勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
著者:原田泳幸
朝日新聞出版(2011-12-07)
販売元:Amazon.co.jp
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日本マクドナルドの原田社長が朝日新聞のAERAビジネスセミナーで、2010年12月と2011年6月に、経営改革を語った講演録。最初の100ページが講演で、60ページ余りのQ&Aが収録されている。Q&Aも面白い。

セミナーのタイトルは「非常識を常識に マクドナルドの経営改革」というものだったという。

原田さんはマクドナルドに移る前の33年間はIT業界で仕事をしていた。アップル・ジャパンには14年間在籍し、最後の7年間はアップル・ジャパンの社長を務めていた。その原田さんが2004年にアップル・ジャパン社長から日本マクドナルドの社長に転職したときは「マックからマックへの転職」と言われたものだ。

原田さんが日本マクドナルドの社長になる前には、稀代のベンチャー起業家で、創業者の藤田田さん経営の末期で、日本マクドナルドの業績は既存店売上高が7年間マイナスというどん底の状態だった。そんな日本マクドナルドの業績を原田さんは、7年連続プラスに変えた。

このセミナーはそんな原田さんが語る日本マクドナルドの経営改革だ。読んでみると「非常識を常識に」というタイトルは、全く当てはまらないと思う。すべて基本に忠実なオーソドックスなアプローチだったことがよくわかる。


新しいバス

原田さんが入社して、すぐ全社員を集めて次のように宣言したという。

「今から新しいバスが出発する。新しいバスのチケットを買いたい人は買え。買いたくない人はバスに乗らなくてかまわない。」

当時のマクドナルドの年商は4,000億円、それが現在は6,000億円まで拡大している。

日本マクドナルドは1971年の銀座三越での初出店後、20年間で1,000店まで拡大し、その次の10年で3,000店まで拡大した。これが既存店売り上げの減少をもたらし、結果的に経常利益は減少した。創業者の藤田田さんは2002年に社長を退き、2004年に原田さんが社長として着任して経営改革を実施した。


経営不振の原因:QSCの欠如

原田さんが社長として着任した時に、経営幹部からは出店過多でカニバリゼーション(店舗がお互いに客を奪い合っている)が起こっていると説明を受けたが、原因はもっと単純なことだったという。

それはQSCという基本中の基本ができていなかったからだ。Q=クオリティ、S=サービス、C=クレンリネスだ。それにV=バリュー(価値ある食事体験)を入れてQSCVとも呼ぶ。

外食産業では店の売り上げは店長の能力に大きく左右される。急成長したマクドナルドは人材の育成が追い付いていなかった。店長次第で、クルー=アルバイトの満足度も変わる。クルーの満足度は離職率に影響し、離職率が上がるとQSCは低下し、顧客満足度が下がり、売り上げも下がるという悪循環となっていたのだ。

だから原田さんが社長となった最初の年から、今まで「基本に立ち返れ。基本以外はなにもするな。QSCが一番大事」と言い続けているという。


当たり前のことをやる

当たり前のことをやることがビジネスでは最も難しいのだと。当たり前のことをやり、その会社「らしさ」を取り戻したという例は、業績回復企業には共通して見られるという。

原田さん着任前のマクドナルドは、一時はカレーライスやチャーハンを出していた。経営改革の第一歩はマクドナルドらしさを取り戻すため、基本に立ち返るものだった。


ブランド力の向上

マクドナルドのブランドはブランド・ジャパンの評価で、2007年に81位に入ってから毎年上昇し、2011年には4位にまでなった。これは根拠があってのことだという。

それはブランド・ジャパンの評価の4機軸である、フレンドリー、コンビニエント、アウトスタンディング、イノベーティブの4つにあわせて次のような戦略を展開してきたのだ。

★つくり置きをやめて、オーダーを受けてからつくり、”メイド・フォー・ユー”というキャッチフレーズで、味を向上させた。

★100円マックというバリュー商品を打ち出しながら、8年間で6回値上げを実施した。

★地域別価格、24時間営業、マイナスイメージを払拭するためのヘルシーメニューの導入

その結果競合とのQSC差は拡大し、見事に客数の増加につながったという統計が紹介されている。

従業員満足度も忘れてはならない点だという。マクドナルドでは毎年クルーの技能コンテストを開催するほか、16万人いるアルバイトのトレーニングはニンテンドーDSで行っているという。

アウトスタンディングについては、メガマックやマックグリドル、クオーターパウンダーなどのボリュームメニューの効果をマクドナルドらしさの例として説明している。そのための広告戦略にも大変気を使っていることがわかる。ビッグアメリカ・シリーズのハンバーガーは広告効果もあり爆発的な売り上げを記録したという。

マクドナルドのコーヒーはベストクオリティのコーヒーを低価格で提供している。しかしマクドナルドのコーヒーは他の競合店と競争するためのものではなく、あくまでビックマックを売るためのものなのだと。


常に新陳代謝

店舗の新陳代謝も積極的に実施している。2007年の店舗数は3750店余りだったが、不採算店を閉鎖し、新規に出店を重ね、2011年には3,280店になり、店舗当たりの売上高も増加している。

フランチャイズのオーナー・オペレーターは440人から200人に減った。しかしフランチャイズ比率は30%から65%まで増やし、1オーナーあたりの店舗数も増やして、キャシュフローを向上させた。


レストランはピープルビジネス

原田さんはレストランビジネスはピープルビジネスだという。コストダウンで一番大事な点は、コストを削るのではなく、同じコストで売上げを拡大することだ。”もっとお金をつかって、もっと売る提案を持ってこい”と社員には言っているという。

人材への投資は惜しみなく行う。

サービス残業訴訟があったこともあり、クルーの残業を肩代わりしていた店長に残業手当を出すようにした。しかし今はクルーを増やしているので、店長がクルーの代わりに残業するという事態はなくなり、店長の残業手当支給はほぼゼロだという。


経営理念

三木谷さんの「スピード、スピード、スピード」は有名だが、原田さんもビジネスではスピードが何よりも大事と語る。だからeクーポンに力を入れ、ニンテンドーDSを使ったマックでDSも力をいれている。

マクドナルドの経営では、成果主義を徹底し、年功序列を廃止したという。マクドナルドでは降格は決して恥ずかしいことではないという文化が生まれつつあるという。

原田さんは社員に3年以内にどういう後継者を作りますかとよく聞くという。人材のパイプラインが重要なのだ。


マクドナルドの場合は”Think Global, Act Local”

楽天などの企業はThink Global, Act Globalなのだろうが、マクドナルドの外食産業の場合は、Think Global, Act Localなどだと。だから日本語で考えて、日本語でしゃべれ。英語で考えて、英語でしゃべれ」と社員には言うという。


原田語録

講演の最後に、原田さんがいつも社員に言っている言葉が紹介されている。大変参考になるので紹介しておく。

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出典:本書101ページ


Q&Aも面白い

60ページにわたるQ&Aも面白い。印象に残った回答を箇条書きで紹介しておく。

★マネジメントはなんといってもコミュニケーションが一番大事。

★マックフライポテトは独自性のない商品のように見えるかもしれないが、あの長さでカリカリに揚げるのは大変なノウハウ。ポテトは揚げたあと7分で廃棄するという。テイクアウトしてレンジで温める人が多いのが残念だと。

★やはりチーズバーガーが一番おいしい。
(気持はわかる。筆者はダブル・クオーター・パウンダー・チーズのケチャップをスプーンで取り除いてから食べるのが一番うまいと思う)

★キャリアを自分で考えるな。キャリアとは周りからくるものと思え。

★チームのパフォーマンスを最大化するのがリーダー

★社長は職位ではない。職種であり、現場に行くのも自分の命題の発見のために行く。たとえばコーヒーのクリームとガムシロップのパッケージが同じ白で、間違えやすかったのに気づいて色分けさせたが、これは経営の課題。

★座右の銘はない。推薦書もない。

★学生時代のデパートの集金のアルバイトが役に立った。5000円の集金なら500円とりあえずもらい、毎週行って5000円回収できる。10人いれば、9人が”また来て”という答えだったという。生活設計にけじめのない人がツケで買っているということだ。

★風土はトップしか変えられない。


原田さんは最後に、「当たり前のことをちゃんとやれ」ということが、世間一般では驚くほどできていない、だから重要なのだと。あたまにスッと入る実践的経営論である。


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