大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)
著者:中村 仁一
幻冬舎(2012-01-28)
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現在アマゾン売り上げ18位で、50万部近いベストセラーになっている医者にかからない自然死のすすめ。読書家の上司から借りて読んだ。

方向としては、以前ベストセラーになった蒲田實さんの「がんばらない」と同じだが、「がんばらない」が感動の実話集だったのに対して、この本は中村さんの自然死の提言というような内容だ。この本を読んでも、ウルウルくることはない。

がんばらない (集英社文庫)がんばらない (集英社文庫)
著者:鎌田 實
集英社(2003-06-20)
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著者の中村仁一さんは、1940年生まれ。京都大学医学部を卒業した内科医で、京都市にある高雄病院の院長・理事長を経て、現在はやはり京都市にある社会福祉法人「同和園」附属病院の院長を務めている。

京都新聞のサイトで、昨年収録された中村さんのインタビュー記事が載っているので、紹介しておく。「老いを受け入れて死ぬ」と、この本の趣旨とほぼ同じことを語っている。


中村さんの医療の鉄則

中村さんの医療の鉄則は次の2つだという。

1.死にゆく自然の過程を邪魔しない。
2.死にゆく人間に無用の苦痛を与えてはならない。

つまり「自然死」のすすめである。


医療に対する思い込みテスト

最初に医療に対する思い込みテストが15問ある。これをやると自分の考えと中村さんの考え方が対比できるので紹介しておく。

1.ちょっと具合がわるくなると、すぐ医者にかかる。

2.薬を飲まないことには病気はよくならない。

3.病名がつかないと不安。

4.医者にかかった以上、薬をもらわないことには気がすまない。

5.医者は病気のことなら何でもわかる。

6.病気は注射を打った方が早くよくなる。

7.よく検査するのは熱心ないい医者だ。

8.医者にあれこれ質問するのは失礼だ。

9.医者はプロだから、自分に一番いい治療法を教えてくれるはず。

10.大病院ほど信頼できる医者がたくさんいる。

11.入院するなら大病院、大学病院の方が安心できる。

12.外科の教授は手術がうまい。

13.マスコミに登場する医者は名医だ。

14.医学博士は腕がいい。

15.リハビリすればするほど効果が出る。

筆者はいくつか○(マル)があったが、中村さんが主宰している「自分の死を考える集い」の出席者は、○はほとんどゼロだという。

中村さんは、病気を治す力の中心は自然治癒力であり、薬や医療者は援助者にすぎないという。

目次を見ると中村さんの主張が大体わかる。

日経新聞の広告で、次の通り目次が紹介されていた。

大往生






読みにくいので、なんちゃってなか見!検索でも主な目次を紹介しておく。

第1章 医療が”穏やかな死”を邪魔している 
 
    本人に治せないものを、他人である医者に治せるはずがない
 
    ワクチンを打ってもインフルエンザにはかかる
 
    解熱剤で熱を下げると、治りは遅れる
  
第2章 「できるだけの手を尽くす」は「できる限り苦しめる」 

    「自然死」のしくみとは
  
    長期の強制人工栄養は、悲惨な姿に変身させる
  
    食べないから死ぬのではない、「死に時」が来たから食べないのだ
  
    ”年のせい”と割り切った方が楽
  
   「看取らせること」が年寄の最後の務め
    
第3章 がんは完全放置すれば痛まない

    死ぬのはがんに限る
 
    がんはどこまで予防できるか

    がんはあの世からの”お迎えの使者”
 
    「がん」で死ぬんじゃないよ、「がんの治療」で死ぬんだよ
 
    余命2,3か月が1年になった自然死の例
 
    手遅れのがんでも苦痛なしに死ねる
 
    医者にかからずに死ぬと「不審死」になる
 
    安易に「心のケア」をいいすぎないか

第4章 自分の死について考えると、生き方が変わる 
 
    「あなたもお棺に入って、人生の軌道修正をしてみませんか」
 
    「死生観」に大きく影響した父の死にっぷり
  
    延命の受け取り方は人によって違う
 
    「死」を考えることは生き方のチェック
  
    「自分の死を考える」ための具体的行動とは
 
    意思表示不能時の「事前指示書」はすこぶる重要
    
第5章 「健康」には振り回されず、「死」には妙にあらがわず、医療は限定利用を心がける    

    生きものは繁殖を終えれば死ぬ
    
    医者にとって年寄りは大事な「飯の種」
   
    生活習慣病は治らない
   
    年寄りはどこか具合の悪いのが正常
   
    検査の数値は微妙なことで変わる
    
    病気が判明しても、手立てがない場合もある
   
    年寄りに「過度の安静」はご法度

終章  私の生前葬ショー

    クイズにはまる

    「自分史」のまとめ

    私の「事前指示」


たとえば肺がんは痛いし、苦しむと聞いていたので、筆者は半信半疑なのだが、中村さんはがんでさえも、何の手出しもしなければ、全く痛まず、穏やかに死んでいくという。

中村さんは以前から「死ぬのはがんに限る」と思っていたが、年寄りのがんの自然死60〜70例を経験した今は確信に変わったという。「手遅れの幸せ」を得るためには、がん検診や人間ドックを受けてはいけないという。

アマゾンの書評を見ると、医者による反対意見も出されている。早々にあきらめることは医者としては認めることはできないと。また症例も60〜70例は少ないと指摘している。

著者の中村さんは今年72歳で、普通なら現役を引退しても良い年齢だ。内科医だから病院長という仕事を続けているが、外科医ならとっくに引退だろう。また72歳の医者の言うことと、たとえば40代、50代の働き盛りの医者の言うことは多分違うだろう。

その意味で、この本の自然死のすすめは、割り引いて考える必要があると思う。

中村さんは「繁殖年齢」という言い方をしているが、たとえば、50代くらいまでの人がガンに罹ったら、当然「自然死」コースではないだろう。なんとか治すべく、放射線治療でもなんでも、可能な治療法をとるべきだろう。

しかし70代以上であれば、中村さんの言う「自然死」コースも、アリだと思う。たとえばチューブだらけになって、すこしでも生きようとするのがいいのか、あるいは寿命と考えて、延命治療は拒否するのか、考えてしまう。


がんは不老不死の細胞

以前別ブログで紹介した「ヒトはどうして死ぬのか」で、がん細胞が不死の細胞であり、遺伝子のコピーミスで毎日5,000くらいのがん細胞が誕生しているが、免疫細胞のおかげでがんが発症しないで済んでいることを知った。

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)
著者:田沼 靖一
幻冬舎(2010-07)
販売元:Amazon.co.jp
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がん細胞は毎日生まれ、生活習慣病や加齢により免疫力が弱まればどんどん増殖する。不死の細胞なので、やがては体の器官のあちこちに転移して、器官の働きを阻害し、ついには人の生命を奪うことになる。

自分の体を構成する細胞ががん細胞になって不死になったのに、自分は死んでしまうというと、なにかわりきれないところがある。

がんを克服すべく、医学や薬学は研究しているが、現状ではがんは克服できていない。外来の生物でなく、自分の細胞の突然変異だから、元々不死のがん細胞を殺すくらい強力な治療をすると、他の細胞も死んでしまい元も子もないからだ。

筆者の歳では中村さんのように、簡単にあきらめるというのは抵抗がある。しかし、もともと毎日発生している遺伝子のコピーミスががん細胞なので、その意味では人体の寿命とあきらめるべき時が来るのかもしれない。

この本がベストセラーになって、人の生き方が変わるかどうか疑問があるところだが、延命治療に対する自分の考えを家族に表明しておくことは意味があると思う。

そんなことを考えさせられる本である。


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