民主の敵―政権交代に大義あり (新潮新書)
著者:野田 佳彦
新潮社(2009-07)
販売元:Amazon.co.jp
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平成23年9月に総理大臣に就任した野田佳彦首相の本。平成21年7月、つまり政権交代が起こった第45回衆議院選挙の直前に発行されたものだ。野田総理が誕生して、最近また本屋に平積みにされている。
別ブログで紹介した政治家の本の中では、韓国の李明博大統領の本と台湾の李登輝元総統の本が良かった。日本の政治家では中曽根康弘さんの本もよかったが、これは総理大臣を引退してだいぶ経った後の本なので、比較にはならない。
これから総理大臣をめざそうという人の本としては、古くは田中角栄の「日本列島改造論」そして田中角栄の直系の小沢一郎の「日本列造計画」がある。
日本列島改造論 (1972年)
著者:田中 角栄
日刊工業新聞社(1972)
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日本改造計画
著者:小沢 一郎
講談社(1993-05-21)
販売元:Amazon.co.jp
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野田首相の本は、野党だった民主党が政権交代を実現するという目的のもとに書かれた本なので、「政権交代に大義あり」という副題がついている。
まだ読んでいない人も多いと思うので、あまり詳しくは述べない。昔の小渕恵三総理が、アメリカのメディアに「冷めたピザ」と呼ばれたことがあった。しかし、野田さんを「冷めたピザ」と呼ばずして、誰を呼ぶのかという気にさせる本だ。
全くビジョンがない。アマゾンのカスタマーレビューでもメタメタだ。当たり前だろう。
この人には喫緊の問題の1,000兆円に到達する日本の国債と公的債務をどうするのか、現在の財政赤字をどう解消するのかというビジョンがない。よしんんば増税するにせよ、それをどうやって国民の納得を得るのかという日本の政治家として最も重要な問題への解決策がない。
当時の自民党政権への攻撃と、政権交代の必要性を訴えるだけで、この人に任せたら日本は良い方向に進むだろうという確信が全く持てない。
しかも、いったん政権交代したら、数年交代でまた自民党政権に戻ってもよいという弱気な態度にも鼻白む思いだ。
船橋駅で熱心に街頭演説を長年やってきたそうだが、ほとんど誰も聞いていないところで一方的に話してもなんの自慢にもならない。
野田首相になったら、なにが変わるのか?菅前首相夫人の菅伸子さんのように、聞いてみたいところである。
あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの (幻冬舎新書)
著者:菅 伸子
幻冬舎(2010-07-21)
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ともあれ、印象に残った点を紹介しておく。
★2008年1月の当時の大田弘子内閣府特命担当大臣の「日本経済はもはや一流ではない」というセリフに食いついている。大田さんは長年、経済財政諮問会議の委員で、大臣にまでなった人なので、日本の方向性を決めてきたメンバーの一人である。あなたにだけは言われたくない、と思い出すたびに怒りが込み上げてくるという。
筆者には、経済財政諮問会議が日本の国の方向性をきめて来たとは思えない。ましてや大田弘子さんが政策を決める力があったとは思えない。たしかに傍観者的な発言に怒るという気持ちはわからないでもないが、「そんな大した人か?」という感じだ。
★小沢一郎の自由党と管直人の民主党が合併した時に、「モーニング娘。に天童よしみが加入」という感じだったと語る。
なにが天童よしみなのかよくわからないが、信念を持った政治家であれば、ベテランでも若手でも変わりはないはずである。中曽根さんは28歳で衆議院議員に当選し、早くから首相公選を訴えていた。国民に選ばれた政治家の間でモーニング娘。と天童よしみに比べるほどの差はないのではないか?
★野田さんは田中角栄さん以来、記憶にある範囲で「宰相」という重みを感じる人は中曽根康弘元総理だけだと語る。これには筆者も賛成だ。中曽根さんはビジョンがあったと思う。それにブレーンをうまく使った。そんな偉大な政治家を、年齢だけを理由に国会議員を辞めさせたのは小泉純一郎元総理だ。
★政権交代の醍醐味は、お金の使い方を変えることで、役人に緊張感を持たせることだ。しかしいずれは緊張感がなくなり、自民党と同じ過ちを犯す可能性はあるので、5年から8年で政権は交代していくべきだろう。政党には、頭を冷やして勉強しなおす時期があってしかるべきだと。
★衆議院は300人で十分だという。その通り実現して欲しいものだ。世襲はやめるべきで、同一選挙区から連続してその国会議員の配偶者や3親等内の親族が立候補できないという内規を民主党はつくったという。
★塩川正十郎(塩ジイ)が「母屋ではおかゆをすすりながら、離れではすき焼きを食っている」という有名な言葉を残している特別会計については、2005年に民主党が特別会計改革・野田プランを発表している。
いったんすべてをゼロベースで見直し、31特別会計、60勘定のうち、24特別会計を廃止する方針だという。特別会計のことを「誰一人金の流れを把握できていない異常」と呼んでいる。是非実現して欲しいものだが、民主党政権下の現状はどうなのだろうか?
★政と官の癒着がつくりあげた関係が天下りと「渡り」だと。働きアリの国民が納めた血税と子供たちのポケットに手を突っ込んで得たお金で、シロアリのような天下り団体を温存させようとしている。
民主党が調べた結果では、2万6千人の国家公務員OBが4,700の法人に天下っており、それらの天下り法人に12兆6千億円もの血税が流れていると語る。天下り撲滅だと言う。
こういうおおざっぱな議論には、ケチをつけたくなる。ファンクションがあって、能力があれば元官僚でも全く問題ない。大体、12兆6千億円はどこから出てきた金額なのかわからない。
★国連至上主義を排し、集団的自衛権を認める時期で、「自衛官の倅(せがれ)」の外交・安全保障論だと。この辺は国連至上主義に近い小沢一郎と一線を画すところだ。さらに田母神さんを英雄視してはいけない。航空自衛隊の制服組のトップの戦略眼を疑うという。
★松下幸之助の200年かけて日本の海を埋め立てて国土を広げていくという「新国土創成論」に対してバージョンアップした「新日本創成論」をやりたいという。
新国土創成論―日本をひらく (1976年)
著者:松下 幸之助
PHP研究所(1976)
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日本は宇宙先進国であり、これからは宇宙と海とハブ化で立体的に発展を目指すという。ちなみに超党派で宇宙基本法を2008年に制定したことを紹介している。宇宙や海に行く前に日本の現在の公的債務問題をどうするのか?どこから宇宙や海を開発する予算を出すのか?
★憲法は「日本」がテーマの企画書。野田さんは新憲法制定論者だという。世界の憲法のなかで15番目に古い憲法なのだと。
憲法は「古い」と「悪い」のか?時代に合わない点を改憲する事でも良いのではないか?なぜすべて新憲法にする必要があるのか?
筆者は本にはケチはつけない主義だ。酷評するくらいならあらすじを載せない。あらすじを載せる価値もないということで無視するわけだ。
しかしこの本は、現職の総理大臣が書いた本なので、無視する訳にはいかない。だからツッコミ付きで、あらすじを掲載する。
筆者の見立てが間違っている可能性もあるので、興味があればまずは図書館でリクエストして読むことをおすすめする。
参考になれば次クリックお願いします。
著者:野田 佳彦
新潮社(2009-07)
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平成23年9月に総理大臣に就任した野田佳彦首相の本。平成21年7月、つまり政権交代が起こった第45回衆議院選挙の直前に発行されたものだ。野田総理が誕生して、最近また本屋に平積みにされている。
別ブログで紹介した政治家の本の中では、韓国の李明博大統領の本と台湾の李登輝元総統の本が良かった。日本の政治家では中曽根康弘さんの本もよかったが、これは総理大臣を引退してだいぶ経った後の本なので、比較にはならない。
これから総理大臣をめざそうという人の本としては、古くは田中角栄の「日本列島改造論」そして田中角栄の直系の小沢一郎の「日本列造計画」がある。
日本列島改造論 (1972年)
著者:田中 角栄
日刊工業新聞社(1972)
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日本改造計画
著者:小沢 一郎
講談社(1993-05-21)
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野田首相の本は、野党だった民主党が政権交代を実現するという目的のもとに書かれた本なので、「政権交代に大義あり」という副題がついている。
まだ読んでいない人も多いと思うので、あまり詳しくは述べない。昔の小渕恵三総理が、アメリカのメディアに「冷めたピザ」と呼ばれたことがあった。しかし、野田さんを「冷めたピザ」と呼ばずして、誰を呼ぶのかという気にさせる本だ。
全くビジョンがない。アマゾンのカスタマーレビューでもメタメタだ。当たり前だろう。
この人には喫緊の問題の1,000兆円に到達する日本の国債と公的債務をどうするのか、現在の財政赤字をどう解消するのかというビジョンがない。よしんんば増税するにせよ、それをどうやって国民の納得を得るのかという日本の政治家として最も重要な問題への解決策がない。
当時の自民党政権への攻撃と、政権交代の必要性を訴えるだけで、この人に任せたら日本は良い方向に進むだろうという確信が全く持てない。
しかも、いったん政権交代したら、数年交代でまた自民党政権に戻ってもよいという弱気な態度にも鼻白む思いだ。
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野田首相になったら、なにが変わるのか?菅前首相夫人の菅伸子さんのように、聞いてみたいところである。
あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの (幻冬舎新書)
著者:菅 伸子
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ともあれ、印象に残った点を紹介しておく。
★2008年1月の当時の大田弘子内閣府特命担当大臣の「日本経済はもはや一流ではない」というセリフに食いついている。大田さんは長年、経済財政諮問会議の委員で、大臣にまでなった人なので、日本の方向性を決めてきたメンバーの一人である。あなたにだけは言われたくない、と思い出すたびに怒りが込み上げてくるという。
筆者には、経済財政諮問会議が日本の国の方向性をきめて来たとは思えない。ましてや大田弘子さんが政策を決める力があったとは思えない。たしかに傍観者的な発言に怒るという気持ちはわからないでもないが、「そんな大した人か?」という感じだ。
★小沢一郎の自由党と管直人の民主党が合併した時に、「モーニング娘。に天童よしみが加入」という感じだったと語る。
なにが天童よしみなのかよくわからないが、信念を持った政治家であれば、ベテランでも若手でも変わりはないはずである。中曽根さんは28歳で衆議院議員に当選し、早くから首相公選を訴えていた。国民に選ばれた政治家の間でモーニング娘。と天童よしみに比べるほどの差はないのではないか?
★野田さんは田中角栄さん以来、記憶にある範囲で「宰相」という重みを感じる人は中曽根康弘元総理だけだと語る。これには筆者も賛成だ。中曽根さんはビジョンがあったと思う。それにブレーンをうまく使った。そんな偉大な政治家を、年齢だけを理由に国会議員を辞めさせたのは小泉純一郎元総理だ。
★政権交代の醍醐味は、お金の使い方を変えることで、役人に緊張感を持たせることだ。しかしいずれは緊張感がなくなり、自民党と同じ過ちを犯す可能性はあるので、5年から8年で政権は交代していくべきだろう。政党には、頭を冷やして勉強しなおす時期があってしかるべきだと。
★衆議院は300人で十分だという。その通り実現して欲しいものだ。世襲はやめるべきで、同一選挙区から連続してその国会議員の配偶者や3親等内の親族が立候補できないという内規を民主党はつくったという。
★塩川正十郎(塩ジイ)が「母屋ではおかゆをすすりながら、離れではすき焼きを食っている」という有名な言葉を残している特別会計については、2005年に民主党が特別会計改革・野田プランを発表している。
いったんすべてをゼロベースで見直し、31特別会計、60勘定のうち、24特別会計を廃止する方針だという。特別会計のことを「誰一人金の流れを把握できていない異常」と呼んでいる。是非実現して欲しいものだが、民主党政権下の現状はどうなのだろうか?
★政と官の癒着がつくりあげた関係が天下りと「渡り」だと。働きアリの国民が納めた血税と子供たちのポケットに手を突っ込んで得たお金で、シロアリのような天下り団体を温存させようとしている。
民主党が調べた結果では、2万6千人の国家公務員OBが4,700の法人に天下っており、それらの天下り法人に12兆6千億円もの血税が流れていると語る。天下り撲滅だと言う。
こういうおおざっぱな議論には、ケチをつけたくなる。ファンクションがあって、能力があれば元官僚でも全く問題ない。大体、12兆6千億円はどこから出てきた金額なのかわからない。
★国連至上主義を排し、集団的自衛権を認める時期で、「自衛官の倅(せがれ)」の外交・安全保障論だと。この辺は国連至上主義に近い小沢一郎と一線を画すところだ。さらに田母神さんを英雄視してはいけない。航空自衛隊の制服組のトップの戦略眼を疑うという。
★松下幸之助の200年かけて日本の海を埋め立てて国土を広げていくという「新国土創成論」に対してバージョンアップした「新日本創成論」をやりたいという。
新国土創成論―日本をひらく (1976年)
著者:松下 幸之助
PHP研究所(1976)
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日本は宇宙先進国であり、これからは宇宙と海とハブ化で立体的に発展を目指すという。ちなみに超党派で宇宙基本法を2008年に制定したことを紹介している。宇宙や海に行く前に日本の現在の公的債務問題をどうするのか?どこから宇宙や海を開発する予算を出すのか?
★憲法は「日本」がテーマの企画書。野田さんは新憲法制定論者だという。世界の憲法のなかで15番目に古い憲法なのだと。
憲法は「古い」と「悪い」のか?時代に合わない点を改憲する事でも良いのではないか?なぜすべて新憲法にする必要があるのか?
筆者は本にはケチはつけない主義だ。酷評するくらいならあらすじを載せない。あらすじを載せる価値もないということで無視するわけだ。
しかしこの本は、現職の総理大臣が書いた本なので、無視する訳にはいかない。だからツッコミ付きで、あらすじを掲載する。
筆者の見立てが間違っている可能性もあるので、興味があればまずは図書館でリクエストして読むことをおすすめする。
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