心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
著者:長谷部誠
幻冬舎(2011-03-17)
販売元:Amazon.co.jp
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アマゾンで売れ行き一時トップ(2011年6月20日現在)の日本代表ゲームキャプテン・長谷部誠の本。
長谷部のミスチルベスト15あり、愛読書あり、さらに印税を全額地震被害者のために寄付することもあって、カッコイイということで女性にもよく売れているようだ。
長谷部は2010年夏のワールドカップの2週間前に岡田監督からゲームキャプテンに指名された。チーム全体のキャプテンは川口能活、長谷部の前のゲームキャプテンは中澤佑二だった。
長谷部は当時26歳。チーム内で年長の選手が多くいた。一度は、チームに対する影響が大きすぎると岡田監督に辞退を申し出る。岡田監督はすぐに中澤を部屋に呼び、話し合った結果、長谷部にやはりゲームキャプテンをやって貰うという決定となった。
「やはりゲームキャプテンはオマエにやってもらう。オマエは誰とでも分け隔てなく話せるし、独特の明るさがある。何か特別なことをやろうとしなくていい。いままでやっていたとおり、普通に振舞ってくれ。」
岡田監督にはこのように言われたという。
この本のタイトルは「心を整える。」だ。試合で実力を出すために、いわばピアノを調律するように。心を調律して良いパフォーマンスを生み出すのだ。そのための56の習慣を紹介している。
長谷部は静岡県出身。藤枝東高校で2001年の国体に準優勝し、浦和レッズにスカウトされる。レッズでは2年目からレギュラーに定着し、2003年のナビスコカップで優勝、2007年にはACLで優勝し、一躍国際スカウトに注目される。
2008年にドイツのヴォルフスブルグに移籍して、翌2009年ブンデスリーガで優勝。
ヴォルフスブルグはフォルクスワーゲンの工場がある場所で、サッカーチームのスポンサーもフォルクスワーゲンだ。
筆者は最初の米国駐在の時に、家内用にフォルクスワーゲンのジェッタを持っていた。当時は米国製のフォルクスワーゲンも販売されていたので、西ドイツ製のフォルクスワーゲンは「ヴォルフスブルグ・エディション」というプレートが付いていた。
長谷部はMFとしてブンデスリーガでプレーを続けており、最近ヴォルフスブルグとの契約を2014年まで延長した。長谷部というとあまり目立たない選手という印象が強い。遠藤の様にフリーキックを蹴るわけでもないし、かつての小野伸二のようなキラーパスがあるわけでもない。
それでいてチームになくてはならないの攻守の要となっているのが、長谷部がブンデスリーガで4年もレギュラーを張っており、日本代表でもゲームキャプテンとなっている理由だろう。
ヴォルフスブルクのディレクターは長谷部の90分間のポジショニングを見て、感心して次のように評しているという。
「長谷部は組織に生まれた穴を常に埋められる選手だ。とても考えてプレーしているし、リーグ全体を見渡しても彼のような選手は貴重だ。」
長谷部の肉声が伝わる本
この本は長谷部の肉声が伝わるような本だ。
高校3年になってやっと藤枝東のレギュラーになれた長谷部にレッズからオファーが来た。両親は大学進学を勧め、高校生からのプロ入りに反対したが、そんな長谷部に、「じいちゃん」が言った。
「マコト、人生は一度しかないんだよ。男なら思いきって挑戦するべきではないのか」
長谷部の名前は誠実の「誠」だ。スパイクにはじいちゃんの「松」と自分の「誠」を刺繍で縫いつけているという。
長谷部のじいちゃんは松太郎という名前で、既に亡くなったが、スパイクの内側に刺繍を縫いつけることで、いつもじいちゃんと一緒だという気持ちでいるという。
試合でサイドラインを超える時に、長谷部は天を見上げているが、いつも「じいちゃん、今日もよろしく」と心の中で言うのだと。
「昔気質(むかしかたぎ)」なところが、長谷部の魅力なのだと思う。
「心を整える」56の習慣
この本ではいかにも誠実で努力家・勉強家の長谷部らしい「習慣」、エピソードが紹介されている。アマゾンのなか見!検索には対応していないので、目次を紹介しておく。
第1章 心を整える。
01 意識して心を鎮める時間を作る。
02 決戦へのスイッチは直前に入れる。
03 整理整頓は心の掃除に通じる。
04 過度な自意識は必要ない。
05 マイナス発言は自分を後退させる。
06 恨み預金はしない。
07 お酒のチカラを利用しない。
08 子どもの無垢さに触れる。
09 好きなものに心をゆだねる。
10 レストランで裏メニューを頼む。
11 孤独に浸かるーひとり温泉のススメ
第2章 吸収する。
12 先輩に学ぶ。
13 若手と積極的に交流する。
14 苦しいことは真っ向から立ち向かう。
15 真のプロフェッショナルに触れる。
16 頑張っている人の姿を目に焼きつける。
17 いつも、じいちゃんと一緒。
第3章 絆(きずな)を深める。
18 集団のバランスや空気を整える。
19 グループ内の潤滑油になる。
20 注意は後腐れなく。
21 偏見を持たず、まず好きになってみる。
22 仲間の価値観に飛び込んでみる。
23 常にフラットな目線を持つ。
24 情報管理を怠らない。
25 群れない。
第4章 信頼を得る。
26 組織の穴を埋める。
27 監督の言葉にしない意図・行間を読む。
28 競争は、自分の栄養になる。
29 常に正々堂々と勝負する。
30 運とは口説くもの。
31 勇気を持って進言すべきときもある。
32 努力や我慢はひけらかさない。
第5章 脳に刻む。
33 読書は自分の考えを進化させてくれる。
34 読書ノートをつける。
35 監督の手法を記録する。
第6章 時間を支配する。
36 夜の時間をマネージする。
37 時差ボケは防げる。
38 遅刻が努力を無駄にする。
39 音楽の力を活用する。
コラム ミスター・チルドレン ベスト15
40 ネットバカではいけない。
第7章 想像する。
41 常に最悪を想定する。
42 指揮官の立場を想像する。
43 勝負所を見極める。
44 他人の失敗を、自分の教訓にする。
45 楽な方に流されると、誰かが傷つく。
第8章 脱皮する。
46 変化に対応する。
47 迷ったときこそ、難しい道を選ぶ。
48 異文化のメンタリティを取り入れる。
49 指導者と向き合う。
第9章 誠を意識する。
50 自分の名前に誇りを持つ。
51 外見は自分だけのものではない。
52 目には見えない、土台が肝心。
53 正論を振りかざさない。
54 感謝は自分の成長につながる。
55 日本のサッカーを強くしたい。
56 笑顔の連鎖を巻き起こす。
最終章 激闘のアジアカップで学んだこと
この目次だけ読んでも、まじめな長谷部の性格が感じられると思う。
勉強家の長谷部
この本のところどころに、長谷部が影響を受けた本の言葉が引用されている。それは京セラ創業者の稲盛和夫さんだったり、松下幸之助だったりする。
たとえば稲盛さんの次のような言葉を引用している。
「判断に迷った時は、人として正しいかどうかを考えるようにしている」
以前読んだ稲盛さんの本では、「動機善なりや、私心なかりしや」と常に自問すると書いてあった。これと同じような言葉だ。
だから長谷部は監督にも進んで進言するという。「自己保身のために言わないことの方こそ、正しくない行動のはずだ」と思うからだという。
2010年ヴォルフスブルクの監督に就任したばかりの英国人マクラーレン監督にもボランチのポジショニングについて意見を言ったという。
こんな時に長谷部が意識しているのは「上から目線」にならないようにすることだと。監督が腹を立てたら考えも聞いてもらえず、干されてしまうかもしてない。チームのために進言しているという思いを伝えなければならないのだ。
この辺の一途さが岡田監督からゲームキャプテンに指名された理由の一つだろう。
33読書は自分の考えを進化させてくれる
この本の33番目の習慣が読書だ。長谷部は当初は東野圭吾とか宮部みゆきとかの人気作家の小説をよく読んでいたが、デール・カーネギーの「人を動かす」を読んでから、哲学系の本が圧倒的に増えたという。
ドイツではひとりでいる時間が増え、よりサッカーや人生のことを深く考えるようになったことも関係している。
読書は人前で話す機会が多いサッカー選手にとって、言葉のセンスを磨く上でも重要だという。
長谷部の推薦するのは次の本だ。このブログでもあらすじを紹介しているので、題名をクリックして参照してほしい。
松下幸之助の「道をひらく」
道をひらく
著者:松下 幸之助
PHP研究所(1968-05)
販売元:Amazon.co.jp
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姜尚中(カン・サンジュン)の「悩む力」
悩む力 (集英社新書 444C)
著者:姜 尚中
集英社(2008-05-16)
販売元:Amazon.co.jp
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太宰治の「人間失格」(リンクは「人間失格」に触発された押切もえの「モデル失格」)
人間失格 (集英社文庫)
著者:太宰 治
集英社(1990-11-20)
販売元:Amazon.co.jp
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「アインシュタインは語る」
アインシュタインは語る
大月書店(2006-08)
販売元:Amazon.co.jp
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これは筆者のコメントだが、アインシュタインの伝記の決定版ともいえるものが、6月に出版されている。アインシュタインの手紙の断片を編集した「アインシュタインは語る」よりアインシュタインの考え方や人柄がわかるので、こちらをおすすめする。(ただし下巻はミスにより刷り直しとなって近々再発売される)
アインシュタイン その生涯と宇宙 上
著者:ウォルター アイザックソン
武田ランダムハウスジャパン(2011-06-23)
販売元:Amazon.co.jp
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アインシュタイン その生涯と宇宙 下
著者:ウォルター アイザックソン
武田ランダムハウスジャパン(2011-06-23)
販売元:Amazon.co.jp
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斉藤茂太「幸せを呼ぶ孤独力」
幸せを呼ぶ孤独力―“淋しさ”を「孤独力」に変える人の共通点
著者:斎藤 茂太
青萠堂(2005-12)
販売元:Amazon.co.jp
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長谷部は「読書ノート」をつけて、気に入った文を抜き書きしているという。心の点検もしているのだと。
ちなみに本田圭祐も白洲次郎の本を読んでいたという。
白洲次郎 占領を背負った男
著者:北 康利
講談社(2005-07-22)
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長谷部の「監督ノート」
長谷部は今は現役選手だが、いずれは引退する。その時のために2年前から「監督ノート」をつけ始めているという。自分が出会った監督が、どのようにチームをマネージしているのかを記録しているという。
また他の選手から聞いた他の監督の練習方法や、本やテレビなどで見たサッカー以外のスポーツの練習方法でも参考になりそうなものは記録しているという。
注目すべき点は多いという。たとえば:
・シーズン前の合宿ではどのようにしてチームの組織を構築するのか
・遅刻したときの罰金の額
・携帯電話やゲーム機の使用制限
・GM(ゼネラルマネージャー)との関係の作り方
・スポンサーへの対応
・ファンやマスコミへの距離感
・どんなスタッフを揃えるか
・試合に向けてどのような練習をするのか
・練習の時間配分
・練習メニュー
この本の38番目の習慣は「遅刻が努力を無駄にする」だ。長谷部は練習の1時間前には着くようにしているという。時差対策も日本への帰国の一週間前から就寝時間を少しずつ早めるという。いかにもまじめな長谷部らしい習慣だ。
ちなみに筆者の時差調整のやり方は、東へ向かう場合は(日本→北米など)機内で眠るが、西へ向かう場合(北米→日本など)は、機内では寝ないで無理矢理時差調整をする。
飛行機に乗ったらすぐに時計を到着地の時間に合わせるというのも、頭の切り替えに役立つと思う。
長谷部はミスチルファン
この本には長谷部によるミスチルベスト15なども載っていて、ミスチルのことが、いろいろなところで出てくる。試合前の移動中のバスの中でもいミスチルは不可欠なのだと。
「ニーチェの言葉」にドキッとする
このブログでも紹介した「ニーチェの言葉」とか、ワタミの渡邉美樹さんの本のこととかも出てくる。
超訳 ニーチェの言葉
ディスカヴァー・トゥエンティワン(2010-01-12)
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きみはなぜ働くか。―渡邉美樹が贈る88の言葉
著者:渡邉 美樹
日本経済新聞社(2006-09)
販売元:Amazon.co.jp
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「ニーチェの言葉」の中で「脱皮して生きていく」という言葉にドキッとしたという。ワールドカップ直前に、岡田監督の戦術変更を受け入れられない自分に気が付いたという。
2008年のアルゼンチンのボカ・ジュニアーズとの試合では、ボカの選手のワンプレー、ワンプレーに魂がこもった試合態度に圧倒されたという。ボールを失ったら、すごい気迫で奪い返しに来るという。ユニフォームを引っ張るのも当たり前。スタンドに来ているスカウトに必死にアピールして、わずかな可能性も逃さないという真剣な態度だ。
長谷部はボカの選手を見て、自分の未来は自分で勝ち取るのだという単純なことに気づかされたという。長谷部はボカ戦で、海外移籍を本気で考えるようになり、異文化のメンタリティを積極的に自分になかに取り組むことを意識するようになったという。
筆者はブエノスアイレスに2年間住んでいて、トップクラブ「リーベル・プレート」の会員だったので、リーベルとボカの試合も見た。日本でいえば巨人・阪神戦のような感じで、ちょっとハイソなリーベル、下町のボカという立ち位置だ。ブエノスの貧民地区出身のマラドーナもボカに憧れ、一時在籍したこともある。
長谷部の誠実な性格が伝わってくる本だ。正直あまり長谷部のゴールは記憶にない。あまり目立たないが、日本代表の常連としてチームには不可欠な選手なのだろう。
著者の誠実さといい、気持ちのこもった内容といい、売れる要素満載の本だ。
参考になれば次クリック願う。
著者:長谷部誠
幻冬舎(2011-03-17)
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アマゾンで売れ行き一時トップ(2011年6月20日現在)の日本代表ゲームキャプテン・長谷部誠の本。
長谷部のミスチルベスト15あり、愛読書あり、さらに印税を全額地震被害者のために寄付することもあって、カッコイイということで女性にもよく売れているようだ。
長谷部は2010年夏のワールドカップの2週間前に岡田監督からゲームキャプテンに指名された。チーム全体のキャプテンは川口能活、長谷部の前のゲームキャプテンは中澤佑二だった。
長谷部は当時26歳。チーム内で年長の選手が多くいた。一度は、チームに対する影響が大きすぎると岡田監督に辞退を申し出る。岡田監督はすぐに中澤を部屋に呼び、話し合った結果、長谷部にやはりゲームキャプテンをやって貰うという決定となった。
「やはりゲームキャプテンはオマエにやってもらう。オマエは誰とでも分け隔てなく話せるし、独特の明るさがある。何か特別なことをやろうとしなくていい。いままでやっていたとおり、普通に振舞ってくれ。」
岡田監督にはこのように言われたという。
この本のタイトルは「心を整える。」だ。試合で実力を出すために、いわばピアノを調律するように。心を調律して良いパフォーマンスを生み出すのだ。そのための56の習慣を紹介している。
長谷部は静岡県出身。藤枝東高校で2001年の国体に準優勝し、浦和レッズにスカウトされる。レッズでは2年目からレギュラーに定着し、2003年のナビスコカップで優勝、2007年にはACLで優勝し、一躍国際スカウトに注目される。
2008年にドイツのヴォルフスブルグに移籍して、翌2009年ブンデスリーガで優勝。
ヴォルフスブルグはフォルクスワーゲンの工場がある場所で、サッカーチームのスポンサーもフォルクスワーゲンだ。
筆者は最初の米国駐在の時に、家内用にフォルクスワーゲンのジェッタを持っていた。当時は米国製のフォルクスワーゲンも販売されていたので、西ドイツ製のフォルクスワーゲンは「ヴォルフスブルグ・エディション」というプレートが付いていた。
長谷部はMFとしてブンデスリーガでプレーを続けており、最近ヴォルフスブルグとの契約を2014年まで延長した。長谷部というとあまり目立たない選手という印象が強い。遠藤の様にフリーキックを蹴るわけでもないし、かつての小野伸二のようなキラーパスがあるわけでもない。
それでいてチームになくてはならないの攻守の要となっているのが、長谷部がブンデスリーガで4年もレギュラーを張っており、日本代表でもゲームキャプテンとなっている理由だろう。
ヴォルフスブルクのディレクターは長谷部の90分間のポジショニングを見て、感心して次のように評しているという。
「長谷部は組織に生まれた穴を常に埋められる選手だ。とても考えてプレーしているし、リーグ全体を見渡しても彼のような選手は貴重だ。」
長谷部の肉声が伝わる本
この本は長谷部の肉声が伝わるような本だ。
高校3年になってやっと藤枝東のレギュラーになれた長谷部にレッズからオファーが来た。両親は大学進学を勧め、高校生からのプロ入りに反対したが、そんな長谷部に、「じいちゃん」が言った。
「マコト、人生は一度しかないんだよ。男なら思いきって挑戦するべきではないのか」
長谷部の名前は誠実の「誠」だ。スパイクにはじいちゃんの「松」と自分の「誠」を刺繍で縫いつけているという。
長谷部のじいちゃんは松太郎という名前で、既に亡くなったが、スパイクの内側に刺繍を縫いつけることで、いつもじいちゃんと一緒だという気持ちでいるという。
試合でサイドラインを超える時に、長谷部は天を見上げているが、いつも「じいちゃん、今日もよろしく」と心の中で言うのだと。
「昔気質(むかしかたぎ)」なところが、長谷部の魅力なのだと思う。
「心を整える」56の習慣
この本ではいかにも誠実で努力家・勉強家の長谷部らしい「習慣」、エピソードが紹介されている。アマゾンのなか見!検索には対応していないので、目次を紹介しておく。
第1章 心を整える。
01 意識して心を鎮める時間を作る。
02 決戦へのスイッチは直前に入れる。
03 整理整頓は心の掃除に通じる。
04 過度な自意識は必要ない。
05 マイナス発言は自分を後退させる。
06 恨み預金はしない。
07 お酒のチカラを利用しない。
08 子どもの無垢さに触れる。
09 好きなものに心をゆだねる。
10 レストランで裏メニューを頼む。
11 孤独に浸かるーひとり温泉のススメ
第2章 吸収する。
12 先輩に学ぶ。
13 若手と積極的に交流する。
14 苦しいことは真っ向から立ち向かう。
15 真のプロフェッショナルに触れる。
16 頑張っている人の姿を目に焼きつける。
17 いつも、じいちゃんと一緒。
第3章 絆(きずな)を深める。
18 集団のバランスや空気を整える。
19 グループ内の潤滑油になる。
20 注意は後腐れなく。
21 偏見を持たず、まず好きになってみる。
22 仲間の価値観に飛び込んでみる。
23 常にフラットな目線を持つ。
24 情報管理を怠らない。
25 群れない。
第4章 信頼を得る。
26 組織の穴を埋める。
27 監督の言葉にしない意図・行間を読む。
28 競争は、自分の栄養になる。
29 常に正々堂々と勝負する。
30 運とは口説くもの。
31 勇気を持って進言すべきときもある。
32 努力や我慢はひけらかさない。
第5章 脳に刻む。
33 読書は自分の考えを進化させてくれる。
34 読書ノートをつける。
35 監督の手法を記録する。
第6章 時間を支配する。
36 夜の時間をマネージする。
37 時差ボケは防げる。
38 遅刻が努力を無駄にする。
39 音楽の力を活用する。
コラム ミスター・チルドレン ベスト15
40 ネットバカではいけない。
第7章 想像する。
41 常に最悪を想定する。
42 指揮官の立場を想像する。
43 勝負所を見極める。
44 他人の失敗を、自分の教訓にする。
45 楽な方に流されると、誰かが傷つく。
第8章 脱皮する。
46 変化に対応する。
47 迷ったときこそ、難しい道を選ぶ。
48 異文化のメンタリティを取り入れる。
49 指導者と向き合う。
第9章 誠を意識する。
50 自分の名前に誇りを持つ。
51 外見は自分だけのものではない。
52 目には見えない、土台が肝心。
53 正論を振りかざさない。
54 感謝は自分の成長につながる。
55 日本のサッカーを強くしたい。
56 笑顔の連鎖を巻き起こす。
最終章 激闘のアジアカップで学んだこと
この目次だけ読んでも、まじめな長谷部の性格が感じられると思う。
勉強家の長谷部
この本のところどころに、長谷部が影響を受けた本の言葉が引用されている。それは京セラ創業者の稲盛和夫さんだったり、松下幸之助だったりする。
たとえば稲盛さんの次のような言葉を引用している。
「判断に迷った時は、人として正しいかどうかを考えるようにしている」
以前読んだ稲盛さんの本では、「動機善なりや、私心なかりしや」と常に自問すると書いてあった。これと同じような言葉だ。
だから長谷部は監督にも進んで進言するという。「自己保身のために言わないことの方こそ、正しくない行動のはずだ」と思うからだという。
2010年ヴォルフスブルクの監督に就任したばかりの英国人マクラーレン監督にもボランチのポジショニングについて意見を言ったという。
こんな時に長谷部が意識しているのは「上から目線」にならないようにすることだと。監督が腹を立てたら考えも聞いてもらえず、干されてしまうかもしてない。チームのために進言しているという思いを伝えなければならないのだ。
この辺の一途さが岡田監督からゲームキャプテンに指名された理由の一つだろう。
33読書は自分の考えを進化させてくれる
この本の33番目の習慣が読書だ。長谷部は当初は東野圭吾とか宮部みゆきとかの人気作家の小説をよく読んでいたが、デール・カーネギーの「人を動かす」を読んでから、哲学系の本が圧倒的に増えたという。
ドイツではひとりでいる時間が増え、よりサッカーや人生のことを深く考えるようになったことも関係している。
読書は人前で話す機会が多いサッカー選手にとって、言葉のセンスを磨く上でも重要だという。
長谷部の推薦するのは次の本だ。このブログでもあらすじを紹介しているので、題名をクリックして参照してほしい。
松下幸之助の「道をひらく」
道をひらく
著者:松下 幸之助
PHP研究所(1968-05)
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姜尚中(カン・サンジュン)の「悩む力」
悩む力 (集英社新書 444C)
著者:姜 尚中
集英社(2008-05-16)
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太宰治の「人間失格」(リンクは「人間失格」に触発された押切もえの「モデル失格」)
人間失格 (集英社文庫)
著者:太宰 治
集英社(1990-11-20)
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「アインシュタインは語る」
アインシュタインは語る
大月書店(2006-08)
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これは筆者のコメントだが、アインシュタインの伝記の決定版ともいえるものが、6月に出版されている。アインシュタインの手紙の断片を編集した「アインシュタインは語る」よりアインシュタインの考え方や人柄がわかるので、こちらをおすすめする。(ただし下巻はミスにより刷り直しとなって近々再発売される)
アインシュタイン その生涯と宇宙 上
著者:ウォルター アイザックソン
武田ランダムハウスジャパン(2011-06-23)
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アインシュタイン その生涯と宇宙 下
著者:ウォルター アイザックソン
武田ランダムハウスジャパン(2011-06-23)
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斉藤茂太「幸せを呼ぶ孤独力」
幸せを呼ぶ孤独力―“淋しさ”を「孤独力」に変える人の共通点
著者:斎藤 茂太
青萠堂(2005-12)
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長谷部は「読書ノート」をつけて、気に入った文を抜き書きしているという。心の点検もしているのだと。
ちなみに本田圭祐も白洲次郎の本を読んでいたという。
白洲次郎 占領を背負った男
著者:北 康利
講談社(2005-07-22)
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長谷部の「監督ノート」
長谷部は今は現役選手だが、いずれは引退する。その時のために2年前から「監督ノート」をつけ始めているという。自分が出会った監督が、どのようにチームをマネージしているのかを記録しているという。
また他の選手から聞いた他の監督の練習方法や、本やテレビなどで見たサッカー以外のスポーツの練習方法でも参考になりそうなものは記録しているという。
注目すべき点は多いという。たとえば:
・シーズン前の合宿ではどのようにしてチームの組織を構築するのか
・遅刻したときの罰金の額
・携帯電話やゲーム機の使用制限
・GM(ゼネラルマネージャー)との関係の作り方
・スポンサーへの対応
・ファンやマスコミへの距離感
・どんなスタッフを揃えるか
・試合に向けてどのような練習をするのか
・練習の時間配分
・練習メニュー
この本の38番目の習慣は「遅刻が努力を無駄にする」だ。長谷部は練習の1時間前には着くようにしているという。時差対策も日本への帰国の一週間前から就寝時間を少しずつ早めるという。いかにもまじめな長谷部らしい習慣だ。
ちなみに筆者の時差調整のやり方は、東へ向かう場合は(日本→北米など)機内で眠るが、西へ向かう場合(北米→日本など)は、機内では寝ないで無理矢理時差調整をする。
飛行機に乗ったらすぐに時計を到着地の時間に合わせるというのも、頭の切り替えに役立つと思う。
長谷部はミスチルファン
この本には長谷部によるミスチルベスト15なども載っていて、ミスチルのことが、いろいろなところで出てくる。試合前の移動中のバスの中でもいミスチルは不可欠なのだと。
「ニーチェの言葉」にドキッとする
このブログでも紹介した「ニーチェの言葉」とか、ワタミの渡邉美樹さんの本のこととかも出てくる。
超訳 ニーチェの言葉
ディスカヴァー・トゥエンティワン(2010-01-12)
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きみはなぜ働くか。―渡邉美樹が贈る88の言葉
著者:渡邉 美樹
日本経済新聞社(2006-09)
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「ニーチェの言葉」の中で「脱皮して生きていく」という言葉にドキッとしたという。ワールドカップ直前に、岡田監督の戦術変更を受け入れられない自分に気が付いたという。
2008年のアルゼンチンのボカ・ジュニアーズとの試合では、ボカの選手のワンプレー、ワンプレーに魂がこもった試合態度に圧倒されたという。ボールを失ったら、すごい気迫で奪い返しに来るという。ユニフォームを引っ張るのも当たり前。スタンドに来ているスカウトに必死にアピールして、わずかな可能性も逃さないという真剣な態度だ。
長谷部はボカの選手を見て、自分の未来は自分で勝ち取るのだという単純なことに気づかされたという。長谷部はボカ戦で、海外移籍を本気で考えるようになり、異文化のメンタリティを積極的に自分になかに取り組むことを意識するようになったという。
筆者はブエノスアイレスに2年間住んでいて、トップクラブ「リーベル・プレート」の会員だったので、リーベルとボカの試合も見た。日本でいえば巨人・阪神戦のような感じで、ちょっとハイソなリーベル、下町のボカという立ち位置だ。ブエノスの貧民地区出身のマラドーナもボカに憧れ、一時在籍したこともある。
長谷部の誠実な性格が伝わってくる本だ。正直あまり長谷部のゴールは記憶にない。あまり目立たないが、日本代表の常連としてチームには不可欠な選手なのだろう。
著者の誠実さといい、気持ちのこもった内容といい、売れる要素満載の本だ。
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