A級戦犯についての小林よしのりのマンガを一つの見方として紹介する。
いわゆるA級戦犯―ゴー宣SPECIAL
著者:小林 よしのり
販売元:幻冬舎
発売日:2006-06
おすすめ度:
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2006年6月の日経新聞が昭和天皇はA級戦犯合祀に憤り、靖国神社参拝をやめたという側近のメモを明らかにした。
天皇がA級戦犯合祀を機会に靖国参拝をやめたことは、大前研一などは著書で以前からふれており、知られざる真実というわけではない。
(もっとも小林よしのりは別の本で、天皇が靖国参拝をやめた理由は、三木首相の『私的参拝』発言により、公式参拝ができなくなったことが理由であるとしているが)
その問題のA級戦犯とはいったいどういう人たちなのか、どのように選ばれたのか、またなぜA級戦犯となったのか、そもそも東京裁判とはどういった法的根拠で行われたのか、といった余り知られていない事実をこの本では明らかにする。
小林よしのりは、この本の帯で「日本に、A級戦犯などいない」と断言する。
東条英機ほか27名はえん罪であると。A級戦犯のリストは次の通りだ。
A級戦犯全員のリスト:
処刑された人:
東条英機首相
広田弘毅首相
板垣征四郎陸軍大将
土肥原賢二陸軍大将
木村兵太郎陸軍大将
武藤章陸軍中将
松井石根陸軍大将
獄死した人:
松岡洋右外相
永野修身軍令部部長
東郷茂徳外相
白鳥敏夫駐イタリア大使
梅津美治郎陸軍大将
小磯国昭首相
平沼騏一朗首相
名誉を回復した人:
重光葵外相
大川周明
木戸幸一内大臣
荒木貞夫陸軍大将
南次郎陸軍大将
畑俊六陸軍元帥
橋本欣五郎陸軍大佐
佐藤賢了陸軍中将
大島浩駐ドイツ大使
嶋田繁太郎海軍大将
岡敬純海軍中将
鈴木貞一陸軍中将
星野直樹満州国総務長官
賀屋興宣蔵相
「連合国から与えられた『戦犯』の観念を頭から一掃せよ」とのインドのパール判事の言葉を引用し、小林よしのりは戦犯の観念を払拭しない限り、日本民族の独立はないと訴える。
東京裁判が不当だとする根拠
理由は戦争を犯罪とする法律はいまだにないことだ。
戦争自体は犯罪ではないが、戦争中に何をやっても良いという訳ではなく、戦時国際法で交戦法規を定めた。これは次の4点からなる:
1.一般住民、非戦闘員に危害を加えてはならない。
2.軍事目標以外を攻撃してはならない。
3.不必要な苦痛を与える残虐な兵器を使ってはならない。
4.捕虜を虐待してはならない。
この基準からすると、アメリカの原爆投下が1.2.3.に違反していることは明らかである。
しかし捕まりさえしなければ、戦争犯罪を犯しても一切裁かれることはなく、戦勝国の戦争犯罪人は一人として裁かれなかった。
東京裁判は、敗戦国だけを、『事後法』で当時はまだ犯罪とされていなかったことも、さかのぼって裁き、一方戦勝国については、明白に国際法に違反した戦争犯罪も全て不問にしたものであると。
判事はすべて戦勝国あるいはその植民地の人間で、敗戦国はおろか中立国からも一人の判事も出ていない。
しかも日本とは中立条約を結び、敗戦が決定的となった段階で参戦してきたソ連までもが戦勝国として東京裁判に判事を派遣している。
東京裁判の根拠は、極東国際軍事裁判所条例(チャーター)というマッカーサーの発した命令であり、国際法上の根拠があるものではない。
東京裁判の判事は?
11名の判事の中で、法律家はオランダのレーリンクとインドのパール判事だけで、他の9名の判事はマッカーサーの傀儡だった。
特にインドのパール判事は、このようなチャーターに拘束されるならば、東京裁判は司法裁判でなく、たんなる権力の表示のための道具であり、復讐の欲望を満たすために法的手続きをふんでいるようなふりをするものに他ならないと痛烈に批判した。
パール判事の判決は全員無罪であったことが知られているが、それは裁判自体が無効ならば日本に有罪を下す必要も無いという理由からである。
「ハル・ノートのようなものをつきつけられれば、モナコ公国やルクセンブルク大公国でさえ戦争に訴えただろう。」というパール発言もよく知られている。
一面の真実ではある。
当時軍国主義一色に染まっていた日本が、違う道を通れたのかは疑問が残るが、天皇は東条英機に戦争回避を指令し、最後まで交渉を続けていたところ、ハルノートを突きつけられ、日本は開戦を決意したことは間違いない。
A級戦犯はどうやって決定されたのか
開戦を決定した時の首相がA級戦犯の代表格である東条英機だ。
その東条が、開戦前夜に天皇の意志に答えられなかったことを悔い、これから起こる惨劇を思って皇居に向かって号泣していたという。
A級戦犯のリストも、マッカーサーの指令に基づき、あわただしくリストアップされたものだ。
当初は大東亜会議に参加したフィリピンのラウレル大統領や、ベニグノ・アキノ国民議会議長(暗殺されたアキノ氏の父)、ビルマ独立義勇軍のオン・サン将軍(アウン・サン・スーチーさんの父)なども含まれており、植民地を独立させる運動に加わった中心人物もリストアップされていた。
日本が焚き付けたアジアの独立運動を、やっきになって押さえつけようとする植民地支配国の論理=太平洋戦争の性格がはっきり出ている戦犯リストである。
100名ものリストとなったものを、マッカーサーが任命したキーナン主席検事が日本人に絞ってA級戦犯とし、さらに復讐に燃えるソ連により元ソ連大使の重光葵と関東軍司令官の梅津美治郎が入れられ28名となった。
東京裁判とはそんな戦勝国の報復行為であり、1061人が処刑されたBC級戦犯に至っては、まさに報復行為の性格が強い。
共同謀議による平和に対する犯罪?
マッカーサーが出した東京裁判の条例では、ドイツのニュルンベルグ裁判所条例をそのまま適用していた。ニュルンベルグ裁判の戦争犯罪の分類は次の通りだ:
1.平和に対する犯罪
2.通常の戦争犯罪
3.人道に対する犯罪
しかしドイツでは1933年以来ヒットラーが首相となり、敗戦まで一貫して独裁体制を維持していたので、ナチスの共同謀議が成立したが、日本の場合には歴代の内閣が違い、方針も違うので、共同謀議は成立しないと思われた。
それゆえ検察団は「1928年から1945年までA級戦犯が共同謀議して、一貫して満州、中国、東南アジア、太平洋、インド洋地域を侵略、支配すべく陰謀を企て、実行した」というストーリーをつくりだし、平和に対する犯罪を追求することにした。
また天皇の戦争責任を追求しないというのも、マッカーサーの指示した方針で、これに従ってキーナン主席検事は、天皇の意志に反して軍部が戦争を遂行したというストーリーをつくりだした。
朝日新聞などのマスコミを痛烈に批判する小林よしのり
この本のなかで、小林よしのりは朝日新聞や読売新聞などの大新聞を左翼マスコミとして痛烈に批判している。
特に東京裁判の有効性の根拠として挙げられる昭和27年のサンフランシスコ平和条約11条は、東京裁判の判決を受諾するという意味であり、裁判自体は不当だが判決には従うということだと。
さらに昭和28年には国会議員が全員一致で遺族援護法を改正し、「もはや日本にはA級戦犯などいないのであって、彼らは国内法においては犯罪者ではない」という認識が成立していた。
だからいまさらA級戦犯などと呼ぶこと自体が不当であり、それゆえこの本のタイトルも『いわゆる』とつけたのだと。
筆者は朝日新聞を読んでいるが、小林よしのりがこの本で指摘している様な事実も頭に入れた上で、首相の靖国参拝や中国・韓国の靖国参拝批判、A級戦犯合祀等の問題を考えて、自分なりの意見を持つ必要性を強く感じた。
変に感化されないように注意して読むべき刺激的な本ではあるが、マスコミが取り上げない事実を取り上げて、考えさせられる題材を提供している一読に値する本だと思う。
参考になれば次クリック願う。
いわゆるA級戦犯―ゴー宣SPECIAL
著者:小林 よしのり
販売元:幻冬舎
発売日:2006-06
おすすめ度:
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2006年6月の日経新聞が昭和天皇はA級戦犯合祀に憤り、靖国神社参拝をやめたという側近のメモを明らかにした。
天皇がA級戦犯合祀を機会に靖国参拝をやめたことは、大前研一などは著書で以前からふれており、知られざる真実というわけではない。
(もっとも小林よしのりは別の本で、天皇が靖国参拝をやめた理由は、三木首相の『私的参拝』発言により、公式参拝ができなくなったことが理由であるとしているが)
その問題のA級戦犯とはいったいどういう人たちなのか、どのように選ばれたのか、またなぜA級戦犯となったのか、そもそも東京裁判とはどういった法的根拠で行われたのか、といった余り知られていない事実をこの本では明らかにする。
小林よしのりは、この本の帯で「日本に、A級戦犯などいない」と断言する。
東条英機ほか27名はえん罪であると。A級戦犯のリストは次の通りだ。
A級戦犯全員のリスト:
処刑された人:
東条英機首相
広田弘毅首相
板垣征四郎陸軍大将
土肥原賢二陸軍大将
木村兵太郎陸軍大将
武藤章陸軍中将
松井石根陸軍大将
獄死した人:
松岡洋右外相
永野修身軍令部部長
東郷茂徳外相
白鳥敏夫駐イタリア大使
梅津美治郎陸軍大将
小磯国昭首相
平沼騏一朗首相
名誉を回復した人:
重光葵外相
大川周明
木戸幸一内大臣
荒木貞夫陸軍大将
南次郎陸軍大将
畑俊六陸軍元帥
橋本欣五郎陸軍大佐
佐藤賢了陸軍中将
大島浩駐ドイツ大使
嶋田繁太郎海軍大将
岡敬純海軍中将
鈴木貞一陸軍中将
星野直樹満州国総務長官
賀屋興宣蔵相
「連合国から与えられた『戦犯』の観念を頭から一掃せよ」とのインドのパール判事の言葉を引用し、小林よしのりは戦犯の観念を払拭しない限り、日本民族の独立はないと訴える。
東京裁判が不当だとする根拠
理由は戦争を犯罪とする法律はいまだにないことだ。
戦争自体は犯罪ではないが、戦争中に何をやっても良いという訳ではなく、戦時国際法で交戦法規を定めた。これは次の4点からなる:
1.一般住民、非戦闘員に危害を加えてはならない。
2.軍事目標以外を攻撃してはならない。
3.不必要な苦痛を与える残虐な兵器を使ってはならない。
4.捕虜を虐待してはならない。
この基準からすると、アメリカの原爆投下が1.2.3.に違反していることは明らかである。
しかし捕まりさえしなければ、戦争犯罪を犯しても一切裁かれることはなく、戦勝国の戦争犯罪人は一人として裁かれなかった。
東京裁判は、敗戦国だけを、『事後法』で当時はまだ犯罪とされていなかったことも、さかのぼって裁き、一方戦勝国については、明白に国際法に違反した戦争犯罪も全て不問にしたものであると。
判事はすべて戦勝国あるいはその植民地の人間で、敗戦国はおろか中立国からも一人の判事も出ていない。
しかも日本とは中立条約を結び、敗戦が決定的となった段階で参戦してきたソ連までもが戦勝国として東京裁判に判事を派遣している。
東京裁判の根拠は、極東国際軍事裁判所条例(チャーター)というマッカーサーの発した命令であり、国際法上の根拠があるものではない。
東京裁判の判事は?
11名の判事の中で、法律家はオランダのレーリンクとインドのパール判事だけで、他の9名の判事はマッカーサーの傀儡だった。
特にインドのパール判事は、このようなチャーターに拘束されるならば、東京裁判は司法裁判でなく、たんなる権力の表示のための道具であり、復讐の欲望を満たすために法的手続きをふんでいるようなふりをするものに他ならないと痛烈に批判した。
パール判事の判決は全員無罪であったことが知られているが、それは裁判自体が無効ならば日本に有罪を下す必要も無いという理由からである。
「ハル・ノートのようなものをつきつけられれば、モナコ公国やルクセンブルク大公国でさえ戦争に訴えただろう。」というパール発言もよく知られている。
一面の真実ではある。
当時軍国主義一色に染まっていた日本が、違う道を通れたのかは疑問が残るが、天皇は東条英機に戦争回避を指令し、最後まで交渉を続けていたところ、ハルノートを突きつけられ、日本は開戦を決意したことは間違いない。
A級戦犯はどうやって決定されたのか
開戦を決定した時の首相がA級戦犯の代表格である東条英機だ。
その東条が、開戦前夜に天皇の意志に答えられなかったことを悔い、これから起こる惨劇を思って皇居に向かって号泣していたという。
A級戦犯のリストも、マッカーサーの指令に基づき、あわただしくリストアップされたものだ。
当初は大東亜会議に参加したフィリピンのラウレル大統領や、ベニグノ・アキノ国民議会議長(暗殺されたアキノ氏の父)、ビルマ独立義勇軍のオン・サン将軍(アウン・サン・スーチーさんの父)なども含まれており、植民地を独立させる運動に加わった中心人物もリストアップされていた。
日本が焚き付けたアジアの独立運動を、やっきになって押さえつけようとする植民地支配国の論理=太平洋戦争の性格がはっきり出ている戦犯リストである。
100名ものリストとなったものを、マッカーサーが任命したキーナン主席検事が日本人に絞ってA級戦犯とし、さらに復讐に燃えるソ連により元ソ連大使の重光葵と関東軍司令官の梅津美治郎が入れられ28名となった。
東京裁判とはそんな戦勝国の報復行為であり、1061人が処刑されたBC級戦犯に至っては、まさに報復行為の性格が強い。
共同謀議による平和に対する犯罪?
マッカーサーが出した東京裁判の条例では、ドイツのニュルンベルグ裁判所条例をそのまま適用していた。ニュルンベルグ裁判の戦争犯罪の分類は次の通りだ:
1.平和に対する犯罪
2.通常の戦争犯罪
3.人道に対する犯罪
しかしドイツでは1933年以来ヒットラーが首相となり、敗戦まで一貫して独裁体制を維持していたので、ナチスの共同謀議が成立したが、日本の場合には歴代の内閣が違い、方針も違うので、共同謀議は成立しないと思われた。
それゆえ検察団は「1928年から1945年までA級戦犯が共同謀議して、一貫して満州、中国、東南アジア、太平洋、インド洋地域を侵略、支配すべく陰謀を企て、実行した」というストーリーをつくりだし、平和に対する犯罪を追求することにした。
また天皇の戦争責任を追求しないというのも、マッカーサーの指示した方針で、これに従ってキーナン主席検事は、天皇の意志に反して軍部が戦争を遂行したというストーリーをつくりだした。
朝日新聞などのマスコミを痛烈に批判する小林よしのり
この本のなかで、小林よしのりは朝日新聞や読売新聞などの大新聞を左翼マスコミとして痛烈に批判している。
特に東京裁判の有効性の根拠として挙げられる昭和27年のサンフランシスコ平和条約11条は、東京裁判の判決を受諾するという意味であり、裁判自体は不当だが判決には従うということだと。
さらに昭和28年には国会議員が全員一致で遺族援護法を改正し、「もはや日本にはA級戦犯などいないのであって、彼らは国内法においては犯罪者ではない」という認識が成立していた。
だからいまさらA級戦犯などと呼ぶこと自体が不当であり、それゆえこの本のタイトルも『いわゆる』とつけたのだと。
筆者は朝日新聞を読んでいるが、小林よしのりがこの本で指摘している様な事実も頭に入れた上で、首相の靖国参拝や中国・韓国の靖国参拝批判、A級戦犯合祀等の問題を考えて、自分なりの意見を持つ必要性を強く感じた。
変に感化されないように注意して読むべき刺激的な本ではあるが、マスコミが取り上げない事実を取り上げて、考えさせられる題材を提供している一読に値する本だと思う。
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