時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2013年03月

作文の技術 元・朝日新聞編集局長のバーチャル文章教室

「伝わる文章」が書ける作文の技術 名文記者が教える65のコツ「伝わる文章」が書ける作文の技術 名文記者が教える65のコツ
著者:外岡秀俊
朝日新聞出版(2012-10-19)
販売元:Amazon.co.jp

元・朝日新聞東京本社編集局長の外岡秀俊さんが、懇切丁寧におしえてくれるバーチャル文章教室。

この本の帯は次のようになっており、添削してもらった読者の感謝の声が紹介されている。

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添削の実例はこんな感じだ。

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出典:本書224ページ


作文の技術を学びなおすのに最適

実は筆者は、2008年秋から会社の総合研究所の季刊誌の書評コーナーで、毎回違ったテーマの本を3冊ずつ紹介していた。

これが思いのほか長く続き、ネタ切れもあって苦しんでいたところ、別コーナーの担当者が転勤するためページ数を減らすので、書評コーナーも取りやめたいとの話が寄せられ、実はホッとしていた。

自分の書いた書評の品質に満足できなかったからだ。

筆者の性格の問題なのだが、締め切りが決まっていても、どうしても締め切り前に出すことができない。毎回、締切を過ぎてから原稿を提出していた。

自分ではうまく書いたつもりになっていたが、印刷された文章を後から見直すと、「こうすればよかった、ああすればよかった」と思うことが、最近多くなっていた。

筆者の原稿は、テレビにコメンテーターとして登場したこともある著名人の総合研究所長の先輩に、毎回添削していただいていた。その先輩の添削が、実に的確なのだ。

自分では十分推敲したつもりだが、先輩に添削してもらえるからと、安きに流れ、推敲不足の原稿を提出していたのではないかと、反省している。

その反省から、自分の文章力をもう一度ブラッシュアップすべく、年末年始にかけて10冊ほど文章読本的な本を読んでみた。

結論として、ハウツーものであれば「伝わる!文章力が身につく本」がよい。

伝わる!文章力が身につく本伝わる!文章力が身につく本
著者:小笠原 信之
高橋書店(2011-01-29)
販売元:Amazon.co.jp

「文章力をアップさせる80の技術」は、クイズ形式となっている点がよい。

文章力をアップさせる80の技術―「わかりやすい」に「うまい」をプラスする文章力をアップさせる80の技術―「わかりやすい」に「うまい」をプラスする
著者:江藤 茂博
すばる舎(2001-09)
販売元:Amazon.co.jp


今回読んだ中で最もすぐれていると思った文章読本がこれだ。


投稿文を題材に

多くの文章読本は、単純な例文や、新聞の記事、小説などを題材にしている。しかし、単純な例文は、いかにもつくり物という感じで、現実味が薄い。新聞の文章は、独特の表現だったり、極端に切り詰めていたりしていて、手本としてふさわしくない。また、小説は美文を目指すあまり、一般的な表現から離れた構文や語句の使い方をしており、決して題材としてはふさわしくない。

一方、この本はインターネットで「文章教室」として400字のエッセイを募集して、中学生から高齢者までの一般読者から寄せられた168編の応募作を題材として添削している。

単純な例文ではないので、現実味がある。プロの文章ではないので、自分にあてはめやすく、外岡さんの添削がなるほどと納得できる内容となっている。


すぐれた構成

この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、ここをクリックして目次を見てほしい。

基本編(1文を簡潔に書く)47項目、応用編(伝わる文章を意識する)16項目、実践編(頼んの文章に学ぶコツ)2項目という構成で、基本に力を入れていることがわかると思う。


基本編の特記事項

基本編で参考になったポイントは次の通りだ。

1.1文を短くする
2.複文を単文にする
3.読点(、=カンマ)を句点(。=ピリオド)にする


すべて同じことで、要は長い複文を句点で区切って、短い単文にすることだ。単文にするだけで、驚くほど読みやすい文章になる。

6.主語を明確にする
7.主語の転換
8.「かかる言葉」は、近くに置く


すべて主語と述語の関係を言っている。ながながと文章を書いていると、主語が明確でない場合が多い。主語を明確にして、述語は主語の近くに置けば、よみやすい文章となる。

12.受け身表現を避ける

14.符号の使い方

”○○”は使わず、「○○」とする。【追記】とか(○○)はできるだけ使わない。

16.地の文の「思い」をカッコでくくる

これは書き手の「思い」が語られている場合には、その部分をカッコでくくると、読みやすくなる。たとえば「なんでこうなんだ」とか、「子供が大きくなるまでは」というような場合だ。

17.同じ言葉は省く
18.重言を避ける


「馬から落ちて落馬する」という有名な表現がある。言葉にニュアンスが含まれている場合も、重複を避ける。たとえば、「人が羨むような理想のライフスタイル」⇒「人が羨むようなライフスタイル」というような例だ。

21.形容詞をデータに置き換える

これも大変参考になる。ちょっと長くなるが例文を引用する。

「中学生3人は、鉄橋の半ばまで差しかかったとき、突然、後ろから列車が迫ってくるのに気づいた。時速100キロの特急の運転士は警笛を鳴らし、急ブレーキをかけた。しかし3人は鉄橋の上で次々と跳ね飛ばされ、即死した。」



「中学生3人は、長さ80メートルの鉄橋の真ん中にいた。前後ともに40メートルだ。列車は秒速28メートルで、運転士が気づいてから少年たちの場所まで4秒で進む。五輪選手並みの速度でなければ逃げられなかった。3人は次々跳ね飛ばされ、即死した。」

これは外岡さんの亡くなった元同僚の記者の記事だ。最初の通報から「なぜ中学生は逃げ切れなかったのか」という疑問がわいて、現場に行って詳しく調べて書いた記事が改善例の文章だ。

外岡さんは、この記事のコピーを保存して、ときおり読み直している。「形容詞をデータに置き換える」を心がけているのだと。

ちなみに、筆者の実家の江ノ電の鵠沼駅から江の島方面に向かうところに50メートルほどの鉄橋がある。鉄橋を歩くと近道なので、筆者が子供のころは、女性でも男性でも鉄橋を歩いて渡っていた人がいた。

ネットで鉄橋の当時の写真を公開している人がいるので、紹介しておく。

江ノ電1967年








出典:おでかけ通信:blog版 江ノ電1962年(ブログ記事)

江ノ電は単線で12分間隔なので、下りの電車が通ったら、上りの電車が来るまでに7−8分くらい時間がある。そのタイミングを見て歩くのだ。写真でもわかる通り、到底人が歩くような鉄橋ではない。江ノ電は鈍足なので、最悪電車が停まってくれたが、危ないことをしていたものだ。

22.常套句を疑う

「ニコニコした」、「バタバタだった」とか、容疑者は「カツ丼をぺろりと平らげた」、「口をあんぐりさせた」、「あっけらかんとした表情で」、「言葉少なに語った」等、いずれも臨場感のない、ありあわせの言葉だ。

23.読み手に「手がかり」を残す

「オリジナルなふたりらしいいい式でした」⇒「型にとらわれない二人らしいユニークな式でした」

25.体言止めは使わない

ぞんざいな印象や、なれなれしい感じを与えかねないので、使う場合は、ここぞとい思う場合だけに限る。

27.「上中下」は必要か

「教育上」、「会話の中」、「環境下」などの「上中下」は省ける。

30.基本動詞はひらがなで書く(「いう」、「ある」、「ない」等)
31.ひらがなの「連鎖」を断つ
32.「…。」派 VS 「…」。派(外岡さんは「…」。派)

35.「ナリチュウ」表現を避ける

報道番組などで、「成り行きが注目されます」という常套句がある。これが「ナリチュウ報道」だ。主語があいまいで、意味が不透明。責任の主体をはっきりされるべきだ。

BBCはフォークランド紛争の時に、「英軍」、「アルゼンチン軍」と呼んで、サッチャー首相を激怒させた。「わが軍」、「敵軍」と呼ぶべきだと。しかし、BBCは最後まで報道スタイルを貫いたという。

36.強い「のだ」は控えめに

筆者も反省しなければならない。外岡さんは、文章には「緩急」を考えるべきだという。「のだ」は「急」を代表する強い表現なので、連発すると読み手の息が詰まる。「ここぞ」という場所に、一つだけ使う方が効果的だ。

39.引用はカッコで示す
41.「敬語」よりも「敬意」を

45.2字の動詞を減らす

朝日新聞で「記事をやさしくする委員会」が設けられ、記事の改善の筆頭に挙げられたのが「2字の漢字を使う動詞を減らす」ことだったという。

「消失して」⇒「消えて」、「悪化し」⇒「悪くなり」、「該当する」⇒「当たる」等。

47.オノマトペに工夫を

赤ちゃんの表現で、見事な例文を紹介している。「にぱー」(笑い顔)、「とぅるとぅるの肌」。オノマトペとは、「ニャーニャー」などの擬音語と、「ツンデレ」などの擬態語の総称だ。

他の文章読本でよく紹介されている間違いやすい表現は、1ページにまとめられている。

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出典:本書156ページ

応用編の特記事項

1.タイトルをつける
2.「段落替え」では一字下げる


一字下げて、文章のリズムに緩急をつける。
3.まず「設計図」をつくる

あらかじめ段落ごとに要点をメモしておき、その原型から枝葉を茂らせて文章をつづる。

13.ピントを合わせる



実践編の特記事項

「伝わる文章」に最も欠かせないものは、さまざまな読み手を想定した、相手に対する「誠意」だと外岡さんは語る。

「誠意は伝わる」のだ。

読んでからしか買わない筆者が、2013年に買った本の第1号だ。文章読本は数多いが、中途半端なものを何冊も読むよりも、これ一冊を読んだ方が良い。大学に受かった次男にもプレゼントした。

簡単に読める内容なので、すぐに役に立つと思う。


参考になれば次クリック願う。




伝説の教授に学べ! 安倍首相の指南役・浜田宏一教授の講義

伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本
著者:浜田 宏一
東洋経済新報社(2010-06-25)
販売元:Amazon.co.jp

今や安倍首相の指南役として、安倍政権の政策のアドバイザー的な地位にある内閣官房参与・エール大学名誉教授の浜田宏一教授と、早稲田大学の若田部教授、それとカツマーこと勝間和代さんの鼎談(ていだん。3者会談)。

勝間さんは、経済学者ではないがインフレターゲット論をいくつかの著書で展開している。

日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)
著者:勝間 和代
光文社(2010-02-17)
販売元:Amazon.co.jp

実際にデフレで苦しんでいる人たちの観点から経済をみることこそ、経済学の原点だと勝間さんの著書に教えられたと浜田教授は語っている。勝間さんの著書が、この鼎談のきっかけとなった。

浜田教授の安倍政権の政策に対する影響力については、最近の「ダイヤモンド」誌のインタビューが参考になる。

アマゾンのなか見!検索に対応しているので、ここをクリックして。目次の前に載っている浜田教授から日銀の白川方明総裁にあてた2010年6月の公開書簡を見てほしい。

この公開書簡は、浜田教授が昔の教え子の一人の白川総裁に向け、日銀を強く批判したものだ。

日銀は金融システム安定化や信用秩序維持だけを心配して、その本来の重要な任務であるマクロ経済政策という「歌」を忘れたカナリヤのようなものだと説く。

”不適切な金融政策で苦しみを味わっている国民のこと、産業界のことを考え、あえてお手紙する決心を致しました。”

”白川君、忘れた「歌」を思い出してください。お願いです。”という言葉で締めくくっている。

この本を読むまでは、日銀の「不作為による作為」により、デフレ解消が長引き、円高のために日本の産業界が大きなダメージを受け、日本経済の成長が止まっているとは筆者は考えていなかった。

しかし、次のようなグラフを見せられるとなるほどと思う。

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出典:本書35−37ページ

これらのグラフは、この本が完成する直前に亡くなった浜田さんの元同僚・内閣府経済社会総合研究所の岡田靖さんだという。他の主要国のドラスティックな金融政策に比較して、日銀はなにもしなかったといえるほど動きがないことがよくわかる。

白川総裁は、「日銀のバランスシートはもともと大きい」と言っているが、その発言が、官僚の責任逃れとしか思えないようなグラフだ。

浜田教授は、リーマン・ショックの震源地ではない日本が、震源地以上の被害を受けたのは、日銀が金融政策を怠っていたという理由以外には考えられないと語る。

日銀は、自分たちの政策が、人びとの経済状態に影響を与えるという認識が不足していると手厳しい。

たしかに2009年当時、サブプライム・ローン問題には最も縁遠い日本が、急激な経済の落ち込みを経験した。

筆者は、当時は、統計に表れる輸出以外にも、日本国内の取引でも(たとえばトヨタの系列部品会社からトヨタへの販売取引など)最終的に輸出に向けられるものが多いので、日本経済が大きな影響を被ったと思っていた。

この本の浜田教授による日銀批判を読んで、ひょっとすると日銀がデフレを野放しにしていたことが、日本経済の低迷に大きな影響があったのではないかという風に思えてきた。

現に、昨年10月頃から安倍現首相が、自民党が復権したら日銀の政策を変えさせると公言すると、一挙に流れは変わり、円安ー株高という基調に変わった。

株価が上がったことにより、国民全体の意識も変わりつつあり、青息吐息だった日本のエレクトロニクス業界なども元気が出てきている。

浜田教授の主張通りに物事が動いてきている。

浜田教授は、別ブログで著書を紹介した元・財務省の高橋洋一さんの「この金融政策が日本経済を救う」を高く評価している。

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)
著者:高橋洋一
光文社(2008-12-16)
販売元:Amazon.co.jp

”すばらしい本で、高校生を対象にすると書いてあるだけあってとてもわかりやすく、みなさんにお勧めします”と推薦している。

今回、日銀総裁、副総裁の候補として、伊藤隆敏東大教授の名前が挙がっている。

伊藤隆敏教授は、2008年に日銀副総裁候補に挙がっていたが、当時の民主党が伊藤教授がインフレターゲット論者だという理由で、拒否した。

そのことが、いまのデフレと混迷を招いた遠因にもなっていると浜田教授は語る。伊藤教授は、論文でも議論で世界の一流経済学者と太刀打ちできる数少ない日本の国際レベルの経済学者の一人だという。

安倍政権の2%のインフレ率を目指す金融政策ならば、伊藤隆敏教授の出番もあるかもしれない。

ここをクリックして目次を見ていただきたいが、日銀批判以外には、浜田教授の経歴、早稲田大学の若田部教授による昭和恐慌と現在の比較などを紹介している。

浜田教授は、日銀はまるで「さるかに合戦」のサルだという。将来柿の木が育って、柿の実がなると国民をいいくるめて、おむすび(雇用や生産)を取り上げてしまっているのだと。

こうまで言われて日銀もアタマに来ているのだと思うが、いまや時代の流れは、浜田教授の方に向いている。

日銀批判本はやはり副総裁候補として名前が挙がっている学習院大学教授の岩田規久男さんの本などもある。

日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)
著者:岩田 規久男
講談社(2009-08-19)
販売元:Amazon.co.jp

日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)
著者:岩田 規久男
日本経済新聞出版社(2012-06-09)
販売元:Amazon.co.jp

この本は、浜田教授と若田部教授が、経済学者ではない勝間さんに講義するという内容なので、平易でわかりやすい。

日銀を擁護する人を入れると、議論の幅がさらに増したのではないかという気もする。なぜ日銀の白川総裁がこうまで批判されているのかが、よくわかり、参考になる本である。


参考になれば次クリック願う。





世界で勝たなければ意味がない 36歳の日本ラグビー代表GMの決意

世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ (NHK出版新書 392)世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ (NHK出版新書 392)
著者:岩渕 健輔
NHK出版(2012-11-07)
販売元:Amazon.co.jp

最近出版されたラグビー日本代表GMの岩渕さんの本を読んでみた。岩渕さんは現役時代「天才スタンドオフ」と呼ばれたスター選手で、青山学院2年生の時に全日本入りし、ケンブリッジ大学に留学して卒業後、イギリスとフランスのプロチームでもプレイした経験がある。

アマゾンの表紙写真だと味気ないが、書店で売っている本には次のような帯がついている。

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筆者も昔会社のチームでラグビーをやっていた。昨年のワールドカップを除いて、最近はラグビーの試合を見ることも少なくなっていたので、この本は現在のラグビー日本代表がどういう立場にいるかわかって参考になった。

最近のラグビー界の世界ランキングは次の通りで、日本は16位にいる。地図は世界の主なプロリーグだ。

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出典:本書 25ページ

トップは「ハカ」と呼ばれるアボリジニのWar cryで有名なニュージーランドのオールブラックスだ。



日本代表の過去7回のワールドカップでの戦績は次の通りだ。

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出典:本書 28ページ

つまり日本代表は1991年の第2回大会でジンバブエに勝って以来、一度も勝ったことがない。2011年の第7回大会では、カナダに勝っていたが、終了直前に追いつかれてドローに終わったことは以前このブログで書いた通りだ


岩渕さんの経歴

岩渕さんは1975年生まれ。ラグビーをやっていたお父さんの影響で、ラグビーに親しみを感じていた。通っていた青山学院初等部にはラグビー部しかなかったので、生徒たちはみんなラグビーをする環境にあったという。

小学校4年生のころ、お父さんに連れられて香港で7人制ラグビーの香港セブンスの大会を見て、自分も将来世界で戦ってみたいと思ったことが、ラグビーを本格的に始めるきっかけとなった。

中学・高校と青山学院大学の付属校でラグビーをして、都大会では國學院久我山とぶつかって2年、3年と連続して優勝はできなかった。

青山学院大学に進学してもラグビーを続けたが、授業の関係で土日しかグラウンドにいけないこともあり、それを補う意味でジムでトレーニングをしたという。大学2年で日本代表に呼ばれ、控えのスタンドオフとしていくつかの試合に出場した。

7人制ラグビーの日本代表にも呼ばれ、1995年の香港セブンスにも出場した。大学卒業時には英国ケンブリッジ大学への留学が決まっていたが、神戸製鋼に短期間入社してから、ケンブリッジに留学した。

ケンブリッジでもラグビー部に所属し、卒業後2000年にサラセンズというプロチームに入団した。ケガの関係で、実質2年半くらいしかプレイできなかったが、Aチームで2試合程度、他はBチームで20試合くらい年間でプレイしていた。Aチームに出られない理由として、実力もさることながら、外国人枠がリザーブを含めて2名のみということで、枠が限られていたこともあるという。

入団当時のサラセンズの監督は、南アフリカ人のフランソワ・ピナールだった。1995年のワールドカップ南アフリカ大会で、南アフリカが優勝した時のキャプテンで、映画「インビクタス」でマット・デイモンが演じている。



フィジカル面での強化のために、ウェイトリフティングのスナッチやクリーン&ジャークをトレーニングに取り入れ、全身のバネを鍛え、瞬発力をつけていたという。

2005年にサラセンズを退団し、フランスのプロチームで1年過ごし、2006年に帰国してトップリーグに次ぐリーグに属するセコムラガッツにコーチ兼選手として加わった。

2007年から7人制日本代表チームのコーチとなり、2008年には香港セブンスに臨んだ。2009年にはセブンスのコーチを務めながら、日本代表ハイパフォーマンスマネージャーとして日本代表チームの強化にもかかわることになる。

そして2012年1月に日本代表GMに就任した。


日本代表GMの役割

GMの役割は、ヘッドコーチやチームマネージャーと連携して、各世代の日本代表の強化計画を打ち出し、それにしたがってプランを実行し、成果を随時チェックしていくことで、日本ラグビー界全体のレベルアップを達成することだ。

日本代表には、年齢制限のない15人制代表チームのほかに、若手育成プロジェクトの「ジュニア・ジャパン」、年齢制限のあるU20、U17(ユース)、U18(高校代表)、7人制日本代表、「セブンズ・アカデミー」、そして女子の15人制と7人制の代表チームがある。

代表チームにはヘッドコーチをはじめとするコーチ、トレーナー、ドクター、チームマネージャーなど11人のスタッフがいる。そのほかの代表チームも5〜8人のスタッフがいるので、全体で50名程度のスタッフがいる。

これらのスタッフの任命、合宿や遠征などの強化スケジュール策定、そして予算決定がGMの仕事だ。


2019年日本ワールドカップまで時間がない

いままで2019年の日本でのラグビーワールドカップ開催まで、だいぶ時間があると思っていたが、この本を読んで、それほど時間の余裕はないことがわかった。

ラグビーのワールドカップはオリンピックとFIFAワールドカップに次ぐ、世界第3位のスポーツイベントだ。2011年のニュージーランドワールドカップは、観客135万人、世界207の国と地域でテレビ放映され、視聴者は述べ39億人というビッグイベントだ。

2015年のイングランドで行われるワールドカップへの日本の出場権はまだ決まっていないし、2019年の自国開催のワールドカップ自体も日本の出場権は決まっていないのだ。

一方、7人制ラグビーが2016年リオ・オリンピックから正式種目になった。リオ・オリンピックの前に、2013年にワールドカップセブンスが開催されるので、男女とも出場すれば、オリンピックの前に人気を盛り上げることができるだろう。


日本代表の強化

代表チームの活動期間は合宿やテストマッチで4−6月と11月の合計100日程度だという。残りの250日を選手にどう過ごしてもらうのかが、日本代表が勝つために最も重要な点であると岩渕さんは語る。

日本の場合は、大学ラグビーの人気が依然として高く、数万人の観客が動員できるが、代表チームのテストマッチでは観客が5,000人ということもある。だから大学ラグビーのトップスターなどは、代表になることにあまりインセンティブがない。

トップリーグでも一時期は、選手を出してケガでもされたら困るということで、代表に選ばれても辞退するということがあったが、岩渕さんはヘッドコーチのエディ・ジョーンズと一緒に各チームとコミュニケーションを取っているので、現在はサポートが得られているという。

サッカーと違い、ラグビーの代表チームでは戦術・技術面のみならず、体力強化のためのフィットネストレーニングも取り入れる必要がある。スクラムの強さや、フィジカルの強さという世界との差を縮める努力が不可欠なのだ。

相手チームも、サモアやトンガ、フィジーなどは、ヨーロッパで活躍している選手もいるので、パシフィック・ネーションズカップなどで対戦する選手と、ワールドカップ本番で当たる選手とは全く異なる陣容となっているという。

ワールドカップ前の試合の戦績は判断材料にならないのだ。

マッチメーキングについても問題がある。ラグビーのテストマッチ(国際試合)はIRB主導で決める試合があり、何年か先まですでに決まっているという。特にトップレベルのニュージーランドやオーストラリアは、すでに2019年の日本ワールドカップまで試合日程は決定済みだ。

かつてのようにオールブラックスが日本に来日するということは、2019年までないことが決定している。

とはいえ、岩渕さんもIRBへの働きかけを通して、2013年にはウェールズ来日、2016−2018年には強豪チームとのテストマッチを組んでいるという。

日本代表が自信を持つために、具体的な目標として2015年のイングランド大会ではトップ10、2019年の日本大会ではトップ8を掲げている。


トップ8入りを目指して

順位を上げるためのターゲットは、現在9〜14位にいるイタリア、スコットランド、トンガ、フィジー、サモアの5か国だ。これらの国とワールドカップの年に必ず開かれるパシフィックネーションズカップやワールドカップ本番で勝つことが、日本の順位アップにつながる。

逆にいうと、テストマッチの予定がすでに組まれているので、これらの国とテストマッチを組むことは難しいのだ。

ランキングが上がれば、上位国と対戦できるが、ランキングが下のままでは、強いチームとは戦えない。だから2015年のワールドカップでトップ10に入ることが、2019年日本大会への準備という意味でも重要なのだ。

その意味では2012年に来日し、また2013年にも来日するフランスの各チーム選抜のフレンチ・バーバリアンズは、各国の代表選手が含まれており、強化試合として重要なのだという。



つい先日2015年のワールドカップの組み合わせが発表されたところだ。これによると、アジア一位になれば、南アフリカ、サモア 、スコットランド、米州2位のプールBに入れるが、もしアジア一位になれず、 敗者復活戦勝者で参加するなると、オーストラリア、イングランド、ウェールズ、オセアニア一位との死のAプールとなる。

2019年日本ワールドカップ開催までの準備期間は始まっている。まずは2015年イングランドワールドカップ、2016年のリオ・オリンピックでの7人制ラグビーにあわせて盛り上げることが必要だ。


日本代表ヘッドコーチのエディ・ジョーンズの戦略

日本代表ヘッド・コーチのエディー・ジョーンズについて書いた「エディー・ジョーンズの監督学」のあらすじは別ブログで紹介した

エディー・ジョーンズの監督学 日本ラグビー再建を託される理由エディー・ジョーンズの監督学 日本ラグビー再建を託される理由
著者:大友 信彦
東邦出版(2012-08-23)
販売元:Amazon.co.jp

エディ・ジョーンズは、南アフリカ代表の副コーチや、オーストラリア代表のワラビーズのヘッドコーチもつとめた経験豊富な指導者で、お母さんが日系人で日系のハーフだ。

岩渕さんもエディ・ジョーンズの「日本ラグビーは世界一のアタッキング・ラグビーを目指す」という方針を支持している。

フィジカルで劣っている人間が勝とうと思えば、1対1になる局面を増やすしかない。相手がラインで待ち構えているところに突っ込んで行っては、すぐに1対2以上となり負けてしまう。そこで、フィットネスを使って、早くポジショニングして、相手よりもいい状況をつくって、個々の状況判断で、1対1の局面をいかに有利に進めるかが課題となるのだ。

エディ・ジョーンズは2012年6月のフレンチ・バーバリアンズとの試合で若手中心の日本代表が負けたときに、すごい剣幕で怒ったという。フランス代表ですらないプロリーグ選抜チームに日本代表が負けることは、我慢ならないことだったという。

勝つメンタリティを持たず、「そこそこやれたな」ではダメなのだ。次のワールドカップまでにメンタルな部分をどう変えていくかが日本代表の大きな課題なのだ。


岩渕さんだけの力では限界が当然ある。ラグビー協会関係者やラグビー経験者も含めて、みんなが日本でのラグビーワールドカップ開催の成功を目指して、まずは直近のゲームから応援しよう!


参考になれば次クリック願う。




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