USEN宇野康秀の挑戦!カリスマはいらない。
著者:和田 勉
販売元:日経BP社
発売日:2006-04-20
おすすめ度:
クチコミを見る
「時短読書」ブログ第4弾は、第3弾のサイバーエージェント藤田晋社長のメンターとも言えるUSEN宇野社長の本だ。
大阪有線の社長の息子に生まれながら、リクルートコスモスに就職して1年で退社して仲間とインテリジェンスを創業。店頭公開を遂げたが、父親の病気で大阪有線の社長となる。USENと社名を変えてメディア界の有力企業に生まれ変わらせた。
2006年4月の発売の本だが、「ベンチャーのアニキ」として活躍している宇野さんの考え方がわかるので紹介する。
フジテレビの持つライブドア株を約90億円で個人購入し、一躍ライブドア再建の救世主として世間の注目を集めたUSENの宇野康秀社長の履歴と戦略。
宇野康秀さんは、まさにベンチャーの『アニキ』と言える存在だ。
このブログではサイバーエージェントの藤田晋社長の『渋谷ではたらく社長の告白』とか、テイクアンドギブニーズの野尻佳孝社長の『史上最短で、東証2部に上場する方法』、フルキャストの平野岳史社長の『満点の星』、インデックスの落合正美会長の『当てるコンテンツ外すコンテンツ』など、ベンチャー経営者自身が語るリアルストーリーを書いた本を紹介してきた。
この本は宇野さん本人への取材を通して、和田勉さんというジャーナリストが書いた本だ。
宇野さんは昨年溜池山王ではたらく社長のblogという社長ブログを書いており、筆者は注目してよくブログチェックしていたのだが、年末頃から更新が止まってしまったのが残念だ。
この本の印象に残ったところを紹介しよう。
USENの戦略事業GyaO
USENの無料ブロードバンド放送局GyaOは2005年4月に開局し、スタートしてから1年で視聴登録者は1,000万人目前の950万人まで急成長した。
やることを決めたのが、2005年の正月、それから3ヶ月、ほとんど土日も休みなくUSENの役員・社員が働き、4月25日にサービスインさせた。
宇野さんの統率力と、後述する様に『子供のサッカー』とも呼ばれるUSENの社員一丸となった機動力を物語る、すごい話である。
いままでインターネットのビデオ配信サービスは、USENと宇野社長の盟友楽天の三木谷社長が一緒にはじめたショウタイムなどの、会員制有料サービスはあったが、完全無料ブロードバンド配信サービスはGyaOが初めてである。
ちなみに『GyaO』とはアイスランドにある大地の裂け目のことで、北米プレートとユーラシアプレートの境目が地上で見られる場所のことだと。インターネット通信とテレビ放送がぶつかったところに、GyaOは存在しているのだと。
「なんでもないけど、いいアイデア」
これが宇野さんが、舎弟ともいえるサイバーの藤田晋社長に相談した時の、GyaO事業についての藤田さんの答えだ。
「誰でも思いつくアイデアだが、宇野さんが本気でやるなら面白いと思う。タイミングもいい」と藤田社長は後に取材に応えて語っている。
USENはGyaOサービスを開始してすぐ、宇野社長自身が参加する独自コンテンツを作り上げた。
友人の村上ファンドの村上世彰社長、楽天の三木谷社長、サイバーエージェントの藤田社長、GMOインターネットの熊谷社長などと宇野社長との対談を『リアルビジネス』という番組で放送したのだ。
筆者もこの番組を見たくてGyaOの会員になったが、相当な強力コンテンツだと思う。
本書のなかで、宇野社長は「オンデマンド放送でCMをスキップができない様にすれば、広告主も興味を持ってくれるはず。テレビ局がなりたっているなら、無料ネット放送もなりたつはずです」と語っている。
ハードディスクレコーダーでCMスキップに慣れている筆者自身の経験からすると、無料で様々なコンテンツを見られるのは歓迎だが、はじめの数分間の映画の予告編やコマーシャルは苦痛だ。
映画館なら予告編は気分を盛り上げる効果があるので、むしろ歓迎だがパソコン放送となると、話は全然異なる。
どうせCMが入るなら、広告主の最新のCMを流すより、その広告主が過去流した評判の良く面白いCMとかを流し(たとえばアコムならクーちゃんとか、キンチョーなら沢口靖子シリーズとかゴン中山とか)てはどうか?
クーちゃんCMはテレビでは放送禁止になっていると思うが、GyaOなら可能なのではないか?
ちょっと脱線したが、いずれにせよ今後GyaOがどうなるのか注目して見守りたい。
宇野社長の経歴
宇野社長は大阪有線社長の故宇野元忠氏の次男として1966年に生まれる。明治学院大学を5年掛けて卒業、不動産業のリクルートコスモスに入社する。在学中はプロデュース研究会代表としてイベントやコンサートなどを請け負っていた。
会社をつくって社長になるというのが宇野さんの夢だったので、リクルートコスモスに1988年に入社したものの、翌年の1989年9月には退社し、友人でリクルートコスモス同期で現インテリジェンス社長の鎌田和彦さん、リクルートにいた前田徹也さん(現コンサルタント)、島田亨さん(現楽天球団社長)と4人でインテリジェンスを起業。
みんなに推されて宇野さんが社長となる。インテリジェンスの当初の業務は総合コンサルタント業で、そのうち人材派遣業に進出。創業メンバー4人を中心とする社員の会社に泊まることは当たり前という猛烈ながんばりで、業績は拡大し、2000年4月に店頭公開を果たす。
しかし宇野さんの父親の急病で大阪有線の社長となることを母親から頼まれ、1998年7月から宇野さんはインテリジェンスと大阪有線の社長を兼務することとなる。
1999年よりインテリジェンスでは会長となり、大阪有線社長職に比重を移し、『正常化活動計画』を打ち出し、全国の750万本にもおよぶ電柱の使用状況を調べ、過去分も含めてNTTや電力会社に電柱使用料を支払った。
その額は2000年8月期には240億円にものぼったが、これで電柱不正使用という汚名をそそぎ、晴れて普通の企業として正常化できた。
2000年4月には有線ブロードネットワークスと社名を変え、光ファイバーによるインターネット接続を月額5千円程度で提供するUCOMを設立。UCOMは50社の出資を受けてオールジャパンの事業としてスタートする。
しかし月額2,500円というソフトバンクのADSLの猛烈な売り込みに、日本全国展開を断念し、現在はマンション向けの光ファイバー一括請負を中心とした事業モデルに転換し、NTTと業務提携している。
有線ブロードワークスは資金調達力が弱く、UCOM設立時には宇野社長自身がインテリジェンスの株を担保に、りそな銀行から70億円の借金をして立ち上げた経緯がある。
そのため資金を得る目的で2001年4月にナスダックジャパンに上場を果たした。
初値が公募価格を大きく上回った前年のインテリジェンスの上場と異なり、ITバブルの崩壊で、初値は公募価格20万円を下回る13万円という展開ではあったが、なんとか切り抜け、2005年3月にはUSENに社名を変えて現在に至っている。
『オペラ座の怪人』と倖田來未
USENがGyaO事業に乗り出す前の布石が、映画配給会社のGagaコミュニケーションズと音楽事務所大手エイベックスへの出資だ。
USENは2004年10月にエイベックスに出資、筆頭株主となっている。創業者の依田名誉会長、現経営者松浦社長とのバランサーとして宇野社長が関与し、経営陣の対立でもめていたエイベックスの安定に寄与した。
Gagaは赤字が続き、2004年9月期には100億円を超す当期損失を計上した。エイベックスの依田名誉会長が宇野社長に話も持ち込み、依田氏が30億円、2005年1月にUSENが100億円出資した。Gagaは昨年『オペラ座の怪人』のヒットを飛ばし、赤字幅も縮小している。
宇野社長はGagaの社長も兼任し、GyaOを推進するうえで映画と音楽という自前のコンテンツを持つ優位性をいかんなく利用している。
仲間・同志を重視する宇野社長の経営スタイル
「カリスマ性だけが、成功するスタイルではないんじゃないか。自分に能力がないなら、能力のある人と一緒にやればいいじゃないか」と宇野社長は語っており、カリスマを否定している。
これがこの本のタイトルになったゆえんだ。
サイバーの藤田晋さんの本にも書いてあったが、藤田さんがインテリジェンス入社2年目で独立し、インテリジェンスと合弁会社をつくるときに、宇野さんは「何をやるかより、誰とやるかが大事だ」と語っていたそうだ。
マッキンゼーから宇野さんに引き抜かれた加茂副社長は、「一緒にとことん仕事をしよう」というUSENの仕事のスタイルを見て、『子供のサッカー』だと言っていたが、そのうちこれが新しい組織の形かもしれないと思い直したと。
『子供のサッカー』とは役職員全員で新規事業に取り組むやりかたのことだ。一つの夢を共有して、仲間として一体感を持ち、社員にチャンスを与え、みんなで実現に取り組むのだ。
筆者は高校時代にサッカーをやっていたのだが、当時はこの『子供のサッカー』を『百姓一揆』と呼んでいた。たぶん加茂さんは言葉を選んだのだと思うが、たぶん『百姓一揆』の方が感じが伝わると思う。
一つのボールをみんなで追いかける『子供のサッカー』精神で、情熱を持って起業する人は応援したいとして、宇野社長は資金面でも支援している。「そういう人が頑張る姿に対して素直に応援してあげたいと思って」個人で出資するのだと。
サイバーエージェントの藤田社長の独立を助けたのが良い例だ。
アンバランスをバランスさせる経営
インテリジェンスの鎌田社長は宇野社長の経営の特徴を『非連続性』と表現する。身の丈にあった経営をしていくのではなく、ときどき未知なところへジャンプするという意味だ。
社員30人の時に、日経新聞に1ページ大の求人広告を載せるといったジャンプを宇野社長は数々つくりあげてきた。
加茂副社長は「アンバランスをあえて作り出す」と表現している。
有線放送から、光ファイバー通信事業、GyaO事業とジャンプを続けているUSEN。USENのホームページに業績資料が公開されているが、業務用有線放送と通信カラオケ事業という成長性が見込めない分野から、ジャンプして新しい事業に進出し、業績を大きく伸ばしている。
ホリエモンや三木谷さんが言っていた、『インターネットと放送の融合』を単に言葉だけのイメージでなく、現実の事業として実現しているトップ企業と言っていいだろう。
阪神の金本知憲選手の活躍で『アニキ)』という言葉が、良いイメージを持って受け止められる様になってきている。社内で一番の働き者として尊敬され、寝る間も惜しんで仕事に没頭し、リスクを負ってもベンチャーを支援するUSENの宇野社長。
まさにベンチャーのアニキである。
宇野社長を応援したいという気持ちにさせる本だった。
参考になれば次クリックお願いします。
著者:和田 勉
販売元:日経BP社
発売日:2006-04-20
おすすめ度:
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「時短読書」ブログ第4弾は、第3弾のサイバーエージェント藤田晋社長のメンターとも言えるUSEN宇野社長の本だ。
大阪有線の社長の息子に生まれながら、リクルートコスモスに就職して1年で退社して仲間とインテリジェンスを創業。店頭公開を遂げたが、父親の病気で大阪有線の社長となる。USENと社名を変えてメディア界の有力企業に生まれ変わらせた。
2006年4月の発売の本だが、「ベンチャーのアニキ」として活躍している宇野さんの考え方がわかるので紹介する。
フジテレビの持つライブドア株を約90億円で個人購入し、一躍ライブドア再建の救世主として世間の注目を集めたUSENの宇野康秀社長の履歴と戦略。
宇野康秀さんは、まさにベンチャーの『アニキ』と言える存在だ。
このブログではサイバーエージェントの藤田晋社長の『渋谷ではたらく社長の告白』とか、テイクアンドギブニーズの野尻佳孝社長の『史上最短で、東証2部に上場する方法』、フルキャストの平野岳史社長の『満点の星』、インデックスの落合正美会長の『当てるコンテンツ外すコンテンツ』など、ベンチャー経営者自身が語るリアルストーリーを書いた本を紹介してきた。
この本は宇野さん本人への取材を通して、和田勉さんというジャーナリストが書いた本だ。
宇野さんは昨年溜池山王ではたらく社長のblogという社長ブログを書いており、筆者は注目してよくブログチェックしていたのだが、年末頃から更新が止まってしまったのが残念だ。
この本の印象に残ったところを紹介しよう。
USENの戦略事業GyaO
USENの無料ブロードバンド放送局GyaOは2005年4月に開局し、スタートしてから1年で視聴登録者は1,000万人目前の950万人まで急成長した。
やることを決めたのが、2005年の正月、それから3ヶ月、ほとんど土日も休みなくUSENの役員・社員が働き、4月25日にサービスインさせた。
宇野さんの統率力と、後述する様に『子供のサッカー』とも呼ばれるUSENの社員一丸となった機動力を物語る、すごい話である。
いままでインターネットのビデオ配信サービスは、USENと宇野社長の盟友楽天の三木谷社長が一緒にはじめたショウタイムなどの、会員制有料サービスはあったが、完全無料ブロードバンド配信サービスはGyaOが初めてである。
ちなみに『GyaO』とはアイスランドにある大地の裂け目のことで、北米プレートとユーラシアプレートの境目が地上で見られる場所のことだと。インターネット通信とテレビ放送がぶつかったところに、GyaOは存在しているのだと。
「なんでもないけど、いいアイデア」
これが宇野さんが、舎弟ともいえるサイバーの藤田晋社長に相談した時の、GyaO事業についての藤田さんの答えだ。
「誰でも思いつくアイデアだが、宇野さんが本気でやるなら面白いと思う。タイミングもいい」と藤田社長は後に取材に応えて語っている。
USENはGyaOサービスを開始してすぐ、宇野社長自身が参加する独自コンテンツを作り上げた。
友人の村上ファンドの村上世彰社長、楽天の三木谷社長、サイバーエージェントの藤田社長、GMOインターネットの熊谷社長などと宇野社長との対談を『リアルビジネス』という番組で放送したのだ。
筆者もこの番組を見たくてGyaOの会員になったが、相当な強力コンテンツだと思う。
本書のなかで、宇野社長は「オンデマンド放送でCMをスキップができない様にすれば、広告主も興味を持ってくれるはず。テレビ局がなりたっているなら、無料ネット放送もなりたつはずです」と語っている。
ハードディスクレコーダーでCMスキップに慣れている筆者自身の経験からすると、無料で様々なコンテンツを見られるのは歓迎だが、はじめの数分間の映画の予告編やコマーシャルは苦痛だ。
映画館なら予告編は気分を盛り上げる効果があるので、むしろ歓迎だがパソコン放送となると、話は全然異なる。
どうせCMが入るなら、広告主の最新のCMを流すより、その広告主が過去流した評判の良く面白いCMとかを流し(たとえばアコムならクーちゃんとか、キンチョーなら沢口靖子シリーズとかゴン中山とか)てはどうか?
クーちゃんCMはテレビでは放送禁止になっていると思うが、GyaOなら可能なのではないか?
ちょっと脱線したが、いずれにせよ今後GyaOがどうなるのか注目して見守りたい。
宇野社長の経歴
宇野社長は大阪有線社長の故宇野元忠氏の次男として1966年に生まれる。明治学院大学を5年掛けて卒業、不動産業のリクルートコスモスに入社する。在学中はプロデュース研究会代表としてイベントやコンサートなどを請け負っていた。
会社をつくって社長になるというのが宇野さんの夢だったので、リクルートコスモスに1988年に入社したものの、翌年の1989年9月には退社し、友人でリクルートコスモス同期で現インテリジェンス社長の鎌田和彦さん、リクルートにいた前田徹也さん(現コンサルタント)、島田亨さん(現楽天球団社長)と4人でインテリジェンスを起業。
みんなに推されて宇野さんが社長となる。インテリジェンスの当初の業務は総合コンサルタント業で、そのうち人材派遣業に進出。創業メンバー4人を中心とする社員の会社に泊まることは当たり前という猛烈ながんばりで、業績は拡大し、2000年4月に店頭公開を果たす。
しかし宇野さんの父親の急病で大阪有線の社長となることを母親から頼まれ、1998年7月から宇野さんはインテリジェンスと大阪有線の社長を兼務することとなる。
1999年よりインテリジェンスでは会長となり、大阪有線社長職に比重を移し、『正常化活動計画』を打ち出し、全国の750万本にもおよぶ電柱の使用状況を調べ、過去分も含めてNTTや電力会社に電柱使用料を支払った。
その額は2000年8月期には240億円にものぼったが、これで電柱不正使用という汚名をそそぎ、晴れて普通の企業として正常化できた。
2000年4月には有線ブロードネットワークスと社名を変え、光ファイバーによるインターネット接続を月額5千円程度で提供するUCOMを設立。UCOMは50社の出資を受けてオールジャパンの事業としてスタートする。
しかし月額2,500円というソフトバンクのADSLの猛烈な売り込みに、日本全国展開を断念し、現在はマンション向けの光ファイバー一括請負を中心とした事業モデルに転換し、NTTと業務提携している。
有線ブロードワークスは資金調達力が弱く、UCOM設立時には宇野社長自身がインテリジェンスの株を担保に、りそな銀行から70億円の借金をして立ち上げた経緯がある。
そのため資金を得る目的で2001年4月にナスダックジャパンに上場を果たした。
初値が公募価格を大きく上回った前年のインテリジェンスの上場と異なり、ITバブルの崩壊で、初値は公募価格20万円を下回る13万円という展開ではあったが、なんとか切り抜け、2005年3月にはUSENに社名を変えて現在に至っている。
『オペラ座の怪人』と倖田來未
USENがGyaO事業に乗り出す前の布石が、映画配給会社のGagaコミュニケーションズと音楽事務所大手エイベックスへの出資だ。
USENは2004年10月にエイベックスに出資、筆頭株主となっている。創業者の依田名誉会長、現経営者松浦社長とのバランサーとして宇野社長が関与し、経営陣の対立でもめていたエイベックスの安定に寄与した。
Gagaは赤字が続き、2004年9月期には100億円を超す当期損失を計上した。エイベックスの依田名誉会長が宇野社長に話も持ち込み、依田氏が30億円、2005年1月にUSENが100億円出資した。Gagaは昨年『オペラ座の怪人』のヒットを飛ばし、赤字幅も縮小している。
宇野社長はGagaの社長も兼任し、GyaOを推進するうえで映画と音楽という自前のコンテンツを持つ優位性をいかんなく利用している。
仲間・同志を重視する宇野社長の経営スタイル
「カリスマ性だけが、成功するスタイルではないんじゃないか。自分に能力がないなら、能力のある人と一緒にやればいいじゃないか」と宇野社長は語っており、カリスマを否定している。
これがこの本のタイトルになったゆえんだ。
サイバーの藤田晋さんの本にも書いてあったが、藤田さんがインテリジェンス入社2年目で独立し、インテリジェンスと合弁会社をつくるときに、宇野さんは「何をやるかより、誰とやるかが大事だ」と語っていたそうだ。
マッキンゼーから宇野さんに引き抜かれた加茂副社長は、「一緒にとことん仕事をしよう」というUSENの仕事のスタイルを見て、『子供のサッカー』だと言っていたが、そのうちこれが新しい組織の形かもしれないと思い直したと。
『子供のサッカー』とは役職員全員で新規事業に取り組むやりかたのことだ。一つの夢を共有して、仲間として一体感を持ち、社員にチャンスを与え、みんなで実現に取り組むのだ。
筆者は高校時代にサッカーをやっていたのだが、当時はこの『子供のサッカー』を『百姓一揆』と呼んでいた。たぶん加茂さんは言葉を選んだのだと思うが、たぶん『百姓一揆』の方が感じが伝わると思う。
一つのボールをみんなで追いかける『子供のサッカー』精神で、情熱を持って起業する人は応援したいとして、宇野社長は資金面でも支援している。「そういう人が頑張る姿に対して素直に応援してあげたいと思って」個人で出資するのだと。
サイバーエージェントの藤田社長の独立を助けたのが良い例だ。
アンバランスをバランスさせる経営
インテリジェンスの鎌田社長は宇野社長の経営の特徴を『非連続性』と表現する。身の丈にあった経営をしていくのではなく、ときどき未知なところへジャンプするという意味だ。
社員30人の時に、日経新聞に1ページ大の求人広告を載せるといったジャンプを宇野社長は数々つくりあげてきた。
加茂副社長は「アンバランスをあえて作り出す」と表現している。
有線放送から、光ファイバー通信事業、GyaO事業とジャンプを続けているUSEN。USENのホームページに業績資料が公開されているが、業務用有線放送と通信カラオケ事業という成長性が見込めない分野から、ジャンプして新しい事業に進出し、業績を大きく伸ばしている。
ホリエモンや三木谷さんが言っていた、『インターネットと放送の融合』を単に言葉だけのイメージでなく、現実の事業として実現しているトップ企業と言っていいだろう。
阪神の金本知憲選手の活躍で『アニキ)』という言葉が、良いイメージを持って受け止められる様になってきている。社内で一番の働き者として尊敬され、寝る間も惜しんで仕事に没頭し、リスクを負ってもベンチャーを支援するUSENの宇野社長。
まさにベンチャーのアニキである。
宇野社長を応援したいという気持ちにさせる本だった。
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