時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2010年11月

すべては夜明け前から始まる CEO型大統領 李明博氏の伝記

北朝鮮のヨンピョン島砲撃で、朝鮮半島で一触即発の恐れが高まっている。韓国の総司令官となっている李明博大統領の生い立ちや、現代建設での仕事ぶり、業績、人となり、考え方を書いた伝記を紹介する。

一時は李明博大統領の人気が落ちていたが、この緊張状態で支持率も高まっている。そんな李大統領の苦学の経歴を知っておくと、また李大統領の見方が変わると思う。

すべては夜明け前から始まる―大韓民国CEO実用主義の大統領李明博の心の軌跡すべては夜明け前から始まる―大韓民国CEO実用主義の大統領李明博の心の軌跡
著者:李 和馥
理論社 (発売) 現文メディア (発行)(2008-02-15)
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2008年2月に就任した李明博韓国大統領の伝記。別ブログでは李明博大統領自身が書いた清渓川(チョンゲチョン)再生プロジェクトを紹介している。

都市伝説 ソウル大改造都市伝説 ソウル大改造
著者:李 明博
マネジメント社(2007-08)
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高麗大学同窓の韓国ペンクラブ会長の李和馥(イファボク)さんが書いたものだが、1人称で記述しているので、まるで本人が書いたような印象を受ける。


韓国版コンピューター付きブルドーザー

貧しい生い立ちから出世して大統領まで上りつめた人は、昔はリンカーンとかが居たが、最近ではあまり例を見ない。

日本の首相でいえば田中角栄氏が貧しい生い立ちから建設業で成功し、首相まで上りつめた。田中角栄氏もコンピューター付きブルドーザーと呼ばれたが、田中角栄氏は自分で会社をつくったオーナー経営者だった。

島耕作も社長になったが、李明博氏はまさに韓国版島耕作で、建設会社のサラリーマンから社長・会長となり、それから大統領になった韓国版コンピューター付きブルドーザーだ。

社長 島耕作 #1 バイリンガル版 (講談社バイリンガル・コミックス)社長 島耕作 #1 バイリンガル版 (講談社バイリンガル・コミックス)
著者:弘兼憲史
講談社インターナショナル(2010-05-19)
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この本では李明博氏の信じられないほど貧しい生い立ち、行商をして苦学しながら高校夜間部、高麗大学を卒業したこと。反政府主義者と見なされたが、現代建設の会長に気に入られ、現代建設に入社し、サラリーマンとして頭角を現したこと。社長に上り詰め、国会議員、ソウル市長を経て、大統領にまでなった半生が描かれている。


ホームレス中学生以上の赤貧生活

李明博氏の一家の貧しさと苦労は、別ブログで紹介している「ホームレス中学生」の比ではない。

ホームレス中学生ホームレス中学生
著者:麒麟・田村裕
ワニブックス(2007-08-31)
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「ホームレス中学生」の田村裕氏は、夏休みの間約1ヶ月公園で暮らして雑草から段ボールまで食べたそうだが、李明博氏は物心付いてから現代建設に入るまでずっと貧しく食うものも食わずだった。

しかも幼少の頃から働きづめに働いたのだ。

小さい頃から母親の大判焼き屋台を手伝ったり、自分でポンティギ(せんべいの様な菓子)の行商をしたり、ソウルに出てきてタコ部屋に住んで建設労働者として働いたりして金を稼いで高麗大学を卒業した本当の苦学生だ。

しかしくらしは貧しくとも、「貧しさは人生を苦しくするが、物乞いの根性を持ってはいけない」と言っていたお父さん、暇さえあれば聖書を読むお母さんの教導をうけた。

誰の世話にもならず、誰からも施しを受けず、自分の力で絶対に高校、そして大学を卒業するんだという志を曲げなかった。

この本で驚くのは、秀才の二番目のお兄さん(李相得氏、現韓国国会副議長)に大学を卒業させるために、一家全員が努力し、李明博さんもお母さんから中学を出たら働いて一家を助けるように言われていたことだ。

家族みんなで働いてお兄さんの学資を稼ぐという犠牲的精神は、いまだに儒教精神が残り家族の絆の強い韓国ならではだろう。


李さんの生い立ち

李明博氏、日本名 月山明博氏は1941年大阪生まれ。戦争直後韓国に一家で帰国する途中で船が転覆し、九死に一生を得たが家財一切を失う。

韓国に戻っても頼りにしていた親戚から援助してもらえず、お父さんがなんとか見つけた牧場の管理人の仕事も、朝鮮戦争で失ってしまう。

この本の冒頭に出てくるショッキングな場面がある。

朝鮮戦争で李さんのお姉さんと弟が爆弾で負傷し、お母さんが山で薬草を見つけて手当するが、二人とも、ほどなく亡くなってしまうのだ。

朝鮮戦争というと、共産軍により釜山付近まで追いつめられていた韓国軍は、マッカーサーの国連軍の仁川上陸作戦により、一気に勢いを盛り返し、逆に北まで攻め上がったことが記憶に残るが、朝鮮半島を北から南まで戦火に巻き込んだ戦争では民間人の犠牲者も当然多く出ていた。

李さんの一家は、浦項(ポハン)の日本人が建てた廃寺の木張り長屋の一部屋に重なりあうように住んでいたという。韓国の冬は本当に寒い。木張りの家の寒さは想像を絶するところだ。

そのころお父さんは古物を見つけてきては町で売り歩き、お母さんと李明博さんは大判焼きの屋台で商売して、爪に火をともす様にして稼いだ金をソウルに居る二番目のお兄さんの学資として送った。

自分たちは食うものも食わず、一日一食でも我慢した。食べるものがなくなって、お母さんがどこからか酒粕を貰ってきて、一日二回は酒粕を煮て腹の足しにしていたので、中学の担任の先生に子供が昼間から赤い顔をしていると目を付けられた。


働きながら高校夜間部に

しかし真相がわかると、担任の先生は李さんの家に家庭訪問にきて、成績優秀の李さんに高校を受験させて欲しいとお母さんに頼んだ。

お兄さんの学資を稼ぐために、お母さんは李さんには中学を卒業したら働いて貰おうと思っていたので、高校進学を拒否するが、担任の先生は三度足を運び、最後には高校の夜間部に主席で入れば入学金が免除になるからと、お母さんを説得した。

ポンティギの行商をしながら高校の夜間部に通ううちに、どうしても大学に行きたいという気持ちが目覚める。

お兄さんも「あきらめるな!」と応援してくれたので、ソウルに行き、タコ部屋で生活し、建設労働者として働きながら高麗大学を受験し、見事合格する。

このときに清渓川(チョンゲチョン)の古本屋で受験用の参考書を買ったのが、李さんと清渓川とのつきあいのはじまりだ。清渓川再生プロジェクトについては別ブログのあらすじを見て頂きたい。


市場のみんなのカンパで高麗大学に入学

お母さんに高麗大学に合格したことを告げると、お母さんは「どうしてそんなことしたんだい。一体どういうつもりだい」と言ったという。入学金が工面できないのだ。

お母さんの言葉に「大学に通うというのではなく、ただ試験を一度受けてみただけです」と李さんは答えたという。

当時李さんのお母さんはソウルの市場で魚の行商を細々とやっていたが、市場が終わってから毎晩市場の汚れているところをすすんで掃除していた。

そのことを見ていた市場の人たちが、李さんが大学に受かったが入学金がないと聞くと、みんなでカンパして李さんの入学金をつくってくれたのだ。


学生会長から投獄へ

李さんは苦学しながら高麗大学で勉強し、学生会長になる。

1963年に当時の日韓交渉で、朴正煕大統領の韓国政府が日本に譲りすぎているという非難の学生運動が起こり、李さんはリーダーとして警察に捕まり、六ヶ月間投獄され1964年に最高裁で懲役三年、執行猶予五年の判決を受ける。

その時面会にきたお母さんが言った言葉が李さんの心を打った。

お母さんは李さんを非難することなく、「お前の考えていることは正しいと思う。心に決めた通りにやってみなさい。自分を信じて頑張りなさい。」と言ったという。

その後しばらくして李さんのお母さんは病気で亡くなる。


現代建設入社

逮捕歴があるので、李さんは就職に苦労するが、当時の朴正煕大統領に手紙を書き、「ある人が自分の力で世の中を生きていこうとしているのに、国家がその道を遮るならば、この国は一人の個人に永遠に負債を負うことになります」と訴えた。

これにより李さんの就職を妨げていた障害が取り除かれ、現代建設の海外要員の公開応募によって現代建設に入社する。

現代グループの創始者鄭周永と李さんはコンビを組んで、世界中でプロジェクトを受注し、現代グループを世界でも有数のグループに育て上げる。

現代建設の入社面接で、鄭周永会長から問われたことは、「君は建設を何だと思う?」というものだった。

李さんは「無から有を創るから創造だと思います」と答えたという。

李さんのソウル市長時代の業績として清渓川再生プロジェクト、ソウルの新交通システムが挙げられる。

どちらも数千回にも上る住民や利害関係者との折衝のたまものであり、信念を持って接すれば理解は得られるのだと李さんは語る。


なぜ大統領にならなければならないのか?

この質問に対しては、李さんは「今は経済的な危機、社会的な危機の時代なので、経済を立て直すことができるリーダー、社会の葛藤を統合することができるリーダーシップが最優先されなければならないでしょう」と答える。

アマチュア式のアプローチでは問題は解決できない。長期戦略に立ったプロの登場が必要なのだと。

別ブログで榊原英資さんの「日本は没落する」のあらすじを紹介したが、榊原さんが言っているのも、まさにこの点だ。長期戦略に基づいた国造りが、韓国のみならず、今の日本にも絶対に必要なのだ。


日本は没落する日本は没落する
著者:榊原 英資
朝日新聞社(2007-12-07)
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韓国の政治は後進性があると李さんは語る。

日本の永田町にあたる汝矣島(ヨイド)の感覚で理解しようとしたり、盧武鉉(ノムヒョン)大統領が非難されたコード政治(血縁、地縁・学閥政治)が問題なのであると。


コンピューター付きブルドーザー

李さんの辣腕ぶりを物語るエピソードも紹介されている。ソウルの地下鉄の労働組合がストを決行したときに、李さんは消防隊員と市役所幹部に地下鉄を運転させ、結局ストは八日で終わったという。

ビジョンとは見える1%から、見えない99%を探し出す力だという。

韓国に登場したサラリーマンCEO、島耕作型大統領 李明博氏。大いに期待できそうな、ともに日韓新時代を築いていきたいパートナーだ。


この本ではジーンとくる場面がいくつもあった。「ホームレス中学生」も良かったが、こちらも是非おすすめしたい一冊である。


参考になれば次クリック願う。




その時自衛隊は戦えるか 自衛隊の実力を知ろう!

北朝鮮によるミョンビョン島砲撃で、あらためて朝鮮戦争は休戦状態であり、終戦ではないことがリマインドされ、朝鮮半島情勢は緊張が高まっている。



現在の情勢に関連し、テレビなどによく登場する軍事ジャーナリスト井上和彦さんの自衛隊の戦力についての本を紹介する。

そのとき自衛隊は戦えるかそのとき自衛隊は戦えるか
著者:井上 和彦
扶桑社(2004-03-30)
販売元:Amazon.co.jp
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自衛隊につき数々の記事を書いている井上和彦さんの自衛隊の分析。

2004年の本なので、内容は一部古くなっている部分があるかもしれないが、大筋は変わらない。

ゴーマニズムの小林よしのり氏の推薦文が帯に載っているが、「自衛隊が生まれて50年、わしらはもっと真実を知らなきゃいかん」と。

この本はあたらしい歴史教科書で独自路線を歩む扶桑社が出版しており、著者の井上さんは小学館のSAPIOや産経新聞社の『正論』などで記事を書いている。

右寄りの本ではあるが、逆に自衛隊の真実の姿を広く知らしめる動きが、扶桑社、SAPIO、正論、産経新聞などに限られてしまうのは、問題だと思う。

たしかに日本国民は自衛隊をもっと知るべきだと思う。そんなことを考えさせられる本である。


北朝鮮こそ自衛隊生みの親

実は北朝鮮こそ自衛隊の生みの親だ。1950年朝鮮戦争が始まり、北朝鮮が韓国に向けて侵攻を開始したときに、日本政府に対してGHQはいわゆるマッカーサー書簡を送り、警察予備隊の創設を指令した。

海上自衛隊は旧海軍の伝統を継承している。ラッパも海上自衛隊は海軍と同じだ。

これに対し陸上自衛隊は当初旧軍の伝統を排したので、ラッパも陸軍のものを踏襲してない。

空軍はもともと存在していなかったことから、旧陸軍と旧海軍の名パイロット達が集結したのだ。


自衛隊の戦力

自衛隊の国防費は世界第3位で、アメリカ、ロシアに次ぐ規模。第4位は中国だ。但しGNP比では主要国が2−3%であるのに対し、日本の自衛隊は1.0%だ。

防衛白書の内容がウェブで公開されているので、興味のある方は見て頂きたい。

ちなみに次が「防衛白書」に載っている朝鮮半島の軍事力の比較表だ。

防衛白書朝鮮半島





出典:防衛白書

総兵員数は24万人で、中国の10分の1、世界第22位だが、装備は最新鋭のものばかりだ。

戦車は最新式の90式戦車を中心に、1,020両。AH1S攻撃ヘリは89機。輸送・偵察ヘリは422機。


特筆されるべき対潜水艦戦闘能力

海上自衛隊は護衛艦54隻、潜水艦は16隻。掃海艇31隻、高速ミサイル艇7隻。

対潜戦闘能力は突出としており、有効射程100キロを超えるハープーン空対艦ミサイルを4発、対潜魚雷8発を搭載できるP3Cオライオン哨戒機を99機、SH60J哨戒ヘリを97機も保有している。

これらの哨戒部隊はソナー等の4種類の各種探知機を完備しており、ロシアや中国の潜水艦のスクリュー音をすべて記録している。

中国の潜水艦は浅い大陸棚で活動せざるをえないが、すぐに自衛隊の哨戒機に探知されてしまうだろう。

米軍でもP3C保有機数は全世界で200機ということなので、いかに自衛隊の対潜水艦戦闘能力が突出しているかよくわかる。


航空自衛隊は戦闘機361機だが、世界最強のF15や日米合作のF2、F4J改などで構成されている。輸送機59機、迎撃ミサイルは6個高射群ある。

これら日本の軍用機の写真を集めたKenny's Mechanical Birdsというサイトがあるので、ご興味があれば見ていただきたい。


自衛隊には7つの世界一があると。それらは次の通りだ:

1.実戦経験が育てた掃海技術

2.海上自衛隊のお家芸対潜作戦

3,原子力潜水艦に劣らない通常型潜水艦戦力

4.先端技術の結晶F2戦闘機(炭素繊維の一体成形とアクティブ・フューズド・アレイレーダーなど)

5.米軍を驚愕させた100発100中のハイテク・ミサイル(SSMー1地対艦ミサイルなど)

国産ミサイルをまとめているMISSILEの解説というサイトがあるので、ご興味あればご覧頂きたい。

6.F15戦闘機を世界最強たらしめる一流パイロットと整備員

7.自衛隊員こそ真の世界一(全将兵が高校以上の教育を受けている志願制の自衛隊は世界でも珍しい。しかも入隊競争率は3倍、幹部候補生学校の競争率は43倍)

対潜戦闘能力に優れた自衛隊と空母をはじめ空軍力を中心とした米軍のコンビネーションは補完関係にあり、極東アジア地域の安全保障の要となっているのだ。


これからの自衛隊

これからの自衛隊では2007年度から導入される予定のイージス艦、情報収集衛星、パトリオットミサイルを使ったBMD(弾道ミサイル防衛)が今後の目玉だ。


北朝鮮の工作船対策

新型ミサイル艇はやぶさ級は76mm砲一門と、射程距離100キロ以上の対艦ミサイル4発、12.7mm機銃2丁の装備を持ち、スクリューでなくウォータージェットで最高時速44ノットを出すことができる。


自衛隊もし戦わば

仮想敵国として次が想定され、それぞれのシナリオが紹介されている:


1.中国人民解放軍 

空の戦いで日米連合軍は圧勝、海でも自衛隊の対潜水艦作戦で封じ込め。空と海で圧倒され、中国陸軍は手も足も出ず。

中国は莫大な国防費を注ぎ込んで兵器の近代化に努めているのに、そんな中国にODAを継続する必要があるのかと議論している。

しかし侮れないのは中国の宣伝力であると。中国の対日外交カードが靖国問題であることはたしかだ。


安全保障装置としての靖国神社?

平成14年の産経新聞で評論家の櫻田淳氏が「靖国神社は兵士の志気を支える仕組みの中核に位置づけられるべき装置である」と語っている。

この本には紹介されていないが、櫻田発言には神道の國民新聞から次のように批判を浴びている:

「靖国神社の本質は、国事に殉じた畏き英霊に対しての祭祀を行ふことであり、これが『安全保障政策を最も根本のところで支える『装置』』 と看做されるのは、あくまでも結果論としてにしかすぎず、本末転倒の観点と云ふ他はない。」

この論争はともかく、靖国問題を中国が執拗に取り上げるのは当然のことながら、深い戦略があるわけであり、善し悪しはともかく、中国に宣伝機会を常に与えることが適当なのか、次の首相は考え直す必要があるだろう。


2.北朝鮮 

ほとんどが旧式兵器の北朝鮮だが、唯一脅威なのは超旧式のAN2型アントノフ布貼り複葉プロペラ機を多数保有していることだ。

これは12名の人員を空輸することができ、300メートルという短距離で離着陸できる。超低空を飛行するためレーダーに捕捉されにくく、陸続きの国には大変な脅威であるが、日本海を隔ていれば日本にとっては脅威ではない。

村上龍の「半島を出よ」にもこのアントノフが北朝鮮軍来襲手段として描かれているが、実際にはなんの遮蔽物もない海上ならレーダーに捕捉されてしまい、小説のようなことにはならないのだ。

半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)
著者:村上 龍
幻冬舎(2007-08)
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この本のタイトルは『そのとき自衛隊は戦えるか』だが、これを読むと自衛隊は極東地域の安全を保障する有効な戦力になっていることがよくわかる。

日本は武器を輸出することができないので、全世界に輸出して生産コストを下げることができる米国の兵器に比べ国産兵器は数倍コストがかかるといわれている。

だからといって本当に3倍が妥当かという点は防衛施設庁の官製談合の件もあり、今後厳しく追及される必要があるだろう。

国産兵器はコストが高いので、配備数は少ないが、このように米軍との補完を考え、メリハリのきいた最重要戦略に従った配備をしていれば、非常に有効な戦力となることがよくわかる。

いままであまり自衛隊のことを研究したことがなかったが、簡単に読めて自衛隊の実力がわかる良い本であった。


参考になれば次クリック願う。



課題先進国日本 前東大総長 小宮山さんの提言

会社で小宮山さんの講演を聞いたので、2007年に書いた「課題先進国日本」のあらすじを紹介する。(以下あらすじの肩書きは2007年当時)

講演は「課題先進国日本」という題で、以下に紹介する本の内容をさらに実際的にしたもので大変面白かった。

具体的には21世紀には必ず世界は高齢化するので、その先端に立って、「先進国モデル」としてエコロジカルで、高齢者が参加し、人が成長し続け、雇用がある「プラチナ社会」をつくろうというものだ。

日本のCO2排出量も、ものづくりで発生するCO2は45%以下で、家庭、オフィス、輸送でのCO2発生が5割以上だ。

政府が発表した2025年で1990年比CO2 25%削減というのは産業界から反対にあっている。産業界はたしかに「乾いた雑巾」といわれるように、CO2削減の減りしろは少ない。しかし家庭、オフィス、輸送は水がしたたり落ちている雑巾であると。

家庭では、省エネ型エアコンへの切り替えや、断熱でのエネルギー効率改善、ヒートポンプ型給湯(エネルギー80%削減)、燃料電池(エネファーム)を導入。

オフィスでは省エネ冷暖房と、蛍光灯をグローランプ型からインバーター型に切り替え(東大は35,000基の蛍光灯を入れ替えた)。

輸送はハイブリッド車ということで転換していけば、25%減は十分達成でき、しかもくらしが豊かになる。

小宮山さんは「ビジョン2050」ということで、1.エネルギー効率3倍、2.再生可能エネルギー2倍、3.物質循環(リサイクル)システムの構築の3つを20年前に提言したという。

今も「ビジョン2050」がそのままあてはまり、新しい構想名は「プラチナ構想」だ。

すでに80の全国の市町村が参加し、大学と企業も参加して、プラチナ構想ネットワークがスタートして、全国各地で「オンデマンドバス」や「企業エコポイント」(省エネ改築をした社員にポイントをあげる制度)などが動き出している。

今回の講演で得た新しい情報は、

1.電気自動車はアメリカや中国では現状のままではソリューションにならない。

アメリカや中国では石炭火力発電所に脱硫設備を付けていないので、電気自動車にすると、発電でCO2排出量が増え、大気汚染が悪化するからだ。電気自動車がソリューションになるのは、日本のように脱硫設備が完備した環境対策先進国に限られる。

発電量当たりのSOX発生量は、日本は2002年に0.2g/KWhで、これに対してアメリカは3.7、ドイツ0.7、フランス2.0とダントツの低さだ。中国の数字は示されていなかったが、脱硫設備が普及していないので、たぶん大変なSOX発生量になると思う。


2.リサイクルが進めばいずれは鉄鉱石などのヴァージン原料の需要が減ってくる。

当面は世界の需要が増えているので、高炉がいらないということにはならないが、いずれは高炉が減って電気炉が増えてくるのだろう。


3.家電やエコキュートなどの省エネは5−10年で目覚ましく進歩している

古いエアコン、冷蔵庫を買い替えると、5年前後で元が取れる。またヒートポンプ給湯(エコキュート)に変え、内窓を取り付けたりして窓を二重にすると、住宅のエネルギー消費は格段に下がる。

環境省は今年は月曜日にしか暖房を入れていないが、オフィスの断熱を強化したので、一週間暖房をつけなくても(厚着している人もいるという話もあるが)、いけるのだと。

また小宮山ハウスでは太陽光発電も入れたため改装したリターンは12年だが、電力会社の買電価格が上がったので、さらにリターンは短縮するという。


冷暖房の理論エネルギーはゼロだと小宮山さんは語る。筆者も内窓や、省エネ家電への切り替えなど、実際に検討してみようと思う。

たしか小宮山さんはアメフット部のOBだったと思うが、いわゆる「東大総長」、「象牙の塔」という感じでは全然ない。やはりアメフット出身だけに、チームプレーで仕事をこなすという発想が、唯我独尊タイプが多い他の学者と違うところだろう。

エネルギッシュで、実務的であり、大変参考になる講演だった。


「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ
著者:小宮山 宏
中央公論新社(2007-09)
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東大総長小宮山宏教授の日本改革の提言。

小宮山教授の専門は化学工学で、小宮山教授自身がCVD(Chemical Vapor Deposition)という半導体の薄膜製法を手がけ、CVD反応工学という新しい学問を生み出したという功績がある

小宮山教授は2003年に技術を生活に生かす「動け!日本」というプロジェクトを主宰しており、2006年、2007年と連続してダボス会議にも出席している。

東大総長がダボス会議に出席していたとは初耳だが、象牙の塔にこもらない行動派の総長という印象だ。


出羽の守

明治以来の学問は「出羽の守(かみ)」だったと。つまり米国「では」、イギリス「では」と外国の例を紹介するだけの論文を書いた人々だった。

今もこういう人は多い。ちょうど10月1日に郵政民営化が実現したが、マスコミに登場する評論家の多くは依然としてイギリス「では」、ドイツ「では」、スゥエーデン「では」と言っている「出羽の守」ばかりだ。

これからは、自分でゼロからモデルを創造しなければならないと小宮山教授は主張する。


東大総長としての訓辞

東大総長に就任して、小宮山教授は学生生活で獲得すべき目標として次を訓辞したという。

1.本質を捉える知
2.他者を感じる力
3.先頭に立つ勇気

筆者もかすかに記憶があるが、歴代の総長の訓辞はだいたい1が多い。有名な大河内一男総長の「ふとった豚よりやせたソクラテスになれ」というのも、1の路線だ。

つまり大学というアカデミズムのトップの自覚を持って、リーダーとして社会のために勉学に励めというものだ。

そんななかで、実社会で成功する上で不可欠なコミュニケーション能力や、リーダーとなる勇気を説いているのも、行動派総長小宮山教授の特徴と思える。


日本は課題先進国

小宮山教授は日本は課題先進国だという。

まだどの国も解決したことのない問題が山積だ。エネルギーや資源の欠乏、環境汚染、ヒートアイランド現象、廃棄物処理、高齢化と少子化、都市の過密と地方の過疎、教育問題、公財政問題、農業問題など。

これらは遠からず世界共通の問題となってくる。

日本のGDPは世界第2位で世界の11.2%を占めるが、二酸化炭素排出量では世界4位、4.7%にとどまる。日本には公害対策や、省エネ、太陽電池利用、ハイブリッド車開発という輝かしい歴史がある。

日本が課題解決先進国として世界をリードするのだ。

GDP規模ではいずれ人口が10倍の中国、インドに追い抜かれようが、エネルギーの効率的利用や公害問題で示したように、持続可能な世界をつくる課題先進国、21世紀のフロントランナーとして世界の範となるのだ。


サステイナブル・ソサエティ

小宮山教授は1999年に「地球持続の技術」という本で、「ビジョン2050」という環境と資源に関するトータルビジョンを提案した。

地球持続の技術 (岩波新書)
地球持続の技術 (岩波新書)


2030年には中国・インドが先進国の仲間入りをすると予想され、2050年には今の途上国を含め、世界中のすべての国が先進国並の生活水準となる。そのとき人口は90億人となり、それ以降は漸減する。エネルギーの消費は3倍まで増える可能性がある。

2050年を目標として、持続可能な(サステイナブル)社会をつくるためには、次の3つが必要となる。

1.徹底したリサイクルによる物質循環システムの構築
2.エネルギー効率を現在の3倍に引き上げる
3.自然エネルギーの利用を現在の2倍に引き上げる

ハイブリッド車から深夜電力が利用できるプラグインハイブリッド車、さらに電気自動車に向かうことによって自動車用のガソリン消費は2050年までにはゼロとすることができるという。

小宮山教授は廃材、モミガラ、麦わらなどを利用したバイオマスも提唱する。

バイオマス・ニッポン―日本再生に向けて (B&Tブックス)
バイオマス・ニッポン―日本再生に向けて (B&Tブックス)


小宮山教授は、自宅でも太陽光発電、アイシネンという断熱材、二重ガラス、エコキュートというヒートポンプ型冷暖房を導入して、自分でも実践している。


教育に関する提言

教師育成にも問題があると小宮山教授は主張する。

筆者も知らなかったのだが、以前は9割の高校生が物理を学んだが、今の高校ではわずか2割しか受講していない。

また以前は大学3年生からでも単位をよけいに取ることで、教員免許が取れたが、今は小学校の先生になるためには、事実上文系の教員養成コースに行かないと難しい。

物理も勉強したことがなく、文系で先生となるので、理科の嫌いな小学校の先生がどんどん増えていると。

小宮山さんは教員免許取得機会の多様化を主張しており、さらに教育院を設立して、多くの大学と教育委員会が共同して、新しい教師育成と現場の教師の研修にあたるべきだと主張する。


高等教育投資の財源

日本と米国の高等教育投資の差は大きいと小宮山教授は指摘する。

日本は2兆円だが、米国は15兆円で日本の7.5倍もある。これに加えてエンダウメントと呼ばれる寄付を基にした基金を高利で運用し、巨額の運営資金としているのだ。

たとえばハーバード大学の基金は3兆円弱、これを平均運用利回り15%で回して、2006年の利益は4,000億円にも上る。イェール大学は2兆円、平均運用利回りは20%に達するという。

日本では慶應大学のエンダウメントの規模が300億円で、全く勝負にならない。東大の年間予算が2,000億円なので、米国の一流大学は基金の運用益だけで東大の年間予算の倍の資金を得ているのだ。

米国の大学が豊富な資金によって、学費免除と奨学金を与えて、世界中から優秀な学生をリクルートしているのは知る人ぞ知る事実だという。

教育の質は予算規模だけでは決まらないが、理系などの実験装置・設備が必要な分野では、予算の差が高度な研究が可能かどうかを決めるファクターともなる。

小宮山教授は日本の大学への財政投資を今の倍の5兆円に増やすべきだと主張する。

財政事情が許さないのであれば、米国の様に個人の寄付を活用するために、税額控除を認めるべきだと主張する。

現在の日本の税制では、寄付は基本的に所得控除で税額控除ではない。

東大では2名の副理事に加え、10名以上をフルタイムで雇用して寄付集めに専念させているが、現状では限界があると。

発泡酒の例を見るまでもなく、税制は社会を動かす力がある。その意味で寄付を税額控除として、日本国民の1,500兆円の個人資産を教育に振り向けようという小宮山教授の主張は合理的だと思う。


東大の公開講座Podcasting

東大の知に関する公開講座がPodcastingで提供されている。iTunesで無料でダウンロードできる。

ノーベル賞受賞者の小柴昌俊教授が第1回に宇宙はどうやってできたかを講義している。

筆者もダウンロードして現在聞いているが、わかりやすく面白い。

便利になったものだ。


日本人への応援歌

日本は江戸時代に教育普及率が70〜85%に達し、当時の世界で圧倒的にトップだった。高い教育水準と識字率が文明の基盤でもあった。

明治になって、欧米に工業化の面で追いつくべく富国強兵を実現した。敗戦でほとんどすべての産業基盤、社会基盤を失ったが、再び欧米モデルを追いかけ、終戦から23年後の1968年に世界第2位のGDPを達成した。明治維新から100年後のことだった。

狭い国土で乏しい資源でありながら高い成長を達成し、なおかつ公害問題もエネルギー問題も解決した日本。

その国民性を持ってすれば、「課題先進国」として世界に先駆けて課題を解決することもできるはずだと小宮山教授は日本国民に対してエールを送る。

「課題解決先進国になれ、日本はそれができるのだ、日本はきわめて良い位置にあるのだ」と。

行動派総長の日本への応援歌。あらためて発見することも多い。是非一読をおすすめする。


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野球がもっと面白くなる 落合の超野球学2 

2010年の日本シリーズで、ロッテに苦杯を飲まされた落合博満監督が浪人時代にベースボールマガジンの超野球学シリーズで持論を展開した本。

今回の日本シリーズでは延長が続き、「いい試合」の連続だったが、逆に2007年の中日ー日本ハムのような歴史に残る場面はなかった。

たとえば2007年の日本シリーズでは、最終戦の完全試合達成中だった山井を、8回で換えた采配が一時論議を呼んだ。

「小心な夢のない野球」とか言っていた人もいたが、結果論もいいところだ。

1:0の試合で、そのまま逃げ切れば日本シリーズ制覇となる場面で、岩瀬へのスイッチは当然だ。そのまま山井に投げさせていれば、日本ハムは最後の力を振り絞って反撃してきただろう。

一人でも走者を出せばズルズル行く恐れはあった。筆者も記憶があるが、ヤクルトの松岡弘だったと思うが、9回まで完全試合をしていたが打たれて負け投手になった例もある。

あの場面で岩瀬が出てきたので、日本ハムは意気消沈し、日本ハムの息の根を止める見事な采配だった。

勝つために野球をやっているのであって、記録をつくるために野球をやっているのではない。

この本でも紹介されている落合の、「相手の嫌がることをやるかが勝負の鉄則」の真骨頂を見せた試合だ。

その落合の野球理論がイラストや写真入りで、わかりやすく説明されているので、前回の「超野球学(1)」に続いて紹介する。


落合博満の超野球学〈2〉続・バッティングの理屈落合博満の超野球学〈2〉続・バッティングの理屈
著者:落合 博満
ベースボールマガジン社(2004-03)
販売元:Amazon.co.jp
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超野球学1はバッティングの技術、基本を一から説いたが、2では頭、考え方を説く。

いかに相手の嫌がることをやるかが勝負の鉄則だと。

佐々木主浩との対決ではフォークを捨ててストレートだけで勝負して良い結果を残した。

そういば数年前イチロー、佐々木のマリナーズと松井が入る前のヤンキーズで大リーグのプレイオフを戦ったとき、ヤンキーズ打者全員に徹底的にボールを見られて自滅した事を思い出す。

力のある投手がアウトローをひたすらついてくるとお手上げなのに、なぜ自分と同じ考えをする投手がいないのだろうと、ほくそ笑んでいたのだと。

『最後は自分のウィニングショットで打ち取りたい』という投手の美学、『真っ向勝負したから悔いはない』という投手の冒険心、相手バッテリーの性格を考えて攻略するのだと。

『データ人間になってはいけない、自分がデータの宝庫になろう!』といいながら、『ヤマは張ったことはありません。』、『配球も読んだことがありません。』ではやや混乱するが、インハイを意識してたち遅れない準備だけをしてボールを待つのだという。

超野球学1でのボールをよく見る、深いトップと大きなフォロースルー、早い始動、超野球学2の理想的な体の回転、『ボールを押し込む』という手首の動き、理想的なミートポイント、これらのチェックポイントを頭に入れて、かつリキまない。

今度バッティングセンターに行くのが楽しみだ。

最後に現役時代の『練習なんかしません』発言について、現役を退いた今『練習はしました。質も量も他のどの選手にも負けないくらい練習しました』と胸を張って言えると。

落合の言うことはすべて疑ってかからなければならない。すべて目的があって言っているのだから。


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落合博満の超野球学1 全然「オレ流」じゃない本当の落合

2010年11月9日追記:

日本シリーズでロッテに敗れた中日落合監督。3年前は日本シリーズを制したが、今年は伏兵西村ロッテに苦杯を飲まされた。

勝負師落合としては案外冷静に分析して、もう来年のことを考えているのかもしれない。

落合監督の浪人時代の野球論の本を紹介する。

マスコミは「オレ流」とかレッテルを貼っているが、今度別ブログで紹介する「なぜ日本人は落合博満が嫌いか?」でテリー伊藤が言っているように、プロに徹して遊びのない落合はマスコミ受けしないだけだと思う。

なぜ日本人は落合博満が嫌いか? (角川oneテーマ21)なぜ日本人は落合博満が嫌いか? (角川oneテーマ21)
著者:テリー 伊藤
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-05-10)
販売元:Amazon.co.jp
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2007年11月2日追記:


日本シリーズを制して、中日に53年ぶりの優勝をもたらした落合博満監督。

名球会の資格がありながら、名球会には入らないなど、落合監督は「オレ流」とか言われて誤解されることが多い。

今回の最終戦も落合監督の采配が非難されているが、プロとして当然のピッチャー交代だと思う。

その落合監督の考えがよくわかるのが、この「コーチング」と「超野球学(1)」なので、日本シリーズ制覇を記念して再掲する。

コーチング―言葉と信念の魔術


落合博満の超野球学〈1〉バッティングの理屈


落合博満中日監督というとマスコミは「オレ流」とレッテルを貼る。しかし彼の流儀は「基本に忠実に」であり、全然「我が道を行く」とか「唯我独尊」ではない。

彼はあまりに当たり前の事しか言わないので、常人とは異なる「鋭い」見方で人気を保っている有名プロ野球解説者面々には煙たがられ、彼らとは異なるという意味で「オレ流」と呼ばれているのかもしれない。

そんな落合の本は出版社が受けを狙ってか前著の「コーチング」でも「教えない、ただ見ているだけで良い」とか、誤解を招くサブタイトルを付けられていた。

この本も「超野球学1」とあたかも普通の野球理論とは異なる本の様なタイトルを付けられているが、実際はサブタイトルの「バッティングの理屈」が示すとおり、基本の基本のおさらいである。

バッティングの常識は
1.センター返し、

2.ボールをよく見る、

3.コンパクトにスウィングする

の3点だが、落合はそれぞれにわかりやすい説明をして、それらがいかにちゃんと理解されていないかを指摘する。

この本も読んでから買ったが、買う価値のある本だと思う。

たとえばセンター返しについては2000年の中村紀洋との対談で、「落合さんはライトへのホームランが多かったと思いますが、どうやったら右へ強い打球を狙い打ったのですか」と聞かれた時に「ライトに狙い打ったことは一度もないよ」と答えたと。

一瞬中村は驚いた表情をしたが、すぐになるほどと理解した由。翌2001年は中村は前年の記録を大幅に伸ばし、プロの一流の打者でも基本に忠実にやることによって記録を伸ばせることを実証してみせた。

あくまで常識=理屈を説き、全然オレ流ではない。

「バッティングは1日、2日で上達するものではない。1回でも多くバットを振った選手が生き残る。」実に泥臭いが、そういえば王も練習の虫と言われていたことを思い出す。

コンパクトなスウィングの解釈はバットを短く持って、当てに行くのではなく、「トップの位置はより深く、バットは一直線に振り出し、フォロースルーは大きく」だ。

全然しろうと考えと違うが、なるほどと思う。参考になる野球理論である。



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連戦連敗 祝!文化功労者 安藤忠雄氏の東大講義録

連戦連敗連戦連敗
著者:安藤 忠雄
東京大学出版会(2001-09-03)
販売元:Amazon.co.jp
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3年前に東大の入学式に出席した時に特別教授として挨拶されていた建築家安藤忠雄氏の東大大学院での建築学講義録。

20080411112038安藤忠雄




東大入学式での安藤さんのスピーチは大変ユニークで印象深かったので、簡単に紹介しておく。

まずはたまたま耳に入ったという新入生の親の「これからはゆっくりできるね」という発言を引き合いに出し、「ゆっくりしてもらっては困る。現在の日本は迷走状態なので、これからは病気になるほど死にものぐるいで勉強して貰わなければ困る」と檄を飛ばす。

安藤さんは1941年大阪生まれ。幼少の時から祖母と一緒に暮らしていた。経済状態から中学を出て働こうと思うが、祖母がせめて高校は出て欲しいということで工業高校の機械科を卒業した。高校2年で上京したときにフランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル旧館(現在は明治村に保存)に魅せられ、どうしても建築家になりたいと心に決める。

800px-ImperialHotelFacade





この本に刺激を受けてフランク・ロイド・ライトの作品集を読んでみた。ライトの作品は米国の富豪の邸宅が多く、案外公共の建物や海外の建築が少ないことに驚いた。

米国ではニューヨークのグッゲンハイム博物館や、筆者が駐在していたピッツバーグ近郊のFalling Waterが有名だ。

建築ガイドブック フランク・ロイド・ライト建築ガイドブック フランク・ロイド・ライト
著者:Arlene Sanderson
丸善(2008-01-29)
販売元:Amazon.co.jp
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Falling Waterは上の本の表紙の写真に使われており、ピッツバーグのダウンタウンから車で1時間程度のところにある。家の中を小川が流れ、滝があるという構造の富豪の別荘だ。

450px-Fallingwater,Dec08










出典:以下すべてWikipedia

家具に至るまでフランク・ロイド・ライトがデザインしており、芸の細かさに驚かされた記憶がある。

安藤さんは高校を卒業して1年間今で言うニート生活を送るが、その間に阪大と京大の建築の教科書を取り寄せ、朝9時から深夜3時まで毎日読みふけり、独学で建築を学ぶ。

お金を稼ぐ方法としてボクサーならファイトマネーで4,000円(今で言うと10万円くらい)が貰えるということで、ボクサーになってお金を稼ぐが、ファイティング原田を見て、自分には才能がないということでボクサーを引退する。

22歳の時に1ヶ月掛けて日本全国をまわり、広島で原爆に対して強い怒りを覚え、日本全国の棚田や美しい民家などを見て、日本の美しい風景にふれる。

1965年、24歳の時に海外旅行が解禁されると、すぐに横浜から船でソ連に行き、シベリア鉄道に乗ってヨーロッパに出てヨーロッパからアフリカ、そしてアジアを経由して各地で名所旧跡・名建築を訪ね歩き、建築家としての教養と知識を磨く。

日本のバックパッカーのはしりだ。

この本でも、安藤さんは17−18世紀のイギリスで、貴族の子弟がフランスやイタリアなどのヨーロッパ大陸を1−2年、長ければ5−6年放浪して幅広い教養を身につけて返ってくるグランドツアーという習慣を紹介しているが、安藤さんはそれを地で行っている。

1969年に安藤忠雄建築事務所を設立し、日本国内を中心に個人住宅から美術館など様々な仕事をして、その実績をひっさげて海外でのコンペにも数多く参加するが、コンペの勝率は10戦9敗くらいで、それゆえこの本のタイトルが「連戦連敗」である。

ちなみにユニクロの柳井さんも同様のタイトルの「一勝九敗」という本を出しているので、別ブログのあらすじを参照して欲しい。

連戦連敗でコンペには敗れても競争相手が考え抜いた斬新な発想やデザインを学ぶことができるので、失敗は次の仕事に必ず役に立てることができるのだと。

今まで失敗を経験していないエリート東大生は間違いを極端に恐れるが、失敗を恐れることなく、世界の知の頂点を目指す東大で、死にものぐるいで勉強して、世界・地球をより良くするために新しいことにチャレンジして欲しいという講演だった。

原稿も用意せず、簡単なメモを持っているだけで15分あまりのスピーチを行い、内容も東大の入学式という場面に適した大変感銘を受けるもので、さすが世界的建築家安藤忠雄だと思わせる内容だった。

その安藤さんの講演の中で紹介されていたのがこの本だ。

東大大学院での建築学の講義録なので、世界の様々な建築と、20世紀を代表するル・コルビュジエルイス・カーンなどの建築とともに、安藤さんが参加した数々の建築プロジェクトの入選作と安藤さんのプラン、他の競争相手のプランなどが安藤さんの解説付きで紹介されている。

安藤さんが尊敬するル・コルビュエの作品集は次を読んでみた。


ル・コルビュジエ 全作品ガイドブックル・コルビュジエ 全作品ガイドブック
著者:Deborah Gans
丸善(2008-01-31)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
東京上野の国立西洋美術館がル・コルビュジエの作品だ。

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この本の中では、いくつか筆者も見覚えのある建物がコンペの対象として取り上げられている。たとえばシカゴ・トリビューン社屋、JR京都駅香港上海銀行などだ。

安藤さんは東京都庁から見た東京の無計画さに驚いたと記している。

放射線状にシンメトリーに道路が伸びるパリは、アンドレ・マルローが「群としての建築物の保存・再生」をうたったマルロー法をつくって歴史的街区を保存することを義務づけたので、町並みが保存されている。

戦禍による瓦礫からの復興でも、ワルシャワやフランクフルトでは破壊された旧市街をできるだけ歴史的な外観を再現するように建設しており、都市のアイデンティティを保つ努力をしている。例としてフランクフルトのレーマー広場の戦争で破壊された姿と現在の写真が紹介されている。

言われてみれば日本では古い物を壊すときに、町並みを保存しようという発想はない。ごく一部の建物、たとえばマッカーサーがGHQのオフィスとして使った第一生命本社ビルなどで下層階だけ昔の外観を保存するということは行われているが、町並み全体という考えはない。

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ヨーロッパの長期的な都市建設/町並み保存の考えには、目を開かされる思いだ。

最新の建築設計としては1997年に完成したコメルツバンク本社ビルが紹介されている。

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一年中自然換気で快適な室内温度が保たれる設計だ。外の気象条件が悪い場合にはコンピューター制御で冷暖房設備も稼働する最新のインテリジェントビルだ。この設計はノーマン・フォスターが行っている。

フォスターは香港の香港上海銀行ビルも設計しており、8本のマストによる釣り構造で、地上階には柱がなく、10階までアトリウムという開放性の高い建築を実現している。地震のない香港ゆえに実現した建物だと思う。

この自然換気というエコアイデアが、今年6月14日にオープンする安藤さん設計の地下鉄副都心線渋谷地下駅の「地宙船」いう自然換気システムにつながったのだ。

まさに連戦連敗のたまものである。

優れたデザインが一国の産業振興につながった例として、フィンランドのアルヴァ・アアルトの例を説明している。

アアルトはフィンランドの紙幣の顔にもなっているが、それは家具や建築のデザインコンセプトに集成材を取り入れ、フィンランドの木材産業勃興の機会をつくった。

フィンランドでは無垢材として市場に出せるような木材が少なかったが、アアルトのデザインで集成材を家具や建物の曲面に用いることで、雑木がかけがえのない国家資源となった。

安藤さんは瀬戸内海の直島にある直島コンテンポラリーアートミュージアムに関わっており、平成の鬼平、中坊公平さん他と一緒に設立した「瀬戸内オリーブ・ネットワーク」という植樹運動なども紹介されている。

廃棄物投棄の島香川県豊島(てしま)にオリーブ植樹で環境再生しようという試みだ。

本のタイトルが示す様に、コンペはほとんど敗退だが、安藤さんが海外コンペで勝利したプロジェクトとしてアメリカテキサスのフォートワース現代美術館のデザインが紹介されている。


建築の教科書という堅い分野ながら、安藤さんの見識が溢れるすばらしい講義である。東大理Iでは最も人気が高い学科の、高名な建築家による格調高い講義の内容がよくわかる。

専門的な計算とかは一切なく、もっぱらデザインについての講義なので、素人でも理解できる内容で、この本を読んで建築に興味がわいた。これからは建物の美観や使いやすさにも気を付けて見ていこうという気になる。

安藤さんの略歴も驚きに値するし、建築の機能美を再発見させてくれる講義で興味深い。

書店では置いていないかもしれないので、是非アマゾンで買うか、図書館で探して手にとって欲しい本である。


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