時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2011年03月

宇宙は何でできているのか 東大数物連携宇宙研究機構 村山機構長のベストセラー

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
著者:村山 斉
幻冬舎(2010-09-28)
販売元:Amazon.co.jp
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東大数物連携宇宙研究機構(IPMU)長の村山斉さんのベストセラー。中央公論の2011年の新書大賞にも選ばれている。

中央公論新書大賞





東大数物連携宇宙研究機構(IPMU)は文部科学省が国際レベルの研究機関として2007年末に設立した研究機関で、東大の柏キャンパスにある。

機構長の村山さんはUCバークレー教授からスカウトされたが、アメリカの大学は優秀な教授は常勤でなくとも契約を継続しているようで、村山さんはUCバークレーにもまだ籍があるようだ。

世の中には研究者として一流であっても、授業は面白くない教授もいる。しかしこの本を読んで、村山さんは研究者としても教育者としても一流であることがよくわかる。

「宇宙はどう始まったのか」、「宇宙は何でできているのか」、「私たちはなぜ存在するのか」、「宇宙はこれからどうなるのか」という誰もが持つ疑問に、素粒子研究の最新の成果で答えようとしており、本来難しい最先端科学の話を、しろうとにもわかりやすく説明している。


ウロポロスの蛇

ガリレオは「宇宙という書物は数学の言葉で書かれている」と語ったという。IPMUも数学の力を借りて、宇宙を研究するために設立された。

宇宙の大きさは、10の27乗、素粒子は10のマイナス35乗だ。いずれも理解をはるかに超えたサイズだが、「ビッグバン」理論では、最初は素粒子並みのサイズだった宇宙が膨張を続けているという。

この現象を表現するために、村山さんはウロボロスの蛇という図を使っている。

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出典:本書21ページ

宇宙を研究すると宇宙線の中にクオークなどの素粒子が見つかる。最小の素粒子を研究すると最大の宇宙の起源がわかるという不思議な循環になるのだ。


「やさしい本」

筆者なりに、この本を一言で評すと「やさしい本」である。

「やさしい」といっても、素粒子物理学の最新の研究成果を解説しているため、「本当の時空は10次元まである?」とか“ストレンジ・クオーク”、“反チャーム・クオーク”、“反粒子”などという言葉が並んでいるので、決して「易しい」わけではない。村山さんの読者・同僚・家族に対する細心の気配りを「優しく」感じるのだ。

この本の帯にある「宇宙研究の世界的トップランナーによる情熱教室」というキャッチコピーが表す通り、この本は中高生でもわかるように書かれている。本文のところどころにある(笑)など、いままでの素粒子物理学の入門書にはなかった気さくなスタイルで、科学者を目指す学生にはバイブルのように読まれることだろう。

村山さんはノーベル賞受賞者を輩出している世界の素粒子物理学のメッカUCバークレーの教授に36歳で就任、2007年に文部科学省が設立した東大数物連携宇宙研究機構長に、東大総長を上回る待遇でスカウトされたと聞く。

まさに脂の乗り切った研究者であると同時に、総勢100名強、外国人研究者比率6割という世界トップレベルの研究者を集めた機構の管理職でもある。

村山さんは毎月必ず子供や一般市民向けに講演をこなしているそうだが、この本でも難しい理論をできるだけわかりやすく話そうという気持ちがこもっている。


なぜ素粒子物理学で宇宙を解明できるのか?

宇宙はビッグバンによって誕生したことが証明されている。

ビッグバン前の宇宙は粒子がまだ原子を構成していない火の玉だった。それがビッグバン後1分で水素、ヘリウム、リチウムができ、核融合が始まって他の元素ができ、星が生成された。ビッグバン直後の宇宙は小さくて熱い状態であった証拠がCOBEという人工衛星を使って見つけられ、発見者にノーベル賞が授与された。

宇宙にあるのは、星は0.5%、物質は4%のみで、23%はダークマター(暗黒物質)、73%はダークエネルギー(暗黒エネルギー)だということが2003年にわかった。しかしダークマター、ダークエネルギーは理論上これがないと説明がつかないという仮説から生み出されたもので、まだだれも観測していない。

ニュートリノを検出し、太陽の核融合反応の証拠をつかんだスーパーカミオカンデを使って日本チームがダークマターの検出に一番乗りを目指している。

ビッグバンでは物質と反物質が同じだけできたが、ニュートリノが10億分の2という微量の反物質を物質に変えた。これがノーベル賞を受賞した小林・益川理論が解明した「CP対称性の破れ」だ。このお釣りの様な物質が星となり、ひいてはわれわれ人類の体、生物となったのだ。

この本ではIPMUの研究成果として、暗黒物質が物質や星を生み出した過程を明らかにしたコンピューターシミュレーションを紹介している。

ノーベル賞を受賞した南部さんは素粒子はひものようなものであるという「超ひも理論」を唱えた。超ひも理論は、自然界に存在する、強い力、電磁気力、弱い力、重力の4つの力を統一的に説明できることが期待されているという。


ここ10年の物理学の進歩はめざましい

この10年で物理学は飛躍的に進歩したと言われる。たしかに10年前に読んだ「物理学・こんなことがまだわからない」というブルーバックスでは、米国のスーパーコライダー計画に予算がつかなかったので、物理学はこれ以上進歩が見込めない状態になったとの閉塞感を語っている。

物理・こんなことがまだわからない―宇宙から身のまわりのハテナまで (ブルーバックス)物理・こんなことがまだわからない―宇宙から身のまわりのハテナまで (ブルーバックス)
著者:大槻 義彦
講談社(1998-08)
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立花隆さんは、巨大な装置の集合体である加速器を「現代の戦艦大和」と呼んでいるが、まさに軍拡競争ならぬ加速器巨大化競争で、スイスのCERNのLHCや日本のKEKBなどの巨大加速器が、素粒子発見に果たした功績は大きい。



アインシュタインの理論さえほころびが出てきている

10年までは、アインシュタインの重力式に基づき宇宙の膨張速度は次第に落ちると考えられてきた。ところが観測結果では空間が広がっているのに、エネルギーは薄まっていないことが超新星の観測からわかった。それゆえ宇宙にはダークエネルギーが詰まっているという理論が生まれている。

小林・益川さんはクオークは3世代以上、6個以上あると予言し、予言が正しいことが検証され、「CP対称性の破れ」でノーベル賞受賞につながった。

物理学では予言した人も予言が正しいと検証した人もノーベル賞をもらえる。湯川秀樹教授の中間子を発見したのは、大気の影響の少ないアンデス山脈の頂上に登って宇宙線を研究した科学者だという。


この本の印税をIPMUの活動資金に寄付

村山さんはこの本の印税をIPMUの活動資金として寄付している。

この本を一冊買えば、定価の1割程度の印税がIPMUに寄付されるのだ。IPMUを「縮減」と位置付けた第一次仕分けに対する抗議も含んでいるのだろうが、それにしても同僚にも優しい指導者である。


家族に対してもやさしい

村山さんはいわゆる「逆単身赴任」だ。この本をアメリカに残している家族にささげるとともに、アメリカでも人気のポケモンのピカチュウの例を使って説明している。そんなところにも家族に対する愛情が感じられる。


研究者としての活動、機構長の管理職としての活動、子供・一般市民への講演活動と、村山さんは超多忙な生活を送っていると思う。

単身赴任はどうしても食生活が不規則になりがちで、ストレスもたまりやすい。いくら功績があってもノーベル賞は生きている人にしか授与されない。ぜひ体に気をつけて次のノーベル物理学賞を日本にもたらしてほしいものである。


参考になれば次クリック願う。




虜人日記 フィリピン戦線で生き残った技術者軍属の貴重な日記と敗因考察

虜人日記 (ちくま学芸文庫)虜人日記 (ちくま学芸文庫)
著者:小松 真一
筑摩書房(2004-11-11)
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太平洋戦争中フィリピンのブタノール工場建設のために徴用されたアルコール製造技術者軍属の日記。

今度紹介する山本七平の「日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条」に詳しく引用されていたので読んでみた。

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)
著者:山本 七平
角川グループパブリッシング(2004-03-10)
販売元:Amazon.co.jp
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ブタノールはガソリンの代わりの燃料として航空機や自動車に使えるので、日本軍はフィリピンの酒精(エチルアルコール)工場を改造して、ブタノールを生産することを計画していた。

次がフィリピンの地図だ。

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出典:Wikipedia

台東製糖酒精工場長だった小松真一さんは、フィリピンで砂糖からブタノール生産のために軍属として派遣され、終戦後はネグロス島で捕虜になった。

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出典:本書 表紙裏

この日記は、フィリピンの捕虜収容所に収容されていたときに、戦時中のこととや捕虜生活のことを手作りのノートに挿絵入りで記録し、骨壺に入れて内地に持ち帰ったものだ。

紙は米軍のタイプ用紙を、収容所のベッドのカンバスをほぐした糸で綴じている。絵は鉛筆のスケッチに、マーキュロやアデブリンなどの医薬品をマッチの軸木に脱脂綿をまいた筆で彩色しているという。大変貴重な記録だ。

全部で9冊のノートと挿絵が写真入りで紹介されている。

虜人日記1











出典:本書表紙裏

巻末に文を寄せている未亡人と息子さんによると、この日記は戦後ずっと銀行の金庫に眠ったままだったが、小松さんが亡くなられた後、遺族が知人に配るために私家版として出版したものだという。

それを月刊「現代」の編集長が読んで、これは同じフィリピン戦線で戦い、戦後捕虜となった山本七平氏に強いインパクトを与えるに違いないとひらめき、山本氏に見せたという。

山本氏は「虜人日記」を題材に雑誌「野生時代」に「虜人日記との対話」というシリーズで連載し、それが山本氏の死後13年経って、上記の「日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条」として出版されたのだ。

「戦争と軍隊に密接してその渦中にありながら、冷静な批判的な目で、しかも少しもジャーナリスティックにならず、すべてを淡々と簡潔、的確に記している。これが、本書のもつ最高の価値であり、おそらく唯一無二の記録であると思われる所以(ゆえん)である。」と山本氏は評している。


「バアーシー海峡」問題は現在でも最大の問題

「捕虜人日記」を詳しく解説した山本七平の「日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条」のあらすじもいずれ紹介するので、「敗因21カ条」については詳しくは紹介しないが、上記の山本七平の紹介文にあるように、非常に冷静に、客観的に書いてることは、さすが科学者と思わせるものがある。

特に中国の台頭で、現在でも安全保障上の大きなリスクとなってきているシー・レーンの確保を日本ができなかったことを、最大の敗因として挙げている。

その部分は「15.バアーシー海峡の損害と、戦意喪失」という言葉で表されている。バシー海峡とは台湾とフィリピンの間の海峡のことだ。そして山本七平氏も、「私も日本の敗滅をバシー海峡におく」と賛同している。

もちろん21項目挙げられている敗因の一つ一つが合わさって日本の敗戦となったわけだが、旧日本軍の致命傷は海上輸送の安全が確保できなかったことだと思う。

インドネシアで終戦を迎えた筆者の亡くなった父は、昭和18年に召集されたが、台湾沖で、同僚の輸送船が撃沈され、多くの兵隊が亡くなったと言っていた。駆潜艇がじゃんじゃか爆雷を落としたが、結局敵潜水艦は逃げてしまったと。

インドネシアに着いても、その後の新兵を乗せた輸送船がことごとく撃沈され、終戦まで初年兵のままだったと語っていた。

運が悪ければ、父も海の藻屑になり、筆者も生まれていなかったわけだ。だから小松さんの書いていることは、筆者には他人事とは思えない切迫感がある。

敗戦直前には日本国内の海運も投下機雷で壊滅状態になるのだが、海上輸送の安全確保ができなかったことは、米潜水艦対策の不徹底によるものだ。

それの反省なのか、自衛隊は対潜水艦戦闘能力が飛び抜けて高い。

しかし、日本が誇る100機ほどの対潜哨戒機P3Cも、定価3万8千ドル(300万円)といわれるスティンガーミサイルと同等品を大量に配備して、漁船を改造した工作船やジャンクボートなどから発射すれば、ほとんど撃ち落とされてしまうだろう。

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出典: 以下別注ないかぎりWikipedia

P3Cは軍艦相手なら対艦ミサイルがあるが、漁船のような工作船では防ぎようがないだろう。

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そんな事態になったら、太平洋戦争の時とおなじ「バアーシー海峡の損害と、戦意喪失」が起こることは目に見えている。

「米軍基地のない沖縄(日本)」、「新しい世界観」や「米国離れ」を説く評論家は多い。しかし、この先人の遺言たる「バアーシー海峡」問題を、日本の軍事力でどう解決しようとするのだろう?

あきらかに東シナ海の覇権を狙う中国は、今や大気圏外から急降下して米軍空母を直撃する新型ミサイルを開発し、これに対する防御策はないという。

それはそうだろう。弾道ミサイルなら弾道を計算して、同じ弾道で逆からミサイルを打てば迎撃できる。しかし上から超高速で落ちてくるミサイルは弾道という考え方は当てはまらない。弾道に合わせるということをしないと、線でなく点で迎撃することになり、これは事実上超高速落下物体では不可能となる。

この本は決して太平洋戦争の時のフィリピン戦線での体験記だけではない。この本が指摘する「敗因21カ条」のうち、いくつかはそのまま現在の日本に当てはまる警鐘である。

閑話休題。小松さんの日記に戻る。

小松さんは、フィリピンに昭和19年2月に飛行機で着任、早速各地の酒精工場を精力的に視察する。

マニラはジャズが流れ、夜はネオンサインが明るく、男女ともにケバケバした服装で、当時は「ビルマ地獄、ジャワ極楽、マニラ享楽」と言われていたという。

砂糖からブタノールを製造するには、莫大な石炭と副原料としてのタンパク質が必要だ。タンパク源としてはコプラが利用できるが、フィリピンには石炭がなく、資材難の中をようやく完成させた工場も、石炭がないので運転の見通しが立たないという状況だった。

結局昭和19年7月にフィリピンのブタノール生産計画は中止となり、小松さんは、やることがなくなったが、民間から採用した人は最低1年間は南方にいなければならないとして、軍に足止めを食う。

仕方がないので、小松さんはフィリピンの酒精工場の生産アップに尽力することとなり、レイテ島やセブ島各地の酒精工場を訪問し、戦火のなかにもかかわらず生産量をアップさせた。

最後にネグロス島の酒精工場の増産任務を受け、ネグロス島に赴任する。

この日記には内地からネグロス島に届いたばかりの最新鋭の四式戦闘機が、米軍の空襲で地上で焼かれた挿絵が載せられている。

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小松さんが「コンソリ」と呼ぶB-24爆撃機が大編隊で毎日のようにネグロス島を爆撃しており、工場の生産を上げるのもままならない状態だったが、生産をなんとか拡大し、一部ではウィスキーをつくって、部隊の兵士に喜ばれる。

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そのうち米軍がミンドロ島、ルソン島に上陸し、昭和20年3月にネグロス島にも上陸したので、せっかく生産している酒精工場に爆薬をしかけて爆破し、軍隊と一緒に山に待避する。それから半年ネグロス島の山での待避行が続く。

米軍は事前に砲撃して戦車で攻め込むという戦法で、いくつかの陣地がすぐに陥落した。戦車用の地雷も地雷探知機で掘り出してしまうから効果なかったという。

ネグロスの日本軍2万4千のうち、戦闘部隊は2千人のみで、他は輸送や飛行場設営などの非戦闘部隊ばかりだったという。しかし戦闘部隊がどんどん戦死するので、非戦闘部隊からも補充されていった。

武器は貧弱で高射砲が3門あるだけで、あとは重・軽機関銃と迫撃砲、飛行機からはずした機関砲などで、2,000人につき旧式の三八歩兵銃が70丁という情けないものだったという。

一発撃てば、五〇発のお返しがあり、とても手が出せない状態だったという。

小松さんは食用野草の調査を始め、部隊に食用野草の講習会を開催して喜ばれ、後には現地物資利用講習としてカエル、トカゲ、バッタ、燕、ヤマイモ、バナナの芯などの食用にできるものの講義をおこなう。

自活のために芋の栽培も行ったので、そこを希望盆地と名付けた。米軍は日本軍に追われた時に、さらに奥地に自活体制を整え、様々な農産物の畑とりっぱな無線通信設備が残されていたという。

そのうち日本軍の部隊同志で追いはぎ行為が発生し、日本軍同士も警戒しなければならなくなった。ミンダナオ島、ルソン島では人肉食も起こったという。

日本軍兵士は、空襲や砲撃、そして餓死でどんどん倒れていき、死体があちこちに放置され、使える物は何でも取られ、裸に近い死体ばかりだったと。ネグロス島ではマラリア感染は少なかったのが幸いだったが、アメーバー赤痢で衰弱して死ぬ者も多かったという。

8月18日に兵団から「終戦になったらしい」という事が正式に伝えられたが、皆おどろかなかったという。米軍に軍使を送って交渉し、山を下りて9月1日に捕虜収容所に収容された。2万4千人のうち、八千人が戦死、八千人が餓えと病気で死亡し、八千人が生き残った。

米軍の軍用携帯食料Kレイションを食べ、久々に文化の味をあじわったという。米軍がみやげにするといって刀や拳銃をほしがるので、くれてやったと。

捕虜収容所では当初カリフォルニア米とコンビーフの缶詰を配給されたが、人員が増えるので、量が減らされ、栄養失調で死者もでた。持ち物を住民の食料と交換したりして生き延びたという。

収容所長が交代し、日本人を憎んでいた軍人が収容所長になったことも影響していたという。

そのうちネグロスからレイテ島の収容所に移送され、食事や居住待遇も良くなり、長らくつきまとわれたシラミも駆除できた。

11月からは兵隊達が帰国しはじめたが、将校の順番は不明だった。捕虜は米軍の兵舎掃除や建築作業をやらされたが、食事は良かった。

黒人は親切だったという。また米軍は将校と兵隊の区別はなく、将校でも自分の荷物は自分で持っていくが、日本の将校は当番兵に担がせる。

朝鮮人、台湾人は早く帰国したが、彼らの不満は彼らに対する差別待遇であり、感謝されたことは、日本の教育者だったという。

盗みは日本人の間では不道徳だが、米軍から盗んでくるのは美徳とされたという。米軍も捕虜は盗みをするものと寛大に見ていたという。小松さんには方々から酒の密造の相談が寄せられたという。

そのうち演芸会や講演会が開かれ、新聞も10日に一回の割合で出されたという。弾やケースを使って飛行機などの工芸品を作る人もいた。小松さんは掲示板で、何でも相談室のようなことを担当していた。

暴力団がのさばりだして手が付けられなかったが、そのうち全員集合させられ別の場所に送られた。

次に小松さんたちはルソン島の収容所に送られる。カランバン収容所で、ここで山下大将は戦犯として処刑された。最後の言葉は「自分は神に対し、恥ずるところなし」というものだったという。ちなみに収容所はキャンプではなく、ストッケードと呼んでいる。営巣(違反を犯した兵隊を閉じこめておくための場所)のことだ。

本間中将は最後まで米軍を呪って、「今にお前達もこういう目に会う」といい残して銃殺されたという。

小松さんは昭和21年12月に日本に帰国した。帰国が決まってから、もう明治精糖の社員ではないので、事業を始めるアイデアをこの日記に書いている。

なかなか面白いアイデアで、今日でも、これらが実現できたら大変な事業になると思う。

1.家畜飼料製造会社 空中窒素を硫安として固定し、これを酵母に消化させ、タンパク質(人造肉)として飼料化する。

2.海に無尽蔵といわれるプランクトンを集めて家畜の飼料とする。プランクトン採集法は現在研究中だと。

3.マングローブの研究。マングローブは海水から真水を吸収して生きている。この組織の研究をしたら、海水から燃料なしで真水が取れる。

4.シロアリの研究。シロアリの体内のバクテリアは木材繊維を分解して糖化している。工業でやると高圧と酸が必要だが、バクテリアはどちらも不要である。


この日記の中では師団長などの高級軍人では良く書かれている人は稀だが、ネグロス警備隊長の山口大佐は兵をかわいがり、フィリピン人のゲリラも捕まえて東洋人の生きる道を説き、どんな大物でも逃がしてやったという。

バカな「閣下」の命令には決して服さず、敬礼もしなかったと。戦犯取り調べでも自分自身が責任を負い、他に迷惑がかからないようにと言うので、裁判官も検事も人格に打たれ、何とか罪にならないように努力しているという話を紹介している。

小松さんは、国家主義を脱却して、国際主義的高度な文化・道徳を持った人間になっていかねばならない。これが大東亜戦争によって得た唯一の収穫だと思っていると記している。

最後に山本七兵の「『虜人日記』の持つ意味とは」という文が載っている。

小塩節教授のエッセー「ミュンヘンの裏町で」を読むと、ダッハウ収容所では囚人一人につき掛かる費用と、囚人から没収して国庫収益となる資産、金歯及び強制労働による生産、死体から取れる脂代と肥料代まで計算してあって、国にとってプラス(黒字)は2,000マルクと計算した書類があるという。

ドイツは正確に記録を残した。一方日本は記録をすべて棄却した。そんな中で、この「虜人日記」は、「現場にいた人間の現場で書いた記録」という意味で重要であり、他にない資料であると山本氏は評している。

戦争中、戦後の捕虜収容所での生活が挿絵入りで描かれていて、興味深い。

収容所の話というと、歴史家会田雄次さんの「アーロン収容所」が有名だが、「アーロン収容所」とはかなり異なる。やはり豊かな戦勝国米国の捕虜の取り扱いの方が、戦争で疲弊した英国の捕虜の取り扱いより、よほどましだったようだ。

ジャワから帰還した筆者の父は、戦後もオランダ軍の要請で武装解除せず、オランダ人を憎むインドネシア人からオランダ人を守ってやっていたのだと言っていた。

捕虜生活まで「ビルマ地獄、ジャワ極楽、マニラ享楽?」だったようだ。

重い作品だが、読み出すと一気に読める。表現が不謹慎かもしれないが、「面白い」作品だ。そして日本の安全保障についても考えさせられる先人の忠言である。


参考になれば次クリック願う。




もう、国には頼らない 都知事選出馬!ワタミの渡邉美樹さんの「民活」実践記

もう、国には頼らない。経営力が社会を変える! (NB online book)もう、国には頼らない。経営力が社会を変える! (NB online book)
著者:渡邉 美樹
日経BP社(2007-06-28)
販売元:Amazon.co.jp
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都知事選出馬を表明しているワタミ社長の渡邉美樹さんの、学校、病院、介護、そして農業での民活実践記。

それぞれ規制や既得権が根強い分野で、渡邉さんの合理精神に基づいた闘いがあちこちで摩擦を引き起こすが、それを一つ一つ乗り越えている体験談を語っている。

これらの分野でいわゆる「民活」として実際に事業を興し、そして本に書いている人はあまりないので、貴重な体験談である。


渡邉さんの経歴

渡邉さんは1959年生まれ。運送会社で働いて稼いだ資金300万円を元手に、「つぼ八」のフランチャイズオーナーとなって起業し、従業員教育が行き届いた顧客満足度の高いサービスの店という評判を武器に「和民」チェーンを開業した。

1996年の店頭公開後、2000年に東証一部上場を果たし、今や様々な外食チェーンを展開する他、この本でも取り上げられている様々な業態に参入している。

別ブログで紹介したOKウェーブの兼元さんは、経営者として注目しているのはワタミの渡邉美樹社長であると語っている

ワタミは『地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供する』ことを会社のミッションとして掲げているので『やられた』と思ったと。


渡邉さんの印象

以前「サービスが感動に変わる時」という渡邉さんが外食産業で起業し、「和民」を始める時の苦労話や、従業員教育について書いた本を読んだことがある。

サービスが感動に変わる時―青年社長渡辺美樹の社員への熱いメッセージサービスが感動に変わる時―青年社長渡辺美樹の社員への熱いメッセージ
著者:渡邉 美樹
中経出版(2002-03)
販売元:Amazon.co.jp
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外食産業というとアルバイトばかりで、マニュアル社員ばかりという先入観を持っていたが、お客の心に残るサービスを訴え、従業員についても厳しく教育をしていて大変熱心な経営者だと思った。

一方、従業員の退社率が高いこともあり、なにかきれい事だけしか語っていないような印象を受けていた。

渡邉さん以外の登場人物はほぼゼロで、「社員」はよくやってくれたとか書いてはあるものの、名前が出てこないので個人の顔が全く見えない。これも違和感を憶えた理由の一つだ。

たぶん渡邉さんを取り巻く社員は、ワンマン社長には到底ついていけないとして、そのうち退社してしまうので、社員の名前が載せられないのではないかと感じていた。

しかしこの本を読んで、渡邉さんが有言実行で、困難や官業にも正面から立ち向かう骨のある経営者であることがわかった。

ワタミグループの創業社長としてワンマン社長の様なので、たぶんいろいろな問題はあるのだろうが、社会起業家として尊敬すべき経営者であることは間違いない。


ケーススタディ1 教育 郁文館夢学園

ワタミを創業するときも、将来は教育を手がけたいという希望があり、政府の「教育再生会議」委員を勤めた。

神奈川県の教育委員会委員にもなって、バウチャー制や教師の評価が給与評価となる制度などを提唱するが、全く相手にされず、教師の評価をするはずの独立組織の教育委員会が全く機能していない現状を知る。

誤解されることが多いが、渡邉さんの「生徒は学校にとってお客さまである」という発言は、生徒を甘やかすことではなく、「生徒が将来幸せになるために最高の教育を施し、生徒に感謝されるような教育を目指そう」というのが真意であると語る。

具体的実践として、バブル期に50億円で豪華な研修施設をつくって経営が立ちゆかなくなった文京区の郁文館学園の再建に2003年から乗り出す。郁文館夢学園と改名して、渡邉さん流の教育改革を実践する。

郁文館は夏目漱石の「吾輩は猫である」にも出てくる明治22年創立の伝統ある中高一貫男子校だ。

そういえば、「吾輩は猫である」で、次のような苦沙弥(くしゃみ)先生の家の隣の私立中学校というのが出てくるが、これがそうだろう。

「落雲館(らくうんかん)と称する私立の中学校―八百の君子をいやが上に君子に養成するために毎月二円の月謝を徴集する学校である。

名前が落雲館だから風流な君子ばかりかと思うと、それがそもそもの間違になる。その信用すべからざる事は群鶴館(ぐんかくかん)に鶴の下りざるごとく、臥竜窟に猫がいるようなものである。

学士とか教師とか号するものに主人苦沙弥君のごとき気違のある事を知った以上は落雲館の君子が風流漢ばかりでないと云う事がわかる訳(わけ)だ。」

渡邉さんが初めて訪問した郁文館は生徒1,500人のうち500人が遅刻してきて、挨拶もろくにしない生徒が多いという状態だった。なにか「ドラゴン桜」の龍山高校を思い起こさせる。

渡邉さんの改革により見違える様に生徒の意識が向上したという。大学進学実績も向上し、2010年に新しい校舎に建て変わる時には、男女共学校として生まれ変わるという。

生徒の評価も含めた先生の360度評価を開始したり、2010年までに東大合格者20名、2011年までに甲子園出場を目標にしてプロジェクトをスタートさせている。

渡邉さんの改革についてこれずに教師の1/3が入れ替わっている。学級崩壊は先生の方が悪いと渡邉さんは言い切る。


ケーススタディ2 病院 岸和田盈進会病院

渡邉さんは病院経営も頼まれて引き受けた。

その病院は大阪の岸和田市で当初ペインクリニックとしてスタートしていたが、行くところがないから病院にいるという保険報酬のない老人の「社会的入院患者」が多く留まり、採算は赤字となっていた。

渡邉さんは、「社会的入院患者」を退院させ、肺循環器とリハビリの関節治療を売り物にする岸和田盈進会病院という新しい病院に生まれ変わらせた。医師に対するお礼などの不公正慣行も廃絶した。

一部の医師・職員が去っていったが、渡邉さんはやり遂げ、現在は黒字経営となっているという。

厚生労働省に厚く守られている医療業界にも健全な自由競争と、不足が目立つ産婦人科医や小児科医には、自由競争の弱点を補強し、弱者救済のためのセーフティネットが重要であると渡邉さんは訴える。

先日伊藤元重東大教授の講演を聞いたが、日本は今や乳幼児死亡率は先進国で最も高いと語っていた。

Wikipediaでも調べ、念のためCIAのデータでも調べたが、日本は依然としてG7の中では最も低く、世界で3番目に低いので、たぶんこれは事実とは反すると思う。

横道にそれるが、この日本が先進国では乳幼児死亡率が最も高いというのは、朝日新聞が意図的に作り上げた記事ではないかという2005年の医師ブログのやりとりがあるので紹介しておく。

しかし統計はどうあれ、乳幼児死亡率が上がっていると言われたら、さもあらんと納得できる現実がそこにあることは間違いない。


ケーススタディ3 介護 ワタミの介護

病院再建の時に、退院してもらった「社会的入院患者」を収容する必要もあり、渡邉さんは老人介護ビジネスに進出した。

まずは病院の介護事業を引き継いで、岸和田に高齢者向けのマンションをつくった。

その次に後継者不在で悩む「アールの介護」を創業者から買い取り、「ワタミの介護」と名前を変えて全国に展開した。

介護でも行政のつくりあげたおかしな仕組みがある。特に渡邉さんが憤ったのは、「特殊浴」と称して、お年寄りをカーウォッシャーのような風呂にやたら入れたがることだと。

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出典:取手市介護老人保健施設 緑寿荘ホームページ(筆者注:たまたまインターネットの「特殊浴」検索でトップに表示されたので、この施設の写真を掲載した。この施設を批判するものではない)

老人を裸で横にして上からお湯を掛け、洗剤を掛け、またお湯を掛け、最後に温風で乾かし、まるで食器洗い機で人を洗っている様だと。

これが一番作業効率が良く、入浴1回で介護保険料をもらえるからだ。

今の介護業界は、客の満足など考えていないと渡邉さんは語る。すぐにおむつ、すぐにミキサーで流動食、すぐに車いすと介護に手間が掛からないようにしているという。

補助金が交付され、努力しなくてもある程度の収入があり、他の施設とサービスの質で競争することもないのが介護の現状なので、本来老人をいたわる気持ちを持って介護の仕事を始めた人でも、ついルーティン化しておざなりになっているという。

アールの介護でも渡邉さんの改革の考えについてこれず1/3の人がやめて、入れ替わったという。

ワタミの介護では、1,おむつーゼロ、2.特殊浴ーゼロ、2.経管食ーゼロ、4.車いすーゼロを目標にしている。非常にわかりやすいサービスの質の向上だ。


デンマークがモデル

福祉国家デンマークのことを紹介している。デンマークなど北欧では所得税50%、消費税25%という高い税率だが、税金がきちんと目的通りに使われているので国民も納得しているという。

デンマークでは傾斜介護といって、その人の体力とか意識の状態によって歩行も、食事もきめ細かく対応している。また老人ホームの料金はその人の受け取る年金の金額から月三万円残る料金としているという。

日本では歩行が不自由になるとすぐに10数万円もする車いすを使わせるが、そうすると足腰が弱くなって二度と歩けない体になる。

デンマークでは2万円程度のロレーターという歩行補助器を使うので、車いすを使う老人がほとんどおらず、自立歩行ができる老人ばかりだ。渡邉さんはそれを日本に導入しているという。

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ケーススタディ4 農業 ワタミファーム

現在有機野菜は全体の0.17%しか流通していないので、渡邉さんは有機野菜を安定的に供給するために2002年から農業にも参入し、千葉県、北海道などで有機野菜や有機酪農を行っている。

現在はワタミグループでの自社有機野菜の利用率は35%に達しているという。

順調の様に見えるが、実際はものすごく時間が掛かっているという。株式会社が農業に参入できることになったものの、農地のリースを受けるのに二年弱かかり、手続きが非常に面倒だ。有機と認められるには、農地を少なくとも二年化学肥料を使わずに土づくりをしなければならない。

また農業法人には、農事組合法人と会社法人があり、後者が規制緩和で新しく参入できるようになったものだが、株式は譲渡制限があるものに限るという条件があるので、普通の株式会社では参入できないのだ。

だからワタミは当初設立した有限会社ワタミファームと株式会社ワタミファームの2つの組織を持たざるをえないのだと。

農業法人の有限会社ワタミファームなら、農地も簡単に借りられるからだ。

本来株式会社の農業参入を可能としたのは、農地保全と食糧自給率アップが目的なはずだが、全く見せかけの規制緩和であると。

主要国の食料自給率は日本が最も低く40%で、同じ島国のイギリスでも70%ある。ドイツは90%、フランス・アメリカは120−130%で輸出している。

とりわけ渡邉さんが憤っているのは、減反政策に基づく転作奨励金である。米を作るのをやめたら、米をつくる利益以上の補助金がもらえる不思議な制度であると。

渡邉さんは、去るべき農家には補助金を出さず、アメリカと戦える様な農業をつくるために補助金を活用すべきだと論じる。


既存のルールで真っ向から行政と戦っている。渡邉さんのファイティング・スピリットには感心する。

いかに日本がいまだに規制だらけかがよくわかり、読み物としても面白い。

都知事になれる可能性は今や薄くなってきたとは思うが、負け戦でもどう戦うかは世間が見ている。

ワタミは毀誉褒貶が激しい。渡邊さんの本当の姿を見たいものだ。



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「0円」で億を稼ぐ あのベストセラー「Free」より先にゼロ円に注目した西川りゅうじんさんの本

「0円」で億を稼ぐ! 「タダ」よりすごいビジネスはない「0円」で億を稼ぐ! 「タダ」よりすごいビジネスはない
著者:西川 りゅうじん
マガジンハウス(2008-07-24)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログでも紹介したアメリカのベストセラー「Free」より1年も先にゼロ円のビジネスモデルを提唱した天才マーケッター西川りゅうじんさんの本。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
日本放送出版協会(2009-11-21)
販売元:Amazon.co.jp
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先日、西川さんの講演を会社で聴いたことがあるが、大変わかりやすく、参考になる内容だった。最初の「つかみ」では西川という名字なので、関西のお笑い芸人と間違われたという話をしていた。「西川きよしさんはお元気ですか?」

西川さんはウォークマンのマーケティング、表参道ヒルズ、さつまの焼酎など、多くの有名商品や各地のイベントなどを生み出した。ゆるキャラのはしり、愛地球博覧のキャラクターのモリゾウを生み出し、平城京1300年のせんと君のキャラクター選定でも有名だ。

実は西川さんとは、内田朝陽君のお父さんが経営する店に30年間通い続けた仲だったことが最近わかったことは、以前別ブログに書いた通りだ。

この本では消費者からはお金は取らないが、高品質の商品やサービスを提供し、広告や付随取引で利益を上げる様々なビジネスモデルを紹介している。


ゼロ円ビジネス

たとえばリクルートの「R25]や「L25」。配布される木曜日でさえ主要駅のスタンドには残っていない。普通の雑誌と変わらない記事の質と紙質の良さ。とても無料誌とは思えないクオリティの高さだ。

「R25」は配布数60万部。全体で約50ページのうち、半分が広告だが、広告と気づかせない記事中の広告が多く、編集の技法で広告を盛り込んでいる。

西川さんが関係者から聞いたところによると、R25は約20ページ分の広告で、5,000万円近く利益が上がるという。週刊だから1ヶ月で2億円を稼ぐゼロ円商売だ。

民放テレビもラジオも古くからあるゼロ円ビジネスの一つで、コマーシャルやインフォマーシャルといった広告収入で運営している。ゼロ円ビジネスに成功すると、みんなが得するビジネスモデルがつくれるという良い例だ。

ちなみに最近、寮委員の後輩の日テレの人と話す機会があったが、一時マス広告はダメだといわれて、テレビ局各社の収益が激減したことがあったが、今はテレビ広告の効果が見直され、いわゆる冠スポンサー枠は依然として悪いが、スポット広告枠は売れすぎで、枠がない状態だと言っていた。

特に携帯電話とケータイゲーム会社が積極的にテレビCMを打っており、飲料、車、食品、日用品などの従来からのナショナルスポンサーに加わってスポット広告枠の取り合いになっているのだと。

ゼロ円ビジネスは江戸時代からあり、三越の前身の三井越後屋は、「振る舞い傘」と呼ばれるのれんのマークを書いた傘を雨の日に客にタダで配っていた。

ゼロ円ならライバルに勝てるし、本来なら興味を示さない人も客にしてしまう。そしてさらに充実したサービスを求めようとする人が金を払う客になるのだ。

まさにモバゲー、グリーのビジネスモデルだ。テレビでさかんにCMをやっているモバゲーやグリーは「無料」であることを宣伝しているが、ゲームにハマり、より強い武器などが欲しくなると有料アイテムを買うようになり、それで大もうけしているという。


ゼロ円ビジネスの注意点

しかしタダ飯客だからといって、店側がぞんざいに扱うと、せっかくのビジネスモデルが台無しになる。西川さんは「タダ飯客をバカにするとゼロ円に泣く」と表現している。

たとえ最初はタダ飯でも、次からは上得意になる可能性があることを忘れてはならない。成功し続けている料亭の女将やクラブのママは、こういったところがしっかり出来ているのだと。

初めてのお客に対して「どなたのご紹介ですか?」と聞くのも忘れてはならない。

新しもの好き、移り気をネオフィリアというそうだが、人間もネオフィリア的な気質を持っている。ゼロ円だからといっても、新しい工夫が欠かせないのだ。


入りやすいショールーム

外国車のショールームは高いものを買わされると敬遠して、人があまり入っていない。しかし、ゆったりくつろげる空間を用意して、コーヒーや紅茶がすぐ飲め、入りやすい雰囲気をつくれば、近所の主婦が集まり、結果的に旦那に高い車を買わせられるのだ。

このショールーム接客法は、このブログでも紹介した現横浜市長の林文子さんの「一生懸命って素敵なこと」という本でも書いてあった。林さんはこの接客法と気配りでトップセールスになれたのだ。


バリュー、バリュー、バリュー

タダだからといって手を抜いてはいけない。タダだからこそ、バリューが大事なのだ。西川さんは「バリュー、バリュー、バリュー」と3回唱えろと言っている。

ビジネスの基本は、「失客」(離反客)を抑え、「留客」(継続客)を増やすことにつきる。リピーターを増やすのだ。だからゼロ円とはいえ、手を抜いてはならない。

西川さんは再春館製薬のドモホルンリンクルのサンプルを例に挙げている。たとえサンプルでも手を抜かないのだ。

「ブランド」とはBurntから来た言葉で、「焼き印」が元々の意味だという。ブランドは扱う人も含めて「燃えて」いなければならないし、フレッシュでなければならない。「オゴリ」と「マンネリ」は禁物だ。


りゅうじん式方程式「3つのワン」

先日の講演でもわかりやすく説明されていたが、西川さんはゼロ円で億を稼ぐりゅうじん流方程式を紹介している。それは「3つのワン」、つまり:

1.オンリーワン:ほかにはない核となる競争力を持つ
2.ワン・トゥ・ワン:一人一人の客を大切にする
3.ワンス・ア・デー:日々新たな気持ちで一日にひとつ変化を起こす

ゼロ円で億を稼ぐためには、常に気持ちをリセットして、新たな変化を起こさなければならない。ゼロ円ビジネスは感動ビジネスなのだ。

りゅうじん流方程式













出典:本書123ページ

ロングセラーのコカコーラもミッキーマウスもポカリスウェットもグリコもビスコも、変わらないようでいて常に変わっているのだと。

生物学者の福岡伸一青山学院大学教授のベストセラー「生物と無生物のあいだ」に出てくる「動的均衡」を思い出す。生物は外見上は同じに見えても、細胞はたえず入れ替わっているのだ。

西川さんはデパートなどでのドライフルーツの試食販売の知人の話を紹介している。その人の目標は、一人のお客に30種類以上ある商品全部を食べて貰うことだという。食べて貰いながら、それぞれの効能を説明すると、お客は恩に感じて、なにがしら買ってくれるのだと。ゼロ円ビジネスの一つのお手本である。


ゼロ円ビジネスモデル

ゼロ円ビジネスは大きく分けて次の3つのパターンに分類できる。

1.ギフト方式
2.グロス方式
3.3点方式(CMのスポンサーなど)

この本では、それぞれについて具体例を多く紹介しており、参考になる。

たとえばギフト方式は、マクドナルドの無料招待券や、サンプル・ラボの試供品、ドモホルンリンクルのサンプル。ユニチャームのおむつサンプルなどがある。

満足感を与え、リピート客を増やす戦略だ。

こんなモノがタダ!?という例では、北海道標津郡標津町では、契約から3年以内に建築を完了するという条件で、400-485平米の土地を無料で貸与している例を紹介している。

グロス方式では、任天堂のDSやWIIなどのゲーム機のゲームソフト無料ダウンロードや、映画の試写会、無料シャトルバス、マンガ喫茶のマンガ無料などを紹介している。

3点方式では広告ビジネスが代表的だ。グーグル、スカイプ、R25、青空文庫などインターネットサービスでは無料の方が多い。グーグルはインターネット広告モデルの筆頭。スカイプは全世界で3億人ユーザーがいるが、有料サービスを使っている10%の顧客からの収入で全体のビジネスを運営している。

昔の名作が無料でダウンロードできる青空文庫も無料サービスだ。トヨタ財団、マイクロソフト、アスキー、日立製作所、群馬インターネットなどの企業から助成金を得て活動している。

あのベストセラーになった「Free」より1年以上も前に「ゼロ円」ビジネスモデルの強さを紹介している。

さすが天才マーケッターの西川さんだ。参考になる事例が満載の本である。


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低炭素社会 小宮山前東大総長のCO2削減の処方箋

低炭素社会 (幻冬舎新書)低炭素社会 (幻冬舎新書)
著者:小宮山 宏
幻冬舎(2010-05)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

2009年4月に東大を退官して現在は三菱総研理事長を勤める小宮山前東大総長のCO2削減の現実的提案。

この本を読んで筆者もガス給湯器をエコキュートに変えるべく見積もりを取っているところだ。

小宮山さんの話は、ブログで紹介した東大の入学式の時に一度聞く機会があった。会社でも先日小宮山さんの講演を聞く機会があった。東大のアメフット出身で非常にエネルギッシュな人だ。

この本はたまたま知り合った幻冬舎の見城社長に「良い本なのに売れない」と相談したら、「それじゃあ売って見せましょうか」と応じられたのが出版のきっかけという見城さんはこのブログでも紹介したとおり、カリスマ・モーレツ編集者だ。

以下にあらすじを紹介する通り、大変参考になる本だが、アマゾンでは現在54,800位で、あまり売れていないようだ。見城さんとは売れなかったら「残念会」ということになっているという。


懇切丁寧な目次

この本はアマゾンのなか見、検索!に対応していないので、目次を簡単に紹介しておく。

第3章がメインの部分で、第3章の第1節から第9節まで、ほぼ4ページおきにサブタイトルがついているので、主要なサブタイトルも紹介しておく。大体の感じがわかる懇切丁寧な目次である。

第1章  「温室効果ガス25%削減」で新しい日本へ

第2章  そもそもエネルギーって何だろう

第3章  エネルギー消費量の正しい減らし方

 第1節 どこでどのくらい減らしていくか

  ・  エネルギー変換、ものづくり、日々のくらし(エネルギーの使い道)
  ・  もはや乾いたぞうきんを絞るようなもの?
  ・  「日々のくらし」のエネルギーは8割減らせる
  ・  年間30万円の光熱費が5万円に減った私の家
  ・  住宅環境改善だけで目標の約半分は達成可能

 第2節 高断熱住宅はいいことずくめ

  ・  日常生活で一番エネルギーを消費するのは暖房
  ・  諸外国に遅れをとっている日本の住宅の断熱性
  ・  防音効果が高く健康にもよい二重ガラス
  ・  住宅内の温度差解消で医療費・介護費も減る

 第3節 お湯づくりの常識が変わった
  
  ・  現在の30分の1のエネルギーでお湯が沸く
  ・  エアコンの性能は4倍になる
  ・  日本が拓く、給湯器の新市場
  ・  太陽電池は日本に最適のエネルギー

 第4節 自動車の常識も変わる
  
  ・  10年後、自動車の燃費は10分の1にできる
  ・  通勤・買い物には一人乗りの電気自動車
  ・  長距離物流をトラックから鉄道へ

 第5節 こんな考え方は古い

  ・  節約するよりエコ家電を買おう
  ・  安全・ハイリターンな「エコ投資」
  ・  もったいないのはモノよりエネルギー

 第6節 新エネルギーはどこまで有望か
  
  ・  原発は稼働率アップが第一
  ・  風力発電の適地はまだある
  ・  トウモロコシをエネルギーにしてはいけない
  ・  バイオマスエネルギーの有望株はクロレラ類
  ・  太陽電池の併用で電力の夜昼問題を解消

 第7節 損するリサイクル、得するリサイクル
 
  ・  金属のリサイクルは圧倒的に安くつく
  ・  新たに鉱山を掘る必要はなくなる
  ・  リサイクルが高くつく場合もあるプラスチック
  ・  プラスチックは燃やしてもよい
  ・  紙も最後には燃やすのが正しい

 第8節 総力戦で取り組む
  
  ・  森林資源を増やしてCO2を吸収する
  ・  排出権取引を有効に機能させるルール作りを

 第9節 ポジティブに取り組む
  ・  日本より劣るアメリカのエネルギー効率
  ・  2050年、世界のエネルギー効率を3倍に
  ・  エネルギー、鉱物、食料 ー どこまで自給できるか

第4章  町づくりで低炭素社会を実現

第5章  人類の知を構造化する


日本の先進国宣言

2009年7月に首相に就任した鳩山氏が、ニューヨークの国連気候変動サミットで、「2020年までに1990年比で25%の温室効果ガスを削減する」と宣言した。

小宮山さんはこの発言は日本の「先進国宣言」だと受け止めたという。日本が「課題先進国」として率先して世界の温室効果ガス削減のために動きだすという宣言である。


地球の平均気温15度というのは生物には理想的

大気がないと平均気温はマイナス18度になってしまうが、主に水蒸気とCO2の温室効果のために33度くらいプラス効果があるので、地球の平均気温は生物が暮らしやすい15度となっている。

地球の外側にあって薄い大気しかない火星はマイナス45度、水は氷でしか存在できない。探査機「あかつき」が周回軌道に乗れなかった金星は、地球より太陽に近いので90気圧というCO2主体の大気を持ち、平均気温は430度という高温である。

地球は大気があるので、水が液体として存在でき、それが水蒸気となって気温を保っているのだ。

ここ100年でCO2濃度は290PMMから380PPMに上昇した。これからもCO2濃度は上昇が見込まれ、温暖化の様々な影響が異常気象や海面上昇という形で現れてくる。


地球温暖化懐疑論批判

小宮山さんが初代代表を務めていたサステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)では「地球温暖化懐疑論批判」という小冊子をインターネットで公開している。

水素エネルギーは無尽蔵というのは、水から水素を取り出すときに莫大なエネルギーが必要だという認識が欠落している。


CO2削減の処方箋

小宮山さんは学者らしく、CO2削減の処方箋を導くのに、まず「エネルギー保存の法則」の説明から入る。

「エネルギーは最後は熱となる。エネルギーの出入りがない領域全体ではエネルギーの総量は常に一定で変わりない」

だからできるだけ熱になるのを遅らせ、何回でも利用することがエネルギーの効率的な利用法だ。

小宮山さんが出題した東大教養学部の物理の試験問題を例としてあげている。

「同じ大きさの部屋が2つある。1キロワットの電気ヒーターを入れた部屋と、テレビ、冷蔵庫、掃除機を入れた消費電力量合計1キロワットの部屋で、同じ時間同じ電力をかけると、どちらの温度が高くなるか?理由とともに答えよ」

答は「同じ」である。東大の学生の正解率は50人中2人だったという。しろうと感覚では、ヒーターの部屋の方が暖かそうだが、理論は同じである。


用途別日本のエネルギー消費

小宮山さんはまず日本のエネルギー消費を用途別に分類している。それが次のグラフだ。
日本のエネルギー消費1







出典:本書53ページ

これをものづくり、輸送、オフィス、家庭でくくり直すと、次のグラフになる。

日本のエネルギー消費2








出典:本書55ページ

日本のエネルギー消費に占めるものづくり=産業用の比率は既に5割を切っている。

いままで日本の産業界は鉄にしろ、セメントにしろ世界でナンバーワンの省エネルギー生産を達成してきた。たとえばセメント1トン当たりの消費エネルギーは日本を1とすると、中国は1.6だ。産業界の「乾いた雑巾」を絞るようで、もはや大きな削減の余地はないというコメントは正しいのだ。

しかし日本のエネルギー消費の半分以上を占める、輸送、オフィス、家庭の分野はまだまだエネルギー消費削減の余地がある。いわば「濡れ雑巾」状態なのだ。

この本ではこれらの輸送、オフィス、家庭の分野に重点を置いた「チーム小宮山」のCO2削減策を紹介している。


チーム小宮山のCO2削減策

日本のCO2削減策







出典: 本書67ページ

上記目次のように、様々なエネルギー消費削減策をこの本で提案しているので、特に印象に残ったポイントを紹介しておく。

小宮山ハウスは、光熱費年間30万円が5万円になり、さらに太陽光発電の買電単価が倍になるので、光熱費ゼロになる日も近いという。

★高断熱住居にするため、窓ガラスを二重化する。講演で環境省は二重窓にしたので、冬に暖房を入れるのは月曜日だけだという話を紹介していた。熱が逃げないので、余熱で1週間暖かいのだと(ただし一部の職員は”ヤッケ”を着ているという話もある)。

★オフィスではグローランプ式蛍光灯をインバーター式蛍光灯に換えると、エネルギー消費が半減する。東大では34,000基の蛍光灯を入札でメーカーを決めて、すべて入れ替えたという。

★ガス湯沸かし器をエコキュート(ヒートポンプ)に換えるとエネルギー消費が大幅に減る。ヒートポンプなら理論値ではガス湯沸かし器の30分の1にまで下げられるという。既に200万台普及しており、価格も100~150万円だったのが、60万円程度にまで下がっている。

★エネファームは燃料電池給湯設備だ。燃料電池を給湯に使っているのは日本だけだ。価格は300万円くらいするが、国や地方公共団体が補助金をつけているので、大量生産できれば、エコキュートと同程度の価格まで下げることが可能かもしれない。

★自動車の世界最高燃費記録はガソリン1リッターで、なんと5,385キロである。電気自動車の導入などで、まだまだエネルギー消費削減の余地はある。小宮山さんはマークIIをプリウスに換えて、燃費が1/3になったという。

ちなみに筆者の車はブログで紹介しているとおりハリアーハイブリッドだ。燃費は旧型ハリアーに比べて2/3といったところで、プリウスの1/3までは行かないが、優遇措置や補助金があったのでガソリン車との値差は十分回収できた。

★輸送も鉄道を多用して、鉄道駅から目的地までをトラック輸送として棲み分けする。

★もったいないと古い家電を使い続けるより、最新型の省エネ家電に換えることにより、消費エネルギーが大幅に減って、数年でもとが取れる「エコ投資」となる。

★三菱総研は社内エコポイント制度を導入して、省エネ家電や自宅の省エネ改造には社内補助金を出すと講演で小宮山さんは言われていた。

たとえば製鉄会社など、これ以上の省エネが難しい会社は、社員の自宅でのCO2排出量削減を促進することで、企業としてアピールできる。その意味で、今後他の企業も社内エコポイント的な制度を導入するところが増えてくると思う。

★産業界では原発は稼働率アップが第一。日本は規制が厳しすぎて原発の稼働率は平均60%台だが、韓国は90%で、諸外国でも80%程度だという、

日本は年に1ヶ月の点検が義務づけられているが、諸外国は2年に一回だという。稼働率を80%に上げるだけで、原子力発電の発電シェアが3%上がり、CO2排出量をその分削減できる。

★小宮山さんの将来の日本の発電比率は、水力8%、太陽電池15%、バイオマスや風力発電が7%、原子力40%で非化石燃料で70%を占める。残り30%をガスや石油を使ったコージェネレーションでまかなうというものだ。

★金属のリサイクルが進めば、先進国では新たに鉱山を掘る必要はなくなる。

鉄鋼原料出身の筆者には、ありがたいような、困るような話で、いわゆるミックスドフィ-リングだ。

★プラスティックはリサイクルが高くつく場合もある。たとえばポリエチレンは、分子構造が石油と似ていて石油からつくってもリサイクル原料からつくっても、エネルギーコストはあまり変わらない。

ポリエチレンは生ゴミなどを燃やす良い燃料となるので、「サーマルリサイクル」=熱源として再利用するのも活用法だ。

それに対しPETボトルなどのポリエステルは何度も化学反応を経て作るので、PETは回収した方が良い。

★もし日本の省エネ技術や「もったいない」意識をそのままアメリカに持って行けば、CO2排出量はすぐに半分くらいに落とせるだろうと小宮山さんは語る。

筆者も米国に合計9年間駐在した経験がある。アメリカのセントラルエアコンは夏も冬も快適だが、誰もいなくてもすべての部屋を暖房するので、エネルギー消費が日本とは比べものにならない。

大体どの家でもボイラー室に、巨大なボイラーと温水タンクがある。筆者の友人は誰も使わない部屋はエアコンの吹き出し口を紙などで塞いで、省エネしている人もいた。

少なくとも部屋別暖房に換えるとかで、半分までは行かなくともかなりの省エネ効果が見込めると思う。

★日本の食糧自給率を上げるために、多収量米を遊休耕地でつくり、普段は家畜のえさ、緊急時には食料として活用することを薦めている。

★日本は活気ある高齢化社会をつくるべき。80歳以上の高齢者の8割は健常者だから、この8割の高齢者の社会参加が重要だ。

福井市では介護のデータとレセプト、健康診断のデータベースを統合しようという検討を三菱総研と始めているという。健康情報の一元管理だ。

★小宮山さんの提唱する「プラチナ構想」とは、高齢者が参加できるエコ、低炭素化社会だという。全国で地方自治体のプラチナ構想ネットワークができつつあるという。


すぐに実行可能で、具体的なCO2削減提案で、大変参考になった。

筆者の家は建て売り住宅で、断熱にはほぼ満足しているが、サッシの二重化やエアコンの交換、エコキュート導入を具体的に検討してみる。

数年で投資額が数年で回収できるのであれば、築18年の家で設備も古くなってきているので、やらない手はない。

上記の目次を参考にして、書店で手にとってパラパラと読み、自分でもやれそうなCO2削減策を考えて欲しい。

そしてみんなに言おう「地球に良いこと何かやってる?」


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一生モノの勉強法 京大人気教授の知的ノウハウ

一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ
著者:鎌田 浩毅
東洋経済新報社(2009-04-03)
販売元:Amazon.co.jp
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真っ赤な革ジャンと真っ赤なズボンなどといったドハデな服装で登場する京大の火山学の鎌田浩毅教授の勉強法。

新燃岳の噴火でテレビに鎌田教授が登場するかと期待していたが、いまのところNHKとかには登場していないようだ。ハデ過ぎてNHKが敬遠しているのかもしれない。

はじめに鎌田教授のドハデ戦略について説明している。専門の火山の話を聞いて貰うにあたり、まず鎌田浩毅という人間に注目して貰うためにファッションに気を配っているという。

鎌田教授は「週刊東洋経済」で以前は「一生モノの古典」、現在は「ビジネスパーソンのための地球科学入門」という2ページもののコーナーを書いている。最近「座右の古典」として出版された「一生モノの古典」のまとめかたには感服した。

座右の古典 ―賢者の言葉に人生が変わる座右の古典 ―賢者の言葉に人生が変わる
著者:鎌田 浩毅
東洋経済新報社(2010-11-12)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

たとえばシュリーマンの「古代への情熱」を紹介した2010年7月10日号では、音読、作文、毎日1時間というシュリーマンの語学勉強法を紹介するとともに、ビジネスパーソンに役立つ教訓3ヶ条として次を挙げている。

1.大きな目標を立て、完遂するまで忘れない
2.勉強は目的を明確にして始めるべきだ
3.発掘継続のためにおこなった情報開示と広告戦略を学べ

先見の明のある考古学者として、また自意識過剰な俗人として毀誉褒貶(きよほうへん)の多いシュリーマンだが、学問的な高い評価はゆらぐことがないと語る。人に限らず書物も、良い点を見て学べばよいと結んでいる。

非常にコンパクトに要点をまとめた書評で、筆者にも大変参考になった。

この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、ぜひ目次を見てほしい。

昼休みの活用法や通勤電車を英語塾として活用する方法など、実際的なアドバイスが並んでいることがわかると思う。


この本の構成

この本は次のような構成となっている。

第1章 面白くてためになる「戦略的」な勉強法とは

第2章 勉強の時間を作り出すテクニック

第3章 効率的に勉強するための情報整理術

第4章 すべての基本「読む力」をつける方法

第5章 理系的私見突破の技術

第6章 人から上手に教わると学びが加速する


それぞれの章が10前後の節から構成されているので、全部で55の節があり、それぞれが実践的なアドバイスだ。


勉強法のポイント

この本で鎌田教授の伝えたい肝心の点は次の2つに絞れると思う。

1.勉強するときは集中し、ONとOFFをはっきりさせる。集中するためには弛緩(しかん)する時間も不可欠だ。

2.勉強は場当たり的にするものではない。目標とそれに到達する工程をあらかじめ決め、締め切り時間を決めて「戦略的」に取り組む。


磨くべきスキル

勉強は単に知識を増やすだけではない、音楽や古典などの教養の両方が必要である。スキルとしては次の3つの能力を磨く必要がある。

1.コンテンツ能力 必要な知識を身につける

2.ノウハウ能力 仕事のやり方についての具体的なテクニック

3.ロジカルシンキング能力 データを論理的に組み立てて説得力ある結論を導く能力


もっとも困難なのは「努力すること」そのもの

鎌田教授は勉強でも仕事でも、最も困難なのは「努力すること」そのものだと語る。これには筆者も100%同感だ。

「努力すること」がきちんとできるようになれば、たいていのことは成就する。だから「努力が継続するシステム」の構築が重要だ。

たとえばイチローは「先に満足している」からヒットを打てるのだと。「一試合終わって良いヒットが打てたらそれで満足する」という。

小さな満足を得ることで、努力がおっくうではなくなり、もっと大きな努力を呼ぶ。もっと大きな満足をもたらすという好循環がでてきているのだ。

以前紹介した松井秀喜の「不動心」に「努力できることが才能だ」という言葉が紹介されていた。筆者はこの言葉は、まさに金言と思っている。

たとえば昼休みの食事の後の30分を毎日勉強に充てれば、積み重ねれば相当な時間になる。ビジネスランチでも良い。昼休みの活用の努力が、他人との差別化につながるのだ。


理系的試験突破の技術

なにせ入学試験の出題者であり採点者でもある大学教授だけに「理系的試験突破の技術」という章は大変参考になる。

「試験勉強は相手の意図を探ることから始める」というのは、まさに出題者ならではアドバイスだ。

大学入試のいわゆる「赤本」で、多くの高校生は最初の「傾向と対策」の部分を省いて過去問を解こうとする(そう言われてみれば筆者もそうだった)。しかし、実はこの解説のページに試験突破の重要な手掛かりが書かれているのだ。

この部分は予備校の教科主任のような立場の人が、過去20年間の過去問を研究して解説を書いているので、試験官が要求するポイントをとらえており、問題の傾向をつかんでいる。

大人の勉強に完璧主義は不要であり、「ドライに行こう」と。満点でもすれすれでも資格としては同じであり、効率主義で良いのだ。

テキストは最初から最後まで覚えず、ヤマを張る。模擬試験を利用してヤマの的中率を上げる。テキストで重要な点はどこか、重要なポイントを外さない判断力をいかに養うかが勝負なのだと。

情報は3段階で記憶する(1.熟読、2.音読、3.書いて覚える)とか、試験問題は第1問から解いてはいけない(解ける問題から解く。難問に取り組むより、見直しで5点、10点稼ぐ)とか、入試だけでなく、どんな試験の受験生にも役立つ実践的なアドバイスが満載だ。


鎌田教授もカーネギー信者

「第4章 すべての基本『読む力』をつける方法」の章では、次の写真が使われている。

一生モノの勉強法













出典:本書111ページ

なんと中心にカーネギーの「道は開ける」を置いている。

道は開ける 新装版道は開ける 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10)
販売元:Amazon.co.jp
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この本のなかでもカーネギーの「人を動かす」の「人に好かれる6原則」をそのまま紹介している。

1.誠実な関心を寄せる
2.笑顔を忘れない
3.名前を覚える
4.聞き手にまわる
5.関心のありかを見抜く
6.心からほめる

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
販売元:Amazon.co.jp
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鎌田教授もカーネギー信者だったんだ。

天才マーケッターの西川りゅうじんさんも、カーネギーの本は擦り切れるほど読んだと言っていた。「自己啓発はヘンなのも多いけど、やはりカーネギーに始まり、カーネギーに終わる」。その通りだと思う。


大変参考になった本だが、詳しく紹介していると長くなりすぎるので、その他参考になった点をいくつか紹介しておく。

★「締め切り効果」で時間の流れを制御する
たとえばインターネット検索なら、あらかじめ15分と締め切りを決めて実行する。トリンプの吉越前社長の「デッドライン仕事術」のように効率をアップさせるのだ。締め切りを決めないと、漫然と1時間以上も検索に費やすというようなことになりがちだ。

デッドライン仕事術 (祥伝社新書)デッドライン仕事術 (祥伝社新書)
著者:吉越 浩一郎
祥伝社(2007-12-15)
販売元:Amazon.co.jp
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★大学の講義法も「3分間スピーチ」から学んだ
鎌田教授は「冠婚葬祭のスピーチは3分でまとめろ」という解説書を参考にして、講義も3分ごとの話を積み上げるようにした。これによって聞く方の興味が持続するのだと。

筆者もセミナーなどで講演することがある。さっそくこの「3分間スピーチ」術を実行してみる。

★入門書は最低3冊買う(そのうち一冊は新書)

★不得意な分野は児童書を見よ
鎌田教授は「ジュニア新書」はもっとも高度な表現が求められると語る。文系の人には、理系の「プリマー新書(ちくま書房)」や「ジュニア新書(岩波)」が良いという。

実は筆者も図書館で借りて児童書の世界偉人自伝全集で、チャーチルの自伝を読んでいる。

チャーチル (昭和41年) (世界偉人自伝全集〈1〉)
著者:チャーチル
小峰書店(1966)
販売元:Amazon.co.jp
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チャーチルの伝記は新書でも出ているので、こちらも図書館で借りた。

チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)
著者:河合 秀和
中央公論社(1998-01-25)
販売元:Amazon.co.jp
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まだ読み始めていないが、児童書の方が写真や図も多くて新書より情報量が多い。鎌田教授が児童書をすすめる理由が納得できる。

★鎌田教授の推薦するテレビ教養番組
次が鎌田教授の推薦するテレビ番組だ。
・「世界一受けたい授業」日テレ 鎌田教授も火山の話で登場したという
・「プロフェッショナル 仕事の流儀」NHK
・「爆笑問題のニッポンの教養」NHK
・「課外授業~ようこそ先輩」NHK
・「美の壺」NHK教育

その他、本の書き込み法(これは筆者は絶対にやらない)、書店を利用するメリット、文房具について、クリアファイルについてなど、知的生産の道具の説明も参考になる。

鎌田教授は、一瞬「2ちゃんねるか?」と思わせるような構成のホームページをつくっているが、ブログとかインターネット利用法は一切出てこないところが、最近の本にしては珍しい気がする。

読者の役に立つようにという熱い思いと気遣いが感じられる。面白く読めて、かつ著者の親切心が伝わってくる良著だ。


参考になれば次クリック願う。






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