時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2010年10月

建築家安藤忠雄 祝!文化功労者 安藤忠雄さんの自伝

今年文化功労者として表彰される世界的建築家安藤忠雄さんの自伝。

筆者も講演を聴いたことがあるが、特徴あるダミ声で、安藤さんが昔ボクサーだったこととか、大学に行かずに自分で建築を学んだことなど、印象に残る講演だった。

建築家 安藤忠雄建築家 安藤忠雄
著者:安藤 忠雄
販売元:新潮社
発売日:2008-10
おすすめ度:5.0
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安藤さんは東大名誉教授でもあるので、別ブログで東大での講義録「連戦連敗」を紹介した。

連戦連敗連戦連敗
著者:安藤 忠雄
販売元:東京大学出版会
発売日:2001-09-03
おすすめ度:4.5
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安藤さんは高卒で大学に行っていない。ましてや大学の建築科で学んだこともない。若い頃はペイが良いのでプロボクサーになったが、ファイティング原田を見て自分は才能がないとあきらめ、独学で建築を勉強し、デザインの仕事を探した。

若くして日本各地や世界各地を巡って実際の建築を見てきたこともあり、苦労が実って評価を得て、サントリーの佐治さんや、サンヨーの井植さん、ベネッセの福武さんなどのパトロンも得て、日本を代表する建築家としての地位をつかんだ。

1997年からは東大の教授、名誉教授を勤めている。筆者が最初に安藤さんの話を聞いたのも今年の東大の入学式での記念講演だった。

この本では安藤さんの数々の作品が安藤さん自身の言葉で紹介されている。

「連戦連敗」で紹介されている建築作品は、安藤さんの作品は少なく、そのタイトルが示すとおり安藤さんが競争で負けた作品や、結局採用されなかったデザインなどを集めたものだ。

この本を読んだ人には是非「連戦連敗」も一読をおすすめする。


住吉の長屋

安藤さんの初期の作品で、日本建築学会賞受賞作の「住吉の長屋」についても、「連戦連敗」では、外観デザインだけが紹介されていたが、この本では中の構造、とくに「断熱もせず、冬の寒さはどうなるのか。雨の日には寝室からトイレに行くのに、手すりもない階段を、傘をさしていかねばならないのか」といった住民の側の問題点も明らかにしている。

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「問題はこの場所で生活を営むのに本当に必要なものは何なのか、一体住まうということはどういうことなのかという思想の問題だった。

それに対し、私は自然の一部としてある生活こそが住まいの本質なのだという答えを出した。」のだという。

狭い敷地の中で部屋と部屋の間をオープンな中庭にして、渡り廊下と階段でつなぐという奇抜なデザインは建築学会でも議論を巻き起こしたという。

初期の作品を「都市ゲリラ住居」と安藤さんは名付けていたという。

これ以外にも現代の「懸造り」と呼ばれた六甲山の断崖につくった六甲の集合住宅I、II,IIIが様々な角度からの写真入りで紹介されている。

安藤さんが尊敬するル・コルビュジェユニテ・ダビタシオンを意識してつくったというパブリックペースを広く取った集合住宅だ。

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筆者が特に気に入ったのは、サンヨーの井植さんに頼まれて設計した淡路島の本福寺の水御堂だ。

地面に楕円形の蓮池用の水盤を設け、その下に建物を埋め込むという設計だ。

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安藤さんが初めて手がけた寺院建築だが、さすが世界を旅してきた安藤さんだけあって、インドのお釈迦様が暮らす蓮池が再現されたようで、筆者は大変気に入った。

その他にも安藤さんのいろいろな作品が紹介されていて、見ていて楽しい本だ。

建築に興味がある人でもない人でも、是非一度手に取ってパラパラっと見て欲しい本だ。


参考になれば次クリック願う。






ジム・ロジャースの中国の時代 20年先まで見据えた投資

尖閣列島をめぐり日中間がまたぎくしゃくしてきたが、今年中国が日本をGDPで上回るのは確実と思われる。

世界の企業の時価総額ランキングでも中国がトップ10に5社入っており、日本はトヨタだけという状態になってきている。

有名投資家としては真っ先に中国投資を実施したジム・ロジャースの本を紹介する。

ジム・ロジャーズ中国の時代ジム・ロジャーズ中国の時代
著者:ジム ロジャーズ
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2008-06-14
おすすめ度:4.0
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以前紹介した橘玲さんの「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」でもしばしば登場したクオンタム・ファンドでジョージ・ソロスのパートナーだったジム・ロジャースの中国投資ガイドブック。「私は20年先まで見据えている」と本の帯に書いてある。

ジム・ロジャースは1988年にクオンタム・ファンドをやめ、バイクで世界一周しながら、自分の目で投資機会を見つけ、早くからいろいろな国で投資しているので、アドベンチャーキャピタリストと呼ばれている。

筆者が最初に中国に出張したのは1983年だが、ジム・ロジャースが中国に最初に行ったのは1984年とのことで、当時の状況を思い出させる。

ジム・ロジャースが最初にバイクで中国を横断したのは1988年だが、一番時間が掛かったのは、上海からカラコルム高速道路?まで3,000キロを走破することではなく、必要な許可を中国政府から取ることだったという。

筆者も記憶があるが、当時は完全な中央集権体制で、地方政府の高官は中央の官庁から派遣された役人ばかりだった。

お金も中国人が使う人民元と、外国人用の外貨兌換券の2種類があり、ホテルやレストランの料金はすべてダブルスタンダード、レストランは外国人とつきそいの中国人の食事場所が分かれていた。

中国人料金は大体外国人料金の1/10から1/30程度だったと思う。ホテルの電話はすべて盗聴されており、日本に電話して交渉戦略を打ち合わせしたりすると、すべて中国側につつ抜けになるということで、事前に暗号のような合言葉を決めて中国との交渉に臨んだものだ。

中国国内は大都市中心の外国人解放区と地方の非解放区とに分かれており、非解放区は基本的に外国人が入ることが禁止されていた。筆者は浙江省杭州から車で6時間程度の横山という場所にある工場を訪問したが、途中のいくつもの町で役場に立ち寄り、通行許可を取ってからでないと進めないという有様だった。

ちなみに杭州の近くには、逆流するので有名な銭塘江がある。アマゾンのポロロッカと同じ現象だ。

浙江省には杭州の西湖はじめ観光名所・旧跡が多いので、今や日本語ホームページもあるが、1983年には杭州には外国人用のホテルが2軒しかなかったし、朝食にパンを頼んだらカステラのようなボロボロくずれるパンが出てきた。

ちなみに1983年はビジネスでの出張だが、中国側が気を使ってくれて西湖観光や、仏教の天台宗の総本山の天台山国清寺、高級ウーロン茶で有名な龍井茶の龍泉を訪問し、宴会は日本にも支店?がある西湖のほとりの楼外楼で「乞食鳥」を食べた。

初めて「乞食鳥」を食べたので、その調理法にびっくりした。

観光客などほとんどいなかった時代なので、当時出来たばかりの花園飯店(記憶不確か)の食堂で、中国側の通訳やホテルの従業員らと食事のあと一緒に歌を歌って宴会をした。「北国の春」が、中国ではやっていたのに驚かされた記憶がある。



話が横道にそれたが、いずれにせよジム・ロジャースが1988年から中国に注目して、実際に投資していたことには脱帽する。(1988年に中国の株を買ったことは、近々紹介する「商品の時代」に書いてあった)

大投資家ジム・ロジャーズが語る商品の時代大投資家ジム・ロジャーズが語る商品の時代
著者:ジム・ロジャーズ
販売元:日本経済新聞社
発売日:2005-06-23
おすすめ度:4.5
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この本は23年間、24万キロを掛けて書いた本と言うこともできると、ジム・ロジャースは語る。まさに実践派投資家である。


21世紀は(またもや)中国の世紀

21世紀は中国が中心になって世界を牛耳るので、子どもや孫には中国語を習わせておきなさいとアドバイスしている。2003年に生まれた娘のハッピーには、中国人の乳母をつけたので、北京語がしゃべれるという。

1970年までは「メイドインジャパン」といえば、安っぽくて品質の悪いものだったが、日本が大きく変わったのは今日中国に見られるのと同じ勤労意欲と高い貯蓄率、大企業と政府の利害の一致、技術革新の組み合わせだ。中国は日本の国土の25倍で、日本がもう失ったかもしれないハングリー精神とやる気に満ちているという。

次代のGM,マイクロソフト、AT&Tが現れるかもしれないとジムは語る。

この本では注目される業界と代表銘柄が紹介されているが、ジム・ロジャース自身がどこに投資しているかは書いていない。

この本を書いている2007年の段階で、中国株が上昇していたので、ジムはソフトランディングを予想しているが、もしもバブルが膨れ上がったら、しばらくは注意したほうが良いと警鐘も鳴らしている。その場合には、市況が底入れした段階で動けるように準備しておこうと呼びかける。

現在の中国株の市況動向から言って、底値はまだ見えないと思うが、10年、20年後の世界を考えると中国は「買い」だろうと筆者も思う。ジムが言う様に、準備をして長期保有株を仕込むのには良いタイミングではないかと思う。

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原著はもちろん英語なので、この本でジムはアメリカなど世界の一般投資家に中国への投資を呼びかけており、中国株の歴史的背景や、中国のカントリーリスクなどにも触れている。

A Bull in China: Investing Profitably in the World's Greatest MarketA Bull in China: Investing Profitably in the World's Greatest Market
著者:Jim Rogers
Random House Trade Paperbacks(2008-12-30)
販売元:Amazon.co.jp
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中国のリスク

1.侵略者としての中国
中国はICBMを40発程度持っていると見られるが、それは米・ロの保有する核兵器の4%程度で、抑止力的なものだ。朝鮮戦争やベトナムとの中越紛争までは中国は拡張主義者と見られていたが、一人っ子政策で子どもが一人しかいない今、親が喜んで戦場に送るだろうかとジムは疑問視する。

台湾問題についても、ビッグマックを売っている国同士では戦争したことがないという「マクドナルド要因」を取り上げる。中国は軍事費に国家予算の7%(実際はその3倍と見られている)を使って、軍備の近代化を進めているが、台湾とは経済面で不可分の関係にあるので(大前研一氏は「霜降り状態」と表現している)、国民党政府となってむしろ両国は強固な結びつきになるのではないかと語っている。

2.環境問題
「僕たちは敵に出くわした。それは僕たちだった」という言葉をジムは紹介し、中国の深刻な環境汚染について説明している。

筆者は知らなかったが、石炭に多くを依存している中国の温暖化ガス排出量は今やアメリカを抜き、世界一にならんとしている。カリフォルニアの曇った空に舞う粒子の1/4は中国から飛んできたものだという。

中国と世界のエネルギーバランスを対比して紹介しておく。いかに中国が温暖化ガス排出量の多い石炭に依存しているかがよくわかる。

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ジムが懸念しているのは、中国が将来砂漠化してしまうのではないかということだ。インドも中国にも増して水不足はひどいという。ジムは両国をバイクで旅して、水不足のためかつては栄えた町がゴーストタウンと化しているのをいくつも見たという。

世界で最も汚染のひどい都市20のうち16は中国にある。化学汚染によって土壌の良い土地は減少し、森林は砂漠化し、工業地帯に住む子どもの8割は鉛中毒に冒されている。工場排水の80%は下水処理がされておらず、2012年には揚子江は生き物の住めない川になる恐れがある。中国は人口当たりの水の量が世界で下から13番目だといわれている。

ジムは中国の水問題を解決するために、ロシアのバイカル湖の水が使われることを予想している。バイカル湖の周辺をバイクで走ったときに、バイカル湖が米国の5大湖をあわせたよりも多くの水量を持ち、世界の淡水の20%を占める世界最大の淡水湖で、一時は中華帝国の領土の一部だったこともあるという。

次がロシアの極東の地図だ。バイカル湖と中国の間には山脈があり、モンゴルがある。距離も相当あるので、はたしてジムの言っているようになるかどうかは筆者は疑問に思う。

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中国政府や民間企業が上水道・下水道・下水処理のために多くの投資をすることが見込まれ、この関連の業界もビジネスチャンスが増えるだろうと予想している。

バロンズ誌は、中国の問題点として、さらに人口の高齢化と蔓延する汚職をあげているが、ジムは何億といる地方の人が今後何十年も高齢化する人口を補っていき、汚職はいわゆるアジアンタイガーには共通する問題だと整理している。


業界寸評と銘柄紹介

ジムは中国の現状を様々な角度から分析し、関連する業界の中国あるいは台湾又は世界の主要企業のここ3年の業績、上場市場と株価コードを紹介している。紹介している業界の切り口は次のようなものだ。

1.戦時によし、平時によし − 航空宇宙産業と台湾プラステックなど台湾企業

2.流体利益 − 公害対策企業とシンガポール企業、欧米企業など

3.この世では誰もが知っている − 保険・年金、石炭、タイヤ、アルミ、通信

4.現代中国の5大革新者 − 分衆伝媒(デジタルサイネージ)、百度(検索エンジン)、中国徳信(通信)、無錫尚徳太陽能電力(サンテック、太陽電池)、アリババ(BtoB電子商取引)

5.うまい汁を啜る − 電力会社、石炭会社、石炭掘削機

6.イケ株、石油 − ペトロチャイナなどの石油会社

7.中国の風に吹かれて − アレヴァ(フランス企業、中国発の原発を建設),ユーセック(ウラン生産)、BHPビリトン(鉱山会社)、再生可能エネルギー会社など

8.アスファルトの上に立つ − 高速道路会社、港湾運営会社、建設業者

9.自動操縦 − 自動車会社、自動車部品メーカー

10.出発進行 − 鉄道会社、鉄道建設、船会社

11.船乗り計画 − 携程旅行網(旅行会社)、芸龍旅行網、空港会社、航空会社

12.全室煌々と − 上海錦江国際酒店(ホテル150軒のチェーン。1983年には上海で唯一の高級ホテルだった)、地方の旅行会社

13.空の飛び方 − 航空会社、空港会社

14.人民公社よ、さようなら、コンバインよ、こんにちは。− 食品会社

15.ジューシーな果実を − 飲料メーカー

16.タネ銭 − 食肉加工、種メーカー、農業機械

17.ファーストフード − 砂糖メーカー、牛乳メーカー

18.人民のスピリッツ − ワインメーカー、ビールメーカー

19.緑の大地 − 有機野菜、肥料

20.金を生む処方箋 − 超音波検査機、バイオ、医療サービス

21.中国の未来を保障する − 保険会社

22.宿題を少々 − 新東方教育科技集団(外国大学の入試英語教育)、通信教育、職業学校

23.建設的批判 − 不動産開発会社

24.エマージング中国 − ハイテク、宇宙・航空、インターネット(2006年末で、中国のインターネット人口は1億4千万人(そのうち76%は高速回線)、ブロガーは8千万人、中国語ウェブサイトは84万)、映画、スポーツ、クレジットカード、携帯電話(利用者5億人!)、ケーブル・テレビ(利用者1億4千万人)、出版、小売・ファッション。

1999年に中国にはスーパーマーケットは1軒しかなかったが、2003年には6万軒に増えたという。


最後にジム・ロジャースは、人民元に対する投資も比較的優れた安全な方法であると語っている。今後20年の間に、ドルに対して300−500%上昇すると予測している。次は人民元の対ドル相場推移だ。

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筆者が現在も使っている米国のインターネット専門銀行everbankの多通貨投資サービスの人民元口座開設を紹介している。ちなみに筆者は知らなかったが、everbank人民元以外でもいろいろな国の通貨で預金ができる


やはり足で稼いだ情報は貴重だ。BRICS、特に将来のソニー、ホンダをさがすべく中国株投資を考えている人には是非一読をおすすめする。


参考になれば次クリック願う。






資源世界大戦が始まった 元NHK米総局長日高義樹さんの国際情勢分析

尖閣列島問題が中国のナショナリストのデモなどに繋がっている。歴史的に日本の領土ということが明らかな尖閣列島の領有権を中国が主張するのは、その付近の海底の天然ガス資源が関係してくるからだ。

「資源世界大戦」という言葉を使った元NHKアメリカ総局長で、在米30年あまり、現在はハーバード大学タウブマンセンター諮問委員、ハドソン研主任研究員を務める日高義樹さんの本を紹介する。「ウルトラダラー」など、作家として活躍する元NHKアメリカ総局長手嶋龍一さんの先輩だ。

2009年の政権交代前の本なので、自民党や民主党に関するの記述は、やや古いものもあるが、日高さんの言っていることが当たっている点も多いので、2007年12月の本とはいえ、参考になると思う。

資源世界大戦が始まった―2015年日本の国家戦略資源世界大戦が始まった―2015年日本の国家戦略
著者:日高 義樹
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-12-14
おすすめ度:4.0
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今はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、是非見て欲しいが、目次を見ると感じがわかると思う。

序章   21世紀の新しい世界戦争が始まった

第1章  世界は変わる
 第1部 温暖化で北極圏の石油争奪戦が始まった
 第2部 核兵器のない新しい抑制戦略が出現した
 第3部 30億人の一大経済圏が世界を変えた
 第4部 アメリカでは十年後に新聞がなくなる
 第5部 アメリカと北朝鮮が国交を樹立する

第2章  日本は「世界の大国」になる
 第1部 日本は世界の一流国になった
 第2部 ロボットが日本経済をさらに強くする
 第3部 日本の軍事力は世界一流になった
 第4部 大国日本には影の部分がある
 第5部 日本の指導者が中国を恐れている

第3章  米中の兵器なき戦いが始まった
 第1部 アメリカは中国を抱き込む
 第2部 中国とは軍事衝突したくない
 第3部 中国の分裂を恐れている
 第4部 中国にアジアを独占させない
 第5部 いつまでだまし合いがつづくか

第4章  ロシアの石油戦略が日本を襲う
 第1部 プーチンは石油を政治的に使う
 第2部 プーチンはアメリカを憎んでいる
 第3部 プーチン大統領とは何者なのか
 第4部 プーチンのロシアは混乱する
 第5部 日本とロシアは対立する

第5章  石油高がドル体制を終焉させる
 第1部 石油の高値がドルを直撃する
 第2部 サウジアラビアがドル本位制をやめる
 第3部 ドル体制は追いつめられている
 第4部 アメリカはなぜ嫌われるのか
 第5部 ブッシュのあとドルはどうなる

第6章  「永田町」の時代は終わる
 第1部 日米軍事同盟は幻想だった
 第2部 日米関係はなぜ疎遠になったのか
 第3部 自民党は3つの党に分裂している
 第4部 民主党はなぜだめなのか
 第5部 永田町の時代は終わった

最終章  日本には三つの選択がある

タイトルだけ見ると長谷川慶太郎さんの本かと思う。結構過激な内容だということが推測できると思う。


日高さんはハドソン研の主任研究員

日高さんはハドソン研の主任研究員だ。ハドソン研といえば、ハーマン・カーン氏を思い出す。PHPの江口克彦さんの「成功の法則」という本に、松下幸之助から「「ハーマン・カーンて人知っているか?」と3回質問されたという話が載っていた。

成功の法則―松下幸之助はなぜ成功したのか (PHP文庫)成功の法則―松下幸之助はなぜ成功したのか (PHP文庫)
著者:江口 克彦
販売元:PHP研究所
発売日:2000-12
おすすめ度:5.0
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毎月1回「日高義樹のワシントン・リポート」というテレビ東京の番組でアメリカの要人と対談しているので、相当な情報ソースがあるのだろうが、2007年12月の本ながら、アメリカの大統領候補はヒラリー・クリントンとジュリアーニと予想していたりして、予想がはずれて興ざめな部分もある。

もっとも当時は大半がそう予想していたので、日高さんの予想が外れても責められないが、本に書いてあると証拠が残るのでダメージが大きいと思う。

日高さんはキッシンジャーと親しい様だ。日高義樹のワシントン・リポートの正月特集は常にキッシンジャー氏との対談だそうである。

キッシンジャー博士がいつも言うことがある。「日本には世界に友人がいない。アメリカがたった一人の友人だ。」だと。

日高さんは正確には日本にはもう一人の友人がいると。それは台湾だと。


日本ではあまり報道されない世界の動き

ワシントン在住だけに、日本ではあまり報道されない世界の動きがわかって面白い。

たとえば北極海では地下資源の存在が噂されていることもあり、デンマークとカナダの間で紛争が起こっているとか、アラスカの地下資源は1兆ドルを超す資産価値があり、石油資源だけで6千億ドルを超えるとか、北極の氷が溶けて、海上輸送が可能となると東京から欧州への海上運賃は1/3になるとかだ。

日本人の核アレルギーを不必要に刺激するのではないかと思うが、トマホークの様な正確な通常兵器で核施設を攻撃すれば、核兵器で敵を攻撃するのと同じことになるので、核装備をするべきかどうかという議論は古くなりつつあるという。

だから日本にとって必要なことは正確な攻撃のできる通常ミサイルを持つことだという。

北極圏やアフリカなど資源を求めての競争が激しくなってきている。スーダンのダルフールが有名になったのは、独裁者が石油資源を抑えているからで、反対する部族を虐殺している。アメリカは独裁者の非人道的な政治に介入を続けているが、中国は独裁者を支援している。

これがウォレン・バフェットがペトロチャイナ株を持っていた時に非難されていた理由だ。

世界の石油生産量は1日8千万から9千万バレル。今後10年間で世界の石油需要は20%増えると見込まれているが、増産できるのは一部のOPEC諸国に限られる。

インドネシアは石油の輸入国となり、今年12月にOPECから脱退する。OPECは現在13ヶ国だが、新規加入候補はノルウェー、メキシコ、スーダン、ボリビア、シリアなどである。産油国も新顔が増えたものだ。


キャノン機関

日高さんはマッカーサーがつくった秘密組織のキャノン機関のヘッドだったキャノン中佐にインタビューしたことがあるという。

キャノン機関は新しくできたCIAとの抗争の末、権限を取り上げられ解散させられたが、全盛時は本郷の岩崎邸にオフィスを構え、占領時の様々な工作を担当していた。

そのキャノン中佐からアルバムを見せられ、「これは白洲次郎だ、われわれの活動にとって重要な人物だった。」と説明されたのだという。

白洲次郎 占領を背負った男白洲次郎 占領を背負った男
著者:北 康利
販売元:講談社
発売日:2005-07-22
おすすめ度:4.5
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「いろんな政治家がやってきた。吉田茂も来ていた。彼は他の政治家や役人のように砂糖やバターが欲しいなどとは言わなかったがね」とキャノン氏は語っていたという。

キャノン機関と白洲次郎、日本の政治家がちがどう関わっていたのか資料があるわけではないが、写真を見る限り白洲次郎はキャノン機関の一員といってもおかしくない雰囲気であると。

日高さんはキャノン中佐が自殺した後、夫人からキャノン中佐のアルバムを貰ったという。戦争に敗れた日本がいかにみじめな存在であったか、日米友好の始まりがどういうものであったかを、日高さんはこのアルバムの中に見るという。

日高さんは当時(1981年頃)は白洲次郎を知らなかった由だが、思わぬ処から白洲次郎が出てきたものだ。


中国の指導者を支えるアメリカ政府

2007年にハドソン研究所で中国に関するセミナーが開かれたが、テーマは「中国には強い指導者が必要である」というものだったという。

2007年始め中国軍部は衛星攻撃ミサイルの実験を成功させて世界を驚かせたが、胡錦涛主席が全く知らされていなかったのは明らかであると。

アメリカ政府は胡錦涛主席の知らないところで、中国軍がアメリカに対立的な姿勢を強めているのではないかと疑っているという。

世界の景気が悪くなると中国はこれから失業者が増え続ける。

急激な経済拡大のひずみがひどくなると混乱が起き、中国に内乱でも起こると、混乱がロシアや朝鮮半島に波及し、アジア全体が収拾のつかない状態になることをアメリカは懸念しているという。

中国社会は依然として共産党と軍が動かしているが、経済発展で優秀な若者はビジネス分野に行き、人材が不足してきている。官僚と軍人の質が低下すると優秀な指導者は出てこなくなる。中国の指導者の力が弱くなっているのは、共産党や軍の衰退が原因だとアメリカの中国専門家は見ているという。

世界経済、米国経済の好況は中国経済の成長なくしては考えられないので、アメリカはなんとしても中国の崩壊を防がなければならない。アメリカ政府が中国との間に多くの問題を抱えていても、中国政府を非難せず中国の指導者を助けようとしているのは、ひとえに中国を混乱させたくないためだと日高さんは語る。

こうした状況は第二次世界大戦前のドイツの状況と似ていると日高さんは語る。当時のドイツは第一次世界大戦の敗戦後、経済が不振で失業者が増え、共産党が強くなりつつあった。

ヨーロッパの中心であるドイツが共産化すれば、ヨーロッパ全体が共産化してしまうと考えたアメリカの指導者は、共産党に対抗して登場したヒットラーを支援した。

歴史に明らかなようにヒットラーを強く支持したのは、ヘンリー・フォードやジョン・ロックフェラーであると。彼らはシーメンスやクルップなどの大企業と協力してヒットラーの台頭を助けたと日高さんは語る。

アメリカがヒットラーと戦いを始めたのは、日本がバールハーバーを攻撃したことがきっかけで、日独伊三国同盟に基づきドイツがアメリカに宣戦布告したからだ。

筆者は寡聞にして、フォードやロックフェラーがナチスを助けたとは知らなかったが、共産党の台頭を考えると当然の動きといえるかもしれない。ちなみにロックフェラー家はドイツ出身だ。

アメリカ経済は世界経済を拡大させることによって、自己増殖を続け、繁栄をつづけてきたという。だから中国の経済拡大を続けさせ、中国とうまくやっていくことが米国政府の基本政策なのだと。

アメリカの指導者は基本的には中国は本当の意味での脅威とは捉えていないという。

「われわれはあの強大なソビエトを軍事的に追いつめ屈服させた。中国のことなど心配していない」とアメリカ国防総省の幹部はよく言うという。

日高さんはこのアメリカ人の考え方と中国に対する評価が間違っていないことを望むと書いているが、筆者も日高さんに同感だ。このままでは行かないと思う。先週の「神舟7号」の宇宙遊泳の成功など、中国は米ソに対抗し着実に技術力を付けてきている。


ロシアのプーチン大統領はこき下ろし

プーチン大統領のロシアを日高さんはこき下ろしている。

暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤは「ロシアン・ダイアリー」に、プーチンが大統領に就任した直後に母親、父親、メンターが相次いで死亡したのは、「プーチンが自分の過去を消し去ろうとしたからだ」と書いているという。

ロシアン・ダイアリー―暗殺された女性記者の取材手帳ロシアン・ダイアリー―暗殺された女性記者の取材手帳
著者:アンナ・ポリトコフスカヤ
販売元:日本放送出版協会
発売日:2007-06
おすすめ度:5.0
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別ブログに「ロシアン・ダイアリー」のあらすじを紹介しているので、参照して欲しい。

KGB出身のプーチン大統領自身の経歴は不明だが、プーチンが大統領就任後KGBは復活している。プーチンは、核大国としてロシアをよみがえらせ、石油マネーを使って軍事力を強化している。

プーチンは資源が豊富な極東を手放さないし、北方領土も手放さない。北極海の氷が溶け、本格的に航行可能になったら、ロシアは自国の権益を守るために日本をはじめ他の国と対決するに違いないと日高さんは予想している。ヒットラーと同じだと。


石油高がドル体制を終焉させる

アメリカ社会は安い石油を湯水のように使うことになれており、国民は貯金をすることが嫌いで、借金を重ねながら生活している。

今までは石油が安かったので、借金をしながらでも経済を拡大してきたから、世界の人もアメリカ経済の拡大を信じてアメリカに投資してきた。

ところが石油の高値によってインフレが起き、ドルが弱くなっては、アメリカ経済への信頼がゆらぎ、ドルへ体制を維持することができなくなってくる。

現在ではサウジアラビア、中国がドルペッグ制をとっており、日本もドルを支えているが、2007年9月のサウジアラビアの新聞にサウジアラビアはドル本位制から脱退するのではないかとの観測記事が出た。

ドルがユーロに対してあまりにも下落したことが原因である。

ブッシュ大統領の考えは極めて単純だという。

「ドルが強ければ世界中の人がアメリカに投資し、アメリカの株や土地が高くなる。土地や株が高くなればアメリカ人の資産が増える」

アメリカの民主党はドルを安くして輸出を増やしたいと考えている。アメリカの労働者の職を確保することを最も大事だと思っているからだと日高さんは語る。

このブログで紹介したルービン回顧録などにも書かれている通り、筆者は誰が大統領になろうとも、ドル体制の維持はアメリカの利益の源泉だと考えている。

今やドル紙幣10枚のうち7枚は海外で流通していると言われており、紙幣を印刷するだけで富がつくれる既得権をアメリカが逃すはずがないと思う。

そのためにスタンスとしてドル高維持は変わらないと見ているので、必ずしも日高さんの意見には同意しないが、誰が大統領になるのかの影響はあるだろう。


日米軍事同盟は幻想だった

日高さんはニクソン大統領からはじまる歴代の大統領、政府高官にインタビューしたが、彼らの答えは常に同じで、次の言葉を繰り返すのみだったという。

「日本はアメリカの重要な同盟国だ。日米安保条約はアメリカにとってかけがえのないものだ」

日米安全保障条約は片務条約で、アメリカの本音は「日本に勝った。アメリカは占領が終わっても基地を使い続けるぞ」というものであると。

日本も同様で、基地は提供しているが、アメリカを軍事的同盟国とは思っていない。アメリカ側も台湾問題でアメリカが中国と戦争を始めても、日本が参戦するとは思っていない。

日高さんは日米関係が疎遠になってきていると指摘するが、その最大の理由は日米安保条約なのだと。

安倍元首相や当時の麻生外務大臣が言い出した「戦後レジームの解体」という言葉に、アメリカは国家主義の台頭を感じ、敏感に反応しているのだという。

アメリカの指導者は中国についてしきりに言う言葉は、「中国は世界のステークホルダーである。中国と関わっていくのがアメリカの政策である」ということだ。

朝鮮半島や台湾で戦争でも起こらない限り、アメリカは中国と対決するつもりはなく、日本と共同で中国の脅威に対抗する気はないと日高さんは語る。

つまり日米とも本音は基地提供条約なのに、安保条約というから建前と本音の差が生じ、これが日米関係が疎遠になっている理由なのだと。

アメリカは中国がアジアの覇権を握るのには強い警戒心を持っているが、だからといって積極的に阻止するつもりはない。中国と友好関係を持つことが重要となっているのは間違いない。

長年の同盟国であるアメリカが、日本とともに中国の脅威に立ち向かってくれるというのは、幻想にすぎないと日高さんは語る。日米安保条約は崩壊寸前なのだと。


自民党と民主党

日高さんは自民党と民主党につき面白い見方している。自民党は小泉アメリカ党、安倍保守独立党、福田中国党の3つから成っている、アメリカのある学者の見方であると。

そうなると麻生新首相は安倍保守独立党の一員ということになると思う。

民主党がだめな理由は次の3つであると。

1,安易な移民政策 

移民を入れての治安悪化、社会不安、不法移民問題など、アメリカ、そして特にヨーロッパで起こっている問題を考えていない

2.老後資金を税金によってまかなうという考えから脱却できていない

そもそも年金をすべて税金でまかなうのであれば、北欧並の高税率が必要だし、国民の納得が必要だ。

アメリカではソーシャルセキュリティを払うが、払った額に応じた年金を受け取るシステムである。老後資金をすべて年金でまかなうという考えではないのだ。

3.国家は自らの力で自らを守るべきだという原則を全く理解していない

国連は紛争後の平和維持までが限界で、局地的紛争ならともかく、大きな紛争を武力をもって解決する力はない。何でもかんでも国連至上主義は誤りであると。


日本の3つの選択肢

最後に日本の3つの選択肢として次を挙げている。

1.憲法を変え、核兵器を持ち、経済力にみあう軍事力を保有して独立独歩で行く

軍事力によってアジアと世界情勢の方向を決める国際的な指導力を持つ。アジアを自らのやり方で動かし、世界に於ける日本の利益を確保する。

2.アメリカと対等の協力関係をつくりあげる 

上下関係のある安保体制をやめ、大国日本にふさわしい軍事力を持ち、国際社会における自己責任を全うする一方、民主主義と人道主義を広めるために、アメリカと協力体制をとり続ける

3.おんぶにだっこのアメリカがいなくなったら中国に頼るという、これまでと同じ外交姿勢をとり続ける

日高さんの意見は2.だ。

安保条約については、元外交官でノンフィクション作家の関榮次さんも「日英同盟」の中で、「日本国民が必ずしも納得しない米国の世界戦略に奉仕することを求められることもある現在の安保条約を、国民的論議も十分に尽くさないまま惰性的に継続することは、日米の真の友好を増進し、世界の平和と繁栄に資する道ではない」と語っている。

日高さんも同様の提言をしているが、これからの日本を考え、中国とアメリカの動きを見ていると、たしかに日米安保条約の継続について真剣に議論すべきだろうと筆者も考える。

日高さんはロシアはこき下ろしているが、筆者はプーチンロシアやEUの台頭は打ち手として使えるのではないかと思っている。

余談になるがF−22の輸入につき防衛庁の制服組が熱心なようだが、F−22でもF−35でも、もはや人が乗って敵戦闘機に対決して防衛する時代でもないのではないか?

潜水艦、無人機とミサイル防衛網で国を防衛すべきではないか?飛行機がいるにしても、せいぜい陸上支援用の軽装備のもので十分ではないか?

アメリカのオハイオ級最新鋭原子力潜水艦ミシガンは154発のトマホークミサイルを搭載しているという。

もし飛行機やミサイルで攻撃を受けた場合、人が戦闘機に乗って数分掛けて急上昇し、敵を見つけて迎撃したりするよりも、潜水艦や艦船からミサイルで迎撃するか、あるいは敵飛行機が飛び立った基地を、トマホークでボコボコにして無事に着地できなくして二度と飛び立てないようにしてしまう方が、よほど確実で効率的なのではないかと思う。

F-22は一機155億円もするという。トマホークミサイルは1発7千万円と言われている。どちらも国産したらもっと高いのだろうが、F-22一機でトマホークが200発買えるのだ。

ハリネズミのようになった国に戦争を仕掛けようと言う国もないはずだ。


在米30年以上ということで、日本人の感覚と違う点が目に付くが、拝聴すべき意見だと思う。

必ずしも日高さんの意見には賛成できない部分もあるが、日本の国家戦略についての議論は盛り上げていくべきであると思う。

国家戦略についての議論がないのが、今の政治に対する筆者の最大の不満である。民主党政権になっても結局変わらないが、それで良いのだろうか?

そんなことを考えさせられる参考になる本だった。


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中国は日本を併合する センセーショナルなタイトルだが内容は真剣だ

尖閣列島問題、そして中国の人権活動家へのノーベル平和賞授与で、中国の脅威が次第に増している。センセーショナルなタイトルではあるが、中国の戦略を考えるために紹介する。

中国は日本を併合する中国は日本を併合する
著者:平松 茂雄
販売元:講談社インターナショナル
発売日:2006-02-01
おすすめ度:4.5
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平松さんは昨年、この本の続編とも言える「日本は中国の属国となる」という本も出している。

日本は中国の属国になる日本は中国の属国になる
著者:平松 茂雄
販売元:海竜社
発売日:2009-12
おすすめ度:4.0
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扇情的なタイトルが目を引く。防衛庁防衛研究所に20年間勤務し、その後杏林大学教授を勤めた平松茂雄氏が著者だ。

正直言って本のタイトルがけしからんので、頭に来て読んだというのがホンネだが、本の内容は真剣だ。

『併合』という言葉を使うと、領土として組み入れられるという印象があるが、中国が世界、少なくともアジアの中心となり、日本は手も足もでない状態に追い込まれつつあると平松さんは指摘する。

本の帯に「櫻井よしこ氏推薦」、「数十年にわたって中国情報を収集、分析した本書は私たちに衝撃の事実を突きつける。中華大帝国の再現と日本併合を最終目的とする中国の企みの実態、全国民必読の書である」とある。

たしかにこの本を読んで、中国の最近の一連の動きを全体として見ると、中国は戦わずして、日本を政治・経済圏に取り込むべく着々と準備をしていると考えるのが適当かもしれない。

一連の行動とは;
東シナ海での海上ガス・石油田開発
海洋調査船の日本近辺調査
中国原子力潜水艦の日本領海侵犯
南シナ海でのミスチーフ環礁の領土化
台湾との関係
宇宙開発を通してのロケット制御技術=核ミサイル技術向上
等である。


『長征精神』遠大な中国の核戦略

平松さんは中国の戦略は、すべて遠大なビジョンをベースとする『長征精神』に基づいてのものであると指摘する。

『国家意思』のあり過ぎる中国、なさ過ぎる日本なのだと。

長征とは国民党の蒋介石から圧迫されて、中国共産党軍が1934年から1年掛けて本拠を陜西省の延安に移すまで移動した大移動だが、中国では新しい困難な課題に取り組むときは必ず、この『長征精神』が強調される。

中国は長期的な国家戦略を元に動いており、1958年の台湾との金門島砲撃事件のあと、1959年にソ連が中国に対する核技術供与をやめたときに、毛沢東は「1万年掛かっても原爆をつくる」と語ったほどだ。

フルシチョフは毛沢東の「原爆で中国の半分の3億人が死んでも、残り3億人が生き残り、何年か経てば6億人となり、もっと多くなる」という発言に驚き、非人間的な野獣の考えであると激しく非難したと言われる。

毛沢東は1950年に朝鮮戦争に参戦し300万人の軍隊を送ったほか、1958年に金門島を砲撃する等、多くの犠牲者を出す熱い戦争をしており、毛沢東の中国が原爆を持ったら、世界大戦がはじまっていたかもしれない。

毛沢東は「他人の侮り(あなどり)を受けない」ことをモットーにソ連の核の傘の下に入ることを拒否した。

結局中国は核兵器を自力で開発し、1980年代までに大陸間弾道ミサイル、複数弾頭ミサイル、潜水艦からの弾道ミサイル水中発射、静止衛星打ち上げのすべてに成功した。

その間に米ロの核兵器は小型・移動式、命中精度向上、多弾頭化など、中国の核兵器よりさらに進歩したが、1990年代以降はむしろ核兵器廃棄に進んでおり、今や中国は米ロの2大大国と張り合える核戦力を保有すると言える。


中国の東シナ海資源戦略

日本と中国の間の国境・経済問題は尖閣列島の領有権と東シナ海のガス田開発の二つだ。

1968年に国連アジア極東経済委員会が実施した東シナ海の海底調査で、東シナ海付近には中東に匹敵する豊富な石油資源の可能性があると発表されている。

日本政府はその後30年以上、日本の石油企業からの日本側大陸棚での鉱区を設定しての資源調査を許可しなかったのに、中国側の海洋調査、次いでガス油井設置は黙認したのだ。

中国の東シナ海でのガス、石油開発は春暁、天外天、断橋、残雪の4箇所の海上採掘施設を建設し、処理設備と中国大陸へのガスパイプラインも建設中で、2008年の北京オリンピックまでには完成すると見られている。

これらのガス田は日中中間線の中国側に位置しているが、日本政府は今頃になって中国側から日本側の資源をストローで吸い取ろうとしているとか騒いで、やっと日本企業の資源開発を認めた。

日本と中国に圧倒的な経済格差があった30年間に日本側の開発を認めなかったのは、日本政府の怠慢と言われても仕方がないだろう。

中国は東シナ海だけでなく、南シナ海では南沙諸島(スプラトリー諸島)やミスチーフ環礁に恒久施設を建設し、ベトナム、フィリピンなどの反対を無視して自国の領土化している。

いずれも石油やガス資源があると見られている地域であり、地下資源の開発が目的の行動だ。

尖閣列島は日本の固有の領土にもかかわらず、中国が領有権を主張し、中国民衆が時々騒いでいる。


台湾の軍事統一が中国の究極の目的

台湾は中国にとって地政学的に非常に重要である。もし台湾を中心として大規模な戦略的封鎖が実施されると、中国の海軍と海運は封じ込められてしまう。

逆に中国が台湾を統一できれば、台湾海峡バシー海峡という日本のシーレーンを抑え、日本の資源輸送ルートを抑えることができるのだ。

中国の戦略は台湾を軍事統一することを狙っており、有事には米国の空母機動艦隊の台湾近海への進展を阻むために、中国の潜水艦を使って機雷を設置することを画策している。

中国の海洋調査はそのための海底地形図つくりをしているのだ。

日本の対潜水艦戦闘能力が傑出していることは、『その時自衛隊は戦えるか』で紹介したが、
中国に対抗するために、台湾と連携して対潜水艦対策を進める必要があるのだと平松さんは語っている。

平松さんは、台湾問題は日本にとって他人事と済ませられる問題ではないと語る。

中国は台湾は中国の内政問題であるとして、世界や日本の世論にゆさぶりをかけ、もし台湾を中国が軍事統一するようなことがあると、もはや日本の将来は決まったようなものだ。

その中国に対して、日本は1979年から2004年までに3兆3千億円、民間援助もあわせると6兆円の援助を供与してきた。

日本はODAによって中国の経済成長をささえ、実質世界一の外貨準備高を保有するまで支援し、軍事国家として成長する中国の国家戦略を支援してきたのである。

その間、日本から平均2,000億円の援助を受けながら、中国は毎年600億円の援助をベトナム、カンボジア、パキスタン、アフガニスタンなどに与え、さらにアフリカ諸国などにも積極的に経済援助をしている。

日本政府は国家安全保障の脅威をもたらしている国に対して、友好や人道の名の下に莫大な援助を続け、中国の軍事力の強化を助け、自国の安全を危険にさらすという愚行を犯してきたと平松さんは断じる。

中国はドイツの国連常任理事国入りには賛成するが、日本の常任理事国入りには反対している。対中ODAは政治的にも意義がなかった。


台湾独立と国連加盟

台湾は未だに中華民国と名乗り、中国の正統政府が台湾に逃れただけという立場なので、国連でも北京政府が台湾政府を追い出し、その後がまに座っている。

台湾は独立国ではないから、たとえ中国が台湾に侵攻してきても、国連はなにも手出しできない。

だから台湾が独立国になって国連に加盟することは、東アジア地域の安全保障の上で重要な意味がある。そのため中国は強硬に反対し、またアメリカも中国を刺激しないために、台湾の独立には反対している、

台湾は国民投票を2008年に実施すると見られるが、台湾独立を宣言して、それを日米が軍事力も含めて支援する形となれば、それによって中国とのパワーバランスが保たれるだろうと平松さんは語る。

最後に、もし中国が台湾を軍事的に統一したら、次は朝鮮半島、日本と飲み込んでいくだろう。その時日本はどうするのかと平松さんは警告する。

けしからんタイトルだが、『併合』を『手も足も出なくなる』と読み替えれば、納得できる本だった。


参考になれば次クリック願う。




靖国論 小林よしのりの常識として知っておくべき靖国

小林よりのりの靖国神社論。

新ゴーマニズム宣言SPECIAL靖國論


現在中国との間で、尖閣列島問題がフォーカスされているが、同じように中国がしばしば指摘するのが首相の靖国神社参拝問題だ。

たとえば安部晋三は靖国参拝を明言しているが、谷垣禎一は靖国参拝は控えると明言している。まるで中国による「踏み絵」のようだ。

中国・韓国との外交問題となってしまった靖国問題だが、小林よしのりは【検証】朝日は靖国をこうして「外交カード」に仕立てたという一章をもうけて、朝日新聞を「アジアの放火魔」と呼んでいる。

まさにゴーマニズムの呼び名の通りの発言だ。

筆者は朝日新聞を購読しているが、小林よしのりの本を読むことで別の面からの議論の論点がわかって参考になった。

そもそも靖国神社参拝は公的行事として、歴代の首相が行い、天皇が行っていたのだが、昭和50年の三木首相の靖国「私的参拝」発言が「公式参拝」是非論議をつくりあげてしまった。

これが天皇が靖国神社を参拝できなくなった理由だと指摘している。しかし靖国神社の成り立ちからして、公式参拝が当然であると小林よしのりは語る。


靖国神社のなりたち

戦争で亡くなった戦死者を祀る神社という意味では、靖国神社は唯一無二の存在である。

靖国神社は明治二年(1869年)明治天皇の「わが国のために尽くした人々のみたまは国自ら永久にお祀りすべきである」との聖旨により『東京招魂社』として建立された。

祀られているのは幕末の1953年、黒船来航の年からの死亡者であり、日本の近代化の過程でたおれた吉田松陰や、坂本龍馬も祀られているのだ。

靖国神社には現在250万柱の御祭神が祀られている。古来からの死者・先祖を崇拝する信仰に基き、公に殉じた人を英霊と呼び、国が永久にお祀りする施設だ。

神社のなりたちとスピリチュアルな面を忘れ、国立追悼施設の建立とはナンセンスなのだと。


死者のみたま

この本では多くの戦死者の遺書や、終戦自決者の遺書が載せられているが、彼らの国を守るという意志は純粋で、読んでいて涙がにじんでくる。

何百万もの戦死者が靖国あるいは九段で会おうと誓いあって死んでいった以上、みたまを靖国から動かすことなどありえないと。

筆者の母の弟、筆者の叔父が太平洋戦争で戦死している。

土浦航空隊で訓練中に敵機の爆弾が防空壕を直撃し、他の仲間と一緒に亡くなったものだ。たしか享年18歳だったと思う。

生き埋めによる窒息死なので遺書はない。現場に駆けつけた母は、叔父の顔がまだ生きている様に生気を帯びていて、死んだとは認めたくなかったと言っていたものだ。

戦友や遺族たちが毎年土浦で慰霊祭をやっていたので、筆者も昔何回か参加したことがある。

航空自衛隊に行った叔父の戦友が、慰霊祭にあわせて上空を飛行機で記念飛行していたのを思い出す。

筆者は戦後生まれなので、戦死した叔父には当然会ったこともなく、写真だけだが、叔父が戦後叙勲されたのを祖父は大変喜び、叙勲の詔勅を居間に飾っていたことを思い出す。

お墓も代々の墓とは別に叔父の海軍二等兵曹の墓を別につくってある。いかに祖父母が叔父の死を悲しんでいたかがわかる。

叔父の場合は、毎年合同の慰霊祭があったので、靖国神社にはお参りしなかったが、こういった特別の事情がなければ、たぶん祖父母や母も靖国神社にお参りしたことだろう。

このブログを読んで頂いているあなたにも、たぶん親類で戦争でなくなった人が必ずおられると思う。

戦後60年以上が経ち、戦争の記憶がどんどん風化する一方だ。

そもそも靖国神社とはどんな存在なのか、神道に基づく神社への参拝が、なぜ外国との政治問題化するのか、日本の内なるスピリチュアルな問題をあえて外交問題と仕立てようとする国内勢力があるのではないか…。

そんな考える機会をあたえてくれる本である。

朝日新聞を「アジアの放火魔」と呼ぶような過激な点は注意する必要があるが、論点を考える上では参考になる本だと思う。


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