時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2010年06月

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらもし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
著者:岩崎 夏海
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-12-04
おすすめ度:4.0
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ドラッカーと女子マネという一見関係のないことを結びつけたビジネス小説。なんとアマゾンの本の売り上げランキングで第5位のベストセラーだ。

作者の岩崎夏海さんは、放送作家としてバラエティ番組に参加、AKB48のプロデュースなどを経て、現在はマネージャーとして芸能関係で働いている。この小説の登場人物も、AKB48のメンバーを意識して書いたという。先日の朝日新聞の土日版にも登場していたが、夏海という名前だが男性である。

この本の発端は、岩崎さんがドラッカーの「マネジメント」を読んで感動し、日本の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだらどうなるだろうという構想を思いついたことだ。その構想を自分のブログで発表したら、小説にしてはどうかという話がダイヤモンド社から寄せられ、この本が誕生した。

ダイヤモンド社はドラッカーの著作を多く出版している。

マネジメント - 基本と原則  [エッセンシャル版]マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]
著者:P・F. ドラッカー
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2001-12-14
おすすめ度:5.0
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大学生の息子が買って読んで、大した本ではなかったと言うから、積ん読になっていたが、別ブログで紹介した柳井さんの「わがドラッカー流経営論」という本を読んだついでに読んでみた。

電車のなかでブックカバー無しで、おっさんが読むのは恥ずかしいような表紙だし、正直バカにしていたが、読んでみたら、これが結構面白い。


ドラッカーの経営論を高校野球のチーム経営に生かす

女子マネとマネージャーを結びつけたのは、奇抜な発想ではあるが、高校野球のチーム経営でもドラッカーの経営論が生かせる。顧客創造から始めて、マーケティングとイノベーションの2大武器と、知識労働者としてのスタッフを育成することで、高校野球のチームでも成功できるのだ。

筆者のポリシーとして小説は詳しいあらすじは紹介しない。簡単にだけ紹介しておく。

小学校の時に男子に混じって活躍していた野球少女が、しだいに男子との力の差を思いしらされ、野球をキライになる。野球に対してそんな複雑な気持ちを持つ女子高生が、病気入院中の親友に代わり高校野球の女子マネになる。

「マネージャー業」を学ぶするために、ドラッカーの超ベストセラー「マネジメント」で勉強する。そして先生や選手も含めて仲間をどんどん増やして、最後には強いチームを作り上げるというストーリーだ。

ところどころにドラッカーの教えが引用されて出てくる。

まずは「野球部の顧客は誰か」という質問から始まる。クイズ集の様に、自分でも考えてみると面白い。そして得られた高校の野球部の定義は、「顧客に感動を与えるための組織」というものだ。

ドラッカーの経営の2大武器の一つの、マーケティングは部員全員、部長(専門家というカテゴリー)、その他の関係者の野球部に対する期待をよく聞くことから始まる。

もう一つの武器のイノベーションは、野球部監督(東大野球部卆のこの高校のOBという設定)の持論である、高校野球を面白くなくしているバント多用主義とボール球を打たせる主義の2つの戦術に対するアンチテーゼの、「ノーバント・ノーボール」戦術だ。

練習方法にもイノベーションと競争原理を取り入れる。部員を3チームに分けてそれぞれ競わせて練習し、ピッチャーだけは別メニュー。

他の運動部との相互助け合いの一環で、陸上部との練習で走力をアップし、ピッチャーは柔道部と練習して足腰を鍛える。

小学生を招いて野球教室を開いたり、甲子園出場者を多く擁する私立大学有名野球部との交流とかの校外活動で、野球技術向上の機会をつくる。そして同時に応援の輪を広げる。

モデルケースを考えることも、頭の体操になって楽しい。

この程度の紹介にとどめておくが、少女漫画のような表紙を見て食わず嫌いにならず、是非中身を読んで欲しい本だ。


参考になれば次クリックお願いします。


信用力格差社会 「借金難民」時代を予言した岩田昭男氏の力作

2010年6月23日追記:

6月18日よりいよいよ改正貸金業法が全面施行された。いきなり全ての金融機関からの総借入額が年収の1/3に制限されて、借金難民が続出することが懸念される。

この問題について1年以上前から警鐘をならしていた消費生活評論家岩田昭男さんの「信用力格差社会」を再掲する。


2009年2月20日初掲:

テレビやマスコミにしばしば登場する消費生活評論家の第一人者の岩田昭男氏の力作。「信用力」という新しい分野を切り開く好著である。

岩田氏はオールアバウトのクレジットカード担当のほかに、カード道場というサイトと岩田昭男公式ブログというサイトでも情報発信している。

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岩田氏のサイトはどれも参考になる情報が満載なので、是非チェックしてみていただきたい。

「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-11
おすすめ度:4.5
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日本ではあまりなじみのないクレジットスコア(経済偏差値)が、今後はクレジットカードを作ったり、ローンを借りたりするときに大きく影響するようになることを予測している。

米国では過去のクレジットカードなどの支払い履歴をまとめた「クレジットヒストリー」が、就職のときの重要な評価ツールとなっているという。日本でも外資系企業はクレジットヒストリーを要求するところがあるそうだが、これからは日本でも良いクレジットスコアやクレジットヒストリーを維持することが重要になってくる。

岩田氏は1990年代のはじめに米国に行った時に、書店に入ってクレジットカードのお得な活用法の本を買おうとしたら、「クレジットスコアをリペアする方法」などの本ばかりで驚いたと語る。

それから20年近くたって日本も当時の米国と同じような状況となり、信用力格差社会となりつつある。年収の多さだけで信用がつく時代は終わり、クレジットカードを基にした新しい信用時代が始まっているのだ。

改正貸金業法の第3次施行(2009年6月実施)により指定信用情報機関制度の創設が決まっており、日本でも米国並みの信用力管理「クレジットスコア」が導入されようとしている。日本社会では様々な格差が広がっているが、信用力も社会生活を営む上で不可欠になり、信用を持てない人が大きなハンディを背負うことになってくるのだ。


中流・下流の信用力危機

秋葉原で起こった17人連続殺傷事件の犯人は、犯行前にネットの掲示板にいろいろな書き込みをしていた。その中でクレジットカードがないのでレンタカーが借りられなかったという書き込みがあったことに岩田氏は注目する。

この犯人は派遣労働者だったが、派遣を打ち切られたので、当初4トントラックを借りて元勤務先の工場の入り口をブロックするつもりだった。ところがクレジットカードがないので4トン車は断られたため、現金で借りられた2トントラックで秋葉原の凶行に及んだのだという。

クレジットカードを持っていれば、あるいは秋葉原の事件も起きなかったかもしれない。

岩田氏は、今後中流・下流にはセゾンなどの年会費無料カード(年収300万円以上)、消費者金融のローンカード(年収200万円以上)、そしてそれ以下の最下層には電子マネーというすみわけができるだろうと予測する。

ちなみに岩田氏は電子マネー業界の定本である「電子マネー業界ハンドブック」も出版している電子マネー業界の第一人者でもある。

図解 電子マネー業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)図解 電子マネー業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-03
おすすめ度:5.0
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電子マネーでも限度額が2万円あるいは5万円なので、一応クレジットカード並みに使えるし、米国の様にデビットカードが普及していない日本ではクレジットカードを持てない層には電子マネーが普及するだろう。

また一部では依然として違法金利を徴収するヤミ金融に走らざるを得ない最下流層も残るだろう。


信用力のある選ばれた人向けのアメックスブラックカード

クレジットカードがつくれなかったり、ローンが受けられなくなる中流・下流とは違って、信用力のある上級の人は楽勝となる。

信用力が最高ランクの選ばれた人には、最上級としてアメックスのセンチュリオンブラックカードがある。年会費は36万7千5百円(2009年4月に従来の16万8千円から2倍以上に引き上げられた)という高額だが、そのサービスは半端ではない。

アメックスのコンシェルジュサービスは「ノーといわないサービス」を標榜するほど充実しているといわれている。24時間365日のコンシェルジュサービスに加えてホテルはスイートルームにアップグレード、飛行機もワンランク上のファーストクラスあるいはビジネスクラスに無料アップグレードされるという。

限度額もないといわれており、ヨットや自家用機の購入にも使えるという噂である。

芸能人では細木数子、みのもんたなどが持っているという。年収3,000万円以上で、プラチナカードを数年使っているなどのクレジットヒストリーがしっかりした人にアメックスの方から持ちかけてくるのだという。

日本では2,000人程度しか持っていないといわれるが、最近コンシェルジュサービスへの電話がつながりにくくなったという話もあり、この数が増えている可能性もある。

岩田氏はオールアバウトでクレジットカードを担当されているが、2004年のアメックスセンチュリオンカードの記事は、いまだに検索上位に上っているという。筆者も何度も読んで参考にさせていただいた。

余談になるが、岩田氏には筆者の別ブログポイントマニアブログもオールアバウトで紹介頂いたことがある。

元ヤンキーズの伊良部が大阪のバーで暴れた事件があったが、あれも伊良部がアメックスのブラックーカードを出したら使えないといわれて逆上したというのが真相だという。

アメックスは加盟店手数料が高いのでアメリカでも飲食店はアメックスが使えない店が結構あるが、日本ではアメックスが使えない飲食店のほうが多い。伊良部はそれも知らなかったようだ。

信用力のある人はブラックカードやプラチナカードが用意されている。ゴールドカードは今やステイタスシンボルではなくなっており、年収500万以上が大体の基準だという。

ゴールドカードは普通年会費1万円だが、三菱UFJ銀行は年会費2,000円のゴールカードを出しているので、ゴールドカードの大衆化に拍車が掛かるだろう。

この本で岩田氏はブラックカードホルダーに直接インタビューしており、大変参考になる。

その人は外資系IT企業のシステムエンジニアで年収2,000万円以下だが、アメックスゴールドカード、プラチナカードとステップアップし、3年ほどプラチナカードを使っていたらアメックスよりインビテーションが来たのだという。

限度額はあるそうだが、飛行機やホテルの無料アップグレードに加え、各エアラインラウンジが使え、送迎はリムジンがつくという。実際に家族で舞浜のシェラトンに泊まったら、1泊3万円の部屋から一泊20万円のプレジデンシャルスイートにアップグレードしてもらったという。

また海外のコンシェルジェサービスは、有名なホテルやレストランの予約がすぐに取れて驚かされたという。


岩田氏は銀行(住宅)ローンの審査、クレジットカードの審査、消費者金融の審査の3つにわけて審査のポイントを詳しく説明していて大変参考になるので紹介しておく。

ちなみに岩田氏が出されている東洋経済の「クレジット&ローン業界ハンドブック」は、すでに3回改訂されており、この業界の教科書といえる本である。

図解 クレジット&ローン業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)図解 クレジット&ローン業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-03
おすすめ度:4.0
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銀行のローン審査

住宅ローンを借りる場合には、次のクレジットカード会社の審査と同様に10項目程度の属性が審査されるほか、借り入れ額が年収に比べて大きすぎないか、消費者金融に借金がないか、延滞はしていないか、クレジットカード保有数が多すぎないかなどがチェックされる。

住宅ローンが借りられる人は日本を代表するプライム層で、次のようなカテゴリーにあてはまる極めて信用力が高いひとたちであると岩田氏は語る。

1.限度額の25〜50%を毎月継続して利用している。
2.返済遅延が絶対にない。
3.常に上位カード取得の意欲を見せている。
4.キャッシング、ローンは絶対に利用しない。
5.住宅ローンを組んだ経験がある。
6.クレジットカードは持ちすぎない。
7.新しいカードを作ってから6ヶ月以上経過している。

年収が高かったり、勤務先が有名企業だから信用力があるというわけではないという。


クレジットカード会社の審査

OKWaveなどのQ&Aサイトでは毎日のようにクレジットカード審査についてのQ&Aが寄せられている。

この本ではクレジットカード会社の審査実体を熟知する岩田氏が詳しく解説しているので、大変参考になる。

クレジットカード会社の審査は、各社のノウハウのかたまりで、秘中の秘であるが、大体はこの業界のデファクトスタンダードのフェア・アイザック社のシステムを採用しながら、年齢、職種、勤務先規模、勤務年数、年収、住所形態、居住年数、電話、家族構成といった10項目程度の属性の評価ポイントと、次のような評点の合計で審査される。

1.過去の支払い履歴(35%)
2.現在の借り入れ残高(30%)
3.与信取引の長さ(15%)
4.新規枠・増枠の打診履歴(10%)
5.現在利用している与信取引形態(10%)

たとえば何社にもクレジットカードを集中して申し込むと審査に通らない可能性がある。本当に審査されるのは年齢でなく可処分所得であり、転職後1年間、転居後1年間などの人生の転機にはクレジットカードを作るのは我慢しろと岩田氏はアドバイスする。


消費者金融会社の審査

消費者金融会社の審査は申込者の顔色を見ながら審査する対面審査だと岩田氏は説明する。

岩田氏は前述のハンドブックの他にも消費者金融業界についていくつもの本を出されており、大変参考になる。

お金を貸す人 借りる人―カード&ローン儲けのカラクリお金を貸す人 借りる人―カード&ローン儲けのカラクリ
著者:岩田 昭男
販売元:実業之日本社
発売日:2004-02
おすすめ度:4.0
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消費者金融の顧客は1,400万人といわれるが、新規契約者では年収400万円以下が62%を占めている。貸し倒れ、延滞は日常茶飯事であるにもかかわらず、無担保で貸すのでリスクが高いという業界の特性から編み出されたのが対面審査である。

お客の顔や服装、言葉遣い、態度等から貸せるかどうか判断するのだ。

ちなみに年収500万円以上の人はむしろ敬遠されるという。銀行で借りられずに消費者金融に借りに来ていると思われるので、資金繰りになんらかの問題があるケースが多い。またたとえ融資しても一度で終わってしまいリピーターにはならないからだという。

岩田氏は、実際に無人自動契約機での審査に立ち会った貴重な経験談を披露しているので、大変興味深い。

無人契約機ブースに入るとロックするように言われ、まずは身分を証明する免許証などの提示を求められる。

無人機のカメラ映像は事務所のモニターに写される。事務所には個人信用機関とつながっているテレホンデータ端末やNTTのデータペース、住宅地図などが置かれている。

申込用紙に属性や他社からの借入額など20項目を記入すると事務員がいくつか質問をして、その場で受け答えがある。それから10分ほどかけて数人の事務員が信用情報機関へ問い合わせたり、免許証が偽造ではないか確認したり、データベースと照合したりして貸し出しの可否を判断する。

岩田氏の立ち会ったケースでは、4社から借り入れしているにもかかわらず、他社からの借り入れゼロと申告していた。当然これは信用情報機関に問い合わせればわかることで、50万円の希望額に対して10万円が貸し出された。

現在は消費者金融会社の申し合わせで、4社以上から借り入れしていると、新規の融資は断られる。また過払い金返還請求をしているとその消費者金融会社では借りられないという。


日本の5つの個人信用情報機関

日本には次の5つの個人信用情報機関がある。

1.全国銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行系
2.CIC クレジットカード、信販系
3.CCB クレジットカード、信販系
4.全国信用情報センター連合会(全情連、JIC) 消費者金融系
5.テラネット 消費者金融系

このうち最も古く40年の歴史のある全情連のデータベースは加盟各社のデータがリアルタイムで統合されており、入金があるたびに更新されるという点で最も優れている。消費者金融業界の貸し倒れが少ないのも、このデータベースが充実しているからだといわれている。

ちなみに全情連のデータベースが出来る前は、消費者金融各社が申し合わせて、保険証の角に針で穴を開け、その針穴の位置で会社を特定していたという。

業態ごとに信用情報の交流がないので、クレジットカードで多重債務に陥っても、消費者金融に行けば何度でも借り入れができるということができていた。そのため他業態と連携して信用情報の一部共有化を行うことが決定されている。

信用情報をより広く共有化することにより、多重債務を抑止しようとするものだ。

信用情報機関では、1.個人特定情報、2.契約内容に関する情報、3.支払いに関する情報が登録されている。いわゆるブラックリストというものはなく、3ヶ月支払いが滞った場合は「事故」として登録され、これがブラック情報になる。

信用情報には加盟企業からの問い合わせ・アクセス履歴や、過去5年間の取引履歴、過去6ヶ月間の申込履歴も登録される。

信用情報機関に申し込むと自分のクレジットレポートが入手できる。

4年ほど前にある雑誌の編集者がクレジットレポートを取り寄せたら、CICでは問題なかったが、全情連のレポートでは身に覚えのない借り入れ履歴があったという。

真相は、消費者金融会社の店長が、期末に休眠口座を使って借り出し実績があったように見せかけ、自分の店のノルマを達成していたという驚くべき事態だった。


改正貸金業法の骨子

一般にはあまりなじみのない改正貸金業法の説明も興味深い。

貸金業法の改正骨子は次の5点である。

1.金利規制(グレーゾーン金利撤廃)
2.過剰貸付の抑制(年収の1/3までの総量規制と、すべての業態をまとめる指定金融情報機関設立)
3.業務規制(貸金業登録の最低総資産額を500万円から5,000万円に引き上げ)
4.ヤミ金融対策(罰則強化)
5.多重債務者対策(借りられなくなる人のセーフティネット強化)

法律は2006年12月に成立し、2010年6月に完全施行される。すでに段階的に施行されており、グレーゾーン金利撤廃の影響で消費者金融会社とクレジットカード会社が3大金融グループの草刈り場となりつつある。

たとえば三井住友ファイナンシャルグループは、従来の三井住友カードとプロミスに加え、クレジットカードではOMC,セントラルファイナンス、ポケットカードを、消費者金融では三洋信販(ポケットカードの親会社)を新たにグループに加えている。MUFGはJALカードを買収するといった動きがある。


日本版グラミンバンク構想

従来消費者金融からお金を借りていた個人は、改正貸金業法により新たに借り入れられないという事態が生じている。

現在消費者金融の利用者は1,400万人だが、そのうち1,000万人が消費者金融を利用できなくなるという「ローン難民」が出現するという。ちなみに200万人が多重債務者といわれており、完済はほぼ無理な人たちだ。

こうした人たちに国や自治体は「多重債務問題改善プログラム」をつくって活動をはじめている。日本版グラミンバンクをつくろうというもので、そのモデルケースとなるのが、岩手信用生協だ。

グラミンバンクについてはこのブログでも創設者ムハマド・ユヌス氏の「貧困のない世界を創る」を紹介したが、バングラディシュの貧民専門の銀行である。

岩手信用生協は1969年設立で、組合員向けの低利融資を行い、スイッチローンと呼ばれる生協、自治体、弁護士会、金融機関の4社が一緒になって生活再建のための債務整理や訴訟費用のバックアップを行うなど、解決に至る適切なアドバイスと具体的な解決策を提供している。

グラミンバンクでは借り手を5人ごとのグループにわけ、お金を借りたい時は他の4人の許可を得なければならない。それぞれの借り手が自分のローンに責任を持つが、グループとして互いに励まし合うことで、精神的なサポートになるという。「グループの他のメンバーを失望させたくない」というのが、ローンをきちんと返済する一番の理由だ。

岩手信用生協もチーム構成は異なるが、いずれも債務者をチームで支援しようとするものだ。

しかし岩田氏は自分も借金で苦労した経験があるので、この日本版グラミンバンクは、机上の空論のように思えると語る。

消費者金融会社のような与信管理のノウハウがなくては、新銀行東京のような結末になるのではないかと危惧している。


米国のクレジットヒストリー社会

この本で岩田氏は米国のクレジットヒストリー万能社会について紹介している。

米国ではクレジットビューローと呼ばれるエキファックス、エクスペリアン、トランスユニオンという3社の信用情報機関があり、銀行、クレジットカード会社など様々な会社から支払い履歴などの情報が毎日寄せられる。

過去2年間毎月の返済状況をまとめたのがクレジットレポートで、クレジットレポートの内容を3桁の偏差値であらわしたものがクレジットスコアだ。30日以上の支払い遅延があるとクレジットレポートに記載される。

筆者も合計9年間の米国駐在時に、クレジットヒストリーでは不便な思いをさせられたことがある。

1986年からの最初のピッツバーグ駐在のときにクレジットカードをつくろうとしたら、日本のクレジットヒストリーは米国には反映されないので、ダイナーズにリジェクトされてしまったのだ。

仕事用はアメックスのコーポレートカードが支給され、口座を開いた銀行で限度額が3,000ドル程度のビザカードがつくれたので、あまり問題なかったが、プライベートの支払いも限度額を超える分はコーポレートカードで支払っていた。

アメリカでもアメックスが使えないレストランとかが結構あるので、ビザカードは必需品なのだ。

半年から1年くらい経ってクレジットヒストリーができた段階で、今度はいろいろなカード会社から"Pre-approved"つまり審査合格済みというクレジットカードの案内がやたら送られてきて、手のひらを返したような扱いに驚いたものだ。

そのうちダイナーズからも申込書が送られてきたが、あのときの恨みがあるのでダイナーズカードは一度もつくったことがない。

米国でクレジットヒストリーが重要視される理由は、支払いは銀行引き落としでなく債務者がチェック(小切手)を切って郵送しないと支払いが行われないからだ。

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これが筆者の小切手帳である。小切手に手書きで相手の名前、金額を英語と数字で書いて、封筒に入れて送るのだ。スペルミスがあると格好が悪いので、金額を英語で書くのが結構大変だ。たとえば14は"Fourteen"だが40は"forty"だ。

資金繰りに余裕がないときは小切手の送付を支払期日から遅らせることがあり、あまりこの遅れが大きくなると延滞金利を取られるようになるので、ぎりぎりのところで郵送するのがコツである。

米国では銀行がクレジットカードを発行している例が大半なので、銀行に一定金額以上の預金があれば1,000ドル程度の低い限度額のクレジットカードなら発行される。それ以外の場合はデビットカードという銀行引き落としカードを使う。

デビットカードは銀行残高がないと支払えないので、クレジットカードを持てない人でも持てる。だから中・下層向けの支払い手段といえる。


クレジットスコアとは?

クレジットスコアは前述のフェア・アイザック社のFICOスコアというスコアリングがデファクトとなっている。

クレジットスコアは300点から850点までランク付けされており、米国民における比率は次の通りだ。

800点以上   13%
799〜750  27%
749〜700  18%
699〜650  15%
649〜600  12%
599〜550   8%
549〜500   5%
〜499      2%

米国ではクレジットスコアにより、社会の階層化がより促進されたと岩田氏は語る。

クレジットスコアは日本に於いてはいわゆるセンシティブ情報ということで、個人情報の中でも最も知られたくない個人情報に分類されている。

しかし通販業界が政治力を持っている米国ではその点はルーズで、ダイレクトメールの送り先を抽出するために信用情報機関からクレジットスコアが高い人のリストを購入するということも日常的に行われている。

だから良いクレジットヒストリーができると、やたらにクレジットカードの勧誘のダイレクトメールが来るのだ。

日本では統一的なクレジットスコアの導入は急ぐべきでないと岩田氏は考えているが、現実としては日本もそういった社会が近づいているように思われると語っている。


クレジットスコアをあげる方法

最後に岩田氏は、クレジットカードの審査に通るために、前述の転職後や転居後1年間はじっと待つなど、基本的な対策のほかにクレジットヒストリーを磨く方法を伝授している。

クレジットヒストリーには過去2年間の毎月の返済状況が”$”(期日どおり支払い)マークで示されているが、毎月”$”マークが並んでいたほうが審査担当者に心証が良い。

こまめにカードを使ってくれている積極的なカードホルダーと評価されるからだ。

JCBカードなどは、毎月きちんと払っていても”$”マークはつかないので、クレジットヒストリーを修復するにはOMCカード、ビューカード、セゾンカードなど支払い記録に”$”マークがつくカードが良いと薦める。

さすが消費生活評論家第一人者の岩田氏の実際的なアドバイスである。

生活習慣をあたらめることで、信用力をいくらでもつけられる時代になったので、クレジットヒストリーの仕組みを知って自分の点数が下がらないように努力すべきであると語る。

それには次の6つの原則を実行することである。

1.カードを持ちすぎない
2.返済には決して遅れない
3.限度額いっぱいで使うことはしない
4.毎月一定額は必ずカード払いをして実績を積む
5.複数のカードの申し込みを短期間にしない
6.一度申し込んだら半年間は期間をあける

これらのアドバイスに従い、年に1回くらいは個人信用情報機関からクレジットレポートを取り寄せて、自らのクレジットヒストリーを確認することを岩田氏はすすめている。


消費者の「信用力」という新しい分野の定本となる本である。

岩田氏ならではの現場密着型の情報が満載で、アドバイスもすぐに実行可能なものばかりである。

是非一読をおすすめする。



参考になれば次クリックお願いします。


あなたに貸す金はない! クレジットクランチ時代のサバイバル法

2010年6月21日追記:

6月18日よりいよいよ改正貸金業法が全面施行された。テレビの特集番組や、ニュースで取り上げられているが、総借入額の年収の1/3規制や、主婦の借り入れも極端に制限される。

ここにきて噴出する問題点について1年以上前から警鐘をならしていたのは、消費生活評論家岩田昭男さんだ。

クレジットクランチ時代のサバイバル法を解説した消費生活評論家 岩田昭男氏の「あなたに貸す金はない」のあらすじを再掲する。

まさにタイムリーな話題を、自らの体験も織り込んで詳しく解説した名著である。


2009年6月15日初掲:

あなたに貸す金はない! 国が生み出す新しい「借金地獄」 (アスキー新書)あなたに貸す金はない! 国が生み出す新しい「借金地獄」 (アスキー新書)
著者:岩田 昭男
販売元:アスキー・メディアワークス
発売日:2009-05-08
おすすめ度:4.0
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このブログで紹介した「信用力格差社会」「信用偏差値」に続く、改正貸金業法の影響に警鐘を鳴らす消費生活評論家 岩田昭男氏の最新作。

「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-11
おすすめ度:4.0
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「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)
著者:岩田 昭男
販売元:文藝春秋
発売日:2008-11
おすすめ度:3.0
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いよいよ今月、2009年6月より改正貸金業法が一部施行され、個人の借り入れなどの信用情報が全金融機関で共有される様になる。

現在5社ある信用情報機関がグループ化され、統合された機関となるのは今年秋頃と見られるが、個人の信用情報の共有は機関が設立する前からスタートするのだ。

この件についてマスコミは全く騒いでいないが、この本の帯に書いてある通り「借金大パニック襲来!!1000万人が借りられなくなる!」ことになるのは必至なのだ。

岩田氏は、昨年から前掲の2冊で、警鐘を鳴らしていたが、本件についてはマスコミはまったく騒いでいないのは驚くべきことだ。


改正貸金業法の骨子

貸金業法の改正骨子をおさらいしておくと、次の5点が大きな改正点である。

1.金利規制(グレーゾーン金利撤廃)
2.過剰貸付の抑制(年収の1/3までの総量規制と、すべての業態をまとめる指定金融情報機関設立)
3.業務規制(貸金業登録の最低総資産額を500万円から5,000万円に引き上げ)
4.ヤミ金融対策(罰則強化)
5.多重債務者対策(借りられなくなる人のセーフティネット強化)

法律は2006年12月に成立し、2010年6月に完全施行される。すでに段階的に施行されており、グレーゾーン金利撤廃の影響で消費者金融会社とクレジットカード会社が3大金融グループの草刈り場となっているのは周知の通りだ。

岩田氏は最近タモリが、アコムのTVコマーシャルに出演していることを取り上げている。

サラ金という今までのイメージから、三菱UFJファイナンシャルグループというメガバンク傘下の消費者金融会社に変わったので、タモリもコマーシャルに出ても良いと思ったのではないかと。

今月からいよいよ影響が出てくるのは上記2.の過剰貸し付けの抑制だ。

具体的には個人の借入情報をすべての金融機関が見られることになり、その人の年収の1/3までが無担保貸し付けの限度額となり、これを越える借り入れは断られることになる。

また既に年収の1/3を超える借金がある人は、残高が年収の1/3を下回るまで新しい借り入れはできず、返済するだけとなる。

いままでは消費者金融の借り入れ残高は、クレジットカード会社や銀行ではアクセスできなかったので、クレジットカードのキャッシング枠で借り入れるとか、銀行のフリーローンで借り入れることができた。

業態ごとに信用情報の交流がないので、クレジットカードで多重債務に陥っても、消費者金融に行けば何度でも借り入れができるということができていた。

今度は総借入額が年収の1/3を超えると、一切新規の借り入れができなくなるのだ。


個人信用情報の統合

日本には現在次の5つの個人信用情報機関がある。

1.全国銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行系
2.CIC クレジットカード、信販系
3.CCB クレジットカード、信販系
4.全国信用情報センター連合会(全情連、JIC) 消費者金融系
5.テラネット 消費者金融系

このうち最も古く40年の歴史のある全情連のデータベースは加盟各社のデータがリアルタイムで統合されており、入金があるたびに更新されるという点で最も優れている。消費者金融業界の貸し倒れが少ないのも、このデータベースが充実しているからだといわれている。

上記の3,4,5が統合されることになりそうで、1,2については動向は決まっていないが、いずれにせよ2009年6月以降は信用情報はすべての機関で一本化されることが決まっている。

信用情報をより広く共有化することにより、多重債務を抑止しようとするものだ。


クレジットクランチ、借金難民続出の時代

これまでは年収の2倍まで借りられると言われていたのに、これが一挙に1/3までしか借りられなくなったら、多くの人は借金難民となり、おまけにクレジットカードも作れないというクレジットクランチ時代が到来し、カード難民が続出する。

筆者も住宅ローンと車のローンを抱えているが、岩田氏は、我が身を振り返って、借金は生活習慣病だと語る。

多重債務者は生活習慣病で、一時は財産100億円を超えていたのに詐欺をはたらいて有罪となった小室哲哉氏のように、収入が減少しても生活レベルは急には落とせないので放っておけば必ず再発すると。

だから本当に必要なのは借金メタボ対策のカウンセリングなのだと。借金メタボには生活ダイエットが必要であり、生活を切りつめることが必要なのだ。


借金サバイバル法

この本は岩田氏の借金サバイバル法が伝授されていて、大変参考になる。

たとえば最近弁護士がやたらテレビや電車の車内広告で借金整理の宣伝しているが、弁護士に頼むのはデメリットの方が大きいと言い切る。

返済している途中の弁護士や司法書士による債務整理は事故に当たるので、すぐにブラックリストに載ってしまう。一度ブラックリストに載ると5年間は借り入れできなくなる。

弁護士は「別にブラックリストに載っても良いではないか」と説明するらしいが、ブラックリストに載って5年間も一切借り入れもクレジットカードも作れないとなると、誰でも不安に思うだろう。

それと弁護士に頼むと着手金が1社あたり2万1千円、借り入れが5社だと10万円強がすぐに必要だ。そして過払い金を取り戻せても、弁護士が成功報酬2万1千円、返還金の20%とチャラになった残高の10%を取る。

業者が債務減額に応じただけだと、減額された金額の10%が弁護士報酬になる。

なんだかんだで弁護士報酬はバカにならない。弁護士も儲からなければ、あれだけ頻繁に大金をかけてテレビコマーシャルなどやらないはずだ。

岩田氏は弁護士を使わず、自分で過払い金請求をすることを勧め、この本で過払い金返還請求の手順まで懇切丁寧に説明している。

個人情報保護法の規定により、開示請求があれば貸金業者は取引経過を開示しなければならないという最高裁判決が出ているので、まずは取引経過を取り寄せ、次のような過払い金請求マニュアル本についている附属CDソフトで過払い金を計算し、利息分(5〜6%)を加えて配達証明郵便で業者に請求書を送るのだと。

そうすると業者から返還額を書いた書類を送ってくるので、それに同意して捺印して送り返すと1〜2ヶ月で入金するという。

Q&A 過払金返還請求の手引―サラ金からの簡易・迅速な回収をめざしてQ&A 過払金返還請求の手引―サラ金からの簡易・迅速な回収をめざして
販売元:民事法研究会
発売日:2008-06
おすすめ度:4.0
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50万円借りて、毎月1万3千円ずつ払って完済していた場合には、過払い請求するとなんと約73万円が返還されるという。


とっておきのノウハウ伝授

岩田さんは、最後にとっておきのノウハウも惜しげなく教えている。

数社から借金がある場合、まず1社を何が何でも完済するのだと。そして完済した後で、過払い金返還請求する。完済後は過払い金返還請求しても事故にはならないのだ。

そして過払い金が入金したらそれを使って2番目の業者の債務を完済して、完済後に同じく過払い金返還請求する。同じ事を3番目め、N番目の業者に繰り返すのだ。

すごい実践的アドバイスである。

そのほか、ノウハウとして、キャッシング=手数料と肝に銘じるとか、リボルビング払いはしないなどの、「岩田流 多重債務を防ぐポイント」として8ヶ条、家計簿をつけてみよう、収入を増やす努力をして、支出を切りつめる、いよいよとなったら公的機関に頼るなどの、「岩田流 借金生活脱出法」6ヶ条を紹介している。

東京都の場合、消費生活センターに連絡するとなんとかなるだろうと。

テレビによく出てくる「年収300万円シリーズ」で、自分は年収数千万円を稼いでいる評論家の本などとは全然違う地に足がついた実践的指南である。


参考になる情報が満載

貸金業法改正で影響が出るのは、年収400万円以下、特に200万円以下の人と、主婦やフリーターなどで、それ以外の人はあまり影響はないと思われるが、情報としても参考になる。

たとえば次のような情報が紹介されている。

★トヨタファイナンスはキャッシング枠をなくし、無担保ローンから撤退する。これはレクサスカードなどの優良顧客を守りたかったのではないかと岩田氏は推測する。

キャッシング枠があるとその情報は指定信用情報機関に上げられ、貸金業各社が見ることになり、優良顧客であればDM攻勢が来ることになる。トヨタファイナンスはそれを避けたかったのではないかと。

★年末派遣村にやってきた派遣切りにあった失業者の多くは多重債務者で、たとえ生活保護を受けるためでも住民登録は嫌がる人が多い。債権者に見つかってしまうからだ。

★本当は恐ろしいリボルビング払い これは説明不要だろう。アメリカのクレジットカードは基本がリボルビング払いなので、サブプライムローン問題が出てきた時に破産者が急増した理由の一つとなった。

★東京都はバングラデシュのグラミン銀行を参考にして、生活再生資金貸付事業を社団法人生活サポート基金に委託して行っている。

岩田さんの本だと年利12.5%、返済期間120回となっているが、ホームページでは最高300万円、年利3.5%(ただし保証人必要)、最長7年間となっている。保証人がいないと金利が異なるのだろう。

ただし、まだ実績は5件しかないという。

★岩手県消費者信用生協によるスイッチローンは、信用生協、県内市町村、岩手弁護士会、提携金融機関が共同で多重債務者を救済するという全国でも例を見ない優れたシステム。

★改正割賦販売法によりショッピング枠にも網がかかる。こちらは経済産業省の主管で、(年収 ー 生活維持費) x 大臣が定める係数(0.5〜1)でクレジットカードのショッピング枠を決めるという、いかにもお役所らしい計算式だ。

係数もまだ決まっていないし、車のローン除外、海外旅行時には最大2ヶ月限度額2倍とか、公共料金の支払いを除外するとか、主婦は無条件で合計30万円だが、世帯主の収入を主婦の限度額に算入できるとか、例外をめぐってまだまだ議論が続きそうだ。

★貸金業者数は2000年の3万社から、2008年の9千社にまで激減し、さらに減少が見込まれる。


PtoP個人間借金サイト

最後にこの本には載っていないが、最近のYahoo!のニュースで気がついたPtoPの個人間でお金を貸し借りするサイトが気になるので、紹介しておく。

maneoというサイトで、個人間の金銭貸借をオークション形式で仲介するサイトのようだ。手数料は1.5%だという。

maneo





日本では企業が貸金業をやることは、出資法で厳しく規制されており、ライセンスが必要だが、個人間の貸し借りだったら法の網をくぐれるということなのだろうか?

無規制でこんなサービスが日本でやれるとは信じられないような気がするが、今のところ貸付金総額7千5百万円ということなので、まるめて1億円としても手数料1.5%なら、創業以来の収入が150万円しかないので、このままでは採算が合わずサービス撤退は時間の問題だろう。

はたしてこのようなサービスが生き延びるのか興味があるところだ。

最近グラミン銀行のムハマド・ユヌス氏の自伝をオーディオブックで読んで(聞いて)感動したので、近々あらすじを紹介するが、グラミン銀行の場合、女性5人でグループをつくってお互いを励まし合うという「隣組」あるいは「細胞」のような組織がベースとなっているから、99%という高率の返済率となっている。

Banker to the Poor: Micro-Lending and the Battle Against World PovertyBanker to the Poor: Micro-Lending and the Battle Against World Poverty
著者:Muhammad Yunus
販売元:Blackstone Audiobooks
発売日:2007-01
おすすめ度:5.0
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そういうモラル面での歯止めがない個人間融資は、危険な賭けではないかと思うが、筆者の直感が間違っているかもしれない。


この本には、Q&Aも充実しており、興味ある質問ばかりで大変参考になる。

クレジットスコアやクレジットレポートの実例なども解説されており、これ一冊でクレジットクランチ時代の問題点やサバイバル法がすべてわかる。

この本に書いてあることは今日本で起こっていることだ。時宜を得た本で、わかりやすくためになる。

是非一読をおすすめする。


参考になれば次クリックお願いします。




祝駐中国大使就任! 伊藤忠の丹羽さんの新・ニッポン開国論

新・ニッポン開国論新・ニッポン開国論
著者:丹羽宇一郎
販売元:日経BP出版センター
発売日:2010-03-04
おすすめ度:4.5
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今般駐中国大使に内定した伊藤忠商事相談役の丹羽宇一郎さんが書いている「日経ビジネス」の最後のページのコラムを編集した本。

丹羽さんの駐中国大使就任は、民主党内閣のヒットだと思う。

別ブログでは丹羽さんの本は、「人は仕事で磨かれる」とキャノンの御手洗さんとの対談集の「会社は誰のために」を紹介した。このうち「人は仕事で磨かれる」は、まさにタイトルどおりの本で、大変参考になった。筆者が読んでから買った数少ない本のうちの一冊だ。

この本では4ページくらいの長さのコラムを編集しているので、簡単に読める。

この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、是非目次を見て貰いたい。

参考になったものをいくつか紹介しておく。


★不況期こそコミュニケーションを
今は正社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイトなど様々な職種の人が集まってチームを構成することが多い。その際にメンバーが孤立すると、不祥事が起きる温床となる。それを防ぐためにはリーダーは1にコミュニケーション、2にコミュニケーション、3にコミュニケーションだ。つまりコミュニケーションに尽きる。


★国を滅ぼす「もうひとつの恐ろしい感染症」
企業が失敗する条件は、「保守」、「思い上がり」、「自己満足」だ。それに対し企業が成功する条件は、「顧客」、「競争」、「変革」だ。「間接的ゴマすり症候群」が蔓延しつつあるという。トップに逆らわない静かな取締役会などがその症状だ。


★リーダーは私利私欲を自制せよ
次世代教育で最も大事なのは倫理だ。己に克つ強い心、つまり克己心(こっきしん)を持った人材を育てなければならない。


★農業は国の宝
国土に占める農地の割合は日本は12.5%で、他の先進国に比べて極めて低い。アメリカ4割、英国で6〜7割、その他先進国で5〜6割だという。日本の地方を再生させるには農業しかないと丹羽さんは力説する。

日本の米作りを強化して、コスト競争力をつけろと提案する。


★コーヒー一杯分の恩返しを
丹羽さんは国連の世界食糧計画(WFP)を支援するNPO,”国連WFP協会”の会長を務めているという。1人分20円で給食が提供できるので、コーヒー一杯分でも10人分の給食費がカバーできる。是非募金を!と呼びかけている。

丹羽さんは”国連WFP協会会長”としてケニアを訪問したとしか書いていないが、別ブログで紹介した「20円で世界をつなぐ仕事」によると、日本発のNPO運動"Table for Two"は伊藤忠の社員食堂からスタートしたはずだ。

“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事
著者:小暮 真久
販売元:日本能率協会マネジメントセンター
発売日:2009-03-21
おすすめ度:4.5
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自分や自社の社会貢献活動を全然宣伝していない。奥ゆかしいというか、謙虚だ。地下鉄で通勤し、12年物のカローラIIを乗り続けているという丹羽さんの人柄がうかがわれる。


★消費税年金ポイントカードで衰退は食い止められる
年金は年金版ポイントカードを導入して、消費税に応じた年金ポイントが貯まるしくみを提案している。課題も多いが、消費税年金は基礎年金の補完的な役割を果たせると思うと。

実現性はともかく、ポイントカードをつくれば国民一人一人が年金ポイントを常に意識することとなり、効果があるかもしれない。

もちろんその前に、アメリカの社会保障番号のようなものを取り入れることも必要だろう。


★高卒採用で老人企業を防ぐ
まだ私案ではあるが、丹羽さんは伊藤忠の人事担当に高卒・専門学校卒の採用を検討するように指示を出したという。まずはグループで採用し、いずれ伊藤忠本体でも働けるようにしたいと。

大卒も就職難だが、高卒はさらに大変のようだ。たしかに総合商社は昭和40年代までは高卒も採用していた。筆者の先輩でも高卒で優秀な人もいる。丹羽さんの発想は面白いと思う。

ただし、丹羽さんの頃はたぶん大学進学率は20%程度だったと思うが、今は大学進学率は50%を超えている。昔のような高卒のイメージでは必ずしもないことを、念のため付け加えておく。


丹羽さんのコラムはいつも読んでいるが、こうして本にまとめても参考になることが多い。


参考になれば次クリック願う。




村上式シンプル仕事術 まずはどれか一つから始めよう!

村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則
著者:村上 憲郎
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-10-02
おすすめ度:4.0
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村上式シンプル英語勉強法が20万部を超えるベストセラーになったグーグル日本法人名誉会長(英語勉強法出版当時はグーグル日本法人社長で本社の副社長)の村上憲郎(のりお)さんの仕事術14ヶ条。

村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける
著者:村上 憲郎
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2008-08-01
おすすめ度:4.0
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またもや見つけたカーネギー信者だ。


村上さんとカーネギー

村上さんは1970年に京都大学工学部を卒業し、日立電子に入社。1978年に日本DECに営業職として転職した。日本DECで受けた最初の研修がデール・カーネギーのマネジメント講習だった。

新米マネージャー研修の一環として講習を受け、カーネギーの考え方に感銘を受け、それ以来「人を動かす」は村上さんのバイブルになったという。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
販売元:創元社
発売日:1999-10-31
おすすめ度:5.0
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村上さんの人とのつきあい方も、仕事での人間関係のつくりかたも、カーネギーの本がベースになっているという。

ビジネスパーソンにとって必読の書だと村上さんは語る。

村上さんはカーネギーの「人を動かす」の目次をコピーして、デスクの引き出しに入れていた。毎朝引き出しをあけて目次を一通り読んだという。次が村上さんがコピーして持っていた目次だ。

人を動かす目次





出典:本書68−69ページ

カーネギーのもう一冊のベストセラー、「道は開ける」にも、村上さんは影響を受けたという。

道は開ける 新装版道は開ける 新装版
著者:デール カーネギー
販売元:創元社
発売日:1999-10
おすすめ度:4.5
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詳しく紹介すると本を読んだ時に興ざめなので、タイトルだけ紹介しておく。

仕事で大切なのは、仕事の全体像、”仕事という森”を見ることだ。


仕事における7つの原理原則

1.会社のしくみを知る
2.財務・簿記の基本知識を身につける
3.疑問はその日に解決する
4.仕事の目的は顧客満足にある
5.仕事のプライオリティ(優先度)をつける
6.アイデアは頭で考えない(どんどん書き出し、みんなで議論する)
7.デール・カーネギーに学ぶ


グローバル時代に不可欠な4つの知識

1.キリスト教の基礎を理解する
2.仏教の基礎を理解する
3.西洋哲学の基礎を理解する
4.アメリカ史の基礎を理解する

筆者はアルゼンチン(カトリック国)2年間、米国9年間の駐在経験者なので、村上さんの語る4つのポイントは全く同感だ。

もっとも聖書とか仏教とかいまさら読むのも大変なので、時間のないビジネスマンはオーディオブックとか要約本の活用をおすすめする。

筆者は新約・旧約聖書は図書館でカセットブックを借りて、通勤途上にiPodで聴いた。それぞれ10時間強の長さだが、それでも要約版だと思う。

なんですぐに人殺しばかりするのか?と旧約聖書の残酷性に驚いたものだ。

村上さんの挙げるそれぞれのテーマについて一冊の要約本を読めば、おおざっぱには理解出来ると思う。要約本はいくつも出ているが、たとえば聖書については、次の本が地理的な位置関係もわかって参考になった。

図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (青春新書INTELLIGENCE)図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (青春新書INTELLIGENCE)
販売元:青春出版社
発売日:2009-05-02
おすすめ度:4.5
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仕事に生かす3つの経済学

1.心優しき日本人の陥りがちな陥穽
2.マンキューの経済学を学べ
3.フリードリヒ・ハイエクの自生的秩序がもたらすもの

こちらは結構たいへんだ。筆者は大学時代はサミュエルソンの経済学で学んだ。
サムエルソン 経済学〈上〉サムエルソン 経済学〈上〉
著者:P.A. サムエルソン
販売元:岩波書店
発売日:1992-05
おすすめ度:4.5
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マンキューという名前は知っていたが、本を読んだことがないので、まずは図書館で予約してみた。これが大変だ。

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編マンキュー経済学〈1〉ミクロ編
著者:N.グレゴリー マンキュー
販売元:東洋経済新報社
発売日:2005-09
おすすめ度:5.0
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サミュエルソンの経済学も上巻だけで500ページの大作だが、マンキューのミクロ経済学だけで700ページ、マクロ経済学を加えると合計1,300ページにもなる。

図書館で借りたので、来週から読み始めるつもりだ。もし借りずに買っていたら、間違いなく「積ん読」になると思う。

恥ずかしながら、筆者はハイエクも読んだことがない。ハイエク全集などは十数冊あり、どれから読んだらいいのかよくわからない。

大学の時の経済学の先生の嘉治元郎先生が訳したものがあるので、この辺か、あるいは新書でまず読んでみる。

個人主義と経済秩序 ハイエク全集 1-3 【新版】個人主義と経済秩序 ハイエク全集 1-3 【新版】
販売元:春秋社
発売日:2008-04
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自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す (PHP新書 492)自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す (PHP新書 492)
著者:渡部 昇一
販売元:PHP研究所
発売日:2008-07-16
おすすめ度:4.0
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最後の「仕事に生かす3つの経済学」が重いが、それ以外は腑に落ちるリコメンデーションばかりだ。

リコメンデーションを実行に移すには、強い意志がいる。すべてをいっぺんにやる必要はないので、まずはできるところから、たとえばカーネギーとか聖書、アメリカ史から始めたらよいと思う。

千里の道も一歩からだ。


参考になれば次クリック願う。


働く幸せ 鳩山前首相が感動した社員の7割が知的障害者のチョーク工場

働く幸せ~仕事でいちばん大切なこと~働く幸せ~仕事でいちばん大切なこと~
著者:大山 泰弘
販売元:WAVE出版
発売日:2009-07-23
おすすめ度:5.0
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今日から”前首相”になった鳩山さんが所信表明演説で取り上げた本。鳩山さん辞任を期に掲載する。

知的障害者が従業員の7割を占め、一躍有名になったホタテ貝殻でつくる粉のでないチョーク工場の話だ。

別ブログで紹介したら、「働く幸せ」と次の「日本で一番大切にしたい会社」の両方の出版社の人からコメントが寄せられた。どちらも編集者が細かくフォローしていて、作品をきちんとケアしている良い出版社のようだ。

この会社、日本理化学工業は、「日本で一番大切にしたい会社」で取り上げられて一躍有名になった。川崎市高津区にある従業員74名の会社で、北海道の美唄市にも工場がある。

日本でいちばん大切にしたい会社日本でいちばん大切にしたい会社
著者:坂本 光司
販売元:あさ出版
発売日:2008-03-21
おすすめ度:4.5
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筆者は通勤で電車に乗っている毎日往復2時間を読書に充てているが、この本を読んでいたら感動でウルウルしてしまった。電車の中で人に気づかれるとみっともないので、家に帰って読み終えた。

鳩山前首相が所信表明演説で絶賛したという宣伝文句が本の帯に書いてある。

CIMG9989







鳩山前首相所信表明演説





出典:西日本新聞

大山さんの経歴

この本の著者大山泰弘さんは、日本理化学工業の会長で、中央大学を卒業後、お父さんが戦前に始めたダストレスチョーク工場の経営を引き受ける。

このダストレスチョークは、大山さんのお父さんがアメリカの製品を参考にして、ドイツのパステル(絵画用具)製造機械を改造して製造を始めたものだ。チョークの粉が出ないということで、戦前は軍の作戦用チョークとしても売れていた。


知的障害者を受け入れる

大山さんが工場を引き受けてすぐに、品川区の養護学校から知的障害児を働かせてもらえないかという依頼がくる。

大山さんは悩み、入院中のお父さんに相談したところ、お父さんの「知的障害者が働く会社が1つくらい日本にあってもいいだろう。やってみたらいい。」という言葉で決心する。

そのときに15歳の女性工員を2名、まずは2週間の研修ということで受け入れた。研修が終わった後、工場の従業員たちが「私たちがめんどうを見ますから、あの子たちを雇ってあげてください」と申し出てくる。これは工場のみんなの総意だと。

1960年に養護学校を卒業した2名を雇ったことがきっかけで、どんどん知的障害者の従業員が増えていった。最初に入社した社員は定年後も嘱託として65歳まで、実に50年間も日本理化学工業の社員として働いたのだ。


知的障害者と働くということ

知的障害者と平常者が一緒に働くのは簡単なことではない。

大山さんは工場の生産プロセスでも、2種類の原料の重さを量るおもりと原料の入った入れ物を青と赤で色で区別したり、チョークの冶具の消耗度合いをノギス(計測器)を使わず、箱に入れて測ったり、時間を砂時計で計ったりして知的障害者でも効率よく働ける工夫を凝らした。

このような生産工程上の配慮とともに、社員旅行に行ったときの話(健常者、障害者両方が気を遣って楽しめなかったという)などの苦労談を披露している。


特に印象に残った話

この本で特に印象に残った話は次の3つの話だ。

まず大山さんは、釈迦の16人の羅漢(弟子)の一人、周利槃特(しゅりはんどく)という高僧の話を紹介している。周利槃特は今で言う知的障害者で自分の名前も言えないほどだったが、ある時お釈迦様が「塵を払わん、垢を除かん」という言葉と箒を与えると、周利槃特は一心不乱に掃除を始め、周囲の人は手を合わせたという。

お釈迦様は無言で説法が出来るということで、周利槃特を16羅漢に加えたのだと。大山さんは、工場で働く知的障害者たちにも、周利槃特と同じ気高さを感じるという。

2つめは元上野動物園の飼育係で、東武動物公園の”カバ園長”の西山登志雄さんの話だ。西山さんは「ぼくの動物園日記」というマンガの主人公にもなったので、筆者もよく覚えている。

動物園で育った動物は、自分の生んだ子どもでも育てようとしない。子育ての本能を忘れてしまうのだと。この話を聞き、大山さんは施設で保護されて生きることが、必ずしも本人にとって良いとは限らないのではないかと思ったという。

もう一つはたまたま法事で訪問した禅寺の住職の話だ。

大山さんが知的障害者が施設より工場に来たがることを話すと、住職は次のように言ったという。

「人間の幸せは、ものやお金ではありません。人間の究極の幸せは次の4つです。その一つは、人に愛されること。2つは、人にほめられること。3つは、人の役に立つこと。そして最後に、人から必要とされること。

障害者の方たちが、施設で保護されるより、企業で働きたいと願うのは、社会で必要とされて、本当の幸せを求める人間の証しなのです。」

これを聞いて大山さんは、いつも障害者に「がんばってくれてありがとう」と、なにげなく言葉をかけていたことを思い出し、それが彼らに幸せを与えていたことに気が付いたという。

「働く」という字は漢字ではなく日本で作った「国字」だ。人のために動くから「働く」なのだと、大山さんは語る。


障害者多数雇用工場として発展

大山さんの工場は順調に生産を延ばし、1973年に出来た「障害者多数雇用モデル工場」融資制度を使って、大きな敷地に移ることを検討した。

しかし当時工場のあった大田区からは民間の工場を支援するつもりはないと冷たく断られる。

それでも気を取り直して隣の川崎市に行くと、川崎市では市長みずからが公的機関が障害者を雇うよりも民間企業に雇って貰った方が良いと語り、4,000M2の土地を安く貸して貰えることになった。


チョークの技術開発でも日本トップ

第2工場として北海道の美唄市に建設した工場では、北海道ならではのエコ商品の開発に成功する。北海道ではホタテの漁獲量は45万トンと日本最大だが、それに伴ってホタテ貝殻が毎年大量に発生して、産業廃棄物となっていた。

このホタテ貝殻を原料としてチョークの生産を研究し、ついに2005年、ホタテ貝殻を10%混ぜたチョークの開発に成功した。

同時に開発に成功した全く粉の出ないチョーク技術とあわせて、2005年にエコ商品で”グリーン購買対応商品”として売り出し、国内トップシェアの年間5千万本を売り、売り上げ拡大に貢献した。


大山さんのこだわり

大山さんのこだわりは、たとえ知的障害者を雇っていても、賃金は最低賃金以上を払うことだ。知的障害者は月間1万円とか1万5千円とかの給料で使われることが多いが、大山さんは健常者並の賃金を払うことを会社方針として堅持している。

以前ヤマト運輸の創業者の小倉昌男さんの本を読んだが、小倉さんも障害者雇用拡大に努力し、全国にチェーン店展開しているスワン・ベーカリーを始めて、障害者を雇って健常者並の賃金を払うようにしている。

経営はロマンだ! 私の履歴書・小倉昌男 (日経ビジネス人文庫)経営はロマンだ! 私の履歴書・小倉昌男 (日経ビジネス人文庫)
著者:小倉 昌男
販売元:日本経済新聞社
発売日:2003-01-07
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

大山さんの日本理化学工業は、川崎市の推薦を受けて、2008年経産省から「明日の日本を支える元気なモノ作り中小企業300社」に選ばれたという。障害者雇用とは関係のない経産省から表彰されたことが、大山さんは嬉しかったという。


障害者雇用のメリット

最後に大山さんは障害者雇用のメリットを次の4つに整理している。

1.労働力を確保できること。

2.会社に「助け合う風土」が生まれる

3.消費者が味方してくれる

4.地域に支えてもらえる

ユニクロはやはり障害者雇用に熱心な企業の一つだ。現在障害者雇用率は8%で、従業員5,000人以上の大企業ではずば抜けた雇用率だ。ユニクロの柳井さんは、次のように語っているという。

「障害者と一緒に働くことで、彼らが苦手とする作業をフォローしたり、できる仕事をもっと上達させてあげようと、他のスタッフが協力しあうようになった。

その気持ちが従業員同士、さらにお客様に対しても向けられるようになり、結局は売り上げアップにもつながった。」


大山さんの見果てぬ夢

大山さんはベルギーの知的障害者雇用制度を日本にも導入しようとしたが、みんなから反対されて果たせなかったと語る。

ベルギーの制度とは、企業が知的障害者を雇用して最低賃金を支払うと、国が最低賃金分を補助するというしくみだ。実際賃金ゼロで障害者を雇えるのだ。

国は障害者施設の運営費用負担を減らし、企業は障害者を雇用しやすくなり、障害者は多くの働く場を得られる3方1両得の制度だ。

行政がお金をかけて施設でケアするよりも、企業に最低賃金分を支払って雇用して貰うほうが合理的なのだと、ベルギー政府の担当者は語っていたという。

日本で厚生省が所管していた「障害福祉基礎年金」と労働省が所管していた「最低賃金」を合計すれば、解釈を変更するだけで日本でも同様の制度ができると大山さんは考えたが、思わぬ反対にあった。

大山さんは全国重度障害者雇用事業所協会の会長を務めていたが、元労働省の事務次官の相談役に相談すると「年金は年金。賃金は賃金です。君は労働省を敵にまわす気か?」と言われたという。

省益を優先する官僚の本能的な拒絶にあったのだ。他の理事も相談役の顔色を見て、賛成しなかった。

結局大山さんは会長職を2003年に退任。この案は見果てぬ夢に終わった。日本の障害者雇用のこれからの問題である。


今度紹介する「日本でいちばん大切にしたい会社」は30万部、この「働く幸せ」は6万部のベストセラーになったという。

障害者雇用はきれい事だけではすまされない。日本理化学工業では、本当はこの本に書いてない大変な苦労があったのだろうが、それを乗り越えて知的障害者雇用率7割というのは大変立派な数字だ。

感動の実話である。大山さんの淡々とした文章にも好感を覚える。是非一読をおすすめする。


参考になれば次クリック願う。


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