時短読書のすすめ

「あたまにスッと入るあらすじ」作者が厳選するあらすじ特選。その本を読んだことがある人は記憶のリフレッシュのため、読んだことがない人は、このあらすじを読んでからその本を読んで、「時短読書」で効率的に自己啓発してほしい。

プラチナデータ DNA捜査はこうなる? 東野圭吾の近未来警察小説

プラチナデータ (幻冬舎文庫)
東野 圭吾
幻冬舎
2012-07-05


東野圭吾の近未来警察小説。

嵐の二宮和也主演で映画化されている。



この小説の中には年号は一切出てこない。

近未来の日本。

DNA検査が犯人特定に使われるようになる。「ビッグデータ」の犯罪捜査への活用だ。

映画の予告編では、日本国民すべてDNAデータを国が管理するとのキャプションが出ているが、話はそう簡単ではない。

日本の居住者全員からDNAを集めるのは不可能なので、近親者のDNAからも犯人を割り出せるシステムが天才数学者の手によって開発された。

DNAを肉親や親戚が登録したら、自分まで芋づる式に調べられる可能性が出てきたのだ。

これなら犯罪抑制の効果も期待できる。

というのは、もし親類や兄弟がDNAを登録していたら、悪いことをするとすぐに自分が割り出される恐れがあるからだ。

手法は異なるが、スピルバーグの映画「マイノリティレポート」の犯罪未然察知システムを想起させる。



「マイノリティレポート」は「未知との遭遇」と並んで筆者の最も好きなスピルバーグ映画だ。特に、ショッピングモールの虹彩を読んで個人を特定して、その人にあった広告を表示する場面は興味深いので、よく話題にしている。



話が横道にそれたが、DNA検査の捜査利用は順調なスタートを切った。

採取した毛や体液などの分泌物のDNAを調べて、日本国民の膨大なデータとマッチングすれば、容疑者の身長、体重、身体的特徴、そしてモンタージュ写真まで作ることができるのだ。

まずは逮捕第一号。簡単なものだ。

「朝飯前」だ。

これなら刑事も多数リストラできる。

しかし、そのシステムには致命的な欠陥が……。

突然、なぜか警察庁が本腰を入れて乗り出してくる。

というようなストーリーだ。

今や邪魔者扱いされた豊川悦司が演じる警視庁の捜査一課刑事と、検査結果を解析する二宮和也演じる警察庁特殊解析研究所の主任解析員が主人公だ。

大変面白い。単行本だと430ページもの作品だが、時間を忘れて一気に読めてしまう。

是非一読をおすすめする。


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天才 石原慎太郎が描く田中角栄

天才
石原 慎太郎
幻冬舎
2016-01-22


石原慎太郎が描く田中角栄の自伝的小説。

この本の「長い後書き」に石原慎太郎が記している。

この本を書くことになったのは、早稲田大学の森元孝教授との会話がきっかけだったという。

森教授は「石原慎太郎の社会現象学」という本を書いている。




「貴方は実は田中角栄という人物が好きではないのですか?」と森教授に聞かれ、

「確かに、彼の様にこの現代にいながら中世期的でバルザック的な人物は滅多にいませんからね」。

と答えたという。

石原慎太郎は田中角栄の金権政治に真っ向っから反対していた。しかし、その一方で田中角栄という政治家が好きだったという。

テレビというメディアを造成したのは田中角栄だし、高速道路の整備や新幹線網、各県に一つの空港、エネルギー資源の乏しい国に適した原子力発電推進、資源をメジャーに依存しないための自主資源外交、30を超える議員立法のいくつかは現在も有効だ。

自主資源外交を推進したためにアメリカの虎の尾を踏んで彼らの怒りを買い、虚構に満ちた裁判で失脚に追い込まれたが、それ以前に重要閣僚としてアメリカとの交渉で見せた姿勢は、彼がまぎれもない愛国者だったということがわかる。

田中角栄の先見性に満ちた発想が、今日の日本の在りようをつくったともいえる。

筆者もまさに石原慎太郎さんと同感だ。

このあたりは、「田中角栄 封じられた資源戦略」という本のあらすじで紹介しているので、参照してほしい。



この本では、田中角栄の生い立ちから、高等小学校を卒業後、土方をやって身に着けた世の中の見方が後々役に立ったことなど、様々なエピソードも交えて田中角栄自身が語るという一人称小説に仕上げているので、非常に読みやすい。

石油ショックでアメリカやメジャーに頼っていた日本のエネルギー自立を促進するため、カナダ、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、ビルマ(現ミャンマー)を歴訪して資源確保の契約を進めた。

これがニクソンの片腕だったキッシンジャーの反発を買い、キッシンジャーは田中のことを「デンジャラス・ジャップ」と呼んで、のちにアメリカが仕掛けたロッキード事件で田中角栄は失脚した。

次の三木内閣の法務大臣となった稲葉修が「逆指揮権」を発令して、田中角栄は受託収賄容疑で逮捕された(その後起訴され、一審、二審で有罪、最高裁の判決が出る前に田中角栄は75歳で亡くなり、死後最高裁が収賄を認定した)。

三木内閣は総選挙で大敗、次は福田内閣となった。

福田内閣時代には、中国の小平副主席が田中邸を訪ね、「水を飲む時、井戸を掘った人の苦労を忘れない」と言って、田中角栄に感謝したことは有名だ。

この本では田中角栄の妾や愛人との関係などの私生活、政治活動、仲間の政治家の評価などについても、田中角栄自身に語らせていて大変面白い。


小説なので、これ以上は紹介しない。

一人称小説で、これほど読みやすいものは珍しいと思う。

全200ページの本だが、2時間程度で簡単に読める。

是非一読をおすすめする。


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鹿の王 2015年本屋大賞受賞作 中央アジアを舞台にしたファンタジー小説

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐
上橋 菜穂子
KADOKAWA/角川書店
2014-09-24


鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐
上橋 菜穂子
KADOKAWA/角川書店
2014-09-24


2015年の本屋大賞を受賞した文化人類学者の上橋菜穂子さんの小説。

中央アジアの一国で、現在は隣国の東乎瑠(ツオル)に併合されたアカファ国の戦士ヴァンと、東乎瑠(ツオル)の医師ホッサルが活躍する物語。

KADOKAWAがこの本の紹介サイトを開設しており、そこに登場人物のマンガがある。登場人物のイメージが湧くと思うので紹介しておく。

鹿の王















出典:KADOKAWA 鹿の王特設サイト

アカファ国の戦士「独角」は、東乎瑠(ツオル)との防衛戦で全滅し、リーダーで飛鹿(ピュイカと呼ばれる乗鹿用の鹿)乗りの名人のヴァンは捕虜となり、岩塩鉱山で強制労働を強いられる。

ある日、岩塩鉱山に狼に率いられた狼犬の群れが突入し、鎖を自力で断ち切って逃げ出したヴァンと、かまどに隠されていた赤ん坊のユナ以外で鉱山に居た全員は狼犬(半仔=ハンチャイと本の中では呼ばれる)に襲われて死んでしまう。

狼に率いられた狼犬の群れは、東乎瑠(ツオル)の支配者の鷹狩りにも乱入し、東乎瑠(ツオル)の王の長男までもが狼犬にかまれて命を落とす。

この病は高熱が出て、全身に発疹が広がるという症状を示すものだが、単なる狂犬病ではなく、狼犬にかまれなかった者も同じ病で命を落とす者が続出する。狼犬の血をすったダニからも感染していたのだ。

東乎瑠(ツオル)の医師ホッサルは、この病が単なる狂犬病とは異なることに気づき、血清をつくるために狼犬にかまれても死ななかったヴァンを狩人のサエに頼んで探す。

病気を調べていくとホッサルは今回の一連の出来事の裏で、大掛かりなたくらみを企てている者がいることに気づく……。

というような雄大な自然を背景にしたドラマだ。

作者の上橋 菜穂子さんは医者ではないが、伝染病のことを相当研究していることがわかる。

医師のホッサルを主人公として描いていることから、この本は医療小説として2015年の日本医療小説大賞を受賞している。

単行本で上下1,100ページ余りの大作なので、何日もかかって読んでいるうち、東乎瑠(ツオル)とか飛鹿(ピュイカ)とかの独特の読み方をつい忘れてしまうが、気にせず読んでいくと、またフリガナがふってあって親切である。

医療小説という一面もあり、同じ中央アジアを舞台としている井上靖の「蒼き狼」や「楼蘭」の様な壮大さはないが、興味深く読める小説である。

蒼き狼 (新潮文庫)
井上 靖
新潮社
1954-06-29



楼蘭 (新潮文庫)
井上 靖
新潮社
1968-01-29




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ノルウェイの森 1千万部を超える村上春樹のベストセラー

今度あらすじを紹介する村上春樹さんの「職業としての小説家」が大変よかったので、村上春樹作品をいくつか読んでいる。

職業としての小説家 (Switch library)
村上春樹
スイッチパブリッシング
2015-09-10


まずは出世作の「ノルウェイの森」を読んだ。累計で1千万部売れたという超ベストセラーだ。






ビートルズの「ノルウェイの森」はビートルズの楽曲の一つとして、登場人物のレイコさんがギターで演奏する場面が出てくる。



インドの楽器、シタールが印象的な曲だ。ちなみに「ノルウェイの森」という曲のタイトルは誤訳とされている(ノルウェイの木材=安普請の部屋というような意味だそうだ)。

主人公は大学紛争が盛んだった1970年代の初めに入学した学生だ。大学のキャンパスはロックアウトされ、学生のロックアウトを機動隊が実力で排除していた時代だ。

筆者は1972年に大学に入った。最初の2か月は大学がロックアウトされていて授業がなかった。暴力的なものではなかったが、国立大学の授業料値上げに反対して、学生がキャンパスをロックアウトしていたのだ。

ちなみに当時の国立大学の授業料は月千円で、これを3倍の3千円にすることに学生が反対していたのだ。幼稚園より大学の方が授業料が安いといわれたものだ。

筆者の入学年度の学生は、変則的に最初の半年は月千円、残りの3年半は月3千円となっていた。筆者より1年上の年次までは、卒業まで月千円が維持された。当時の授業料は入学年度ごとに決まっていたのだ。

村上さんは筆者よりすこし年上だから、大学紛争が激しかったころを経験しているはずだ。

閑話休題。小説のあらすじは、いつも通り詳しく紹介しない。

大学で演劇を学び、いろいろな大学の学生が住む学生寮に暮らす主人公と、高校の同級生で、恋人が排ガス自殺してしまった女子学生の直子、それと主人公と同じ大学で演劇学を学ぶ実家の本屋が閉店してしまった同級生の緑が織りなす物語だ。

同じ学生寮に暮らす東大法学部の外交官志望の永沢さんや、直子が大学をやめて暮らす精神病療養所の同室の元ピアノ教師レイコさんなどがストリーにひねりを加える。

大学紛争の末期に大学に入った筆者は、同世代の話として、つい引き込まれてしまうストーリー展開で、大変楽しめた。

この小説は松山ケンイチ主演で映画化もされている。



どうでもいいことだが、映画では、永沢さんを演じるマッサンの玉山鉄二は、なめくじを食うシーンはあるのだろうか?たぶんゼリーで作ったなめくじを食べて演技するのだろうけど…。

これといった結論じみたものはないが、なめくじシーンに限らず、強烈な印象を残す小説である。


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ぼくの命は言葉とともにある 全盲ろうの東大教授 福島さんの本



9歳で失明、18歳で聴力も失って全盲ろう者となった東大教授の福島智さんの本。

この本はアマゾンの「なか見!検索」には対応していないので、なんちゃってなか見!検索で、目次からピックアップして紹介しておく。大体の内容がわかると思う。

☆プロローグ 「盲ろう」の世界を生きること

・「世界」から消えて行った光と音
・コミュニケーションの喪失―絶望と希望の狭間で揺れ動く
・コミュニケーションの復活と再生

第1章 静かなる戦場で
・生きる意味を探す闘いが続く
・極限状況の中でこそ人間の本当の価値が発揮される
・意味があるからこそ生きられる―フランクルの公式「絶望=苦悩―意味」との出会い

第2章 人間は自分たちが思っているほど強い存在ではない
・どん底の状態にあって、それでも生きる意味があるかと自らに問う
・どんな人間にも、生きる意味がある
・石のように眠り、パンのように起きる、そんな素朴な生の中に生きる意味が与えられている
・豊かな先進国にしか「自分らしさ」を求める人間は存在しない
・盲ろうを受け止めた精神力、しかしそれも無敵ではなかった

第3章 今この一瞬も戦闘状態、私の人生を支える命ある言葉
・コミュニケーションこそが人間の魂を支える
・その言葉にどういう意味が込められているのか
・たとえ渋谷の雑踏の中にいても、人は孤立する
・コミュニケーションによる他者の認識が自己の存在の実感につながる
・指先の宇宙で紡ぎ出された言葉とともにある命

第4章 生きる力と勇気の多くを、読書が与えてくれた(この章は全節を紹介する)
・「クマのプーさん」が想像の世界に誘ってくれた
・「杜子春」を読み、真の幸福について考える
・自分の中の沼に沈む
・「いのちの初夜」にいのちの本質を見る
・吉野弘の誌「生命は」によって、いのちの美しい関係性を感じる
・小松左京のSF的発想に生きる力をもらう
・自由な発想とユーモア、SFと落語に共通するエッセンス
・落語が教えてくれた「笑いが生きる力になる」ということ
・アポロ13号とロビンソン・クルーソーに極限状況をいかに生きるかを学んだ
・この四年間は北方謙三の小説に支えられて生きてきた

第5章 再生を支えてくれた家族と友と、永遠なるものと
・自分が人生の「主語」になる
・「しさくは きみの ために ある」
・病や障害は因縁のためなのか
・宗教は「料理」のようなもの(宗教は人間にとって必要な「魂の食べ物」のようなもの)
・限界状況と超越者の暗号

第6章 盲ろう者の視点で考える幸福の姿
・後ろに柱、前に酒…
・幸せの四つの因子
・幸福の四つの階層
・幸福の鍵を握る「ある」ということ
・幸福の土台は希望と交わり
・競争でなく協力を伴うチャレンジが人生を輝かせる

フランクルについては、このブログの「夜と霧」のあらすじを参照願いたい。

福島さんは全盲ろう者として初めて大学に進学(東京都立大学)、教育学を専攻し、大学院に進んで、金沢大学助教授などを経て、現在は東大の先端科学技術研究センターで、バリアフリー論や障害学の研究に取り組んでいる。

ちなみに全盲ろう者で、大学に進学したのはヘレン・ケラーが世界で初めてということである。福島さんは、2011年に米国の国立ヘレン・ケラー・センターに1年間長期出張している

筆者はヘレン・ケラーの話をどこで読んだか覚えていないが、たぶん教科書に載っていたのではないかと思う。映画「奇跡の人」の有名なサリヴァン先生が、ヘレンの手で水を触らせ、”water”と教える場面などを覚えている。

奇跡の人 [DVD]
アン・バンクロフト
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2011-06-22



福島さんの本は、これまで福島さんの奥さんとの会話など、日常生活を中心に紹介している「生きるって人とつながることだ!」を読んだことがある。



全盲、あるいは全ろうだけでも大変な障害だろうが、全盲ろうということは、全く音の聞こえない暗闇で生活しているわけで、想像できない困難な環境だ。

この本では「生きる力と勇気の多くを、読書が与えてくれた」という章で、全盲ろう者の福島さんが様々な本を紹介しているの。上記の目次で第4章の全節のタイトルを紹介したのは、そのためだ。

福島さんは、2011年にニューヨークに長期出張して体調を崩しているときに北方作品を知って、最近四年間は北方謙三に支えられて生きてきたとまで言っている。本の最後に、北方謙三と対談したことを紹介している。

北方謙三は、分厚い手をしていて、福島さんは握手した時に、「さすがにしっかりとした、いい手をなさっていますね」と思わず言った。

対談の最後に、北方謙三は、「(福島)先生の言葉は、鼓動ですよ」と語った。福島さんは、その端的で美しい表現に感動したという。

北方謙三の本は、いままで一冊も読んだことがなかったので、この本に紹介されている「秋霜」を読んだ。これは「ブラディー・ドール」シリーズの一冊ということだ。

秋霜 (角川文庫)
北方 謙三
角川書店
1990-10


そのほかにも北方さんの警部もの、剣豪もの、歴史小説、中国歴史小説などの作品が紹介されている。




小説以外にも、聖書のイエスの起こした奇跡、パスカルの「パンセ」、デカルト、ヤスパース、トルストイの「戦争と平和」、バートランド・ラッセル、吉本隆明、エーリッヒ・フロム、果ては「アルジャーノンに花束を」まで、非常に広いジャンルの作品の一節を紹介している。




ちなみに「アルジャーノンに花束を」はTBSで昨年ドラマ化されている。

アルジャーノンに花束を





















出典:TBS番組サイト

盲ろう者の福島さんがこれだけの本を読んでいることに対して、健常者の筆者は忸怩たる思いを感じながらも北方作品を読み始めているところだ。

盲ろう者の福島さんが活発に活動できるのは、お母さんが発案した「指点字」のおかげでもある。次の本の表紙になっている通り、指で言葉を伝えるもので、世界で初めて福島さんとお母さんが使い始めた。

さとしわかるか
福島令子
朝日新聞出版
2015-12-07


大学の仲間もすぐに指点字のやり方を覚え、福島さんにコミュニケーションをはかってくれるようになったという。

この本の最後に2007年度の東大の入学式での祝辞が収録されている。東大のウェブサイトでも全文が公開されており、動画も公開されている

盲ろう者の福島さんが、これだけ本を読んで、様々な情報発信をしているのだから、健常者の筆者も、多くの本を読んで、あらすじをこまめにアップしなければならない。

自戒の念を新たにした。感動を与えるストーリーが満載の本である。


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