2015年の本屋大賞を受賞した文化人類学者の上橋菜穂子さんの小説。
中央アジアの一国で、現在は隣国の東乎瑠(ツオル)に併合されたアカファ国の戦士ヴァンと、東乎瑠(ツオル)の医師ホッサルが活躍する物語。
KADOKAWAがこの本の紹介サイトを開設しており、そこに登場人物のマンガがある。登場人物のイメージが湧くと思うので紹介しておく。
出典:KADOKAWA 鹿の王特設サイト
アカファ国の戦士「独角」は、東乎瑠(ツオル)との防衛戦で全滅し、リーダーで飛鹿(ピュイカと呼ばれる乗鹿用の鹿)乗りの名人のヴァンは捕虜となり、岩塩鉱山で強制労働を強いられる。
ある日、岩塩鉱山に狼に率いられた狼犬の群れが突入し、鎖を自力で断ち切って逃げ出したヴァンと、かまどに隠されていた赤ん坊のユナ以外で鉱山に居た全員は狼犬(半仔=ハンチャイと本の中では呼ばれる)に襲われて死んでしまう。
狼に率いられた狼犬の群れは、東乎瑠(ツオル)の支配者の鷹狩りにも乱入し、東乎瑠(ツオル)の王の長男までもが狼犬にかまれて命を落とす。
この病は高熱が出て、全身に発疹が広がるという症状を示すものだが、単なる狂犬病ではなく、狼犬にかまれなかった者も同じ病で命を落とす者が続出する。狼犬の血をすったダニからも感染していたのだ。
東乎瑠(ツオル)の医師ホッサルは、この病が単なる狂犬病とは異なることに気づき、血清をつくるために狼犬にかまれても死ななかったヴァンを狩人のサエに頼んで探す。
病気を調べていくとホッサルは今回の一連の出来事の裏で、大掛かりなたくらみを企てている者がいることに気づく……。
というような雄大な自然を背景にしたドラマだ。
作者の上橋 菜穂子さんは医者ではないが、伝染病のことを相当研究していることがわかる。
医師のホッサルを主人公として描いていることから、この本は医療小説として2015年の日本医療小説大賞を受賞している。
単行本で上下1,100ページ余りの大作なので、何日もかかって読んでいるうち、東乎瑠(ツオル)とか飛鹿(ピュイカ)とかの独特の読み方をつい忘れてしまうが、気にせず読んでいくと、またフリガナがふってあって親切である。
医療小説という一面もあり、同じ中央アジアを舞台としている井上靖の「蒼き狼」や「楼蘭」の様な壮大さはないが、興味深く読める小説である。
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