時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

2009年10月

サラリーマン再起動マニュアル 自分を差別化する「再起動」

サラリーマン「再起動」マニュアルサラリーマン「再起動」マニュアル
著者:大前 研一
販売元:小学館
発売日:2008-09-29
おすすめ度:3.5
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大前研一氏の自分を差別化する「再起動」のすすめ。

週刊ポストでの連載コラムを集めたものだが、次の目次のテーマに編集されており、ばらばらのコラムを集めたという印象はない。

イントロダクション 志のあるサラリーマンは、きつい仕事を厭わない

第1章 {現状認識}なぜ今「再起動」が必要か?

第2章 {基礎編} 「再起動」のための準備運動

第3章 {実践編} 「中年総合力」をつける

第4章{事業分析編}”新大陸エクセレントカンパニー”の条件

第5章 {メディア編} 「ウェブ2.0」時代のシー・チェンジ

エピローグ     新大陸の”メシの種”はここにある


最初に2008年春の日本電産永守社長の「休みたいならやめればいい」という物議をかもした発言が紹介されている。

「日本電産では創業から35年一度も人員整理はない」と雇用の維持が優先される考えを示した上で、「うちはまだ三,四合目。ワークライフバランスでゆっくりしたい人は他の会社へ行ったらいい」という発言だ。

「連合」などがこの発言に噛み付いたというが、大前さんはなぜこの発言が非難されるのかさっぱりわからないと語る。

永守さんの「人を動かす人になれ!」は、このブログでも紹介しているが、サラリーマン経営者にはないバイタリティある経営者だ。大前さんも講演をしばしばお願いしており、アンケートを取ると常に「もう一度話を聞きたい経営者」の上位にいるという。

永守さんは多くの会社を買収して、経営再建を実現しているが、永守流経営を導入することで最初はどこの会社も仕事は厳しくなるが、結果的に利益が上がり、それを社員に還元して給料を上げることで社員みんなから感謝されているという。

しかし仕事がきついところが、連合とかマスコミの非難を浴びている。

これが現代の風潮である。

今の日本の社会の中核である日本の30代ー40代の人口は男女あわせて3,500万人くらいいる。しかし大前さんはトラクション(駆動力)を感じないと語る。現状に危機感を抱いて戦闘意欲を持っている人は、15万人程度ではないかと。

「トラクション」という言葉を使う人は初めてだが、まさに適切な言葉だと思う。

バブル崩壊後日本はぬるま湯につかっていたせいで政府・企業・個人もたるんでおり、「フリーズ」状態だ。だから志あるサラリーマンにはチャンスであり、「再起動」してグローバルに通用する人材になれば世界中の企業で活躍できるのだと。

21世紀は見えない新大陸、バーチャルな世界での新しい経済が出現した。企業も個人もこの新大陸で生き残れなければ明日はない。そのための戦闘準備として、大前さんは様々な提案をしている。

特に印象に残ったものをいくつか紹介しておく。


できる人の共通点は「ハングリーでリスクテイカー」

マッキンゼー風採用は、面接官全員「○」でも不採用で、誰か一人でも「◎」(絶対に採用すべし)をつけていれば、他が全員「×」でも採用になるという。

大前さん自身が受けた採用面接でも一人だけ「◎」で、他は「×」や判定不能だったという。

大前さん自身が「◎」をつけて採用した人はディー・エヌ・エー南場智子社長など、マッキンゼーを卒業して成功している人が多い。

このブログでも紹介しているIBMのルイス・ガースナー元会長もそうだが、彼らはみなハングリーでリスクテイカーだという。

彼らは安住の地を見つけることよりも、死ぬまで自分の可能性をためすタイプであり、たとえ失敗しても「面白かった」といえる人生を求めている。

こういったタイプの人に安藤忠雄さん、デルのマイケル・デル会長などがいる。

これからの日本企業に必要な人は、構想力があり、将来の絵をはっきり描いて実行できる人である。事業構想が必要なのは5年後のライフスタイル像を考えて仕事をするためだ。

大前さんはブルーレイディスクには5年後の姿は見えないと語る。シネコンは生き残るが、家庭ではホームサーバーが5年後は主流となるだろうと。

構想力の話をするときに、大前さんはウォルトディズニーがフロリダのEPCOTセンター構想を説明するビデオを見せるという。そのビデオがYouTubeで見られるので、紹介しておく。

24分強と長いが、ウォルト・ディズニーが楽しそうに構想を説明している。

筆者が子どもの頃は、ウォルト・ディズニーは存命で、毎週金曜8時のディズニーアワーの初めと終わりにウォルト・ディズニー自身が登場して、ストーリーを紹介していたことを思い出す。




「再起動」のための準備運動

「再起動」のためには、新大陸で生き残る3つのスキルのFT(財務力),IT,LT(語学力)をつける必要がある。

時間のリストラをして「再起動」のための時間をつくり、30−40代が弱い英語力をTOEIC860点以上にするためのアイデアを紹介している。

海外旅行は「脳の筋トレ」なので、インターネットで事前調査を十分行ってから訪問することをすすめている。ただし先入観を持たずに現地を見ることが重要で、これにより見えなかったものも見えてくるのだ。

住居費、教育費、マイカーの三種のコストを削減する方法も提案している。


マッキンゼーの人材育成グリッド

マッキンゼーでは人材育成用に、横軸に勤続年数、縦軸に要求されるスキルを書いて年毎に育成していく人材育成グリッドを書いて管理するという。

たとえば縦軸にはコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、交渉力、チームをマネージする能力、部下を育てる能力などだ。

そして入社時に5年後にも在籍する可能性は20%であることを告げられるという。毎年20%の人員がカットされるのだ。


「中年総合力」をつける

この本の中心テーマである「再起動」のために、大前さんは「中年総合力」をつけろと提案する。

「インプット力」ではGoogleの時価総額が17兆円になったことを紹介し、インプット力の重要性を語る。

大前さんの3つのインプット術は1.ネットに掲載されている新聞記事のRSSによる収集、2.BBT大学院大学のクラスディスカッションなどを通じての様々な人からのインプット、3.自分の足で歩き回るインプット、MBWA(=Management By Walking Around)である。

できる人になるためには、アンテナを全方位に張っておいて、頭の中にワインセラーのような情報の整理だなを構築するのだ。これが出来る人は、「おぬし、やるのう」という感じだと。

頭の中のワインセラーとは面白い表現で、言いえて妙である。

「中年総合力」とはゼネラリスト能力であり、大前さんはT型人間、あるいはΠ(パイ)型人間となれと語る。つまり一本あるいは二本深い専門分野と、広いゼネラリストとしての知識の総合力だ。

世の中の森羅万象に興味を持って常に勉強する努力が重要だ。

そして自分の前後15歳の年代を研究する。プラス15歳はなりたくないモデル、マイナス15歳は新大陸時代の若者とつきあい、いかに戦力化していくかを考えるためだ。


発想力向上には右脳を刺激せよ

大前さんはいつも進行方向に向かって左側の窓際の席に座って、窓の外の光が左目に入って右脳を刺激して、良いアイデアが浮かぶのだと。

今までこんなことを意識したことがなかったが、これからは左目で見ることを意識してやってみようと思う。


新大陸エクセレントカンパニー

新大陸エクセレントカンパニーとして、多くの会社の例が紹介されている。

IBMのパソコン事業のレノボへの売却は象徴的だという。

コモディティ化したビジネスにはうまみはない。既存のものを"do more better"(改善)するのでなく、現状を否定してブレークスルーを見つける能力が求められているのだと。

1.デル 
  デルを訪問して大前さんは驚いたという。会社のためにシステムがあるのではなく、システムの上に会社がある。それらはCRMSCMERPだ。カスタマーサービスオペレーターが苦情受付のみならず、注文受付そして発注まで行うすべての贅肉をそぎ落としたシステムである。

2.シスコ
  シスコ製品の故障は7−8割がソフトウェアなので、オンラインで自動診断して、ネット経由で修理してしまうシステムをつくっている。これによりサービス要員は最小限に抑えられている。

他も贅肉をそぎ落としており、14,000人の従業員に対し、総務部は数人で、経費精算などもアメックスにアウトソーシングしているという。

3.スペインのZARAブランドのインディテックス
  本社の隣の工場と倉庫で、世界2,000店向けに注文を受け付けたら48時間以内に出荷する体制をとっているので、店の在庫は持たなくて良い。

新製品は2週間で店まで届けるので、その時点で流行しそうな商品、流行している商品をつくればよいので、流行を予測する必要がないという。

  アパレル界のデルと大前さんは呼ぶ。これに比べれば中国での大量生産が主体のユニクロはまだWeb 1.0企業だと。

4.中堅スーパーのヤオコー、イズミ、ヨークベニマルなど
  経営者の現場感覚がすぐれており、消費者の金の使い道をするどくキャッチし、それに応じて地域別、店舗別に商品をクリエートする「生活提案力」をつけ、高収益を達成している。

  世界の流通業では、ウォルマートとカルフールが電子調達に熱心で、世界各地から直接仕入れている。

電子調達を駆使すれば製品の仕入れコストは半額以下になることもあるが、見えない相手から買うことは信用情報やパフォーマンスで相当のノウハウを持っていないとできない。

5.iPodもWiiも独占製造する台湾の「鴻海=ホンハイ」
  世界最大のEMS「鴻海」はiPod、Wii、iPhone、パソコンから携帯電話まで話題の商品をみんなつくっている。

鴻海は金型技術に優れ、金型製造設備と技術者を大量に社内に保有して24時間体制で運用している。自社で設計から製造まで手がけ、客先がコンセプトを持ち込めば、普通なら数ヶ月掛かる試作品を1週間で仕上げてくるという。

台湾企業は日本、台湾、韓国、中国を知り尽くし、日本語、英語、そして中国語ができるので電機業界では世界最強だ。情報家電では日本が材料の2/3、製造設備の1/2、基幹部品も1/3抑えているので、日本企業を知る必要があり、まだまだ中国企業は台湾企業には追いつけないという。

6.パナソニックは2007年4月から3万人が在宅勤務
  方向性としては良いが、情報セキュリティ・個人情報保護の問題が指摘されている。この金融危機後は、在宅勤務がどうなるか注目されるところである。

7.ヨーロッパのライアンエアー
  ヨーロッパのライアンエアーは予約はネットのみ、着陸料の高い空港は避ける、預ける荷物は15キロまで、超過分は1キロ当たり8ユーロといった徹底的なコスト削減により、最安値は税金・諸費用除いて片道1ポンド(地下鉄よりも安い)を実現しているという。


ウェブ2.0時代のシー・チェンジ

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シー・チェンジとはホーン岬を抜けて、荒れた大西洋から静かな太平洋に出たマゼランが叫んだ言葉ではないかと大前さんは言う。同じ海だが、全く異なる。これをシー・チェンジと呼ぶ。

ウェブ2.0も使っている機器は同じだが、利用法・ボリュームが異なる。

大前さんはデジタル化でテレビ局は死を急いだと語る。民放の広告費依存ビジネスが崩壊する可能性が高いからだ。

米国ではTiVoが普及し、2割以上の家庭が使っているという。CMスキップ機能があり、HDDに録画するので、月額13ドル弱でいつでも見たいときに見られるのだ。

デジタル時代にテレビが生き残る形はGyaoのような広告モデルか、オンデマンドの有料モデルだが、無料のYouTubeに放送直後から紅白歌合戦のビデオがアップされる時代なので、デジタル時代に有料化で大きく儲けることは難しい。

NHKオンデマンドも放送翌日から最大10日間配信するというが、放送直後からYouTubeに載るので、まったく意味がない。

日本のデジタル化投資の1兆円、総工費500億円の東京スカイツリーもYouTubeの前に無用の長物、バベルの塔となるだろうと大前さんは予測している

56社が参加し、300億円を掛ける日の丸検索エンジン(情報大航海プロジェクトは笑止千万であると。56社もいると身動きがとれないし、「B29を竹やりで落とす」ようなものであると酷評している。だいたい官民相乗りプロジェクトは死屍累々なのだと。


あらゆる企業は広告宣伝戦略を変えよ

テレビ、ラジオ、新聞など既存媒体広告の費用対効果は悪い。

ネット広告も検索上位に打つ検索連動型広告や成果報酬型ならともかく、バナー広告などのクリック率は落ちてきているという。

このブログでもサイバーエージェントの藤田晋さんの本を紹介しているが、大前さんはこのままでは、伝統的な広告代理店の業務をネット化しただけのネット広告代理店の将来はないだろうと予測する。

ウェブ2.0時代では、すべての会社が自分でネットの世界からSEO等でお客さんを見つけてくる努力をしなければならない。

売上げを伸ばすには、過去に自分の会社を利用したお客さんをデータベース化して、属性を分析し、対象を絞り込んでナローキャスティング、ポイント・キャスティングすればよいのだと。

グーグルはダブルクリック買収などから見ても広告ビジネスを独占することを狙っていると思われ、ショッピングもグーグルチェックアウトを利用してAPIを公開して拡大する戦略のようだ。

検索サイトがショッピングサイトになることを目指しているのだ。これに対抗してアマゾンが総合サイト化を目指しているが、その狙いはグーグル対策だ。

米国では楽天のようなモールはなく、個別マーチャントのサイトが巨大化している。アマゾンも様々な商品のポータルを作って、巨大化することでモール化しようとしている。


新大陸のメシの種

新大陸のメシの種として、健康な高齢者向けのビジネス、一人暮らしの孤独(3割が独身)を癒すビジネス、死にまつわる産業などが伸びることを予測している。

クルマも高級ブランドにも興味のない「物欲喪失世代」にモノを売るのは至難の業なので、健康な高齢者がターゲットとなってくるのだ。


アイデアの使いまわしがなく、新鮮なアイデアがとめどなく出てくるには感心する。簡単に読めるので、まずは手にとってページをめくって欲しい。


参考になれば次クリックお願いします。




亜玖夢博士の経済入門 裏経済もわかる経済小説

亜玖夢博士の経済入門


小説「マネーロンダリング」でデビュー、別ブログでも紹介している「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」で、独自の境地を開き「永遠の旅行者=パーペチュアルトラベラー(どこの国の所得税もかからない旅行者)」を提唱している作家 橘玲さんの小説仕立ての作品。

橘玲さんの本を2冊紹介したが、この本も大変面白いので、あらすじを紹介しておく。

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門


元々別冊文藝春秋(月刊)に連載されていたシリーズだ。

新宿歌舞伎町に事務所を持つ身長150センチの老人 亜玖夢(あくむ)博士の経済相談所が舞台だ。

亜玖夢博士は小学生で論語を暗唱、神童と呼ばれる。16歳の時にアメリカに密航し、アインシュタインフォン・ノイマンと会う。青年の時にサンフランシスコの大学に招聘され、様々な心理学テストを経験し、「南極のペンギンに氷を売る」セールス技術を生み出したという設定だ。

事務所には中国人の超美人ファンファンと、彼女の弟で少女漫画に出てくる様なハンサムガイ リンレイが亜玖夢博士のアシスタントとして働いており、博士の指示に従い、中国人マフィアなどを使って数々の処置を行う。

筆者のポリシーとして小説のあらすじは詳しく紹介しないが、次の様なストーリーが取り上げられている。

1.債務者をさらにヤミ金融から借金を借りまくらせて自己破産させる(カーネマンの行動経済学

運転免許証と実印、それに戸籍謄本、住民票、印鑑証明の3種の神器を50通用意させる。

全情連(全国区信用情報センター)の加盟店でないのでオンラインでクレジット情報が取れないヤミ金融をはしごさせ、それぞれから30万円から50万円づつ借りさせる。

親の職業は教師というと信用されると。「日本は人権の国だから、親に子どもの借金を返済する義務はないだろ。最近の親子関係は薄情だから、下手に取り立てに行くと違法だって怒鳴られて、すぐに警察を呼ばれる。だから、親の職業が大事なのだ」という。

合計1,000万円借りさせて、半年逃げ回らせ、自己破産させる。なんなら戸籍も買ってきて、別人にならせてあげるというところでストーリーは終わる。

2.覚醒剤を資金源とするヤクザの利権争い(ノイマンのゲーム理論

手打ちをするか、抗争かで悩むヤクザを囚人のジレンマで戦略を検討。中国マフィアがやたら拳銃をぶっ放すところが、小説らしい。


3.学校でいじめられている小学生の対抗策(ワッツとストロガッツのネットワーク理論

マルタイの女」の一場面でもあったが、動物の生首がやたら出てくるのが、これまた非現実的で小説らしい。

4.水道水を奇跡の水として売るマルチ商法(チャルディーニの社会心理学

全身の体液をスーパー・バイオニック・ウォーターに入れ替えれば、どんな病気も治るとして、特殊浄水器を売るマルチ商法。

中国に展開し、日本では詐欺になって訴訟が続発するが、大気汚染、水源汚染のひどい中国では、日本の水道水でも大丈夫だというところが小説らしい。

「長崎あたりから漁船で沖に出て、高速船に迎えにこさせたらすぐにチンタオだ」という。

どんな過去を持ち、ヤクザに追われている者でもやり直せるのだというが、フィクションなのか、現実でありえるのか不明なところだ。

5.自分探し(ゲーデルの不完全性定理

「あたしってウソつき」という女の子は正直かウソつきか、と言うパラドックスが紹介される。


筆者自身もここに紹介されている経済原理を正確に理解している訳ではないが、小説ながらも、経済原則の事例勉強にもなるという設定は面白い。

オーソドックスな「日本国債」とか「タックスシェルター」とかの幸田真音さんの本格的経済小説とは、全くテイストが異なるが、読み物として面白い。

日本国債〈上〉 (講談社文庫)


タックス・シェルター


簡単に読め、参考になる。一読をおすすめする。


参考になれば次クリックお願いします。


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臆病者のための株入門 プロにカモられないために知っておくべきこと

臆病者のための株入門 (文春新書)臆病者のための株入門 (文春新書)
著者:橘 玲
販売元:文藝春秋
発売日:2006-04
おすすめ度:4.5
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前回「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」のあらすじを紹介したら、アクセスする人が増加したので、橘玲さんの2006年の著作も紹介しておく。

投資の入門本としてベストセラー作家の勝間さんの「お金は銀行に預けるな」を別ブログで紹介したが、勝間さんの本は机上の議論という感じが強い。

これに対して橘さんは、1ヶ月で100万円を1億円に増やすべく自ら実行したり、実践の裏付けがあるので、説得力がある。

この本は「投資の専門家」とはどういう人たちかなど、独自の見方で解説しており、目からうろこの素人向け入門書である。

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)
著者:勝間 和代
販売元:光文社
発売日:2007-11-16
おすすめ度:4.0
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アマゾンのなか見検索に対応していないので、目次を紹介しておく。

はじめに 臆病者には臆病者の投資法がある

第1章  株で100万円が100億円になるのはなぜか?

第2章  ホリエモンに学ぶ株式市場

第3章  デイトレードはライフスタイル

第4章  株式投資はとういうケースか

第5章  株で富を創造する方法

第6章  経済学的に最も正しい投資法

第7章  金融リテラシーが不自由な人たち

第8章  ど素人のための投資法
   1.アセットアロケーション
   2.国際分散投資
   3.為替リスク
   4.トーシロ投資法
   5.世界市場ポートフォリオ
   6.トーシロ投資法VSプライベートバンク

あとがき 追証がかかった日


株の本を読んでもわからない

筆者の橘玲さんは「海外投資を楽しむ会」の創設メンバーの一人で、Perpetual traveler(常に海外を渡り歩き、一つの国に半年以上滞在しないので税金も納めなくて良い?ライフスタイル)を追求している。

橘さんは元々サラリーマンだったが、阪神淡路大地震があった年にビルゲイツの「ビル・ゲイツ未来を語る」を読んで感銘を受け、マイクロソフトの株を買いに行ったら売ってくれなかったことから、それなら自分でやると決心して、株研究本を何十冊も読み株で大もうけしようとたくらむ。

ビル・ゲイツ未来を語るビル・ゲイツ未来を語る
著者:ビル・ゲイツ
販売元:アスキー
発売日:1995-12
おすすめ度:5.0
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しかし何冊読んでも全くわからなかったという。それぞれが違うことを言い、ファンドマネージャーは神のお告げの様に語り、ファイナンシャルプラナーはハイパーインフレが来ると脅す。

結局、株の本は理解できないように作られていることが分かったという。

株は欲望が生み出した迷宮で、次になにが起こるか誰にもわからない。だから臆病なしろうと向けにこの本を書いたのだと。


100万円を1億円に

最初に橘さんの経験談がある。

1999年のインターネットバブルの時に一念発起して1ヶ月で100万円を1億円に増やすという計画を思いつき、NASDAQの株価データを統計解析し、インターネットでアメリカの先物会社に口座を開き1999年10月に投資ポジションをつくった。

明らかなトレンドが存在するときに、上がり相場は買いまくり、下がり相場は売りまくるという「モメンタム戦略」を採れば、平均的な運用成績を10%以上上回れるという研究を知り、100万円をレバレッジ20倍で約20万ドルにしてシカゴの株先物で運用し、利益が出ればさらにポジションを積み増すという戦略で投資を開始した。

アメリカの証券会社を選んだ理由は、投資で損失が発生してもアメリカから日本まで追証を取り立てにくるわけないし、たとえ裁判に訴えられても家もマイカーもないので、儲けは無限大で、損失は最初の100万円に限られると思ったからだと。今から思えば恥ずかしいと橘さんは告白している。

当初の予定では儲かっていればシカゴの大引け前に追加で買い、損していれば自動的にストップロスを発動するというものだった。

空前の上がり相場の時だったので、利益が出ては、さらに信用買いで先物を積み増して買うということを続けて投資金額も順調に拡大したが、もしストップロスが発動しないと破産するとの強迫観念で眠れなくなった。

そして一晩中株価ボードを見つめ、1時間程度の仮眠の後会社に出るという生活を2週間続けていたら突如色彩のない白と黒の世界になって、このままでは死んでしまうと思ったので、結局その日のうちにポジションを手じまった。

そのまま続けていれば12月31日に運用額は80億円に達し、4億円近い利益を手にして、そして1月3日にはさらに2億円儲け、ポジションは100億円に達するが、翌1月4日の暴落で結局7億円損したはずだという。

筆者もちょうど1999年ー2000年に米国でインターネット関係で投資したことがあるので、この頃のことを思い出す。Janusのインターネットミューチュアルファンドを買い、インターネット株をIPOで取得したのだ。

ミューチュアルファンドは完全な高値づかみだった。結果的にピークで買ったので、それまでは年率40−50%のリターンだったものが、2000年は一挙にマイナスに転じ、結局平均30%のロスだった。

IPO株は約40ドルで買ったものが、1ヶ月弱でピークは300ドル超、半分は200ドル強で売り抜けたが、半分はそのまま持っていたので10ドル台となった。まさにローラーコースターである。


無職・無資産でないとできないこと

2005年12月のジェイコムの誤発注で20億円を儲けたジェイコム男は27歳無職男性だという。

要は最悪無一文になってもかまわない無職の若者でないとレバレッジをかけたハイリスク投資はやれないし、ハイリスク投資で勝ち残るのはほんの一握りだということだ。

ジェイコム男がプロを上回る実績を出せたということは、たまたまそうなったからであり、株式はじゃんけんと同様に本来プロもアマも同じだ。

多くの失敗した人は表に出てこないが、成功した人は珍しいので本を書けるまでになる。そうするとあたかも誰でも成功できるような錯覚に陥るので、またカモネギが増える。

本来「金融のプロ」なんていない、単なる確率の世界なのだ。


ホリエモンの冒険

しかし単なる確率の世界でも、降ってわいた儲け話もある。金融システムの欠陥を追求するのだ。

ホリエモンがやったのは、株式を100分割すると新たにつくられる99株は信用買いはできても、空売りはできないという規制を逆手に採った手法で、残りの1株は自動的に高値になるというシステムの欠陥を突いたものだ。

自社株買いは厳しく制限されているが、投資組合に適当な会社を買収させ、ライブドアの自社株と相手企業の株を交換すると、いくらでも自社株が発行できる。これはいわばお札を印刷しているようなものだ。

これは株式市場の歪みであり、彼らはこれを利用しただけなのだ。

ところでホリエモンが情報発信をを再開している。「六本木で働いていた元社長のアメブロ」というブログを再開している。

昔のようにアクセスNo.1になるはずもないが、何を書くつもりなのか、彼の人間性が判断できるだろう。


株式市場はゼロサムゲーム

株式市場はゼロサムゲームだ。誰かが得すれば、誰かが損する。

たとえばひところ株価が100円以下になると、機関投資家はストップロスの内規により自動的に売るので、必ず翌日は下落するという現象があった。いわばオンラインゲームのように、みんながインターネットで情報交換してターゲットを撃沈することをやっていたところ、機関投資家が裏をかく行動に出て、個人投資家を食い物にしだしたという。

債券投資は将来の金利を予想するゲームで、株式投資は会社の将来の利益を予想するゲームなのだ。だから使われる指標はEPS(一株利益)とPER(株価収益率)だ。

このゼロサムゲームというのは、筆者自身もふくめて株をやるうえで頭にたたき込んでおくべき事だろう。


バフェットの法則

オマハの賢人ウォレン・バフェット氏は昨日(9月24日)今の金融危機は「経済のパールハーバー(economic pearl harbor)」だから、政府も議会も一致団結して金融システムを守らなければならないとテレビで訴えていると豊島逸夫さんのブログに書いてあった

バフェット氏は2000年のインターネットバブルの時も、ネット企業に全く投資しておらず、その先見性で名声を高めたが、今回の中国株や新興国株の下落でも、11−14%保有していた中国最大の企業ペトロチャイナの全株をピークの2007年10月の直前の9月と7月に売りぬけ、またもや名声を高めた。

(もっともバフェットのペトロチャイナへの投資は、ペトロチャイナがスーダンのダルフールの石油開発に携わっているので、バフェットも20万人もの虐殺や強姦を支援していると非難されていたので、ある意味手を引く時期だったのかもしれない)


そのバフェットの法則は次の通りだという。

1.企業に関する原則
 ・その事業は簡明で理解しやすいか
 ・安定した業績の記録があるか
 ・長期の明るい展望があるか

2.経営に関する原則
 ・合理性を尊重できる経営者であるか
 ・株主に対して率直で誠実か
 ・横並びの強制力に負けないか

3.財務に関する原則
 ・1株当たり利益ではなく株主資本利益率を重視する
 ・「フリーキャッシュフロー(オーナー収益)」を計算する
 ・売上高利益率の高い企業を探す
 ・留保資産1ドル当たり、少なくとも1ドルの割合で株価に反映していることを確認する

4.マーケットに関する原則
 ・企業の真の価値を確定する
 ・企業の価値に対し大幅に割安な価格で買えるか

どれもオーソドックスなものばかりだ。


金融のプロとは

バフェットのもっとも嫌っているのが「金融のプロ」のアナリスト達であるという。彼らが投資家に損をさせているからだと。儲かる銘柄を知っている人は、人に教えたりせず、黙って自分で買う。

橘さんはバフェットのようにアナリスト達を全否定はしないが、彼らの機能は安心を売ることだ。だから「買い」と「中立」ばかりで、「売り」はほとんどないのだと語る。

カリスマ評論家になるには、当たったケースばかりを並び立て、はずれた予想は無視するのだ。そのうち人は忘れるからだ。


経済学的に最も正しい投資法

経済学的に最も正しい投資法について、マーコウィッツジェームズ・トービンウィリアム・シャープなどの歴代ノーベル賞受賞者の説を紹介している。

結論は簡単でインデックスファンドを買えというものだ。

橘さんは過去のデータを統計解析してノーベル賞学者の理論が正しいことを確認したという。市場平均を上回れるファンドは3−4割しかないのだ。

これに対してウォール街の金融マン達は、効率的市場仮説などはありえない、株式市場の歪みを利用して6兆円を稼いだバフェットがいるではないかと当然反論した。しかし運用実績の話になると、とたんに黙ってしまう。

手数料の差もあり、長期にわたってインデックスファンドを上回るファンドはほとんどないのだ。

日本の株式市場はバブルのピークに近づくことすらない。これは一国の株式市場だけに投資していてはダメなことを物語っている。

経済学的に最も正しい投資法は、世界市場全体に投資することだと。


銀行・生保にも気を付けよう

銀行の外貨預金や投資信託キャンペーンなども銀行に販売手数料が継続的に入る商品ばかりで、「ぼったくり」を目的としている商品ばかりだと橘さんは語る。だから金融リテラシーが必要だと。

元本保証型ファンドも手数料でがっぽり稼いでいる。ヘッジファンドは成功報酬制でプラスのパフォーマンスに対して通常20%の報酬が請求され、利益は実現していなくても良い。

生命保険も「家族の愛情」とか称して非常に分が悪い保険を売ると橘さんは語る。

筆者も生命保険では驚いたことがある。筆者は掛け捨ての生命保険しか掛けない主義だが、米国に駐在していたときに取った生命保険の見積もりでは死亡保障50万ドル、30年間料率固定で月々110ドル、30年間の保険料合計が37,500ドルというものだった。

当時アメリカの保険会社は空前の好決算を迎えていたので、こんな長期低料率の保険が出せたらしく、そのうちに最長でも10年までしか料率が固定できなくなったが、78歳まで同じ料率で、しかも漸増する追加料金を払えば95歳(!)まで延長可能というものだ。

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たぶん95歳までには死ぬと思うし、78歳までに死ぬ確率も結構あるのではないかと思うが、78歳までに死亡すると50万ドルが支払われる。

合計4万ドル弱の保険金で50万ドルの保障が得られるのである。

本当は現在価値に置き換える必要があるが、単純計算だと78歳までに死ぬ確率が7.5%を上回ると保険会社は損をするという計算になる。

日本人男性の平均寿命は79歳。平均余命だと2年ほど伸びるがそれでも78歳までには10%を超える人は亡くなっていると思う。筆者の高校の同級生でも50人のうち2人(4%)が亡くなっている。

喫煙者の場合は保険料は倍だった。それだけ喫煙者の死亡率が高いということだ。

日本の場合には高齢者になると死亡保険は掛けられなくなり、料率も極端に高くなる。最近ネットで生命保険の料率を見積るサービスもあるが、5千万円で70歳までの保障とすると保険料は月々5万円を超える。

「ぼったくり」とは言わないが、掛け捨てでも高すぎる様な気がしてならない。ましてや満期割り戻し保険をやだ。

世の中にフリーランチはない。誰かが得すれば誰かが損するのだ。


トーシロ投資術

最後にトーシロの投資法として、サラリーマンは自分自身が最大の資産なので、いわば数億円のサラリーマン債券を保有しているのと同じである。だから無鉄砲に上司と喧嘩して飛び出したり、痴漢や飲酒運転でクビになったりしてサラリーマン債券の価値を毀損してはいけないと橘さんは語る。

また新築マイホームは買ったとたんに値段が1−2割下がる非常に分が悪い不動産投資であると。

だから結論としては世界ポートフォリオに投資することだと。

橘さんの「黄金の黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」に詳しく手法が書いてあるので今度紹介するが、MSCIコクサイ・インデックスTOPIXを85:15で組み合わせるか、信託コストを下げるならEFTでSPYとEFAを組み合わせることを勧めている。

もっとも橘さん自身は「経済学的に最も正しい」インデックスファンド投資をやっていないという。たしかにインデックスファンドでは投資の興奮は味わえないので、橘さんの言うこともわかる。

人には正しくないことをする自由もあるからだと。


みずから実践した者のみが語れる迫力があって面白い。目からウロコの投資入門書である。


参考になれば次クリックお願いします。



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