイングレン・ハバードベンジャミン・フリードマンデール・ジョルゲンソンロバート・シラーなどの泰斗が含まれる。

日本では安倍晋三堺屋太一竹中平蔵中原伸之黒田東彦岩田規久男岩田一政伊藤隆敏などだ。

外国人学者のほとんどすべて、そして尊敬すべき日本人学者は、日本経済が普遍の法則に則って運営されさえすれば、直ちに復活し、成長著しいアジア経済を取り込み、再び輝きを放つことができることを知っている。それゆえ、この本のタイトルを「アメリカは日本経済の復活を知っている」としたのだ。


民主党政府の閣僚たちは「ヤブ医者」の群れ

「ヤブ医者」としてここで挙げられているのは、円高論者の藤井裕久、与謝野馨、「増税すれば経済成長する」と語った管直人、「利上げすれば経済成長する」と語った枝野幸男、野田佳彦、「経歴から見て財政とは無縁な素人、安住淳」などだ。

このブログでも紹介した藻谷浩介の「デフレの正体」で、デフレの原因は人口減少だとする説は、「俗流経済学」と片づけられている。日銀はこれをデフレの原因としたいようだが、人口をデフレに結びつけるのは、理論的にも(金融論)実証的にも(国民所得会計)、根拠のないものだと切り捨てている。

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
著者:藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-06-10)
販売元:Amazon.co.jp

人口減少は、経済学の率直な議論からすれば、インフレの原因ではあっても、デフレの原因とはなりえないと。


この本のグラフが参考になる

一般的な経済書は、グラフや表が多数使われているが、この本では10のグラフが使われているのみだ。

ゲーム理論の国際金融論への応用で、ノーベル賞候補にも挙げられる浜田教授だが、グラフを使って説明するのが得意ではないようだ。しかし、少ない10のグラフだけ見ても、浜田教授の主張のポイントが理解できる。

「伝説の教授に学ぶ!」にも紹介されていた、リーマンショック後に金融緩和をしない日銀と、金融緩和して急激にバランスシートを拡大したイングランド銀行やFRBを対比したグラフのアップデート版を紹介している。中国や韓国も欧米ほどではないが、バランスシートを拡大している。一方、日銀は何もしていないということがわかる。

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出典:本書99ページ

このため、為替は円の独歩高となった。最近は人民元も強くなってきているが、バランスシート拡大と円高とは、逆相関関係にあることがわかる。

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出典:本書99ページ

この本には「ソロスチャート」と呼ばれる図を使って、「2国間の為替レートは、両国の通貨量の比率によって決まる」という法則を紹介している。これはまさに白川総裁がシカゴ大学で勉強して持ち帰った「国際収支の貨幣的接近」と同じものだと。

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出典:本書102ページ

各国の2000年からの11年のGDPは次のようなグラフとなり、韓国、中国が台頭し、先進国では金融緩和に踏み切った英国と米国が良いパフォーマンスを示している。

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出典:本書49ページ

リーマンショック後の日米欧の鉱工業生産指数では、サブプライムローンでは本来無傷なはずの日本が、最もダメージを被っていることがわかる。

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出典:本書69ページ

上のグラフと、次の日米欧の実質実効為替レートの推移表を比較すると、円高の独歩高が日本経済に大変なダメージを与えていたかことがよくわかる。

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出典:本書69ページ

円がドルに対して30%強くなり、韓国ウォンは対ドルで30%安い。合計60%ものハンディがあれば、到底競争できない。電機メーカーの競争相手は韓国企業だ。たとえば、メモリメーカーのエルピーダメモリは、日銀につぶされたようなものだと浜田さんは語る。


日銀のバレンタインデー「義理チョコ」金融緩和

上記の日銀のバレンタインデーの「義理チョコ」金融緩和を示すグラフが紹介されている。

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出典:本書33ページ

これを見ると、日銀はインフレ「目途」を1%と発表していながら、発表後半年の間、買い入れ資金の5兆円増加を除いては、なんら金融緩和をしていないことがわかる。

一方、FRBは2012年9月からアメリカの弱点である住宅市場で、毎月400億ドルの規模の住宅ローン担保証券を買い上げることを決めた。これがQE3として知られるものだ。

さらに本書発刊後の2012年12月、FRBは追加で毎月450億ドルの米長期国債を購入する追加金融緩和策を発表した

合計850億ドルもの金融緩和策で、米国の株式市場は史上最高値を記録し、米国経済はシェールガスによるエネルギー自給の見込みが出てきたことから、活況を取り戻しつつある。

また日本は、浜田教授のアドバイスに従って2%のインフレターゲットをアベノミクスの根幹政策として打ち出しているので、円安、株高で景気回復感が出ている。

浜田教授は、小泉首相時代に小泉首相と会って、「デフレを脱却するには、予想と期待形成が重要」と伝えたそうだ。現在は、まさにそのもくろみ通り「インフレ予想と期待」が見事に形成されている。


次期日銀総裁の有力候補

この本で浜田教授は、次期日銀総裁候補として次の人たちを挙げている。やや連発しすぎのきらいはあるが、いまやキングメーカーとなった浜田教授ゆえ、挙げられた人が日銀総裁・副総裁に就任しているのは、さすがだ。

★岩田規久男 学習院大学教授(新任日銀副総裁)
金融論が専門で、日銀のデフレ政策をいわば四面楚歌の中で、長年批判しつづけた。

岩田規久男教授の「日本銀行は信用できるか」は読んだ。FRBと日銀の対比や、インフレターゲット政策を採用した国のパフォーマンスの伸びなどを紹介している。

日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)
著者:岩田 規久男
講談社(2009-08-19)
販売元:Amazon.co.jp


FRB(FOMC)の顔ぶれ:2名のMBAを除き博士号を持っている人ばかり

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日銀政策委員会顔ぶれ:「女性枠」、「産業枠」があるという

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インフレターゲット政策を採用した国のパフォーマンスの変化

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以上3点の出典はすべて「日本銀行は信用できるか」

「日本銀行は信用できるか」は2009年の本なので、あらすじを紹介していない。現在、岩田規久男教授の近著・「日本銀行 デフレの番人」を読んでいるので、近々あらすじを紹介する。

日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)
著者:岩田 規久男
日本経済新聞出版社(2012-06-09)
販売元:Amazon.co.jp

★岩田一政 日銀政策委員

★黒田東彦 アジア開発銀行総裁

★伊藤隆敏 東大教授 インフレ・ターゲット論者

★堺屋太一 元経済企画庁長官

★竹中平蔵慶応大学教授


そのほかの特記事項

この本は、そのほかにも大変参考になる情報が紹介されている。あまり詳しく紹介すると長くなりすぎるので、特記事項として要点だけ紹介しておく。

★小泉首相は、福井前日銀総裁の就任時に、デフレ脱却を約束させたが、就任から3年たって、福井総裁は、約束を反故にして引締めに転じた。

★クルーグマンの処方箋
クルーグマンは、「お金をものすごい勢いで印刷し続けると約束すること。そこには将来の期待が大いに影響する」、「自分であれば、まずインフレターゲットを発表する」と語っている。

★日銀はインフレに対するトラウマが大きい。インフレと闘うことが仕事と思い込んでいる。日銀法では、物価の安定が唯一の目標とされ、日銀の独立性で、手段を勝手に決めることができ、結果についても責任を問われない。

ほとんどの国では、雇用の維持や経済成長の維持などが金融政策の目的に定めている。中央銀行に自主性が与えられるのは、それらの目標を達成する手段として何を選ぶかだけだ。

だから、日銀法を改正して、インフレ目標の導入や、雇用の維持を目的とすることなどを追加しようとの論議が起こっている。

★日本は「金持ち母さんと貧乏父さんの国」
浜田教授はベストセラーのタイトルになぞらえて、国民が1,500兆円の資産を持つ一方、政府が1,000兆円の国債を発行している日本は、「金持ち母さんと貧乏父さんの国」だと言っている。

金持ち父さん貧乏父さん金持ち父さん貧乏父さん
著者:ロバート キヨサキ
筑摩書房(2000-11-09)
販売元:Amazon.co.jp

★消費税で癒着する財務省と新聞社(「官報複合体」)
新聞社は新聞に軽減税率を適用してもらおうという下心があるので、消費税増税に賛成なのだと。

★池上彰の「日銀を知れば経済がわかる」はもともと日銀の広報誌「にちぎん」の連載だった。

日銀を知れば経済がわかる (平凡社新書 464)日銀を知れば経済がわかる (平凡社新書 464)
著者:池上 彰
平凡社(2009-05-16)
販売元:Amazon.co.jp

池上さんの本によるとデフレ脱却法は、「みんなでがお金を使えば、その日から景気が良くなる」だ。しかし、どうやってみんながお金を使うようになるのかの視点が欠けているので、浜田教授はこれでは不十分だという。

「池上彰のやさしい経済学1.&2.」にも制度の仕組みはわかりやすく書いてある。しかし、なぜデフレや円高がおこるのか、不況から脱出する方法は何かなどは書いていないので、やはり不十分だと。

池上彰のやさしい経済学―1 しくみがわかる池上彰のやさしい経済学―1 しくみがわかる
著者:池上 彰
日本経済新聞出版社(2012-03-24)
販売元:Amazon.co.jp

このブログでも「池上彰のやさしい経済学」を紹介している。内容は、経済学史という感じで、歴代の著名な経済学者の学説を紹介しているもので、筆者は、大学の経済学の授業とはこんなものではないかと思う。

浜田教授の要求レベルは、正統派経済学者でなく、いわばストリート・エコノミストの池上さんには高すぎるような気がする。

筆者は池上さんの本は、あれはあれで教養過程の経済学の教科書として十分な内容ではないかと思う。

浜田教授が「最終講義」というだけあって、非常に充実した内容である。筆者自身は「経済学の普遍の法則」というものが本当にあるのかどうか正直疑問を感じる。

単に「多数派の意見」ということではないかと思うが、ともあれ「アベノミクス」による変化をみれば、浜田教授の議論は説得力があることは間違いない。

2013年になって、読んでから買った本の第2号だ。


参考になれば次クリック願う。





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