南場智子さんが創業したDeNAの経営を「黒子」として支えた春田真(まこと)さんの自伝。
この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、目次を紹介しておく。春田さんの経歴が1/3、DeNAのビジネスが1/3、横浜DeNAベイスターズのことが1/3という感じだ。
第1章 球界参入
第2章 銀行員時代
第3章 ベンチャー
第4章 DeNA事件簿
第5章 野球への想い
DeNA創業者の南場智子さんの「不格好経営」のあらすじは別ブログで紹介しているので、参照してほしい。春田さんは、もちろん「不格好経営」の中にも登場する南場さんを支えた腹心の部下だ。
「不格好経営」のあらすじにも書いた通り、筆者はDeNAには大変感謝している。横浜大洋ホエールズ以来、長年続けてきた横浜ファンから卒業できたからだ。
横浜ファンだったころは、シーズン初めは期待できたが、5〜6月で調子を落とし、毎年最下位あたりを低迷するという繰り返しだった。
1998年に優勝した当時のマシンガン打線と大魔神・佐々木主浩を擁した投手陣は、ほんの一時のピークに終わり、あとは毎年同じことの繰り返しで、毎年欲求不満を抱えていた。
今はプロ野球のひいきチームはない。「明鏡止水」という心境だ。
そんなわけで、ベイスターズファンだったら、この本はもっと興味深く読めたかもしれないが、春田さんの横浜ベイスターズ買収の裏話を聞いても、フーンという感じだ。
以前から友人から横浜スタジアムには既得権がからんでいるという話を聞いていたが、この本ではそのあたりは簡単に触れている。どうやらDeNAがベイスターズを保有することとなって、条件見直し交渉をしたようだ。
そういえば、DeNAの前にベイスターズ買収交渉をしていた住生活グループ(LIXIL)は、本拠地を新潟か静岡に移転するという考えを明かしたので、これが破談の原因になったという話があった。LIXILも既得権対策として本拠地移転案を出してきたのだと思う。
春田さんも書いているが、DeNAがプロ野球に参入を表明し時に、最も反対したのは、楽天の三木谷さんだ。
春田さんは、次の理由を挙げている。
1.経営者として球団を持つことのメリットの大きさを自身の体験からよく理解しており、競合の可能性のある企業が大きなメリットを得られる球界参入を阻止しようとした。
2.単純に競合する事業もあるDeNAが嫌い?
南場さんと三木谷さんについては、不仲が取りざたされている。
この記事では南場さんが春田さんに代わってベイスターズのオーナーに就任する6月以降、オーナーとして三木谷さんとやたらと衝突すると予測しているが、そんなことはまずないと思う。
春田さんは、ベイスターズをDeNAが保有する宣伝効果は試算では1,000億円になるという。NHKでもDeNAの名前を毎日何回もニュース等で紹介してくれるのだ。なるほどと思う。
この本では、春田さんのおいたちも紹介している。
春田さんのお父さんは住友銀行に勤めていたが、春田さんが小学校5年生の時に、病気で亡くなり、以降はお父さんの実家の春田家で、母子家庭としてお母さんに育てられたという。
お母さんの話では、お父さんが亡くなった後も、住友銀行にはなにかと世話になったという。だから春田さんが京都大学を卒業して、住友銀行に就職した時は、お母さんは大喜びだったという。
逆に、1999年の住友銀行とさくら銀行の合併を機に、30歳で春田さんが住友銀行を辞めてDeNAに転職した時は、お母さんは泣いたという。
そんな春田さんご自身の経歴も、この本を読むうえで別の見方を与えてくれる。
この本の「黒子」というタイトルほど、春田さんは脇役ではないと思う。
飾らない語り口が好印象を与える本である。
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