電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2010-04-15
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


主にIT関係の本を年に何冊も出しているジャーナリスト佐々木俊尚さんの近著。2010年4月に出た本だが、筆者の読んだものはすでに第8刷だった。よく売れているようだ。

佐々木俊尚さんの本は別ブログでいくつか紹介しているが、いつも新鮮な情報があり有益だ。

この本でも電子書籍ビジネスをめぐる動きを、iPodを中心とする音楽配信業界の動きと比較しながらまとめていて参考になる。


セルフパブリッシングの時代

この本で一番参考になったことは、電子書籍(紙でも可能)の出版方法を「セルフパブリッシングの時代へ」ということで、Amazon Digital Text Publishing (Amazon DTP)とよばれるアマゾンでのセルフパブリッシング方法を詳しく紹介していることだ。

筆者もいずれはあらすじをまとめた本を出したいと思っており、それには注釈代わりにリンクが織り込める電子書籍が最適と思っていたが、今やAmazon DTPを使えば、紙媒体さえ必要なければ初期費用なしで自分の本が出版できるのだ。

セルフパブリッシングは自費出版とは根本的に異なる。自費出版は最低2,000部とかの買い取り保証や諸費用等で、最低でも数十万円掛かる。ところがセルフパブリッシングは、売れればアマゾンが手数料を取るだけなので、紙媒体を出さなければ、基本的に出版費用はかからない。

本の国際標準コードであるISBNコードを日本図書コード管理センターに申請するのに、10冊分で1万7千円くらいかかるが)、これは本を検索するときに必要なので、必要経費と言えるだろう。

アマゾンDTPはまだ日本語対応画面がなく、英語、フランス語、ドイツ語にしか対応していないが、いずれキンドルを日本語対応化すれば、日本語での手続きも始まるだろう。

英語のアマゾンのサイトに行くと”Publish on Amazon Kindle with the Digital Text Platform”という電子書籍出版ハウツー本のキンドルバージョンが無料で読めるようになっている。

紙の本で出すなら、クリエイトスペースというアマゾンの子会社で申し込む。これで売れたらオンデマンド印刷で本が出版できる。

あとは自分のブログとかでプロモーションすることだ。


音楽のセルフディストリビューション

すでに音楽では、自宅で録音してネット配信したりCDで売ったりしているアーティストがいて、たとえばつぎのまつきあゆむさんなどが代表例だ。

自宅録音自宅録音
アーティスト:まつきあゆむ
販売元:UK.PROJECT
発売日:2005-05-11
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


まつきさんは、自分の音楽活動を支えるための「M.A.F.」というファンドもつくっており、だれでも出資して音楽販売のプロフィットシェアリングに参加でき、まつきさんのお金の使い方も知ることができる。

その他参考になった例を箇条書きで紹介しておく。


参考になった事例

★「7つの習慣」の著者、自己啓発本のベストセラー作家、スティーブン・コヴィーは、過去の本の電子ブック発売権を大手出版社のサイモン&シュースターからアマゾンに移した。

7つの習慣―成功には原則があった! (CD付)7つの習慣―成功には原則があった! (CD付)
著者:スティーブン R.コヴィー
販売元:キングベアー
発売日:2009-08
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


「7つの習慣」は筆者も好きな本の一つで、全世界で1,000万部以上売れているという。筆者はオーディオブックと日本語訳の本と両方持っている。このブログではその「7つの習慣」の発展編の「第8の習慣」のあらすじを紹介した。

大手出版社のネット販売での作者の手取りは25%程度だが、アマゾンのディールでは50%以上がコヴィーさんの手取りになるという。

★アマゾンはキンドルがスタートしたばかりの頃は65%のマージンを取っていたが、iPadが参入してきたので、一挙にマージンをアップルに対抗して30%に下げた。

★ボブ・ディランはYouTubeに新作プロモーションビデオをアップして、SNSのマイスペースに自分のページを設けて情報発信したので、「ウォールフラワーズのリーダーのジェイコブ・ディランのオヤジはなんだかスゴイらしい」ということでクチコミが広まり、往年の名曲までが売れるようになったという。

MySpace Bob Dylan









★若者は活字を読まなくなったわけではない。日本の出版業界が劣化しているのだ。本の売り上げは8億冊程度で変わらないが、新刊の点数は1980年代の年間3万点から、8万点に増えている。駄作の乱発で、一冊当たりの売り上げが減っている。

★発行部数が減らない理由は、「本のニセ金化」にあるという。本は欧米では買い取り制だが、日本では再販制度があるので、出版社から取次に卸すと、本来委託販売にもかかわらず、代金は100%支払われる。売れずに返品されると、出版社は返金資金を工面しなければならず、あわてて別の本を取次に売って、その支払いで前の本の返品代を支払うという自転車操業をしている。これが佐々木さんの言う「ニセ金化」だ。

★ケータイ小説は読んだことがないが、この本でその一節が紹介されている。

「ん?? 元気元気♪ ヤマト酔いすぎだし〜!!」「俺酔ってねぇって〜なぁ〜酔ってねぇから〜」「お〜同じバイトだよ〜。ってか〜二人は付き合ってんのぉ?」「えっ、美嘉とヤマトが??まっさかぁ〜ないない!!」「俺たちマブダチだもんなあ〜美嘉ちん〜」

出典:本書210ページ 原典:「恋空」美嘉 

ケータイ小説とはどんなものか初めて知った。引用するのも疲れる。本もよく売れているようだ。

恋空〈上〉―切ナイ恋物語恋空〈上〉―切ナイ恋物語
著者:美嘉
販売元:スターツ出版
発売日:2006-10
おすすめ度:2.0
クチコミを見る


★もはや「出版文化」は幻想で、志の高い編集者は「はぐれ者」扱いされているという。だから「新しい革袋には新しい酒を」ということなのだと。

★グーグル検索で全文検索できても、本の売れ行きには影響しない。「全文検索できると本が売れなくなる」などという話の証拠はどこにもない。ケータイ小説など、ウェブで全文配信されているにもかかわらず、売れまくっているものもある。

★ソーシャルメディが生み出すマイクロインフルエンサーの活用が、これからの本や電子書籍の売り方だ。


電子書籍の総括

最後に佐々木さんは電子書籍を次のように総括している。

1.キンドルやiPadのような電子ブックを購読するのにふさわしいタブレット
2.これらのタブレット上で本を購入し、読むためのプラットフォーム
3.電子ブックプラットフォームの確立が促すセルフパブリッシングと本のフラット化
4.そしてコンテキストを介して、本と読者が織りなす新しいマッチングの世界

これが電子ブックの新しい生態系だという。

筆者も海外の友人の持っているキンドルを見たことがあるが、その画面の鮮明さに驚いた。また読み上げ機能もあり、速度や男性女性の声を選べるという点も気に入ったが、日本語版がないのでまだ買っていない。

iPadになるかキンドルになるかわからないが、いずれ日本語版のタブレットデバイスと、本の配信プラットフォームが確立してきたら是非購入したいと思っている。


参考になれば次クリック願う。