ネットからリアルへ  O2O(オー・トゥー・オー)の衝撃 決済、マーケティング、消費行動……すべてが変わる!ネットからリアルへ O2O(オー・トゥー・オー)の衝撃 決済、マーケティング、消費行動……すべてが変わる! [単行本(ソフトカバー)]
著者:岩田昭男
出版:阪急コミュニケーションズ
(2013-07-11)

筆者が尊敬する消費生活評論家・岩田昭男さんの最新作。別ブログでは岩田さんの本を多く紹介している。いつも通り読みやすい文章で、様々な話題をわかりやすく紹介している。「頭にスッと」入る本だ。

今度はO2O(オー・ツー・オー、On-line to Off-line)

この本では日本最大のポイント会員組織を持つTポイント・ジャパン、ヤフー・ジャパンの責任者とのインタビューを載せている他、読み取り端末をスマートフォンに差し込んでクレジットカード決済を可能とするスクウェア楽天スマートペイペイパルヒアコイニーなどの新しいサービスについても関係者に広くインタビューしている。すごい情報収集力だ。


端末起点マーケティング

岩田さんはスマートフォン時代のマーケティングを「端末起点マーケティング」と呼んでいる。

スマートフォンがあれば、ポイントカードや電子マネーもスマートフォンに乗せられるし、クーポンもわざわざ印刷して持ち歩く必要がない。スマートフォンこそ、O2O(オー・ツー・オー、On-line to Off-line)の主役デバイスだ。

たとえば家電製品を買う場合は、いままでは買いに出かける前に、パソコンで価格コムや楽天などで検索して、最安値を調べて、それをもとにヤマダ電機とかに行って交渉していた。

ところが、今ならスマートフォンがあれば、出先で価格チェックも可能で、その場で量販店のセールスマンに証拠を示すこともできる。

筆者がデジタルテレビを買った2年前は、ヨドバシはネット最安値との価格マッチングは拒否していたが、ヤマダ電機はポイント割引等でネット最安値に競合する条件を出してきた。ヤマダ電機は、その後公式にネットでもリアルでも安値に対抗することを表明している。


スマートフォンはポイントカードとしても便利

スマートフォン(あるいはガラケー携帯電話)はポイントカードとしても便利だ。

たとえばロイヤルホストのメルマガ会員になると、常時10%引きのクーポンがもらえる。

スマートフォンか携帯電話があれば、ロイヤルのサイトにアクセスしてクーポンをレジで表示するだけでよい。印刷したクーポンを持ち歩く必要はない。さらに自分や家族の誕生月には20%引きのクーポンがもらえる。

こういったケータイ対応のポイントというだとヤマダ電機のケイタイde安心ポイントが最も進んでいると思う。

ヤマダ電機はプラスティックカードの時代から来店ポイントを付与してきた。ヤマダ電機の店に入って、読み取り端末にケータイをかざすと、スロットゲームが回り、毎回50ポイントくらいが当たる。すかさずメールが来て、その時のお買い得品などを紹介してくれる。

ヤマダ電機はポイントカード自体を廃止し、スマートフォンかおサイフケータイ一本にしているので、ポイントカードを忘れるということがない。

しかしヤマダ電機では所詮量販店なので、一部のマニアは別にして毎週行くというようなことはない。その意味で、いろいろな店で使える共通ポイントのTポイントがスマートフォンに対応すると、O2Oの覇者となる可能性は高いと思う。


Tポイントのスマートフォン対応

Tポイントはあれだけ普及しているが、まだスマートフォン対応はしていない。ポンタはスマートフォンに対応しているので、スマートフォンを会員カードとして使うことができる。しかし、読み取り端末を入れて対応しているのはローソン位のもので、他のポンタ加盟店では普及していない。

Tポイントはプラスティックカードがかなり普及しているので、スマートフォンを会員カードとして使うと加盟店に莫大なシステム・読み取り機投資が必要となり、踏み切れないのだと思う。

この本の中で、岩田さんがインタビューしたヤフーの担当者は、近い将来ヤフー・ウォレットをスマートフォンに対応させて、スマートフォンをかざすだけでクレジットカード決済ができるようになると語っている。

「ネットでもリアルでも最高のおサイフをめざそう」というのがヤフー・ジャパンの決済サービス部門の合言葉になっているという。

たぶんTポイント単体で対応するより、クレジットカードなど他のサービスも同梱できるヤフー・ウォレットがスマートフォンに対応するというのが近道となるからだと思う。


Tポイント・ヤフー連合の強み

Tポイントは若者には圧倒的な人気だが、2012年に主婦層やシニアの取りこみを開始し、マルエツなどの中堅スーパーや、ドラッグストアを提携店に加えて、会員数は1年で500万人も増えたごいう。

Tポイントの最後の仕上げがヤフー・ジャパンとの提携で、これが2013年7月に動きだした。

ヤフー・ポイントをTポイントに切り替えることで、ネットでためたポイントが、ガストやファミマ、ドトールといったTポイント加盟店で1円から割引きに使えることになり、まさにネットとリアルの融合が完成した。

Tポイントの親会社のCCC(=TSUTAYA、カルチャー・コンビニエンス・クラブ)はヤフーからの15%の出資を受け入れるために、Tポイントジャパンという別会社をつくった。

2013年3月末時点のTポイントのアクティブ・ユニーク会員数は4,454万人だという。これにヤフーの会員の3,000万人弱が加わる。重複などを除いても、5,000万人を超える日本最大の共通ポイント会員組織が誕生する。

Tポイント加盟店のメリットは、々餾櫺餬彜霆爐箸覆辰討癲▲櫂ぅ鵐箸鯣行時に負債計上する必要がなく、使われた時に販促費として計上できる、■達劭佑離機璽咼垢ある。ことだという。

CRMサービスについては、ファミリーマートは2009年からCCCと組んで「ロイヤルカスタマー優遇システム」を構築し、月間の購買頻度、購買額と購買履歴を分析して様々な販売促進を実現している。

2011年からは「DB−WATCH」というPOS情報にT会員の属性情報を連動して、「誰が」購入したかがわかるようになり、顧客の嗜好に対応した商品開発や品ぞろえが可能となったという。

特にTポイントが充実しているのはレジクーポンだ。

岩田さんは、TSUTAYA利用者に、牛角の割引クーポンを渡すというような形で、ネットワーク加盟店間のクロスセルを拡大していることを紹介している。

Tポイントには、筆者もお会いしたことがあるレジクーポンの世界最大手のカタリナマーケティングにいた人が転職しており、レジクーポンの活用を拡大している。

O2Oの覇者をめざす動き

この本で岩田さんは、楽天対アマゾン、楽天対Tポイント・ヤフー連合、そして覇権をねらうリクルート、ドコモ等の動きも紹介している。

楽天とCCCは元々それぞれのCEOの三木谷さん、増田さんが他方の社外取締役を兼ねるという親密な間柄だったが、2007年の楽天のレンタル事業進出もあって、双方が取締役を降り、CCCは楽天と敵対しているヤフーと提携することになった。

アマゾンは昨年日本の売上高を始めて公開した、それによると2012年は7,300億円となっており、楽天の売上高(流通額ではない)の4,434億円をはるかに上回っていたことが判明した。これにより楽天神話に疑問符がつくきっかけとなったという。

楽天はクレジットカードの楽天カードに加えて、誰でも持てるポイントカードの楽天Rポイントカードを新規に導入した。楽天は既にEDYを子会社にしており、EDYの営業部隊を使って楽天Rポイントの加盟店を獲得しようとしている。

しかし、楽天のRポイントカードをわざわざ財布に入れて持ち運ぼうという人は少ないだろう。その意味ではTポイント・ヤフー連合に一日の長があると思う。

アマゾンはクレジットカードについては、日本での戦略はまだ確定していないようだ。

ジャックスが発行しているリーダーズカードという「なんちゃってアマゾン提携カード」も面白い。アマゾンのデポジット(割引)と交換すると1.8%という高率のポイント還元となることを岩田さんは紹介している。


iPhoneへのおサイフケータイ機能搭載

iPhone 5にはNFC(Near Field Communication、おサイフケータイなどの機能のこと)は乗らなかったが、iPhone 6はNFC対応することが期待されている。

筆者がiPhoneを使っていない理由はiPhoneだとおサイフケータイが使えないからだ。筆者の様に毎日モバイルスイカやiDを使っているユーザーは、おサイフケータイがないと非常に不便だ。

いずれiPhoneへのおサイフケータイ機能が搭載されると思うが、そうなると一気にO2Oの覇者を目指す動きが加速化されるだろう。


クレジットカード業界の新しい動き

岩田さんはクレジットカードを長年研究してきているので、この本でもスクウェア楽天スマートペイペイパルヒアコイニーなどの新しいサービスについても、それぞれの戦略などを紹介している。

これらのスマホに接続するクレジットカード読み取り端末を使うと、いままでBtoC取引でしか使われていなかったクレジットカードが、CtoC(個人間の取引)でも使えることになる。つまり友達との支払いでクレジットカードが使えるようになるのだ。

東京IT新聞の2013年6月11日号にスマホ決済特集号があり、これの最後のページの花くまゆうさくの「ITの汁」というマンガが面白いので、紹介しておく。ここをクリックして、最後のページのマンガを見てほしい。

CtoC取引でクレジットカードがどのように使われるか、思わず笑ってしまうユーモラスな一例を紹介している。まさにポイントをついたマンガだと思う。

140兆円と言われる消費の中で、ECは8兆円と言われる。まだまだ規模は小さいが、成長余地は大きい。変化が激しいので、時代についていけない会社は脱落するしかない。一時は携帯ゲーム業界を席巻したインデックスの倒産が象徴している。

岩田さんは、ブリタニカ百科事典が2012年に244年に上る歴史を閉じ、書籍版の出版を中止したことを記している。

CtoCにもクレジットカードが使われる時代、スマートフォンがプラスティックカード代わりになる時代が始まった。新しい消費スタイルの覇者はどこになるのか、時代の流れを俯瞰できる大変参考になる本である。


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