新・ニッポン開国論新・ニッポン開国論
著者:丹羽宇一郎
販売元:日経BP出版センター
発売日:2010-03-04
おすすめ度:4.5
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今般駐中国大使に内定した伊藤忠商事相談役の丹羽宇一郎さんが書いている「日経ビジネス」の最後のページのコラムを編集した本。

丹羽さんの駐中国大使就任は、民主党内閣のヒットだと思う。

別ブログでは丹羽さんの本は、「人は仕事で磨かれる」とキャノンの御手洗さんとの対談集の「会社は誰のために」を紹介した。このうち「人は仕事で磨かれる」は、まさにタイトルどおりの本で、大変参考になった。筆者が読んでから買った数少ない本のうちの一冊だ。

この本では4ページくらいの長さのコラムを編集しているので、簡単に読める。

この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、是非目次を見て貰いたい。

参考になったものをいくつか紹介しておく。


★不況期こそコミュニケーションを
今は正社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイトなど様々な職種の人が集まってチームを構成することが多い。その際にメンバーが孤立すると、不祥事が起きる温床となる。それを防ぐためにはリーダーは1にコミュニケーション、2にコミュニケーション、3にコミュニケーションだ。つまりコミュニケーションに尽きる。


★国を滅ぼす「もうひとつの恐ろしい感染症」
企業が失敗する条件は、「保守」、「思い上がり」、「自己満足」だ。それに対し企業が成功する条件は、「顧客」、「競争」、「変革」だ。「間接的ゴマすり症候群」が蔓延しつつあるという。トップに逆らわない静かな取締役会などがその症状だ。


★リーダーは私利私欲を自制せよ
次世代教育で最も大事なのは倫理だ。己に克つ強い心、つまり克己心(こっきしん)を持った人材を育てなければならない。


★農業は国の宝
国土に占める農地の割合は日本は12.5%で、他の先進国に比べて極めて低い。アメリカ4割、英国で6〜7割、その他先進国で5〜6割だという。日本の地方を再生させるには農業しかないと丹羽さんは力説する。

日本の米作りを強化して、コスト競争力をつけろと提案する。


★コーヒー一杯分の恩返しを
丹羽さんは国連の世界食糧計画(WFP)を支援するNPO,”国連WFP協会”の会長を務めているという。1人分20円で給食が提供できるので、コーヒー一杯分でも10人分の給食費がカバーできる。是非募金を!と呼びかけている。

丹羽さんは”国連WFP協会会長”としてケニアを訪問したとしか書いていないが、別ブログで紹介した「20円で世界をつなぐ仕事」によると、日本発のNPO運動"Table for Two"は伊藤忠の社員食堂からスタートしたはずだ。

“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事
著者:小暮 真久
販売元:日本能率協会マネジメントセンター
発売日:2009-03-21
おすすめ度:4.5
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自分や自社の社会貢献活動を全然宣伝していない。奥ゆかしいというか、謙虚だ。地下鉄で通勤し、12年物のカローラIIを乗り続けているという丹羽さんの人柄がうかがわれる。


★消費税年金ポイントカードで衰退は食い止められる
年金は年金版ポイントカードを導入して、消費税に応じた年金ポイントが貯まるしくみを提案している。課題も多いが、消費税年金は基礎年金の補完的な役割を果たせると思うと。

実現性はともかく、ポイントカードをつくれば国民一人一人が年金ポイントを常に意識することとなり、効果があるかもしれない。

もちろんその前に、アメリカの社会保障番号のようなものを取り入れることも必要だろう。


★高卒採用で老人企業を防ぐ
まだ私案ではあるが、丹羽さんは伊藤忠の人事担当に高卒・専門学校卒の採用を検討するように指示を出したという。まずはグループで採用し、いずれ伊藤忠本体でも働けるようにしたいと。

大卒も就職難だが、高卒はさらに大変のようだ。たしかに総合商社は昭和40年代までは高卒も採用していた。筆者の先輩でも高卒で優秀な人もいる。丹羽さんの発想は面白いと思う。

ただし、丹羽さんの頃はたぶん大学進学率は20%程度だったと思うが、今は大学進学率は50%を超えている。昔のような高卒のイメージでは必ずしもないことを、念のため付け加えておく。


丹羽さんのコラムはいつも読んでいるが、こうして本にまとめても参考になることが多い。


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