グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶグレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ
著者:デイヴィッド・ミーアマン・スコット
日経BP社(2011-12-08)
販売元:Amazon.co.jp
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1960年代にサンフランシスコで生まれたロックバンド・グレイトフル・デッドは、ヒッピーカルチャーの象徴のようなバンドだった。コンサートではマリファナを吸う観客だらけで、警察も取り締まれないほどだったという。

元々ロックでもない、カントリーでもないという独自性を狙った即興演奏に特徴があるバンドだったので、コンサートでは歌詞を間違えたり、途中で止まったりして演奏の失敗があっても、ファンは許すというアットホームなコミュニティを作り上げたバンドだった。

まるでフットボールの試合前のスタジアムの駐車場のように、コンサート会場の駐車場では、あちこちでキャンピングカーでバーベキューをやっていたという。

1995年にリーダ―のジェリー・ガルシアが亡くなると、グレイトフル・デッドとしては活動を休止。残りのメンバーが「アザーワンズ」を結成して、現在は「ザ・デッド」として2009年からツアー活動を再開している。

グレートフル・デッドの熱狂的なファンの2人の著者が書いて、著者の一人デイヴィッド・ミーアマン・スコットの奥さんで、米国ボストン在住の小説家・渡辺香保里さんが翻訳した本だ。

糸井重里さんが紹介文を書いていて、糸井さんのウェブ新聞「ほぼ日」でもこの本に関する「糸井重里からデイヴィッドへの7つの質問と回答」という企画や「変わっている」という特設コーナーを設けて宣伝している。


昔から知っているバンドではあるが…

筆者は昔からグレードフル・デッドの名前は聞いたことがあるが、覚えている曲はない。YouTubeには1969年の伝説のロックコンサート・ウッドストックでのグレイトフル・デッドの演奏が収録されている。



またYouTubeには、この本の紹介ビデオも日本語字幕付きで紹介されている。



グレートフル・デッドのコンサートは録音し放題、むしろファンが自分で録音できるように、コンサート会場には録音ブースを設けるという至れり尽くせりだった。

一方、評判の良い100回ほどのライブの高音質録音版とスタジオ録音アルバムは「リマスター版」としてバンドの公式サイトで有料で販売されている。高音質のものが欲しいファンは、リマスター版をバンドから直接購入するのだ。

フリーミアム(無料で入手できるが、高音質・高画質などのプレミアムものは有料で販売)などの先進的マーケティング手法を、当時から取り入れていて、グレートフル・デッドは年間5千万ドルも収益を上げていたという。

グレートフル・デッドはチケットの販売も自ら行っていた。熱狂的なファンはバンドから直接コンサートのチケットを買うことができるので、最も良い席はバンドの一番のファンが座ることができ、ファンはバンドと一緒にコンサートを楽しむことができた。

グレートフル・デッドは、最新の技術を取り入れることにも熱心で、コンサートに最高の機器を取り入れていた。「サウンド・オブ・ウォール」という1974年に登場した音響システムは、8年間の試行錯誤の結果、35万ドルかけて55台のマッキントッシュ・アンプ(アップルのマッキントッシュではない。昔ながらの真空管アンプが有名なマッキントッシュだ)が22万6千4百ワットの電力を使うものだったという。

スピカーは600台。幾何学的な模様に組み立てて作った壁はまるで、巨大な芸術作品のようだったという。

この本ではグレイトフル・デッドの先進性を軸に、たとえば「会社のソーシャルメディア用ガイドラインを作ろう」というようなコラムもまじえ、アイデアを紹介している。


アメリカ軍人がソーシャルメディアで情報発信!

たとえば米国国防総省では、軍人がブログやツイッター、フェイスブックなどのソーシャルメディアに参加することを禁じていたが、ほうしんを180度転換して、利用を許可した。

機密情報を含む様々な情報漏えいを恐れてソーシャルメディアという技術を制限するよりも、軍務につく人たちがソーシャルメディアを利用して同僚や誘引、家族、そして一般市民とコミュニケーションを取ることの方が重要だと気が付いたのだという。

むしろ一般企業より軍の方が先進的で、「アメリカの軍隊はグレイトフル・デッドのマーケティングの教訓を生かしている」のだと。


Yコンビネーターというベンチャー起業ファンド

Yコンビネーターという会社は、創業したばかりの会社に簡単な審査で、少額の創設資金を提供するサービスを始めている。

いままでは、ベンチャー起業家はいわゆる「ドッグ・アンド・ポニー・ショー」と呼ばれる精緻な事業計画と目論見書をつくって、大手のベンチャーキャピタリストに大がかりが説明をしなければならなかった。

しかし、Yコンビネーターは簡単なオンライン・フォームに入力すると、応募の中から将来性のありそうなベンチャーを会議に招き、即座に投資の決定を下すという。

これにより起業家は、創業資金を獲得する時間が短縮でき、よりよい製品やマーケティングと営業に時間を費やすことができるのだ。

Yコンビネーターは、1社ずつ投資するのではなく、多くの企業をまとめたバッチに対して年に2回投資する。

また投資を監視するために取締役を送り込むのではなく、大学のベンチャー経営学のようなセミナーや研修を受けさせ、2ヶ月間みっちり鍛えるという。

Yコーディネーターは、グレイトフル・デッドの音楽ジャンルのように、既存の投資家の枠にはめることが難しいという。独自の投資家カテゴリーを作り上げたのだ。


オバマはラニングメイト(副大統領候補)指名をまずオンラインで伝えた

オバマ大統領も、大統領選挙中にラニングメイト(副大統領候補)のバイデン氏の指名を、主要メディアに発表する10分前に、ツイッターでフォロワーに伝えた。

最も熱狂的なファンに優先的にコンサートチケットを販売するグレイトフル・デッドのマーケティングのように、最も重要な支持者にまず知らせたのだ。

ワシントンDCで開かれたバラク・オバマの就任祝賀会では、「ザ・デッド」が演奏したという。

グレイトフル・デッドのファンには、バラク・オバマの他に、ビル・クリントン、アル・ゴア、トニー・ブレアなどがいるという。

著者の奥さんが日本人で、翻訳するというのは珍しい。元々小説家だけに、翻訳とは思えない、スムーズな日本語で読みやすい。

ケース17のアマゾン・アソシエイト(いわゆるアフィリエイトの元祖)とアマゾンマーケット・プレースの訳を混同している部分があるが、他は全く問題ない。

「アフィリエイト」の元祖のアマゾンが「アフィリエイト」と呼ばずに「アマゾン・アソシエイト」と呼んでいることは、一般の人にはわかりにくいところだから、やむを得ないところだろう。


糸井重里の紹介文や、「ほぼ日」でのキャンペーンサイトも面白い。グレイトフル・デッドの音楽を聞いてみなければ、という気にさせる面白い本だ。


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