橋爪大三郎さんと大澤真幸さんという2人の社会学者が、対話形式でキリスト教の特徴を説明してくれる本。

橋爪大三郎さんは、結構売れている「教養としての聖書」という新書を出したばかりだ。

教養としての聖書 (光文社新書)
橋爪 大三郎
光文社
2015-03-17


「ふしぎなキリスト教」は、会社の読書家の友人から薦められて読んでみた。

筆者は一応、幼稚園は鵠沼めぐみルーテル教会付属の鵠沼めぐみルーテル幼稚園に通っていたので、そういう意味では5歳ごろからキリスト教の講話や賛美歌などには接していた。

小学校に上がるとやめてしまったが、幼稚園の間は、食事の前には家でもお祈りしていたし、日曜学校も小学校に上がるまでは行っていた。

ルーテル幼稚園を卒業すると新約聖書を貰えるので、ずっと持っていたし、その後、オーディブックながら、新約聖書も旧約聖書も読んだ(聴いた)。それなりにキリスト教についての知識はあると思っていた。

ところが、この本を読んで、キリスト教に対する自分の無知を痛感した。

まずは「預言者」だ。恥ずかしながら、いままでずっと「予言者」だと思っていた。

預言者は英語で言うとprophetで、英語ではprophet一語で、預言者と予言者の両方の意味がある。

だから混乱するわけだ。

預言者は、予言を行うわけではなく、神の言葉を人々に伝え広める者のことだ。ノアの方舟のノア、十戒のモーゼ、旧約聖書のヨブ記のヨブ、同じく旧約聖書のヨナ記のヨナ、新約聖書に登場するヨハネなどが代表的な預言者で、イスラム教のムハンマド(マホメッド)もやはり預言者だ。

イエス・キリストは、キリスト教では神の子だが、イスラム教では預言者の一人として扱われている。

ともあれ、この本はアマゾンの”なか見!検索”に対応していないので、”なんちゃって中見!検索”で、目次と主要な章題を紹介しておく。

第1部 一神教を理解する(起源としてのユダヤ教)

1.ユダヤ教とキリスト教はどこが違うのか
 
2.一神教のGodと多神教の神様

5.なぜ、安全を保障してくれない神を信じ続けるのか

7.原罪とは何か

8.神に選ばれるということ

9.全知全能の神がつくった世界に、なぜ悪があるのか

11.なぜ偶像を崇拝してはいけないのか

12.神の姿かたちは人間に似ているか

14.預言者とは何者か

15.奇跡と科学は矛盾しない

第2部 イエス・キリストとは何か

1.「ふしぎ」の核心

2.なぜ福音書が複数あるのか

3.奇跡の真相

4.イエスは神なのか、人間なのか

5.「人の子」の意味

6.イエスは何の罪で処刑されたか

7.「神の子」というアイデアはどこから来たか

8.イエスの活動はユダヤ教の核心だった

9.キリスト教の終末論

13.イエスは自分が復活することを知っていたか

18.キリスト教をつくった男・パウロ

第3部 いかに「西洋」をつくったか

1.聖霊とは何か

2.教義は公会議で決まる

3.ローマ・カトリックと東方正教

6.イスラム教のほうがリードしていた

9.宗教改革ープロテスタントの登場

10.予定説と資本主義の奇妙なつながり

11.利子の解禁

12.自然科学の誕生

14.芸術への影響

15.近代哲学者カントに漂うキリスト教の匂い

いくつか参考になった点を紹介しておく。

1.ユダヤ教とキリスト教はどこが違うのか。
ほとんど同じ。唯一違うのはイエス・キリストがいるかどうか。一神教で、ユダヤ教の神はエホバ(ヤハウェ)。その同じ神がイエス・キリストに語りかけている。イスラム教のアッラーも同じ神だ。

イエス・キリストは「神の子」なので、預言者以上の存在だ。

メシアはヘブライ語の救世主という意味、それをギリシャ語に直すとキリストとなる。旧約聖書の「イザヤ書」の中で、メシアがやってくると預言されていた。

5.なぜ、安全を保障してくれない神を信じ続けるのか。
ユダヤ人は、バビロン捕囚で、60年間もバビロンに連れ去られていた。これはユダヤ人自身に原因がある。ヤハウェに背いたからだ。この試練を耐え忍び、これまで以上にヤハウェを信じれば、外敵は除かれるに違いない。というのが、ユダヤ人の考えだ。

11.なぜ偶像を崇拝してはいけないのか。
それは偶像を作ったのが人間だからだ。人間が自分自身を崇めているというのが、偶像崇拝の最もいけない点だ。

6.イエスは何の罪で処刑されたか。
「神を冒瀆した」罪だ。実はイエスは最高法院で死刑が宣告されたが、総督ピラトは、ちょうど過越(すぎこし)の祭り時期だったから、罪人の一人を恩赦にできた。そこで、イエスを釈放しようとしたが、民衆が「バラバを、バラバを」と叫んだので、罪人のバラバを釈放して、イエスと他の二人の罪人を十字架にかけた。

ちなみにバラバのその後が、映画となっている。



裁判でイエスを尋問したところ、神を冒瀆することを言ったので、証拠調べは打ち切りになり、即座に死刑の判決が下された。

18.キリスト教をつくった男・パウロ。
キリストの12人の弟子の能力があまりに低く、ヘブライ語しか話せなかった。パウロは、当時の国際語であるギリシャ語が話せたので、キリスト教の国際化に貢献し、新約聖書の著者の一人として、キリスト教発展の基礎をつくった。

大変参考になる本だった。


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