絵で見る十字軍物語絵で見る十字軍物語
著者:塩野 七生
新潮社(2010-07)
販売元:Amazon.co.jp
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十字軍の歴史を描いた19世紀後半のフランスの画家ギュスターブ・ドレのイラストに、塩野七生(しおの・ななみ)さんが解説を入れた絵本。

塩野さんの本は、「ローマ人の物語」シリーズなど、経営者に人気があるが、筆者はいままで読んだことがなかったので、手始めにこの絵本から読んでみた。

ローマ人の物語〈1〉― ローマは一日にして成らずローマ人の物語〈1〉― ローマは一日にして成らず
著者:塩野 七生
新潮社(1992-07)
販売元:Amazon.co.jp
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塩野さんの本は、プルタークの「英雄列伝」の焼き直しだとか、タネ本があるとか言う人もいるが、イタリア在住とはいえ日本人がローマ人の物語を書くなら、プルタークの本を元にするのは当然だと思う。

プルタルコス英雄伝〈上〉 (ちくま学芸文庫)プルタルコス英雄伝〈上〉 (ちくま学芸文庫)
著者:プルタルコス
筑摩書房(1996-08)
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筆者はプルタークの「英雄列伝」を学生時代に読んだが、岩波文庫だとなにせ全部で12巻もあり、結局1巻か2巻と何巻だったか忘れたが、カエサルの出てくる巻を読んで、他は挫折した。

プルターク英雄伝(全12冊セット) (岩波文庫)
岩波書店(2004-03)
販売元:Amazon.co.jp
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決して読みやすい本ではないプルターク英雄列伝を、現代風に解説してくれるなら、塩野さんの本を読んだ方が良いのではないかと思う。

前置きが長くなったが、この「絵で見る十字軍物語」は、もともとフランスの歴史家フランソワ・ミショーの「十字軍の歴史」という本の挿絵としてギュスターブ・ドレが書いたイラストを100枚ほど、塩野七生さんの解説をつけて紹介したものだ。

十字軍というと、高校の世界史で習ったきりなので、11世紀から13世紀まで何回も派遣されたキリスト教徒の遠征としか覚えていなかったが、この本を読んで十字軍が第1回から第8回まで200年にわたり、断続的に派遣されていたことを再認識した。

最初の十字軍はいわば民衆十字軍で、フランスの隠者ピエールに扇動された民衆が聖地エルサレムの奪還を目ざして草の根運動的に東欧・ギリシャ・トルコを通って、パレスチナまで攻め上がった。

それにフランスのロレーヌ公ゴドフロアなどのヨーロッパの諸侯の軍隊が追いついて大勢力となって、1099年にイスラム教徒からエルサレムを解放した

このとき発見された大十字架は、キリストが磔(はりつけ)にされた十字架だとして、十字軍の参加者は感激の涙にむせんだという。

次がこの本にも載っているギュスターブ・ドレの聖十字架の絵だ。

Gustave_dore_crusades_the_discovery_of_the_true_cross










出典: 以下別注ない限りWikimedia Commons

なんとなく気味が悪いギュスターブ・ドレの絵の感じが分かると思う。

この本で一番筆者が気に入った挿絵は、本の表紙にもなっている十字軍とともに歩むキリストのものだ。十字架に磔になったキリストが十字軍と一緒に歩くという考えられない構図だ。

Gustave_dore_crusades_miracles











Wikipedia Commonsにはギュスターブ・ドレの作品が多く収録されているので、ここをクリックして見て欲しい

十字軍は13世紀末の第8次(Wikipediaでは第9次と呼んでいるが、第8次と第9次は一緒にできるようだ)十字軍で終わり、結局一時的にパレスチナで樹立したキリスト教国家は、その後イスラム教徒に滅ぼされてしまう。

一方イベリア半島では、逆にイスラム教徒がキリスト教徒から追いつめられ、コロンブスがアメリカ大陸を発見した1492年にグラナダのイスラム王はイベリア半島から脱出した。

グラナダのアルハンブラ宮殿にはイスラム芸術が残されている。Wikipedia Commonsにアルハンブラ宮殿の写真が多く掲載されているので、ここをクリックして是非見て欲しい

Alhambra_in_the_evening



筆者もまた訪れたい。次はアルハンブラ宮殿の中にあるパラドール(国営文化遺産ホテル)に泊まりたいものだ。

閑話休題。

絵が若干気味が悪い感じがするが、200ページほどの絵本の解説で、簡単に読める。

手に持ってパラパラめくってみて欲しい本である。


参考になれば次クリック願う。